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   米軍再編攻撃打ち破り、
      日米戦争体制構築を粉砕しよう!

       
沖縄・岩国の基地強化再編攻撃粉砕

            

 

 米海兵隊岩国基地へ米海軍厚木基地からの空母艦載機が移転する計画の第一陣として、E2D早期警戒機五機が八月九日、岩国基地に到着した。このE2D早期警戒機は、機体上部に最新鋭のレーダーや各種の情報収集装置を備えた直径約七・三メートルの円盤を搭載する。集めた情報を戦闘機や艦船、地上部隊などと共有できる。米海軍厚木基地に所属したE2Cの後継機で、二月上旬には「配備前訓練」の名目で米バージニア州ノーフォーク基地から岩国基地へ飛来している。約三カ月間、空域や地上管制の慣熟訓練をした後、空母ロナルド・レーガンに搭載されていた。このE2Dに続き、十一月ごろと来年五月ごろにFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機計四十八機が移転。さらに来年一月ごろ、EA18Gグラウラー電子戦機六機とC2輸送機二機が配備され四機種の計六十一機が段階的に配備されることになる。そして、軍人と軍属、家族など計約三千八百人も一緒に移り、住民約十三万人強の岩国市において岩国基地の米軍関係者は一万人を超える見込みである。
 移転が完了すれば同基地の所属機は約百三十機に倍増し、米空軍嘉手納基地の約百機を超えて東アジア最大級の米軍基地となり、自衛隊機を加えると百六十機を超える巨大軍事基地となる。
 すでに岩国基地へは、二〇一四年普天間基地からKC―130ハーキュリーズが移駐。また、今年の一月には、FA18戦闘攻撃機、AV8ハリアー垂直離着陸機との更新ということで、次世代の主力戦闘機であるF35B最新ステルス戦闘機十機が米国本土以外での初の海外配備として行われた。最終的には十六機体制となり、六機は佐世保に配備されている強襲揚陸艦に塔載され、在沖縄米海兵隊とともに海外展開すると見られている。また、このF35Bの配備にともないIHI瑞穂工場(東京都)と三菱重工小牧南工場(愛知県)にリージョナルデポ(整備拠点)が設置され、隣接する横田基地(東京都)、小牧基地への飛来も予想されている。沖縄ではすでに嘉手納基地に格納庫・駐機場の整備が進められ、伊江島では離着陸訓練場の拡張、沖縄本島北部の訓練空域の拡大などが推進・計画されている。

