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フィリピン訪問報告
(3月6日〜3月10日)

2020年5月
                                                                                 

                                              

                                       AWCフィリンピン訪問団員


 三月六日から一〇日にかけて3・8女性集会への参加を主目的にしたAWC日本連のフィリンピン訪問を行なった。その一員として参加し、フィリピンのさまざまな運動体、人士と交流した。

●1 マニラ到着

 一三時一五分、マニラ到着。一八時二〇分、今回の訪問を受け入れてくれた新民族主義者同盟(バヤン)のオフィスに到着。バヤン事務局によるスケジュール説明。
 「疲れているだろうから、今日は早めに寝てもらいます」、ということで早々に宿舎に帰る。

●2 バヤン・オフィスでの報告

 八時四〇分、バヤン・オフィスにて事務局によるフィリンピンの現状報告をうけた。
 「米中による新自由主義―グローバリゼーションはフィリピンに民営化と規制緩和の攻撃を行っている。国有の大工場を無くし、全てを民営化しようとしている。水道・石油・ガスなどの公共事業はすでに民営化されてしまっている。規制緩和も激しい。石油・ガスはアメリカ・フランス資本の外国企業が独占している」。
 「農民はコメの輸入が自由化され苦境に立たされている。国内生産米はどうしても高くなる。卸業者は輸入米を好む。コメ農家は自由化によって殺されている」。
 「労働者は非正規職化が進んでいる」。
 「ドゥテルテは中国との関係を重視し、中国を擁護している」。「スプラトリー諸島に中国が軍事施設を作ろうとしている。西フィリピン海(南中国海)は中国のものだと主張している」。「中国はドゥテルテ政権に資金援助をしている。しかし、その資金は利子をつけて返さなければならならない」。
「ドゥテルテ政権で何が最悪かというと、進歩的民衆や組織を破壊しようとしている点が挙げられる」。
 「彼は進歩勢力の表現の自由や報道の自由を認めない。自分に対する批判を許さないのだ。自分を批判する人々を『赤』と規定する。そして批判者の一部は殺されている」。
 「私たちは以下のスローガンを主張する。反撃せよ! 闘い続けよう! 米・中帝国主義と結託するドゥテルテに対して反撃せよ!」。

●3 「正義の回復」、「ロラの家」での交流

 一〇時にバヤン・オフィスを出て、一一時に「ロラの家」に到着した。
 タガログ語の通訳はガブリエラ(バヤンの女性団体)。日本軍性奴隷被害者であるロラは二名。
 簡単な自己紹介後に支援女性によるレクチャーを受けた。
 「ようこそ。現在、リラ・ピリピーナ(日本軍性奴隷制度被害者の組織)には一七四人の被害当事者が登録されています。存命しているのが一五人。そのうち四人が活動を行っています」。「リラ・ピリピーナは、軍事的性奴隷被害者の正義の回復のために活動しています」。
ロラのナルシア・クラベリアさんは次のように語った。「第二次世界大戦のとき、私たちはひどい目にあった」。「だから、特に若い人に言いたいのは、二度と戦争や侵略することはないようにしないといけない」。「トラウマになっている。戦争が終わっても、私たちの正義は回復されていない」。
 同じくロラのフェデンシャ・ダビッドさんは、「私は九三歳です。自分の半生は事実だと証明したい。そして、そのことを妨害することは許せない。事実を証明したい」。「私はそれほど年を取りすぎてはいない。『正義の回復』のために、やれることはすべてやる」。
 その後、サンチャゴ要塞を訪問した。日帝侵略時代の模様が人形で再現してある。近くに川がある。日帝は水牢として利用した。ここでジュースを飲んだり、お土産を買ったりした。夕方、バヤン事務所に到着。バヤン傘下の青年組織アナクバヤン(タガログ語で「人民の娘・息子たち」という意味)との交流をおこなった。

●4 会場は闘う女性で埋め尽くされいる

 八時四〇分、集会場であるボニファシオ公園到着。旗が林立している。ガブリエラ(バヤン傘下の女性団体)は紫のTシャツで統一している。参加者はざっと五千人ほどだ。
 司会が「ステージの前から後ろまで、この公園は闘う女性で埋め尽くされている!」「今日は女性たちが政府に働きかけた記念日です。女性が選挙権のために闘った日です。労働者がまとまって、女性の権利のために闘った」と開会宣言。
 会場全体で「マキバカ! ファマタコ!(タガログ語で「団結」「恐れるな」の意)」とコール。
 「今まで女性たちはレイプされてきた。しかし今日は、レイピストと闘う日です!」「私たちは立ち止まりません! 真実が私たちを立ち止まらせない!」。
 一一時三〇分にデモ出発。われわれはKMP(フィリピン農民運動)の隊列に入った。旗・横断幕には「賃金引上げだ! 価格引き上げだ!」「新自由主義打倒! 帝国主義打倒!」とある。
 大きなトラックを先頭にデモ隊が動き出す。道路をデモ隊が占拠する。一般車両はバヤンが通行止めにしている。
 一二時二〇分にデモ終了。KMPが用意した車で事務所へ向かう。

