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■安倍改憲を阻止するために 高城誠一 闘う仲間の皆さん!われわれは『戦旗』一五二七号(二〇一八年六月五日発行)において、自民党改憲推進本部の改憲案への批判を提起した。これに引きつづいて、本論文では安倍改憲を阻止するための闘いの基調を提起していきたい。 ●1章 安倍改憲プランと自民党改憲推進本部の改憲案 安倍のそもそもの改憲プランは、今年の通常国会に自民党改憲案を提起、衆参両院の憲法審査会での審議を行い、秋の臨時国会で改憲発議を行う。そして、来年の適切な時期に国民投票を実施し、二〇二〇年に改悪憲法を施行するというものであった。来年は、三月末ごろまでの国会での予算案の審議が終了したあと、政治日程が立て込んでいる。五月一日前後の「天皇代替わり」式典、六月二八日・二九日の大阪でのG20首脳会談、七月の参議院選挙などである。七月の参議院選挙において自民党・公明党・日本維新の会などの改憲勢力が三分の二の議席を維持できる保障はない。したがって、安倍政権にとってはどんなに遅くとも来年の通常国会において改憲の発議を強行することがデッドラインなのだ。そして、来年の政治日程を考慮すれば、今年秋の臨時国会が改憲発議をめぐる大きな山場となる。 しかし、この安倍の改憲プランはもはや破綻寸前である。森友・加計問題や自衛隊日報問題をめぐって、公文書の隠蔽や改ざん、虚偽答弁などが次々と明らかにされ、政権の余りにも酷い実態が暴露されてきた。このような中で、自民党は本年の通常国会に改憲案を提案することができず、衆参の憲法審査会において改憲案の審議を開始することができなかった。また、改憲発議の前提となる国民投票法の改定も臨時国会に先送りされた。まさに改憲をめぐっては、安倍政権は土俵際まで追い詰められているのだ。だからこそ、九月の自民党総裁選挙で安倍が三選されるならば、自民党は無理やりにでも秋の臨時国会での改憲発議に突き進もうとするであろう。 自民党改憲推進本部がまとめた改憲案は、第九条の改悪、緊急事態条項の新設、参議院の合区の解消、教育の充実という四つである。その中で安倍政権と自民党が何としても実現したいのは、言うまでもなく第九条の改悪と緊急事態条項の新設にある。ここで改めてこの改憲案の危険性を再確認しておきたい。 現日本国憲法の原則は、主権在民、平和主義、基本的人権の尊重にあると言われている。平和主義は、憲法前文と九条を中心に規定されており、前文と九条は一体のものである。そしてまた、憲法全体を貫いて軍隊の統帥権、軍事裁判所、戦時を想定した国家緊急権などおおよそ戦争と軍隊に関連する条項がまったく存在していない。この平和主義が、日本を二度とアメリカに反抗できないように武装解除するという当時の連合国最高司令部(GHQ)の意向の反映であることは事実である。しかし、重要なことは次のことにある。日本の民衆にとって、この平和主義はかつてのアジア侵略戦争の反省にもとづき、二度と戦争はしないというアジア民衆への誓約であるということだ。 改憲推進本部の改憲案は、現九条の第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持と交戦権の否認)をそのまま残したうえで、「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」という条項を自衛隊の根拠規定として付加するというものである。安倍政権は、現憲法九条1項・2項はそのまま改憲案でも残っており、自衛隊を憲法に明記するだけで、自衛隊の役割などは変わらないと説明してきた。しかし、それは「後法優先」の原則からしてまったくのウソなのだ。 この改憲案は第一に、自衛隊は憲法違反だという批判を封殺し、自衛隊を憲法上正当化するものである。歴代の自民党政権は、国は固有の権利として個別的自衛権・集団的自衛権を保持しており、「自衛のための必要最小限度の実力の保持」は禁じられていないとして自衛隊の増強をすすめてきた。