  ●1章 米軍再編の概要 経過と背景

 来年五月を目途とした岩国基地の一大強化を目前に控え、その背景である米軍再編計画をここで改めて振り返り、日米軍事同盟強化のもと戦争へと突き進もうとする安倍政権との対決を強化していかなければならない。
 「米軍再編」とは、米国防総省の「世界的国防態勢の見直し」による再編のことを指し、〇一年九月末、ブッシュ政権によって作成された「四年ごとの国防政策見直し」(Quadrennial Defense Review=QDR)の中で打ち出されたものである。この〇一年に出されたQDR01(二〇〇一年版)は、9・11事件直後に出されたものであるが、ブッシュ政権は、事件の直接的な対応に追われつつ、〇三年十一月、今後約十年をかけた米軍再編の開始を対外的に宣言した。その目的は、「新しい安全保障環境に最善に対処するのに最も適した場所に正しい軍事能力を配置する」ためとして「海外軍事態勢の見直し」の交渉を開始すると述べた。
 このように米軍が大規模な世界的再編に乗りだしたのはなぜか。第一には、ブッシュ政権の前のクリントン政権は、一九九七年五月に「国家安全保障戦略」を発表し、二一世紀にむけた軍事戦略を打ち出した。その中では、世界の安全保障環境を米国に有利なように「形成」し、起こった事態には適正に「対応」するとともに、予測される未来の脅威に向けて本格的に「準備」するとした。この「準備」のために、米国防総省最初のQDRであるQDR97で「米軍トランスフォーメーション」(米軍の変革)の必要性が打ち出され、九七~一五年という長期にわたる期間を通してあらゆる分野において、米軍の軍事的優位を確保することを目標としたのである。
 第二には、プッシュ政権の始めた「テロとの戦争」から発生した、より短期的な必要性からである。イラクに十数万人、アフガニスタンに一万数千人という兵員を予想のつかない長期にわたって展開する事態となり、軍事予算の肥大化、それにともなう財政赤字の増大や部隊(兵員など)のやりくりの困難さ、さらに犠牲の増大など、東西冷戦時代に起源を持つ現在の米軍配備態勢の問題点が一挙に噴出したのである。以下の記述が明確に現状認識について語っている。「二〇世紀の後半、米国はソ連の侵略を封じ込めることを主な目的として、海外の軍事基地の世界的なシステムを発展させた。米国の海外でのプレゼンスは、米国の国益と、国益に対して起こりうる脅威と厳密に結びついていた。しかし、西ヨーロッパと東北アジアに集中したこの海外プレゼンスの態勢は、新しい戦略的環境では適切ではない。米国の国益が世界的規模となり、世界の他の地域での脅威の可能性が現れつつあるからである」と。このように、東西冷戦時代に陸軍を中心にヨーロッパ十万人、アジア十万人と言われた従来の米軍配備態勢は過剰であるだけでなく、そのままではまったく対処できなくなったというのが、再編開始にむけた最大の理由である。そして、クリントン政権時代には、①装備、戦闘システムの重点的近代化、②「軍事における革命」の追求、③「(国防総省)業務における革命」の追求、④不確定な未来の脅威に対する対処、という四つの課題が掲げられた。それは、今後想定される非対称型戦争に対応するためにIT技術の発展を利用して新しい戦争の形を作ろうといったものであった。
 ブッシュ政権時代のQDR01においては、「数」ではなく軍事「能力」重視の考え方を導入した。すなわち、「脅威ベース」から「能力ベース」への転換。従来から根強く残る「多くの兵員、戦車、飛行機を」といった物量重視の思考から脱却しようとしたのである。
 米軍再編前の〇二年段階で米は、十九万七千人の軍隊を配備し、海外配備米軍の95%、海外基地面積の51%を西ヨーロッパと北東アジアに配備していた。とりわけ、ドイツと日本、韓国の三カ国だけで海外配備米軍の81%を占めていたのである。では、再編計画の中でこのヨーロッパや北東アジアからの米軍の削減は、進むのか。QDR01では、むしろ新たな重要な役割を与えようとしていることが見て取れる。「米国は、西ヨーロッパと北東アジアの重要基地を維持する。それらの基地は、世界の他の地域における不測の事態に力を投影するためにハブという追加的な役割を果たすことになる」。つまり、兵力の前方展開を行うための跳躍台としての役割、あるいはハブ基地としての役割を担わせようというのである。
 「朝鮮戦争以来最大」と言われる米軍の再編交渉を各国と進めるにあたって米国防総省は具体的な方針を示していた。〇四年、フェイス国防次官による五原則として提示されたのは、①同盟国の役割を強化する、②不確実性と戦うための柔軟性を高める、③地域のみならず地域を超えた役割をもたせる、④迅速に展開する能力を発展させる、⑤数ではなく能力を重視する、というものである。
 こうした全世界的な米軍再編にむけた協議において、もっとも早く在韓米軍の再編協議が〇四年に終了した。ヨーロッパでもドイツを中心に陸軍の分散移転やNATOの再編と絡めた再編が行われたのである。

