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   ■日米帝国主義のアジア支配と
        反帝国際共同闘争の課題

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 米帝―トランプ政権は今日、その「貿易戦争」の発動に見られるように、中国との対決姿勢を強めている。日帝―安倍政権は、そのようなトランプ政権と結託しつつ、改憲を頂点とした侵略反革命戦争体制の構築にまい進している。それはアジア各地の労働者人民にどのような影響を与えているだろうか。ここでは、アジア太平洋地域、とりわけ東アジアを舞台にした日米帝国主義の動向を捉え、それとの関係で今日の反帝国際共同闘争の課題について触れていきたい。

 ●第1章 トランプ政権の対中対決と安全保障戦略

 米帝―トランプ政権は、二〇一七年一二月に発表した「国家安全保障戦略」と二〇一八年一月の「国防戦略」を通して、中国およびロシアとの国家間の対立・競合に勝ち抜くことを最優先課題とする米国の新たな安全保障戦略の方向性を打ち出した。
 前者では、中国とロシアの動向について、「米国の権力、影響力、利益に挑戦し、米国の安全保障と繁栄を損なおうとしている」と述べ、両国は(「戦略的パートナー」等々ではなく)「競合国」であり、「現状変更勢力」(リビジョニスト)であると規定した。また、中国を念頭に「インド太平洋において、世界秩序における自由を重視する構想と抑圧を重視する構想との地政学的な競争が展開されている」とも述べている。
 後者では、中国についてさらに、「経済および軍事の支配権と中国人民を動員した長期戦略を通した力の誇示により、将来の世界での圧倒的な地位を目指し、短期的にはインド太平洋地域での覇権を握り、米国を排除しようという軍の近代化プログラムを追求・継続している」と述べ、焦燥感をあらわにしている。
 これに関連してマティス国防長官(当時)は、「国防戦略」の発表に際する記者会見で、「現在の米国の国家安全保障の優先課題は、テロリズムではなく、大国間の競合だ」と語っている。それはむろん、今日も続くイラクやシリアでの米軍の駐留と軍事作戦が示しているように、「対テロ」戦争の終結を意味するものではない。また、現在のベネズエラに対する露骨な反革命介入のように、あらゆる手段によって自らの利害を貫徹し、覇権を拡大しようとする米帝の姿に変わりはない。しかし、国家間対立あるいは「大国間の競合」に何としても勝ち抜くことを米国の「安全保障」をめぐる最優先課題として正面から掲げた点に、トランプ政権による新たな安全保障戦略の特徴がある。
 これらの戦略文書で使われている「米国の安全保障」とは、われわれの言葉で言えば、米帝の世界的・地域的な覇権の維持のことである。そのために別の大国として存在する中国やロシアとの国家間の争闘に勝ち抜くことが、米帝の世界的・地域的な覇権の維持のために死活的な利害がかかった問題であることをトランプ政権は直截に打ち出した。ただしそれは、トランプの個性がそうさせているというような問題ではない。例えば、トランプが批判するオバマ前政権もまた、中国への軍事的な包囲と圧力の強化のために、米海軍兵力の60%をアジア太平洋地域へと振り向けるという「再均衡戦略」を採用してきた。資本主義の不均等発展にともなう歴史的没落に直面するなかで、米帝支配階級がその現実に抗い、何としても世界と地域における覇権を維持しようとしていることを背景にして、中ロ、とりわけ世界的・地域的大国としての台頭を続ける中国との競合に勝ち抜くことを正面から掲げるトランプ政権の安全保障戦略が登場しているのである。
 かつて、一九九〇年を前後するソ連・東欧のスターリン主義政権の崩壊を受けて、米帝は「資本主義の勝利」を喧伝するとともに、「新世界秩序」の形成をうたい、二度のイラク侵略戦争を通してその秩序に歯向かう国家・勢力を抑圧・鎮圧し、圧倒的な軍事力を背景に世界的覇権を握る「唯一の超大国」として振る舞ってきた。
 しかし、帝国主義間対立の強まり、二〇〇八年の米国発の世界金融恐慌の勃発として現れた新自由主義グローバリゼーションの破たん、中国をはじめとする諸国の経済的台頭、そして根底的には世界各地での労働者人民による反米帝抵抗闘争の持続と拡大の中で、米国は帝国主義的・資本主義的世界秩序を編成するためのその経済的・軍事的な力を減退させてきた。オバマ前大統領が「米国は世界の警察官ではない」と述べたのは二〇一三年のことであった。
 トランプ政権の安全保障戦略、あるいは「米国を再び偉大な国にする」というスローガンとともに推進されている「米国第一主義」の諸政策は、このような米帝の歴史的没落のすう勢をなんとかして押しとどめようとするあがきである。トランプ政権はそれを「力による平和」(国家安全保障戦略)という言葉に示してきたように、軍事力のさらなる増強を軸におし進めようとしている。しかし、それを裏打ちするための米国の経済力は減退を続けており、それゆえ、その政策は極めてアクロバティックなものとなり、米帝の内的矛盾をますます深めていかざるを得ない。
 今日、米帝による中国への対決姿勢はますます深まっている。現職の副大統領であるペンスが昨年一〇月にハドソン研究所で行った「トランプ政権の対中政策」と題する演説は、それを端的に示すものであった。ペンスはそこで、中国が様々な手段を通じて米国内に浸透し、米国の内政に介入しているなどとして、「中国の脅威」を前面に押し出し、米中関係の歴史を振り返りつつ、政治、貿易・経済、安全保障、人権など広範囲にわたる体系的な中国批判を展開した。
 さらに、一一月のアジア歴訪中の日本での記者会見においては、「独裁政治と侵略は、インド太平洋地域に居場所はない」と強調した。
 こうした米帝の動向は、それが歴史的な背景を持つものであるがゆえに、とりわけアジア太平洋地域を舞台にして、政治、経済、軍事をはじめとするあらゆる分野における覇権をめぐる対立・競合を拡大させ、この地域の労働者人民に大きな影響を与えていくものとなる。