改憲案は今や世界第四位の軍事力を持ち、集団的自衛権の部分的な行使まで可能となった自衛隊を憲法上正当化する。改憲案は第二に、自衛隊を「必要最小限度の実力組織」としてきたこれまでの政府の規定を改憲案から削除することによって、自衛隊の際限のない増強を可能とするものである。改憲案は第三に、集団的自衛権の全面的な行使に道をひらくものである。安倍政権は、二〇一五年の安保関連法(戦争法)の制定によって、「武力行使の新三要件」に合致すれば集団的自衛権の行使も可能だとした。改憲案は、「武力行使の新三要件」の中の「必要最小限度の実力の行使にとどまるべきこと」という部分を抹消することによって、集団的自衛権の全面的な行使に道をひらくものである。以上から明らかなように、改憲案は現憲法の九条を死文化させ、自衛隊の海外における武力行使を大きく拡大することを可能とする危険きわまりないものなのだ。 改憲案のもうひとつの焦点である緊急事態条項の新設は、「国家緊急権」に関する条項を新たに設けるものである。「国家緊急権」はそもそも主権在民、平和主義、基本的人権の尊重という現憲法の原則と対立するものであり、緊急事態を理由として政府によるこれらの原則の侵害を正当化するものである。ナチスは、ワイマール憲法第四八条(大統領緊急命令)を利用して独裁政権を樹立していった。「国家緊急権」の危険性は、このドイツの経験がはっきりと示している。 改憲案は、「大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるとき」に限定した形で、政府による法律と同等の効力をもつ政令の制定を可能とするものである。現憲法は、憲法・法律の規定を実施するために制定される「執行命令」と法律の委任にもとづいて制定される「委任命令」のみを認めており、政府が法律を根拠とせずに独立に定める命令である「独立命令」を禁止している。それは、主権在民の原則から立法権は国会のみが保持するということからであった。改憲案は、「大規模災害」に限定したものであったとしても、現憲法が禁じる「独立命令」としての政令の制定権を政府に与えるものである。 このような「国家緊急権」の行使が合憲化されるならば、次にはその対象が「大規模災害」への対応から戦争や「テロ」に対する対応にまで拡大されていくことは必至である。そうなれば、政府はこの政令をもって民衆を戦争に強制動員することや言論・表現の自由などの基本的人権を制限することが可能になる。まさに、それは戒厳令に道を開くものだと言うことができる。われわれは、このような「国家緊急権」の設定を絶対に許すことはできない。 秋の臨時国会において、改憲の発議を阻止できるかどうかは改憲阻止闘争のまさに天王山とも言えるものである。総力を結集して改憲発議を阻止するために闘おう。 ●2章 東アジア情勢の歴史的転換と安倍改憲攻撃 戦争の危機のなかにあった東アジア情勢は、大きく転換し始めている。四月二七日に開催された南北首脳会談では、朝鮮戦争の終戦宣言と平和協定の締結、朝鮮半島の完全な非核化、南北の和解と交流をもって南北の自主的平和統一に向かうことなどが合意された(板門店宣言)。この南北首脳会談をうけて六月一二日に開催された米朝首脳会談で「板門店宣言の再確認」が共同声明に明記されたことは、トランプ政権もまた南北首脳会談とその合意内容を追認せざるをえなかったことを示すものであった。そして、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の金正恩国務委員長が朝鮮半島の完全な非核化を約束し、これに対応して米国のトランプ大統領が共和国への安全保障の提供を約束した。また、共和国は非核化に向けた自主的で先行的な措置として核実験と長距離弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を中止し、豊渓里(プンゲリ)の核実験場を破壊した。またトランプは、米朝首脳会談直後の記者会見で米韓合同軍事演習の中止を表明し、毎年夏に実施されてきた米韓合同指揮所演習乙支(ウルチ)フリーダムガーディアンの中止が公表された。 