●5 農村共同体訪問、KMPとの交流

 一四時にKMP(フィリピン農民運動/バヤン傘下の農民組織)事務所到着。一四時二〇分から、KMPによるレクチャーがなされた。「みなさん、何かアレルギーの問題はありますか? これからブラカン州の農村共同体にいきます」。
 一四時五〇分にKMP事務所を出発。専用ジプニーにわれわれを含めて一〇名ほどが乗り込む。アスファルトの道路から砂利道に入る。運動場で子どもたちがスポーツに熱中している。小さな商店もいくつかある。一六時三〇分に交流会開始。ふかしたバナナを出してくれた。
 司会が現地言語から英語に通訳してくれた。参加した方々はすべて女性だった。ここはビサヤ言語地域で約五〇〇人が居住している。
 夕食は芋のつるとイワシの炒め煮。一般的な家庭料理。夕食後も交流し歓談した。

●6 「私達は闘うしかない」KMUとの交流

 五時四五分起床。六時過ぎに水牛を見に行く。七時二〇分に専用ジプニーに乗ってコミュニティを後にする。一〇時にKMU(五月一日労働運動センター/労組ナショナルセンター)の全国事務所に到着。事務局長がレクチャーしてくれた。フィリピン製のコーヒーが出された。こくがあって美味しい。
 「KMUとは労組のナショナルセンターです。七二の産別労組を組織しています。都市貧民、ジプニードライバー、売店、レストラン、製造業、衣服、農業労働者、コミュニケーション等々です」。「一三の地方本部があります。その他に地域連絡事務所があり、各々の地域本部が方針を出しています。」
 「私たちは反帝国主義、民族の解放を課題としています。私たちは外国からの投資をあまりよく思っていません。日本もフィリピンに投資しています」。
 「ドゥテルテ政権下で四六人の労働者が準軍事組織によって殺されています。これは明らかに結社の自由に対する敵対行為です」。
 「ミンダナオにスミフルがあります。農園です。住友系です。ここで組合をつくっていますが、軍が介入してストライキを潰しました 。労働組合の指導部が殺害されました」。「外資系は『ノーユニオン・ノーストライキ』です。労働運動はご法度なのです。トヨタ、ホンダ、ノキアなど、これら企業はフィリピンにほとんど利益を残さない」。
 「全面的に民営化が進められています。MRT(都市高速鉄道)も地元の資本と外資系と結びついている。交通機関だけではなく、電気や小学校もです。教育までが民営化されているのです」。「政府が労働者をゆっくり殺しているのです」。
 「ドゥテルテ政権は中国との関係も強いです。中国の労働者もたくさん入ってきています。しかし、フィリピンの法律では外国人労働者は事業の10%に限定する、という規定があります。これを超える数の中国人労働者が入ってきています」。
 「もちろん、私たちは全ての国の労働者がフィリピンで働くことに反対はしません。違法を繰り返し、フィリピン人民の利益を守らないドゥテルテ政権に反対しているのです」。
 「フィリピンでも排外主義は強まっていますか?」という質問が出された。
 「いいえ。フィリピン人は昔から仕事は自国でも、海外でも、自分で取ってくるものだという感覚がつよく、外国人に『仕事が盗られた』とは考えません。私たちは海外からの労働者を受け入れます。しかし、第一に要求することは、フィリピン人労働者への補償です。私たちは世界経済システムに貢献してきました。だから、私たちは、ともに連帯して、世界経済システムと闘わなければならないのです。」
 最後に、「私たちは何も持っていない。だから、私たちは闘うことしかない!私たちは勝利していく!」と決意を語った。
 一二時、KMU近くの食堂で昼食をとり、一三時にKMU事務所を出発した。マニラ首都圏支部事務所に向かい、一三時一五分にKMUマニラ首都圏支部事務所に到着した。
 司会はフィリピン・トヨタ労組委員長。日本にも何回かきた。参加者はトヨタ労働者、リージェント・ユニオン等。一五時三〇分に終了。
 その後、近くのファストフード店で訪問団の感想会を行ない、さらにバヤン事務所で最終的な総括論議を行なって全行程を終了した。

 

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