 ●第2章 アジア太平洋をめぐるトランプ政権の動向

 では、米帝―トランプ政権のこのような安全保障戦略、あるいは、中国(およびロシア)との世界的・地域的覇権をめぐる対決・競合は、どのような政策として現れ、労働者人民にいかなる影響を与えているのだろうか。アジア太平洋地域を中心にして、その主だった特徴を見ていこう。
 第一に、すでに周知のものとなっている、中国を第一の対象とした「貿易戦争」の発動である。それは昨年七月の米国による知的財産権侵害を理由にした中国からの輸入品約三四〇億ドル(約三兆七〇〇〇億円)相当に対する25%の追加関税措置の発動と中国による同規模の報復関税措置、八月の米国による中国製品約一六〇億ドル(約一兆八〇〇〇億円)相当に対する追加関税措置(25%)の発動と同じく中国による報復関税措置として本格化してきた。
 それは世界の株式市場の乱高下を引き起こしつつ、一様ではないが他国の経済へも直接的・間接的な影響をもたらしている。日本企業も対中輸出を減少させてきた。またそれは、当の米国にとっても自動車やハイテク製品など様々な産業、とりわけ農業分野において大きなマイナス影響をもたらしている。
 九月に発動された第三弾の総額二〇〇〇億ドル(約二二兆五〇〇〇億円)の関税措置(10%)は現在まで凍結されているが、この「貿易戦争」が単なる貿易不均衡の是正の問題にとどまらず、人工知能(AI)や次世代通信規格「G5」など先端技術の世界的な市場支配をめぐる覇権争いである点に問題の深刻さが存在している。
 われわれは、もとより米国・トランプ政権と中国・習近平(シー・ジンピン)政権どちらに理があるかとか、保護貿易と自由貿易のどちらを選択するかというように問題を立てるわけではない。新自由主義グローバリゼーションが肥大化させた資本主義の矛盾の中でこのような事態が生み出されており、問われているのは資本主義体制の根本的な変革だからである。
 その上で、見ておかねばならないのは、このようなトランプ政権の動向が、帝国主義を中心とした世界支配体制に亀裂をつくり、資本主義世界体制とその統一的世界市場に混乱と動揺をもたらしており、それはいっそう深まっていかざるを得ないということである。「米中貿易戦争」に代表される帝国主義および中ロなど大国の間の相互対立の深まりは、国際情勢をいっそう不安定なものにすると同時に、そのなかから既存の支配秩序の根底的な変革をめざす労働者人民の闘いを各地で前進させていくだろう。
 第二に、地域覇権をめぐって打ち出されている「自由で開かれたインド太平洋」戦略(あるいは構想)である。それは、インド洋とアジア太平洋にまたがる地域における貿易・通商および安全保障上の秩序を、米国・日本・インド・オーストラリアの四カ国を中心にして形成するというものである。その地理的範囲などに多少の違いはあるが、日本もまたこの概念を共有しており、安倍政権は二〇一六年八月のアフリカ開発会議から、トランプ政権は二〇一七年一一月のAPEC首脳会談からこの言葉を採用してきた。それに伴って、トランプ政権は太平洋軍から「インド太平洋軍」への名称変更をも行っている。
 この「戦略/構想」の大きな目的が、中国が進める「一帯一路」構想に対抗し、この地域における自らの経済的な影響力を拡大していくことにあるのは明らかである。トランプ政権はその発足当初、「米国第一主義」の立場から、他国への開発支援予算を大幅に削減した。しかし、中国への対決姿勢を強める中でそれを転換し、規模も大きく拡大して、インフラ整備などこの地域への開発融資のために約六〇〇億ドル(八兆円)を支出することを決定している(日本も約一〇〇億ドルを提供する)。
 同時にトランプ政権は、中国の海洋進出をけん制する南中国海での「航行の自由」作戦を継続しつつ、米日豪や米日印による政治的・軍事的連携を進めてきた。三国合同軍事演習も拡大している。しかし、中国との対立をより鮮明にする四カ国がそろったかたちでの首脳会談や本格的な合同軍事演習は、自国の対中関係に配慮するインドやオーストラリアの消極性から今日まで実施されていない。
