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■福島を忘れず、全原発の廃炉を実現しよう! 「3・11」原発事故から一〇年、福島の現状 首都圏地方委員会 福島第一原発爆発事故から一〇年目を迎えた。福島は復興したのか、否現状は変わっていないのだ。帰還困難区域が解除され、かつての住民たちの帰還を促しているが、その数は全体の20%にすぎない。未だに放射線量は高く、地元で生活する仕事もないままだ。かつて安倍政権は、福島は安全、復興したと世界に大嘘を言ってオリンピックを誘致した。 原発輸出を経済政策のメインとしていた安倍政権は、原発を再稼働するために、福島原発事故の記憶を消しさるために、再び福島住民に犠牲をしいたのである。一〇年目を迎えた福島を忘れず、新たな決意で全原発の廃炉に向けて闘い抜こう。 ●1章 「汚染水」問題 昨年政府は「ALPS小委員会」報告を受けて、経産相梶山が記者会見で汚染水の「海洋放出」を発表する予定でいたが、福島漁連を始め近隣の宮城漁連、茨城漁連などが強く反対したため、全国漁連が『海洋放出反対声明』を出さざる得なくなった。福島の農林水産業者はもとより、ほとんどの産業界でも反対決議がなされ、また実に県内の五九自治体のうち四一市町村議会が「反対」または「慎重に」との決議をあげ、賛成はゼロなのだ。それどころか、韓国を始めアジア各地から反対の声が巻き起こり、韓国では全国の一七市・道の自治体で海洋放出反対の建議書が決議されているのである。こうした国内外の反対の声に押されて記者会見での海洋放出発表ができなかったのである。しかし菅政権が断念したわけではない。新年早々汚染水について「適切な時期に政府として責任もって処分方法を決める」とマスメディアに文書回答しているのである。 トリチウムが安全というのは全くの嘘である。昨年の一二月二三日この問題での院内ヒアリング行われた。トリチウムは内部被曝により細胞核に入り込み、遺伝子に作用することが明らかにされている。院内ヒアリングでは研究報告書を突きつけ追及した。しかし出席した経産省や原子力規制庁の官僚どもは何の反論もできずに、ICRP(国際放射線防護委員会)という一民間機関の見解を持ち出し回答するばかりで、全く没主体的、非科学的答弁に終始したのだ。 実際、カナダのトリチウムを大量に放出するCANDU原子炉を使用しているピッカリング原発は、白血病や新生児死亡率が異常に高い事実と相関関係があるという研究報告は、カナダ原子力管理委員会も認めているのである。日本でも原発周辺では明らかに放射能による発症、疾患が平均より多いことが、長年調査してきた玄海原発や泊原発での調査研究報告において出されている。 多核種除去装置ALPSでも除去しきれない放射性物質・セシウムなど六二種類もの放射性物質が、溜りに溜った一二〇万トン以上の汚染水に70%もあることが判明している。これを海に放出して安全な訳がない。風評被害どころではなく、実際の被害が起きるのである。しかも汚染水は溶解したデブリを冷却し、氷壁でも止められない地下水が流れ込み溜り続けているのである。 企業や官僚と結びついている原子力マフィアどもは人命など二の次、国策を盾に利権をむさぼっている。福島はいつになっても復興に至らないのだ。世界では水からトリチウムを分離する研究が進んでいる。国と東電は責任もって汚染水を陸上で保管し、トリチウチの分離処理を行うべきである。 ●2章 「廃炉」問題 汚染水を強引に海に流そうとするのには、フクイチの廃炉計画・工程が完全にいきづまり展望がないことも起因になっている。当初、二〇二〇年にはデブリの取り出し作業を開始し、三〇~四〇年後には完了するなどと何の根拠もなく公表していた。しかし、調査ロボットでさえ高放射線にことごとく破壊され、原子炉内部が手の付けられない状態であることが判明している。 最近では、二、三号機の原子炉建屋の上部上蓋付近に非常に高線量の放射能があることが判明した。これは人間が一時間も浴びたなら死に至るような放射能である。これにより廃炉工程がまた見直さなければならなくなっている。 デブリ取り出し時期さえも確定できないまま延期され、廃炉などいつできるかわからない状態なのだ。ゆえにチェルノブイリなどでは石棺で覆って半減期を待つしかない対策をとっているのだ。 フクイチの「汚染水」は一日一四〇トン増え続けており、その処理のために海洋放出という安易な方法を取ろうとしている。絶対許してはならない。 安全神話を振りまき原発を推進してきた政府としては、嘘をついてでもデブリ処理はだいじょうぶだと言い続けるしかないのだ。それどころか、第五次「エネルギー基本計画」では、二〇三〇年までには原発の依存比率を20~22%と言い続け、そのためには無理矢理四〇年超えの老朽原発を動かそうとしている。 世界の潮流は脱原発、再生エネルギーの活用が主流なのに日本は原発にこだわっている。新自由主義経済の下では「核抑止力」こそが日本資本主義の生き残る道だと思い込んでいる侵略主義者どもが原子力の保持を叫んでいるのだ。 菅政権は自らの政策目標に二〇五〇年の脱炭素社会にむけて「グリーン成長政策」なるものを発表し、CO2排出量を0%にするという「カーボンニュートラル」戦略を大見得を切って発表し、世界のリーダーになる夢を打ち出した。しかしその裏には「安全、安心、クリーン」という神話を持ち出して原発の再稼働の推進をもくろむ野望がひそんでいる。 