こうして開始された東アジア情勢の転換は、未だ始まったばかりであり、きわめて不安定なものである。その主な原因は、米朝首脳会談において「板門店宣言の再確認」がなされたにもかかわらず、トランプ政権が朝鮮戦争の終戦宣言と平和協定の締結を未だ履行しようとせず、折に触れて共和国の一方的な核・弾道ミサイルの廃棄を迫ってきたことにある。このように不安定なものではあるが、東アジアにおける戦争の危機はいったん回避されつつある。しかし、安倍政権は、東アジア情勢が大きく変化する中においても、自衛隊の増強と海外派兵、憲法改悪をさらに推進しようとしている。このような安倍政権の対応を東アジア情勢の転換を理解できていない時代錯誤なものと見るべきではない。それは、以下のような日米同盟の再編と日本帝国主義の生き残りをかけた国際的な戦略にもとづくものである。 アメリカの深刻な財政的危機のもとで、トランプは日本・韓国・ドイツなどに駐留する米軍の経費を受け入れ国がより多く負担し、米軍の役割を同盟国の軍隊が部分的に肩代わりしていくことを要求してきた。欧州においては、トランプは在独米軍の撤収や移転を検討し始めている。東アジアにおいては、民衆にとっての最大の軍事的脅威が米軍であることは変わらないにせよ、それは共和国・中国・ロシアなどと軍事的に対抗する最前線から米軍が相対的に後退し、自衛隊や韓国軍など同盟国の軍隊への肩代わりを進めていくことを意味する。トランプが米朝首脳会談の直後に米韓合同軍事演習の中止を表明し、将来的な在韓米軍の撤収を示唆したことはその表れである。 このようなアメリカの要請に対応して、歴代の日本政府は米軍と一体化する自衛隊による米軍の肩代わりを推進し、日米軍事同盟は大きく再編されつつある。日米両国政府は二〇〇五年一〇月、「日米同盟:未来のための変革と再編」に合意した。この日米合意では、日米両軍の一体化の推進を前提としつつ、南西諸島を含む日本とその周辺の防衛は自衛隊が主要に責任を負い、米軍はその支援を行うという方向が明示された。日米同盟においては、昨年のワシントンでのシンポジウムで元自衛隊陸上幕僚長の岩田清文が明らかにしたように、東アジアの有事においては九州・沖縄からフィリピンへと至る「第一列島線」の防衛を主要に自衛隊が担い、米軍はグアムなど「第二列島線」まで後退するという計画が検討されてきた。そうなれば、自衛隊は東アジアにおける戦争の危機においては最前線に立ち、米軍とともに「東アジアの警察官」の役割を担うことを迫られる。まさに米軍と一体化する自衛隊が、東アジアの民衆に銃口をむける時代が始まるのだ。 日本の独占資本・多国籍資本にとっては、これらは東アジアにおける日本の海外権益(土地・工場・農地・鉱山・市場など)を自らの軍事力でもって防衛し、民衆の闘いを鎮圧することができる帝国主義へと飛躍していくという目的に貫かれたものである。日本の東アジアにおける海外権益は飛躍的に拡大してきた。二〇〇五年に一六一億八八〇〇万ドルであった東アジアへの直接投資は、二〇一七年には三八二億六六〇〇万ドルに増加した。対外直接投資残高では、二〇〇五年の八八一億八七〇〇万ドルから二〇一七年の四二七三億四五〇〇万ドルへと急増している。東アジア諸国の低賃金労働者の搾取・収奪を基礎とした生産拠点の海外移転が加速し、とりわけASEAN諸国は日本資本主義の生産構造に組み込まれてきた。これらのばく大な直接投資は、東アジア諸国の反人民的政権の協力によって可能となってきたものであった。これらの諸国での政変や民衆の闘いによって、日本の海外権益が脅かされることは日本の存亡にかかわる事態となる。また東アジアにおける中国の影響力の拡大もまた、日本の海外権益を不安定化させる。それゆえ日本帝国主義は、共和国に対する軍事的包囲と圧力を維持しつつ、中国と対抗して東アジアにおける経済的・政治的支配力を強化し、必要な時にいつでも武力を行使できる準備を急いできたのだ。 米韓合同軍事演習の中止と在韓米軍の撤収を示唆したトランプ発言に対して、小野寺防衛大臣はただちに危惧を表明し、安倍政権はこの動きをおしとどめようとしている。