 また、この「自由で開かれたインド太平洋」戦略は、多国間協定を嫌うトランプ政権の「米国第一主義」ゆえに、地域全体を包括する経済圏構想を伴っていない。この「戦略/構想」が米日の思惑通りに進むのかは不透明だが、はっきりしていることは、地域の経済覇権をめぐるこうした米(日)帝国主義の動向が、この地域の労働者人民に対するさらなる搾取と収奪、抑圧をもたらすものだということである。
 第三に、海洋戦力(水上艦や潜水艦、航空機など)をはじめとする大幅な軍事増強とそのための軍事予算の拡大である。米国の二〇一九会計年度(一八年一〇月~一九年九月)の軍事予算は総額七一六〇億ドル(約七八兆円)で、前年度比で13%増加し、過去九年間で最大規模に達した。海軍の艦艇建造費用および陸海空軍・海兵隊それぞれでの航空機の調達費用が軍事費を大きく押し上げた。トランプ政権が今年三月に示した二〇二〇会計年度予算案では、国防予算のさらなる拡大(前年度比5%増)が提起されている。中ロとの国家間対立を主軸に置く安全保障戦略が、軍事費の肥大化をもたらしているのである。
 また、昨年二月に発表された「核態勢見直し」や今年一月発表の「ミサイル防衛見直し」においても、そのような方向性が貫かれている。「核態勢見直し」においては、中国とロシア、さらに朝鮮民主主義人民共和国とイランを「脅威」として名指ししつつ、新たな小型核兵器の開発や核弾頭を搭載した海洋発射巡航ミサイル(SLCM)の再配備を表明してきた。また、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約の破棄は、同時に中国への対抗を念頭に置いた中距離核ミサイルの開発へと道を開こうとするものである。
 「ミサイル防衛見直し」においては、米国内でのミサイル迎撃態勢の増強とともに、中ロが開発を進める超音速兵器への対処を強調し、宇宙空間におけるミサイル迎撃態勢の確立に向けた研究の加速など、宇宙の軍事利用をさらに拡大していこうとしている。米国を中心とした「ミサイル防衛」体制の拡大・強化は、青森県車力に続く京丹後へのXバンドレーダーの配備、韓国・星州におけるTHAAD配備、萩や秋田へのイージス・アショア配備策動(米軍と自衛隊の「ミサイル防衛」システムは統合運用される)など、このかん東アジアの軍事緊張を高める大きな要因のひとつとなってきた。さらに、米軍の新型レーダーを日本に配備する計画も報道されており、トランプ政権の下で東アジアにおける「ミサイル防衛」体制はますます強化されようとしている。
 第四に、このような米国の東アジアにおける軍事態勢の増強が、同盟国による米軍駐留経費の負担増や米国製兵器の大量購入の要求を伴って進められていることである。
 安倍政権がオスプレイやF35ステルス戦闘機、イージス・アショアなど、米国製の高額兵器を大量に購入し続けていることは周知の事実である。米国政府の「対外有償軍事援助」(FMS)を通した日本の米国からの兵器の購入額は、第二次安倍政権の発足以降急増し、今年三月末に成立した二〇一九年度予算では七〇一三億円に達した。二〇一二年まで比較すると約五倍の膨張である。
 トランプ政権はまた、韓国に対しても武器の購入や米軍駐留経費の大幅な負担増を迫ってきた。今年二月に合意がなされた二〇一九年の駐韓米軍の駐留経費について、韓国側は前年比8・2パーセント増の約一〇億ドル(約一〇二〇億円)を負担することとなった。
 台湾についても、定期的な武器売却を米国内法で法制化し、直近ではこの四月にF16戦闘機の操縦訓練プログラムなど総額五億ドル(約五六〇億円)の売却を決定している。これはトランプ政権下での台湾への三度目の武器売却となる。それが台湾海峡をめぐる中国との軍事緊張を拡大させるものであることは明らかだ。
 肥大化する軍事費は、軍産複合体に巨大な利益を与える一方で、米国の国家財政赤字をいっそう拡大させる大きな要因のひとつとなっている。トランプ政権はそのツケを大量の武器売却を通して他国の労働者人民に押し付けようとしているのである。