すでに開始した「第六次エネルギー基本計画」策定会議は二〇五〇年の目標を打ち出すのだが、すでに「原子力を活用すべき」という御用学者達の意見が大半を占めているのだ。その先には小型原子炉の開発や新型原子炉の開発が言われている。 CO2削減が原発で可能であるかのような錯誤を振りまくのは問題だ。強欲な資本主義が人命を犠牲にし、資源開発してきた歴史が地球の温暖化をもたらし、気候変動をもたらしたのだ。原発で問題が解決するかのような幻想をふりまき、原発、核開発を推進する偽政者どもを許してはならない。 ●3章 「帰還・避難」問題 ▼3章―1節 帰還事業の欺瞞性を許すな 「3・11」の大災害、原発の過酷事故から一〇年という節目の年を迎えた。しかし福島の復興は前進していない。帰宅困難地域では一部除染活動がすんだとして帰宅解除を強行して無理矢理元住民を帰そうとしているが、その数は30%にも満たない。 なぜなら相変わらず放射線量が高くまた生活を営むのに安心できる状況ではではないからだ。国際基準でも年間被ばく限度は1mSvとされているのに政府は何の根拠もなく20mSvに引き上げたのだ。道一本を挟んで区域が決められているという笑えない不条理な現状がうまれている。 オリンピックを強行したい安倍―菅政権は、福島は安全だということを世界にアピールしたいだけのその場しのぎの施策なのだ。福島県民はそのことをよく知っているが故に帰還率が低いのだ。 ▼3章―2節 避難住民の切り捨てを許すな 今現在でも三万七〇〇〇人以上の避難者がおり、うち三万人近くが県外避難しており全国に広がっている。しかし、この数字には避難区域指定以外の住民は含まれていないことに注意しなければならない。すでに住宅支援が打ち切られるなど棄民化政策と言っても過言でない現実が進行している。「福島は復興した」などと言い続け、五輪開催を強行しようとしている日本政府を許してはならない。 国と東電の責任と生活賠償を求める集団訴訟が全国で三〇件近くある。東京高裁は二月一九日、千葉への避難者四三名が起こした訴訟で国と東電の責任を認める一審逆転判決を出した。国の責任を認める高裁判決としては昨年の仙台高裁判決に次いで二例目の勝利判決である。 判決は、国の地震調査研究推進本部が大地震の予測を出しているにもかかわらず、この科学的知見を認めず、津波を予見しながら規制権限を行使しなかった東電はもとより国の対策の不手際をはっきりと断罪している。全国の避難者の「福島は終わってない!」の声が裁判所をも動かしたのだ。一〇年目にしてようやく見えてきた展望だ。国と東電は福島避難者への生活全面支援を保証せよ。 ●4章 原発政策を改めさせよう 東海第二原発再稼働阻止 一〇年目の福島をみても「復興」が欺瞞的であることことが分かる。オリンピック・パラリンピックの誘致で経済的発展を夢見ていたが、それも新型コロナウイルスの早期対策を怠ったため破産した。そのために亡くなったり、あるいはカウントされないまま犠牲になった人々が多数いることを忘れてはならない。民衆の被害が増大し犠牲者を拡大させた、安倍、菅、小池の責任は重い。 福島も同じだ。二〇一三年に安倍は福島は完全に「アンダーコントロール」と世界に大嘘をついて五輪を誘致したが、福島の現状は一向に改善されてない。むしろ棄民化ともいえる現状が進んでいる。まさにオリンピックのために福島がまた犠牲になったのだ。 そうした福島の現状を知りながら、政府は全国で原発の再稼働を推進している。関東では、東京から一一〇キロメートルにある茨城県東海第二原発、まさに「3・11」の被災原発で四〇年超えの老朽原発を動かそうとしている。 三月二日「老朽原発を動かすな!」と題して院内ヒアリングが行われた。「若狭の原発を考える会」の木原壮林さんをメイン質問者にして原子力規制庁を追及した。 高浜一号機は四六年超え、同二号機は四五年超え、美浜原発三号機は四五年超え、東海第二原発は四三年超えであるが、金属は老朽化により脆化、腐食、減肉が必ず起き、事故が起きる。これまで再稼働した原発が大なり小なり事故を起こしてきたのは、これまで公表された事実である。このまま再稼働を続ければ重大な事故を起こすことは科学的にも明白なのである。 規制庁の官僚は、事業者の関電が出した報告書を参照せよとふざけた解答が多かった。規制委―規制庁は法的な基準を満たしているから良しと答え、また新規制基準を作ったとはいえ原発は100%安全を保証するものではないと言い放ち、責任は事業者が負うものだといった対応で、自ら科学的実証を追求する姿勢が欠けた無責任なものであった。今後も規制委―規制庁を徹底追及していかなければならない。 福島・茨城沖では頻繁に地震が起きており、非常に危険だ。二月一三日には福島・宮城を中心に震度六強の地震がおきた。菅首相は「原発関連は全て正常」と言ったが、女川原発では変圧器遮圧弁など五件もの事故が起き、点検・交換などを行っている。福島では格納器内の冷却水位が下がっており、冷却水を補給しなければならないといった大事故につながる事態が起きている。とくに老朽原発はそのリスクが高い。 原発が人類と共存できないことは、科学的にも、思想的にも明らかになってきているのが世界的な地平である。まさに核(兵器)が全廃されなければならないように原発も同じなのである。福島の「3・11」はそのことの教訓を私たちに残しているのである。全原発の廃炉を目指して闘い抜いていこう。 |
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