それは、圧倒的な軍事力を保持する米軍の肩代わりを自衛隊がただちに行うことはできないからである。しかし、朝鮮戦争を終結させる平和協定が締結され、共和国の核とICBMの廃棄が実現されるならば、共和国はアメリカにとって直接的な軍事的脅威ではなくなり、現在の規模の在韓米軍を維持する根拠は弱化する。このような事態をも想定して、日本政府は自衛隊の本格的な海外派兵の準備を加速していくであろう。 このような日本帝国主義にとって、憲法改悪はもはやこれ以上先送りできない決定的な課題となっている。安倍政権は、二〇一五年の安保関連法制定によって、集団的自衛権の行使を可能とした。しかし、それは現憲法九条による制約から、日本が「存立危機事態」に直面した場合に限って、「必要最小限度の実力の行使」が可能だとするもので、きわめて制限されたものである。そして、自衛隊による武力行使も、「専守防衛」の枠内での個別的自衛権もとづく日本の防衛と米軍の「後方支援」にほぼ限定されてきた。このような憲法上の制約のもとでは、いかに「解釈改憲」を積み重ねようとも米軍の肩代わりや海外での武力行使には大きな限界がある。安倍政権はこの制約を取り払い、自衛隊と米軍の一体化と米軍の肩代わりを推進し、海外での武力行使と集団的自衛権の全面的な行使を実現するために、何としても憲法改悪を強行しようとしているのである。 ●3章 反改憲闘争を日帝打倒に向けた闘いへ 反改憲闘争は、現憲法の条文が守られればよいとする闘いではない。日本帝国主義にとって憲法改悪は、改憲それ自身が目的なのではない。憲法改悪は、米軍の肩代わりと集団的自衛権にもとづく自衛隊の海外での武力行使を推進し、日本を戦争国家化していくという目的のための手段である。だからこそ、反改憲闘争はそのような日本帝国主義の目的そのものと全面的に対決するものでなければならない。すなわち、反改憲闘争を通して集団的自衛権にもとづく自衛隊の海外派兵と日本の戦争国家化を阻止する労働者人民の闘いを大きく発展させ、自衛隊の銃口を向けられていく東アジアの労働者人民との国際連帯を強化し、日本帝国主義の打倒に向かう水路を切りひらいていくような闘いとして反改憲闘争を組織していかねばならないということなのだ。闘う労働者人民の反改憲闘争の旗印は、プロレタリア国際主義と自国帝国主義の打倒にある。このような立場から、反改憲闘争を発展させていくための実践的課題について提起していきたい。 その第一は、東アジアの平和に向けた闘いと反改憲闘争をしっかりと結合させていくことにある。安倍政権は、「北朝鮮の脅威」「中国の脅威」を口実として「日本を守りぬく」と排外主義を煽り、集団的自衛権の行使や自衛隊の海外派兵を推進してきた。すなわち、安倍政権が前提としてきた東アジアとは、中国・朝鮮と日米両国が激しく軍事的に対立し、いつ戦争が発生するかわからないような戦争の危機に覆われた東アジアである。米朝首脳会談の終了後も安倍政権は、「北朝鮮は核兵器とICBMの廃棄をまだ何も実行していない」と非難し、また「日本にとっての重大な脅威は日本を射程に入れる北朝鮮の中距離弾道ミサイルだ」と唱えてきた。そして、東中国海・南中国海における中国の軍事的脅威の増大に対抗しなければならないと唱えてきた。安倍政権はこのような情勢認識を根拠として憲法改悪を正当化してきた。その延長上にあるものは、労働者人民の平和的生存権が脅かされ、他国の労働者との殺し合いである戦争へと強制的に動員されていく未来である。 このような戦争の危機に覆われた東アジアのあり方そのものを拒否し、東アジアの真の平和を実現するために闘わねばならない。それは、日本の労働者人民にとって、自らの人生と未来をどのような東アジアのなかにおいて展望していくのかという選択なのだ。そして、東アジアの平和は誰かが与えてくれるものではなく、労働者人民が自らの闘いによってつくりだしていかねばならない。だからこそわれわれは、東アジアの平和に向けた闘いと反改憲闘争を一体の闘いとして提起していかねばならないのである。