 ●第3章 強化される自衛隊の海外展開と侵略部隊化

 外務省がまとめた昨年版の「海外進出日系企業実態調査」によれば、二〇一七年一〇月一日時点で海外に進出している日系企業(現地法人を含む)の総数は、七万五五三一拠点であった。前年より三七一一拠点(約5・2%)の増加であり、過去最多を更新した。日本企業の海外進出は傾向的に増加を続けており、過去五年間で約18%増加している。
 国別で見れば中国(全体比約43%)を筆頭に、米国(約11%)、インド(6・4%)と続くが、地域別にみればアジアが全体比の約70%(五万二八六〇拠点)と、第二位の北米地域(約12%)を大きく引き離している。アジアにおいては、中国、インドに続いて、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンの順となっている。また、日系の現地法人ではなかったとしても、グローバルに広がる「サプライ・チェーン」(部品などの供給網)のなかで、日本企業の活動がアジア諸国の現地企業と密接な結びつきをもっていることも非常に多い。
 もちろん個々の拠点の規模の違いなどもあり、単純に拠点数だけで考えることはできないが、いずれにせよ日本の海外権益の多くがアジア地域に集中している。その事実が、日帝ブルジョアジーがその総意として、自衛隊の海外派兵体制―侵略反革命出動体制の構築を要求してきたことの経済的背景にある。すなわち、これら膨大な海外権益を自らの軍事力およびそれが強める政治的影響力をもって守り抜くこと、あるいは、必要とあればどこへでも自衛隊を派兵することができるような政治的・法的・軍事的な体制をつくりあげることに、帝国主義間競争の生き残りをかけた日帝ブルジョアジーの階級的利害が存在してきたのである。
 このような日帝ブルジョアジーの階級的要求を根底において、一九九〇年代以降、歴代の自民党政権は、日米軍事同盟の下で、在日米軍基地を維持・強化し、米帝のアジア軍事戦略をできるかぎり補完しつつ、自衛隊の海外派兵体制―侵略反革命戦争出動体制の構築を推し進めようとしてきた。憲法九条改悪を頂点にした現在の安倍政権の策動も基本的にはこの枠組みの内にある。
 ただし、現在の安倍政権において特徴的なことは、米帝の要求により積極的に迎合し、中国との対峙・対決を強めるトランプ政権の新たな安全保障戦略を利用して日米の軍事一体化を格段と飛躍させ、その下で自衛隊の侵略部隊化を徹底的におし進めていこうとしている点にある。
 昨年一二月に発表された新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(二〇一九~二三年度)で示された、F35ステルス戦闘機、E―2D早期警戒機、イージス・アショアなど米国製兵器の大量購入や、いずも型護衛艦の空母化などは、装備や部隊運用における日米両軍の軍事一体化、共同作戦体制をますます加速させる。同様に、「宇宙・サイバー・電磁波」などの「新たな領域」における軍事能力の獲得も、あらかじめ米軍との連携・協力が想定されたものであり、それはこの四月の日米2+2でも確認された。
