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   ■東アジア情勢の大転換と反帝闘争の課題

  南・北・在外の朝鮮人民と連帯しよう!       国際部


 


 来たる六月一二日にシンガポールで朝鮮民主主義人民共和国(以下「朝」又は「北」と略)と米帝国主義の首脳会談が開催される。朝鮮戦争(一九五〇~五三年)当事国の首脳が、休戦協定を締結してから六五年目にしてついに同じテーブルについて話し合うのだ。
 韓国(以下「韓」又は「南」と略)の文在寅(ムンジェイン)大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮民主主義人民共和国国務委員長が署名した4・27板門店(パンムンジョム)宣言とならんで、同会談は、一九七二年の米中国交正常化を超える激変を東アジアにもたらす突破口になるだろう。情勢の大転回を主導したのは南・北・在外の朝鮮人民だ。日本帝国主義の下にある私たちはその取り組みを支持して国際連帯を強めよう。そして、米日帝の侵略反革命戦争策動と新自由主義政策を通じた覇権主義的野望を粉砕し、自国帝国主義を打倒して、アジア人民とともに情勢の転換を革命的に切り拓いていこうではないか。
 本稿では、まず、「北の核問題」の経緯を振り返る。次に、4・27板門店宣言の意義を再確認する。続いて、米朝首脳会談が成功裏に終わった場合の朝鮮半島情勢の今後を展望する。最後に、私たち日本労働者階級人民の国際主義的な課題は何かを考える。
 本稿は米朝首脳会談以前に執筆されたものだが、朝鮮半島をめぐる情勢認識と闘争課題に関する私たちの基本的見地を示すものである。