東アジアの平和のための国際的な民衆の課題ははっきりとしている。朝鮮戦争を終結させる平和協定の締結と朝鮮半島の非核化、米韓合同軍事演習・日米合同軍事演習の中止と在韓米軍を含む米軍の東アジアからの総撤収を実現しなければならない。また、米軍とますます一体化し、東アジアの民衆に銃口を向けようとしている自衛隊の海外派兵を阻止しなければならない。憲法改悪を阻止することは、まさにこのような東アジアの平和の実現と深く結合した闘いに他ならないのだ。 その第二は、辺野古新基地建設など現実に進行する軍事基地の強化、自衛隊の海外派兵や戦争国家化に対決する闘いと反改憲闘争をしっかりと結合させていくことにある。安倍政権のもとで、米軍と自衛隊の一体化と基地の強化がすさまじい勢いで進行してきた。米軍と自衛隊の共同使用を想定した辺野古新基地建設は、いよいよ八月一七日に土砂投入が開始されようとする局面にある。米艦載機移駐などの岩国基地の大強化が強行され、オスプレイの普天間基地・横田基地への配備が実施された。さらに米軍のミサイル防衛戦略の拠点として青森県つがる市車力と京都府京丹後市宇川での米軍Xバンドレーダー基地建設の強化が推進されてきた。また、地上発射式迎撃ミサイル・イージスアショアを陸上自衛隊のむつみ演習場(山口県萩市)と新屋演習場(秋田市)の二カ所を最適候補地として配備しようとしており、南西諸島の石垣島・与那国島・宮古島などに自衛隊ミサイル部隊の配備が推進されてきた。こうして、THAADミサイルの韓国への配備と連動して、南西諸島から日本を覆うミサイル防衛システムが張りめぐらされようとしている。 このような基地強化と結合して、安倍政権は自衛隊に敵基地先制攻撃能力を付与し、自衛隊を海外での本格的な武力行使を担う軍隊へと再編成していこうとしている。日本型海兵隊と呼ばれる水陸両用師団が長崎県佐世保市の相浦駐屯地に設置され、次期防衛力整備計画では沖縄にも水陸両用師団を設置することが計画されている。また、自衛艦「いずも」をF35Bステルス戦闘機を搭載する空母に改造するという計画もすすめられている。このように一部の部隊の海兵隊仕様への転換を含めて海外での本格的な武力行使を可能とする軍隊への自衛隊の全面的な再編が進められていこうとしているのだ。 このような軍事基地の強化、自衛隊の海外派兵や戦争国家化に反対する闘いこそ、反改憲闘争の基礎となるものであり、反改憲闘争に生きいきとした生命力を与えていくものである。この基礎がなければ、反改憲闘争は現憲法の条文を守るという運動に堕してしまう。われわれの反改憲闘争は、そうであってはならない。われわれの反改憲闘争は、集団的自衛権にもとづく自衛隊の海外派兵と日本の戦争国家化を阻止する労働者人民の闘いを大きく発展させ、東アジアの民衆との国際連帯を強化し、日本帝国主義の打倒に向かう水路を切りひらいていくような闘いとして組織されていかねばならないのだ。 その第三は、安倍政権の打倒を掲げた最も広範な全人民政治闘争をつくりだし、これをプロレタリア国際主義・自国帝国主義打倒という旗印のもとに牽引することにある。改憲勢力が衆参両院の三分の二を超えるという状況のもとで、秋の臨時国会において安倍政権が改憲発議を強行する可能性が高い。これを阻止するために、全国各地での闘いを基礎に、国会を巨万の人民によって包囲する全人民政治闘争をつくりだしていかねばならない。われわれはこのような立場から、全国・各地での「安倍改憲NO!全国市民アクション」の取り組みを支持し、その一翼を担ってきた。また、「三〇〇〇万人署名」に協力してきた。 ここにおいて重要なことは、この闘いを国会内での「野党共闘」に政治的にも実践的にも従属させてはならないということにある。小選挙区制を中心とした現在の選挙制度のもとで、改憲勢力が衆参両院の三分の二を超えるという状況を突き崩していくためには、安倍政権による憲法改悪に反対する立憲民主党・日本共産党・社民党などの野党勢力の共闘が不可欠なことは明らかである。しかし、反改憲闘争の主戦場は、あくまでも国会前をはじめとした街頭にある。