  ●2章 日米間の再編協議について

 日米間の再編協議は、〇四年に始まり、①〇五年五月「共通の戦略目標」に関する合意、②〇五年十月「日米同盟-未来のための変革と再編」(中間報告)、そして、最終報告文書である「再編実施のための日米ロードマップ」(〇六年五月)が合意、発表された。
 ここで、まず注意しておかなければならないのは、各地での米軍再編の実施にあたって政府や一部マスコミは、これを沖縄の基地負担の軽減問題とからめて推進、報道してきたことだ。最終報告では、「全体的なパッケージの中で、沖縄に関連する再編案は相互に結びついている」と念を押している。岩国基地の再編でも厚木での騒音被害の軽減と沖縄の基地負担の軽減につながるとされてきた。しかし、先に見たようにもともと米軍再編の背景は、世界的な軍事力の再編を図ることを目的として開始されたのであり、沖縄の基地負担の軽減を目的としたものではないのである。これは明らかに沖縄基地負担の軽減をかかげることにより米軍基地をかかえる各自治体の反対を封じ込めるための方便に過ぎないのである。
 第二には、米軍再編は、同時に自衛隊の再編問題でもあるということだ。在日米軍の基地と機能が拡大強化されるだけの問題ではない。〇五年十月のいわゆる「中間報告」において、米日は先に合意された「共通の戦略目標」の実現に向かって日米同盟を転換させることを確認した。それは、フェイス五原則の①同盟国の役割を強化すること。つまり「同盟国や友好国が彼ら自身の軍隊、軍事ドクトリン、戦略を近代化するのを助け」「彼らとともに軍事能力を転換するような方法を探求」することであり、それはすなわち自衛隊そのもののトランスフォーメーション(戦闘態勢の変革)を図るということなのである。〇四年十二月に発表された「防衛計画の大綱」(新大綱)は明らかに米軍のトランスフォーメーションと歩調を合わせものとなった。新大綱では自衛隊の役割を大きく変化させた「新たな脅威や多様な事態への実行的な対応」をその役割の第一にかかげた。米軍と同様に二十一世紀型の非正規戦を戦うことを中心にすえ、以下の項目をかかげた。①弾道ミサイル攻撃への対応、②ゲリラや特殊部隊による攻撃等への対応、③島嶼部に対する侵略への対応、④周辺空海域の警戒監視及び領空侵犯対処や武装工作船への対応、⑤大規模、特殊災害への対応。
 一三年十二月安倍政権は、「国家安全保障戦略」を閣議決定した。こうした「戦略」の閣議決定は、戦後初のことである。同時に「防衛計画の大綱」(一三大綱)と「中期防衛整備計画」も閣議決定された。「戦略」では「わが国を取り巻く安全保障環境が一層激しさを増している」「国際協調主義の観点から、より積極的な対応が不可欠」とし、「わが国の平和と安全はわが国一国では確保できず、国際社会もまた、わが国がその国力にふさわしい形で、国際社会の平和と安定のために一層積極的な役割を果たすことを期待している」と「積極的平和主義」をかかげ、日米同盟第一主義ともいえる米軍との一体化に拍車をかけたのである。そして、中国の台頭や朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の脅威論、テロ・ゲリラの脅威を煽りながら、一五年安全保障関連法の強行採決が行われ、「集団的自衛権行使の合法化」(軍事同盟の合法化)が図られたのである。