 ●1章 「北の核問題」の経緯

 いわゆる「北の核問題」の起点は朝鮮戦争とその休戦、および、南北分断の固定化だ。しかしここでは、朝鮮侵略反革命戦争直前まで行った一九九四年の前後から今までの経緯を大まかに見る。
 八九年に東欧「社会主義」が崩れた。九一年、米帝がイラクを侵略し、ユーゴスラビアが内戦に入り、ソ連が無くなる中、南北は朝鮮半島非核化に関する共同宣言で合意した。九二年、同宣言が発効し、また、北が核査察協定に調印した。だが九三年、北との対話を拒否する南の金泳三(キムヨンサム)政権と関係が悪化し対立が深まり、北が核拡散防止条約(NPT)からの脱退を表明。その後、米朝共同声明が発表され、米朝間の合意がなされて事態は好転した。
 九四年、南のパトリオットミサイル配備計画に北が抗議して国際原子力機関(IAEA)の核査察を拒否。米帝クリントンが北に対する戦争方針を決定。戦争勃発の危機が最も大きくなったが、六月に元大統領カーターが訪朝し、北が核拡散防止条約に留まること、IAEAの核査察の容認、黒鉛減速炉の軽水炉への転換を確認した。これをもとにジュネーブで米朝枠組み合意が結ばれた。同合意は、黒鉛減速炉の凍結解体、米国が北に〇三年までに軽水炉二基を提供する、その一基が完成するまで米が北に重油を年間五〇万トン提供する、というものだ。
 二〇〇〇年、金大中(キムテジュン)大統領が訪朝して南北首脳会談が開かれ、6・15南北共同宣言が発表された。だが〇二年、米ブッシュ政権がイラン・イラクとともに北を「悪の枢軸」と規定し、対北援助を停止。九四年のジュネーブ合意を踏みにじって破産させた。国際的な約束を破ったのは北ではなく米帝だ。〇三年一月に北がNPT脱退を宣言。三月に始まった米帝の第二次イラク侵略戦争が続く八月に、北の核開発に関する六者協議が開かれた。〇五年、六者協議が9・19共同声明を発表した。北は核兵器と核計画を放棄してNPTに復帰する、米は北を攻撃・侵略しない、米朝は国交正常化に向けて努力する、というものだ。だがその直後に米政府がバンク・デルタ・アジアの北の口座の閉鎖を要求。あからさまな声明つぶしだ。北がこれを批判し、米朝関係は一気に悪化。同声明は紙切れになった。国際的な約束をまたしても破ったのは米帝だ。和平に向かう動きをつぶしたのはボルトンに代表される極右エリートだ。北に対して侵略と体制転覆しか考えていない連中が主導する米政府との話し合いによる解決の道は断たれた。
 〇六年、北が長距離弾道ミサイルと短距離ミサイルを発射し、地下核実験を行った。〇七年、六者協議が合意を結んだ。寧辺(ヨンビョン)核施設の活動を停止して封印する、米朝は外交関係確立のため協議を始める、米は北への「テロ支援国家」指定を解除する作業を始める、という趣旨だ。〇八年、北への「テロ支援国家」指定が解除され、また、廬武鉉(ノムヒョン)大統領が訪朝して10・4共同声明が発表された
 〇九年、大統領に就任したオバマは、北が非核化の意思を示すまで交渉しない「戦略的忍耐」政策を八年間続けた。北の体制崩壊を目標とし、軍事的圧力と経済制裁を加え続けて孤立させ、崩壊へ追い込む、北は「嘘つき」で「信用できない」から「一切の話し合い拒否」という共産主義根絶の信念に貫かれた内容だ。ボルトンらの主張と本質的に同じだ。対北政策では米支配階級内のタカ派とハト派に差がない。「金正恩斬首作戦」と銘打ち、体制転覆を目標に掲げた侵略のための米韓合同軍事演習まで例年展開する軍事的重圧の中で、北は〇九年から一七年まで五回、総計六回の核実験、短中長距離および大陸間弾道ミサイル発射の実験、人工衛星の発射を行った。
 一七年、大統領に就任したトランプは戦争挑発暴言を繰り返した。同年五月に成立した文在寅政権は朝鮮半島での戦争は許さないと言いながらも米韓同盟の強固さを反復して米帝の対北政策を全面支持。南独自の制裁まで行った。日本は安倍政権の下で特定秘密保護法(一三年)、集団的自衛権行使「合憲化」(一四年)、戦争法(一五年)、日韓秘密軍事情報保護協定(一六年)、共謀罪(一七年)を成立・決定した。日米軍事一体化と日米韓軍事同盟の急速な進展も加わり、朝鮮半島の軍事的緊張は極に達し、戦争勃発直前の事態になった。
 ところが一八年に入り、情勢は急転回した。南北首脳の新年の辞(一月)、平昌(ピョンチャン)五輪での米朝間の接触と、中止になったが対話の試み(二月)、トランプの米朝首脳会談受諾、金正恩訪中、米国務長官内定者ポンペオ訪朝(以上三月)、米韓合同軍事演習の延期と規模縮小、朝鮮労働党第七期第三回中央委員会全員会議で路線の大転換、南北首脳会談と板門店宣言(以上四月)、米朝首脳会談開催発表、国務長官ポンペオ二度目の訪朝、金正恩訪中、豊渓里(プンゲリ)核実験場閉鎖、トランプが米朝首脳会談中止の公開書簡発表、南北首脳会談、北の談話発表(以上五月)、実務者協議、米朝首脳会談開催の発表、ミサイル試験台の撤去(以上六月)と、事態は猛スピードで動いた(六月八日現在)。