韓国の「ろうそく革命」では、街頭を埋め尽くす数百万、数千万の民衆の決起によって朴槿恵(パククネ)政権が打倒された。その闘いにおいては、東アジアの平和と朝鮮半島南北の和解や自主的平和統一を求める民族的要求、格差と貧困の拡大や財閥の専横に反対し、新自由主義と対決する労働者の階級的要求、またさまざまな社会的要求が混然一体になって掲げられ、街頭においてこれらの要求や闘いが交流・結合していった。こうして、朴槿恵政権の打倒に至る巨大な闘いのうねりがつくりだされていったのだ。われわれは、この韓国の闘いの経験に学ばねばならない。 安倍政権による「働き方改革」と称する労働法制の改悪に反対し、労働者に貧困と格差、無権利を強制する新自由主義政策との闘い。辺野古新基地建設をはじめとした軍事基地の新設・強化と自衛隊の海外派兵に反対する闘い。原発再稼働に反対し、すべての原発の廃炉をめざす闘い。被差別大衆への差別・抑圧に反対し、その解放をめざす闘い。市東さんの農地の強奪と対決し、反帝闘争の拠点を防衛する闘いなど、全国・各地において安倍政権と対決する無数の闘いが組織されつづけている。憲法改悪阻止という課題を水路として、これらの無数の要求と闘いを街頭において結合させ、安倍政権の打倒に向けた巨万の闘いをつくりだしていこう。そこにおいて労働運動の位置と役割は大きい。資本主義のもとで賃金奴隷という境遇を強いられ、資本によって日々搾取されている労働者階級の自己解放闘争こそが、このような全人民政治闘争の中軸とならねばならない。労働者・労働組合の反改憲闘争への立ちあがりを支援し、排外主義との闘いを促進し、階級的な労働運動の発展を実現していくことは、闘う労働者人民の共通する課題なのだ。 このような全人民政治闘争をつくりだし、プロレタリア国際主義と自国帝国主義の打倒に向けて発展させていくことは、「野党共闘」に期待するべきことではない。「野党共闘」の最大勢力である立憲民主党は、枝野が「自分たちはかつての自民党の宏池会だ」と言うように、保守勢力の中のリベラルな部分(保守リベラル)を代表する党である。この党は憲法改悪や原発再稼働に反対し、新自由主義政策がもたらした貧困と格差の是正を要求することによって安倍政権に反対する民衆の期待を集めてはいるが、日米同盟を外交政策の基軸とし、そのもとでの軍事基地の新設・強化を容認してきた。また、東アジアの平和をめぐっても安倍政権の共和国敵視政策に同調してきた。日本共産党もまた、対米従属論をもって自国帝国主義との闘いを否定し、「野党共闘」を優先させることで保守リベラルの流れへの同調を強めてきた。そして、日米安保の廃棄を全人民政治闘争の主要な要求へとおしあげていこうとはせず、闘いの中で後景化させてきた。これらの諸政党の根本的な欠陥は、日本を帝国主義と規定することを否定し、「北朝鮮の脅威」や「中国の脅威」を口実とした排外主義にとりこまれ、自国帝国主義の打倒に向かおうとはしないことにある。 この局面において問われているのは、労働者人民の闘いを政治的にも「野党共闘」に従属させてはならないということなのだ。すなわち、左派勢力がこれらの保守リベラルの流れと対抗し、安倍政権の打倒をめざす全人民政治闘争をプロレタリア国際主義と自国帝国主義の打倒に向けた闘いへと牽引することにある。首都圏においては、戦争法反対闘争の過程を通して新たな左派共闘が形成され、その努力は着実に拡大してきた。また、これと結合して、青年・学生による国会前でのハンスト・座り込み闘争など突出した闘いも組織され、新たな青年・学生運動の萌芽も形成されてきた。しかし、他の地方では左派共闘の形成は立ち遅れており、また地方によっては共闘の対象となる左派勢力がほとんど存在していないという困難な状況もある。この状況を変革していくためには、首都圏での左派共闘建設をさらに前進させつつ、全国の左派勢力の結集と交流・結合をめざすような努力が積み上げられていかねばならない。われわれ統一委員会は、このような努力を全力で推進する。共に闘わん! |
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