 さらに、辺野古での新基地建設策動に加えて、「島嶼防衛」を口実にしてこのかん進められてきている奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島への陸上自衛隊のミサイル基地と関連部隊の配備・増強は、米軍が中心となった中国への軍事的な包囲・けん制体制を補完するものである。そして、このような米軍との軍事的一体化の推進が、同時に自衛隊の侵略部隊化をいっそうおし進めるものとなっているのである。
 加えて、自衛隊の海外展開に関しては、海上自衛隊の艦隊の南中国海への派遣や実戦的訓練が強められている。昨年九月には潜水艦「くろしお」と護衛艦「かが」などによる初めての南中国海での対潜水艦戦を想定した演習が実施された。中国に対する軍事的けん制の一環であり、それをエスカレートさせるものである。
 そうした文脈の中で、安倍政権はオーストラリアの軍事協力や合同演習を拡大するとともに、このかん海上自衛隊の潜水艦や護衛艦によるフィリピンやベトナムなどへの寄港を進めてきた。とりわけ、フィリピンとの間では、米比合同軍事演習への自衛隊の参加に加えて、沿岸警備艇や自衛隊の装備品の有償・無償での供与など軍事的関与が強められてきた。水面下では自衛隊のフィリピン駐留に道を開く日比地位協定の締結に向けた策動が続いており、日帝はフィリピンを東南アジアへの軍事的侵出の橋頭保としようとしている。
 自衛隊の活動範囲はますます広がっている。先に触れた南中国海での対潜水艦戦演習を発表した際に当時の防衛大臣小野寺が述べたように、今日では自衛隊の展開は、東中国海や南中国海から、さらにインド洋、アフリカ沖にまで至っている。アフリカ・ジブチには二〇一一年以来、自衛隊初の在外基地が設立されており、さらに二〇一五年に強行制定された新安保法制を適用したかたちで新たにエジプト東部・シナイ半島での多国籍監視軍への陸上自衛隊員の派兵が狙われている。
 安倍政権による改憲策動は、このようにして実態的に進められている自衛隊の侵略部隊化と海外派兵体制の拡大を正当化し、日本帝国主義による侵略反革命戦争出動体制を名実ともに確立しようとするものだ。戦争総動員体制の構築に向けた階級支配の全面的・反動的な再編を伴って進められるこの策動は、さらに広範な日本の労働者人民の抵抗を引き起こす。同時に、このような安倍政権の策動は、アジア人民の憤激を呼び起こし、拡大させていくものである。かつての日本帝国主義によるアジア侵略戦争・植民地支配への謝罪も犠牲者への賠償もないままに、戦争国家化を推進する日本帝国主義の動向に、アジア人民の怒りが広がるのは当然であり、アジア諸国の政府もそれを無視することはできない。
 安倍政権は今日、韓国での徴用工裁判判決に対する対応にも見られるように、日帝の侵略戦争・植民地支配の責任を完全に居直り、中国や朝鮮民主主義人民共和国に加えて、韓国への排外主義をも煽動し、そのことで韓国政府とさえも対立を深めている。
 われわれは強まる排外主義煽動と対決し、安倍政権を打倒して、改憲―侵略反革命戦争体制の確立に向けた日帝の野望を打ち砕くために全力で闘っていかねばならない。