 ●2章 板門店宣言の歴史的意味

 四月二七日に南北首脳会談で発表された「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」は、①今後朝鮮半島で戦争はない、②停戦宣言と平和協定が必要、③朝鮮半島を完全に非核化して共同の繁栄、平和、自主統一を成し遂げる、以上の三点を確認した、歴史的に巨大な歩みだ。私たちは板門店宣言を断固支持する。
 同宣言には南北共同事業として以下の内容が盛り込まれた。第一に南北高位級会談を開く。第二に南北当局者が常駐する共同連絡事務所を開城(ケソン)に設置する。第三に6・15など民族共同行事を行う。第四に国際競技に共同で参加する。第五に離散家族・親戚の面会を八月一五日に行う。第六に「東・西海線の鉄道と道路を連結」する。第七に軍事的敵対行為を全面中止する。第八に「北方限界線」一帯を平和水域にする。第九に将官級軍事会談を五月中に開く。第一〇に「今年終戦を宣言して停戦協定を平和協定に転換」する。
 同宣言の意義は何か。アジア共同行動日本連絡会議声明(二○一八)は次のように言う。「第一に、年内に朝鮮戦争の終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換させることに合意したことにある。(……)第二の意義は、朝鮮半島の完全な非核化を共通の目標として確認したことである。(……)第三の意義は、朝鮮戦争以来の南北の分断と対立の歴史を克服し、和解と共存・繁栄の南北関係をつくりだすことをもって、南北の自主的平和統一に至る道をめざそうとしていることにある。」
 韓国反基地団体の「平和と統一を開く人々」共同代表、高永大(コヨンデ、二○一八)は、板門店宣言を「南北間の合意内容も、以前のすべての南北宣言と合意を集大成したものであると同時に、これをはるかに跳び越える最高峰の宣言であり合意」と極めて高く評価している。そしてその意味が、「何よりも南北首脳が、『朝鮮半島にこれ以上戦争はなく、新しい平和の時代が開かれた』ことを明らかにした」、「南北首脳が朝鮮半島平和協定締結を推進することで合意した」、「『南と北が完全な非核化を通じて核なき朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認』した」、「南北首脳が『地上と海上、空中をはじめとするすべての空間で……敵対行為を全面中止』し、『不可侵合意を再確認し、遵守して』『軍事的信頼が実質的に構築されるにしたがって段階的軍縮を実現していくことに』合意した」、「南北首脳が民族の『共同繁栄と自主統一の未来を操り上げて行く』ことに合意した」点にあるとした。最後に、「このように『板門店宣言』は、朝鮮半島平和時代の開始を告げ知らせ、これを恒久的に強固にするための措置として政治、軍事、経済、社会、文化の各方面で従来の南北合意を生き返らせながらも一歩さらに前進した合意を成し遂げ、自主統一に進もうとする民族的指向を含んでいる」とまとめている。
 板門店宣言を生み出したものは何か。
 それは第一に南の「ろうそく革命」だ。国政を私物化した腐敗政権の退陣を求める六か月間のろうそくの火の海の中から南の現政権は生まれた。李明博(イミョンバク)政権(〇八~一三年)と朴槿恵(パククネ)政権(一三~一七年)はワシントンおよび東京とともに「北の体制崩壊論」=共産主義撲滅が信条で、北との話し合いと交わりを計九年半全て拒んだ。米韓同盟の堅持を掲げながらも、朝鮮半島の非核化と平和構築、そのための北との対話を積極的に打ち出した文在寅でなければ南北首脳会談も板門店宣言もなかった。そして、「ろうそく革命」が起きなかったら彼の大統領当選も危うかった。韓国民衆の巨万の決起が平和・繁栄・統一に向かう道を切り拓いたのだ。
 第二に北指導部による、国家・社会建設における経済と核(軍事)の並進路線から経済建設集中路線への大転換だ。板門店宣言の一週間前に平壌(ピョンヤン)で開かれた朝鮮労働党第七期第三回中央委員会全員会議は、一三年の同会議で決定された「経済建設と核武力建設並進路線」の「偉大な勝利」を確認した。そのうえで、今後の「党の戦略的路線」として、①「全党・全国が社会主義経済建設に総力を集中すること」、②核実験および大陸間弾道ロケット試験発射の停止、③北部核実験場の廃棄を決定した。
 今までに②と③は行われた。朝鮮半島の非核化の先行実施だ。このように決断できた理由は、第一に、米帝に対する自国防衛のための軍事的対抗が米帝の核攻撃と侵略を阻止するに至ったとの判断だ。第二に、反共政府が倒され、「ろうそく革命」とそこから文在寅政権ができたという南の情勢転換だ。
(注:三村光弘(二○一七)は、「韓国銀行が一七年七月に出した北朝鮮の一六年経済成長率の推計結果はプラス3・9%(一五年はマイナス1・1%)だった。筆者が北朝鮮をたびたび訪問して肌で感じる変化からすれば、ここ五年程度は毎年3~7%(韓国銀行の推定ではマイナス1・1~プラス3・9%の間)ぐらいのプラス成長だったように思われる」と述べた。
 北は経済封鎖状況の中でもアベノミクスの日本を上回る経済成長率を記録し続けている。帝国主義がかけ続けている「最大限の圧力」が効いていないのだ。実際、市場が各地に建設され、また、労働者の月給ほどのレンタル料が要る携帯電話を使う富裕層が急増している。)
 第三に、内外の危機的状況にあえぐ米帝トランプ政権にとって、米朝関係の劇的改善が自己保存のための最良のカードになっていることだ。国内ではロシア・スキャンダルと人種差別・女性差別問題を抱え、政治エリートの大多数が北との対話路線に反対または懐疑的だ。トランプの言動は、北及び関係諸国のみならずこの反対派への説得・懐柔・威嚇という性格も持つ。対外的には、十数年後に中国に抜かれて経済規模で世界二位へ転落することに対する焦りがあり、全世界的に仕掛けた貿易戦争は他国の猛反撃と自国内産業への大打撃をもたらしている。ところが、解決策が全く見当たらない。そうした中、米朝首脳会談と朝鮮半島の非核化の実現がトランプにとって今年十一月の中間選挙と二○年大統領選挙に勝利するためのほぼ唯一の切り札となった。トランプはこれに飛びつくしかないのだ。
 第四に、南が仲介者の役割を十全に果たしたことだ。北・米両国の現状をしっかり把握する。次に双方及び中国即ち朝鮮戦争当事国間の連絡・協議を表の外務省ではなく裏の「スパイ・ライン」即ち情報機関が主導して綿密に行う。その内容を首脳が最終確認する――という段取りを韓国政府が作り上げて実行した。留意すべきは、日帝国家権力の外交・情報機関がこの枠組みから完全に外れていることだ。安倍や外相河野及び関係官僚の米帝追随発言と根拠なきデマ暴言がこれを裏打ちしている。国家として「ありえない」醜い日本の惨状は――他省庁の底なしの無政府状態と「共鳴」しているが――、同時に安倍政権の未来を示唆している。
 以上から、「制裁圧力(による経済的困窮)こそが北の態度を変化させた最大要因」という帝国主義者どもの主張は――「北はいつも嘘をついて約束を破り、時間を稼ぐだけだ」との意見とともに――嘘だ。帝国主義こそ嘘つきで非民主主義的だ。北は制裁の中でも日本以上の経済成長率を実現しながら、同時に核実験と大陸間弾道弾を含むミサイル発射実験を連続して行い、軍事的に防御から対峙へ移ったので路線転換を打ち出し、確定したのだ。
 最後に、板門店宣言の前後には北から中国への、および、南から米国と中国への報告が行われた。米中はこれに反対せず、南北首脳会談開催とともに歓迎の意を表明した。承認したわけだ。同宣言は、南北による南北のための共同方針であると同時に、南・北・中・米四か国の共同宣言としての性格も併せ持っている。
 同宣言に盛り込まれた南北高位級会談が六月一日に板門店で開かれ、次のように合意した。①南北共同連絡事務所を開城に開設する。②6・15共同宣言発表一八周年を記念する方策を模索する。③将校級軍事会談を六月一四日に板門店で開く。④南北体育会談を六月一八日に板門店で開く。⑤南北赤十字会談を六月二二日に金剛山(キムグァンサム)で開く。⑥鉄道および道路協力分科会議、山林協力分科会議、共和国の芸術団の今秋韓国公演のための実務会談などの開催を追求する。⑦高位級会談を定例化する。
 このように南北共同事業はかつてない速度で包括的かつ緻密に進んでいる。米朝首脳会談が成功すれば、さらに加速するだろう。