 ●第4章 反帝国際共同闘争のさらなる前進を

 これまでアジア太平洋地域、とりわけ東アジアを舞台にした日米帝国主義の動向を見てきた。それは別の角度から見れば、昨年来の朝鮮半島情勢の平和局面への転換を切り拓いてきた韓国の労働者人民を先頭とする闘いのもつ意義の大きさをあらためて確認させるものでもある。
 その闘いは、自主的平和統一、朝鮮半島での戦争の終結、朝鮮半島全体の非核化への朝鮮南北の共同の努力を謳う「板門店宣言」へと結実した。そして、第一回朝米会談を挟んで、「平壌共同宣言」および南北の軍事的敵対関係を除去するための具体的な措置の実施に向けた「軍事分野履行合意書」へと発展した。同時に、「ウルチ・フリーダム・ガーディアン」や「キー・リゾルブ/フォール・イーグル」という大規模な米韓合同軍事演習を実際に中止させた。
 第二回米朝首脳会談が合意に至らず終了するなかで、われわれは、日米帝国主義のアジア支配を打ち砕くという実践的立場から、南・北・在外の朝鮮人民の歴史的な努力と苦闘の上に切り拓かれた地平を守り発展させていくために、全力をあげて闘っていかなくてはならない。
 すなわち、朝鮮戦争を公式に終了させる平和協定の締結、米日韓の合同軍事演習の全面的な中止、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁解除と米朝・日朝国交正常化の実現、そして朝鮮半島およびアジアからの米軍の総撤収の実現に向けた闘いをおし進めていくことである。それはまた、今日も「未完のろうそく革命」の完遂のために闘い続ける韓国の労働者人民と固く連帯するわれわれの実践的任務である。
 また、新自由主義政策と人民抑圧を進める反動的政権に対して、フィリピンやインドネシアなどにおいて、国家権力による激しい弾圧と対峙しつつ、労働者人民の闘いが持続し拡大している。台湾においても労働基準法改悪など新自由主義政策に対する激しい闘いが行われてきた。これらアジア各地の労働者人民の抵抗闘争に対する連帯をつくりだし、発展させていかねばならない。あわせて、トランプ政権の差別排外主義や他国への軍事介入に反対して闘う米国の労働者人民との反帝国主義にもとづく相互連帯を発展させていくことも重要である。
 われわれは、いまや東アジアにおける反動の牙城と化した安倍政権の打倒に向けた全人民的政治闘争をおし進めるとともに、日本階級闘争とアジア階級闘争との結合を発展させ、この地域の労働者人民による反帝国際共同闘争のさらなる前進をかちとっていかねばならない。その当面する課題について、とりわけ日本の労働者人民の国際主義的任務との関係で、いくつか挙げておきたい。
 第一に、日米帝国主義のアジア軍事支配の強化に反対する反戦・反基地・反核の国際共同闘争を推進していくことである。切り拓かれてきた朝鮮半島情勢の平和局面を守り発展させていくための課題については先に述べた。さらに、日米帝国主義が「中国の脅威」を口実にして、「ミサイル防衛」体制の拡大を含めて東アジアにおける軍拡を進めようとしているなかで、東アジア全体の反戦平和闘争の前進を共同でかちとっていくことである。
 改憲を阻止し、安倍政権を打倒することは、この闘いにおけるわれわれの国際主義的任務に他ならない。さらに、沖縄と日本「本土」における反基地運動を韓国でのTHAAD撤去闘争をはじめとするアジアでの反基地・反米軍闘争と結びつけ、反基地国際共同闘争の前進を勝ち取っていこう。
 第二に、今年六月末に開催予定のG20大阪サミット粉砕闘争を国際共同闘争として成功させることである。新自由主義グローバリゼーションの行き詰まりのなかで、ますます深まる帝国主義および中国やロシアなどの大国による相互の対立と競争は、世界各地の労働者人民にさらなる災厄をもたらそうとしている。そのような世界と社会の変革を希求するアジア・世界の労働者人民と連帯する国際共同闘争として、反帝国主義、反新自由主義を鮮明にしてG20大阪サミット粉砕闘争の成功をかちとろう。
 第三に、アジア各地の労働運動との連帯、とりわけ日系企業下での労働者の闘いへの連帯を進めていくことである。実際にアジアに進出した日系企業下での労働争議は、数多く存在している。それは日本資本の横暴さ、現地の労働者に対する過酷な搾取と抑圧の実態を暴露している。この領域での闘いを推進し、アジアにおける労働運動の相互連帯と日本における階級的労働運動の国際主義的発展を勝ち取っていこう。
 第四に、日帝―安倍政権による侵略戦争・植民地支配の責任の居直りを許さず、日本軍性奴隷制度被害者や元徴用工をはじめとするアジア各地の被害者たちに対する日本政府による明確で公式な謝罪と国家賠償を実現するための闘いである。
 アジア各地の人民は、被害当事者を先頭にして日帝の蛮行を告発し、闘いに立ち上がってきた。歴史歪曲と排外主義煽動を許さず、日本政府に謝罪と賠償を実現させることは、日本階級闘争の歴史的・階級的な総括をかけた実践であり、日本の労働者人民の国際主義的責務に他ならない。
 二〇年を越えてアジア人民による具体的な国際連帯・共同闘争を発展させてきたアジア共同行動(AWC)の闘いを支持しつつ、反帝国際共同闘争の更なる前進を共に実現しよう。


 

 

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