 ●3章 今後の展望

 初の米朝首脳会談はどうなるのか。トランプが「首脳会談は複数回開かれるかもしれない」「大きな取引が起きる」「(朝鮮戦争の)終戦宣言に署名できる」「金正恩を米国に招待する」「対話がうまくいかなければ退席する」等と発言し、成功と決裂の二つの可能性に触れている。巷では二回目の会談が今秋つまり中間選挙前にトランプの別荘で開かれる、最後の会談は二○年秋の大統領選挙前に開催……等々、様々な憶測が飛び交っている。米朝関係の今後の展開を考えてみよう。
 政府当局者の発言とマスコミ報道によれば、北が「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を行い、米国が北に対して「完全かつ検証可能で不可逆的な体制安全保障」を行うという最終目標で米朝はおおよそ一致した。北の完全な非核化は、①核兵器・核施設の申告、②その査察、③その撤去・処理・解体、④関係者の再就職が含まれる。北の体制保障には、①終戦(停戦)宣言、②米朝不可侵条約締結(ポンペオは上院での批准を北に約束)、③米朝連絡事務所の設置、④対北制裁解除、⑤「テロ支援国」指定解除と敵性国交易法適用の終了(これらによりIMFの対北協力と米民間資本の投下が可能になる)、⑤米朝国交樹立、⑦米朝平和協定が含まれる。
 ちなみにハンギョレ新聞(二〇一八)によると、北は米との実務接触の中で、「①米国の核戦略資産の南からの撤収、②米韓戦略資産の訓練中止、③通常兵器及び核兵器での攻撃を放棄、④平和協定締結、⑤米朝国交樹立」を要求し、駐韓米軍の撤収は求めなかった。
 しかし、最終目標に至るまでの段取りで米朝が対立している。米国のいう「包括的かつ一括的な核問題の解決策」と、北の主張である「段階的かつ同時的な処置」の間に溝がある。だが、トランプの「プロセス」発言と「数度の米朝首脳会談開催可能」発言は北の「段階的処理」に歩み寄ったものだ。最終目標に至る所要期間については、トランプの選挙日程を踏まえて大体調整できたようだ。問題は、非核化と体制保障の各段階をどう対応させて進めていくかだ。「先に非核化をして、その後で体制保障」という米帝の主張に変化はないが、それでも朝鮮戦争の終戦宣言は可能との判断をしたようだ。首脳会談の一日延長、もしくは、翌十三日に文在寅がシンガポールに飛び、南・北・米が朝鮮戦争の終戦を宣言する可能性を南の政府が示唆している。首脳会談が成功すれば終戦宣言、さらには最終目標に至るまでの日程表(ロードマップ)が出される可能性が高いだろう。
 経済制裁が解除されるとどうなるか。ポンペオの発言によれば次のようだ。米政府の資金は出さないが、米国民間企業は北に投資できる。それがエネルギー網などインフラを整備し、また、農業が発展する。そして北が南と同じレベルの繁栄を達成する。ちなみにIMFは対北支援が可能としている。また、トランプは、政府レベルの対北経済支援は米国ではなく日韓中の三国がするはずと発言した。中朝関係は金正恩の二度の訪中で劇的に改善したが、中国は、北に対する政治のみならず経済問題でも具体的な協力を推進すると明言した。それはすでに始まっている。
 平和協定が締結されれば、北の脅威から南を守るという存在理由を失う駐韓米軍の撤収問題が浮上せざるを得ない。米国ではマスコミが大きく取り上げている。だが、現時点では南北とも撤収を求めていない。南によれば、訪朝特使団が今年二月に会った際、金正恩は「米韓連合訓練実施を理解する。朝鮮半島に平和が訪れれば在韓米軍と米韓訓練の性格と地位も変わるのでは」という立場を明らかにした。また、文在寅は五月二日、在韓米軍の駐留問題は朝鮮半島における平和協定締結問題とは「まったく関係ない」と述べた。
 今後の展望をまとめると、第一に、米朝首脳会談が決裂した場合は昨年のような事態に戻る。安倍をはじめ日米韓の右翼保守勢力が望む展開だ。
 第二に、同会談が上手くいき、非核化と体制保障の過程が進んだ場合、一つに、軍事的緊張が大幅に緩和され、南北間の共同事業も加速化する。南北の鉄道・道路が結合し、ユーラシア鉄道により釜山からヨーロッパまで繋がる。南北間の官民交流が拡大し、相互の理解が進み、往来の垣根が段階的に低くなる。南北の自主的平和統一の条件が整い、民衆の熱望が高まるはずだ。
 二つに、経済的には南北経済交流協力事業が急速に拡大する。高永大(二○一八)によれば「民族経済共同体も弾力を帯びるものと思われる」。他方で、米中韓日露などの民間資本と国際金融機関の資金が投下され、交通・エネルギーなど社会資本が整備される。同時に、外資と合弁の企業が増えるだろう。中国の八〇年代~九〇年代のような状態――それは新たな階級的な関係・問題・矛盾を生み出しうる――が現れるかもしれない……。板門店宣言に記された朝鮮半島の平和・繁栄・統一が以上のような線で進むものと思われる。

 ●4章 日本労働者階級人民の実践的課題

 アジア共同行動日本連絡会議(二○一八)は闘争方針として、「平和協定の締結と米軍総撤収にむけた民衆の国際的に連帯した闘いの組織化」「東アジアの平和への阻害物となっている安倍政権との対決」「自衛隊の海外派兵と改憲を阻止する闘いを強化すること」を提起している。私たちはこれを支持する。そして、読者の皆さん、労働者人民の皆さんに、朝鮮半島と東アジアの情勢が激変する中で何をなすべきかを訴える。
 第一に、戦争と改憲に反対するたたかいを強めよう。集団的自衛権行使反対、自衛隊の海外派兵反対、改憲阻止、米軍基地の全面撤去、日米安保破棄の闘いを強化し、日本の進むべき道の転換へと結実させていかねばならない。日本政府とマスコミが叫んだ「北の脅威」論は破産した。辺野古の新基地も、イージス・アショア配備も、岩国基地の機能強化もすべて要らない。在日・在沖米軍基地を全て撤去しよう。
 第二に、安倍政権を倒そう。私たちが日朝平壌宣言を実行しよう。日本はかつての植民地支配によって朝鮮半島の民衆にすさまじい犠牲を強制し、共和国に対しては植民地支配の謝罪と賠償を何も行わないままに、戦後も現在に至るまで軍事的威嚇と制裁措置をとり続けてきた。このような共和国敵視政策を転換させ、日朝国交正常化を実現しなければならない。また日本政府は、アジア各国の元日本軍「慰安婦」や元徴用工をはじめとした日本の植民地支配と侵略戦争の犠牲者からの謝罪と戦後補償の要求を拒否し続けてきた。元日本軍「慰安婦」をはじめとした植民地支配と侵略戦争の犠牲者の尊厳を回復するために、日本政府としての謝罪と戦後補償を実施させねばならない。そのことは、日本の民衆のなかに浸透している歴史修正主義、在日を含む朝鮮の民衆に対する差別と排外主義を克服していくための重大な課題でもあるのだ。 加えて、朝鮮学校の無償化を実現させよう。
 第三に、国際連帯を前に進めよう。北への制裁撤廃、停戦協定の平和協定への転換、朝鮮半島の非核化、在韓米軍を含む東アジアからの米軍総撤収、国家保安法撤廃、自主的平和統一、新自由主義反対に起ちあがる南・北・在外の朝鮮人民、さらにはアジア労働者人民としっかりとつながり、反帝国主義闘争を闘い帝国主義を倒そう。

 ●5章 革命的左翼はどう闘うべきか

 韓国には国家保安法がある。治安維持法を元に、南北分断が固定化された一九四八年に成立した。南の歴代政権はこれを使って共産主義者・社会主義者だけでなく民主主義者・自由主義者まで無慈悲に弾圧した。二一世紀に入って以降も同法に基づく「赤狩り」は続いた。だから、韓国左派は今も「イソップの言葉」を強いられている。故に日本の左翼には「治安維持法下の国際連帯」が要請されている。
 しかし日韓連帯には様々な形がある。疎外革命論者たちに共通する文字通りの囲い込み篭絡運動。大状況を動かすことだけ考える看板中心運動。現場も知らずに「原則」らしい空文句を反復して自尊する一国主義的立場表明。反対に現場に徹底的にこだわる原則的運動。
 その原則的な左派潮流の一部で韓国の民主党に対する期待が高まっている。それは正しいか?
 民主党政権は米帝への幻想に囚われ、米韓軍事同盟を堅持し、新自由主義政策を採るブルジョア左派だ。日本では立憲民主党に当たる。先述の統一政策と保守政権時代の不正への告発は評価できる。
 だが、現民主党政権は、南北首脳会談当日に座り込む住民と支援を警察権力によって暴力的に排除してTHAAD関連機材を運び込んだ。「朝鮮半島の完全な非核化」をいうのなら廃止対象になるべき原発を稼働させ建設し輸出している。また、最低賃金法を改悪し、定期手当のうち最低賃金の25%超過分と福利厚生手当(食費・交通費など)のうち7%超過分を最低賃金の算入範囲に含めるようにした。文在寅と朴元淳(パクウォンスン)への期待は幻だ。
 進歩陣営の活動家の多くが民主党へ雪崩を打つ中で苦闘する韓国左派潮流の労働者解放に向けた闘いを支持し連帯していこう。


〈参考資料〉
・浅井基文コラム www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/
・アジア共同行動日本連絡会議『4・27南北首脳会談を断固支持する! 我々の声明』(二〇一八) http://www.awcjapan.org/2018/201805-005.html
・高永大『4・27「板門店宣言」の意味と、今後の朝鮮半島および北東アジア情勢の展望』(二〇一八、平和と統一を開く人々月刊誌『平和の世、統一の世』一七五号、韓国語)
・ハンギョレ新聞電子版二○一八年四月一三日付 http://www.hani.co.kr/arti/PRINT/840412.html
・許榮九(ホヨング)Facebook(韓国語)
・三村光弘(環日本海経済研究所調査研究部主任研究員)「北朝鮮経済の現状」(日本経済新聞電子版二○一七年十月二四日付コラム)
・和田春樹『北朝鮮現代史』(二〇一二、岩波書店)



 

 

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