  ●3章 米軍再編の現段階

 日米の再編協議にもとづいていくつかの特徴的な再編の現段階を確認しておこう。
 第一は、岩国基地の一大強化についてである。来年五月にむけた移駐計画は冒頭に述べたとおりであるが、ここで注目しておかなければならないのは、佐世保基地との連携、連動性についてである。日米の再編協議以前の〇二年ころから佐世保に空母の寄港が増加した。佐世保基地は、米海軍の海外で唯一の強襲揚陸艦部隊の前進配備基地となっている。強襲揚陸艦ボノム・リシャールをはじめとする四隻の揚陸艦、四隻の掃海艦の母港であり、LCACという世界の七割の海岸線から陸地に侵入できるエアクッション型上陸艇七隻の唯一の海外基地となっている。一二年四月に配備されたボノム・リシャールは、このLCAC三隻を搭載でき、普天間基地に配備されたオスプレイの離発着にともなう高熱に耐えられる工事もすでに施されている。このボノム・リシャール(タラワ級)は、今秋以降、岩国に配備されたF35Bの塔載可能なワスプ級強襲揚陸艦と交代することが計画されている。
 この間、佐世保基地の空母の滞在日数は、艦載機との関係からおよそ二~五日程度である。しかし、岩国基地への艦載機の移動が可能となれば、佐世保への長期滞在が可能となる。それは、横須賀と佐世保の二港が事実上、母港化することにつながる可能性をもっているのである。アジアにおける米空母艦隊二隻体制によるアジア・太平洋への前線基地として日本が飛躍的に強化される可能性をもっているのである。
 第二には、厚木からの空母艦載機の岩国への移駐は、厚木での騒音被害の軽減を大きな理由としている。しかし、今日に至るまで移駐後の厚木基地の運用をめぐる動きは、まったく不明である。空母艦載機は昼夜を問わず出撃する可能性があり、そのため空母艦載機パイロットには夜間離着陸訓練が義務づけられている。パイロットの錬度を維持するためには、一定の頻度で空母艦載機の発着訓練を行う必要がある。空母の入港中には空母甲板上での離着陸訓練ができないため、陸上基地の滑走路を使用して夜間離着陸訓練(NLP)が行われる。現在、このNLPは厚木基地から一千キロ離れた硫黄島でほとんど行われている。しかし、米軍は、硫黄島が厚木からあまりにも離れていることに不満をもっており、厚木よりさらに遠い岩国基地移駐後の夜間離発着訓練をめぐる問題は、新たな課題として残るのであり、その意味からも厚木基地の引き続きの使用も十分予想されるのである。
 第三には、オスプレイをめぐる問題である。オスプレイは普天間基地に二十四機が配備され、陸上自衛隊も十七機購入予定であり、佐賀空港への配備計画が進んでいる。地元では漁協の強い反対にもかかわらず、佐賀県議会は、配備計画容認決議を七月三日自公の賛成多数で強行可決した。この導入の目的は、佐世保に新設する水陸機動団の輸送のためである。水陸機動団は、一三年に策定された防衛計画の大綱(二五大綱)に基づき、一八年三月に陸自に新編される予定の部隊。「上陸・奪回・確保するための本格的な水陸両用作戦」を強く意識した部隊であり、新たに編成される陸上総隊直轄の部隊となる予定である。まさに自衛隊における海兵隊新設というべき攻撃的部隊である。
 米軍のオスプレイとの関係では、防衛省は公式に「沖縄の負担を全国で分かち合うとの観点から、全国の他の空港との横並びの中で佐賀空港(県営)の利用も考慮したい」と米軍利用の可能性を否定していない。米軍は普天間、佐賀、岩国、佐世保さらに全国の自衛隊基地や演習への展開を考えており、相互運用もふくめて米日一体化が急速に進もうとしているのである。
 第四に、弾道ミサイル防衛(BMDに関しては、日米双方がそれぞれのBMD能力の向上に向け、緊密な連携を継続することとされている。〇六年六月には米軍のTPY―2レーダー(いわゆる「Xバンド・レーダー」)が米軍車力(しゃりき)通信所に、同年十月には米軍のパトリオットPAC―3が嘉手納飛行場と嘉手納弾薬庫地区に、また、一四年十二月には、日本国内で二基目のTPY―2レーダーが米軍経ヶ岬通信所に強行配備された。加えて、一五年十月及び一六年三月に米軍BMD能力搭載イージス艦が横須賀海軍基地に配備された。
 第五に、在日米陸軍司令部能力の向上として、キャンプ座間に所在する在日米陸軍司令部は、「高い機動性と即応性を有し、かつ、統合任務が可能な司令部」となるよう、〇七年十二月に在日米陸軍司令部・第一軍団(前方)として発足し、〇八年九月末に改編された。また、各種事態への迅速な対応のため在日米陸軍司令部との連携強化を図るため、一二年度末に、陸自中央即応集団司令部を朝霞駐屯地から在日米陸軍司令部が所在するキャンプ座間へ移転した。また、日米の司令部間の連携向上は、統合運用体制への移行とあいまって、日米両部隊間の柔軟かつ即応性のある対応の観点から極めて重要であるとして、そのため一一年度末に、横田飛行場において共同統合運用調整所の運用を開始するとともに、空自航空総隊司令部及び関連部隊を横田飛行場へ移転した。これらにより、空やBMDにおける情報共有をはじめとする司令部組織間の連携強化が図られているのである。
 第六に、沖縄への基地負担の軽減と称して海兵隊と家族を含む約九千人が日本国外へと移転することが確認された。一三年十月の「2+2」において、沖縄からグアムへの移転は二〇年前半に開始する。また、移転のための費用総額八十六億ドルの内、日本側上限二十八億ドルの支出がこれまでに確認されている。しかし、これは沖縄の基地負担の軽減というよりも米グアム基地の再編計画の一環であるということだ。さも沖縄の基地負担の軽減のためと見せかけ膨大な移転費用を日本に押し付け、グアム機基地の再編・強化を図ろうというものである。
 アメリカの軍事的な議論において、グアムは「槍の先端」と呼ばれてきた。カリフォルニア、ハワイ、グアムと米軍基地が位置する太平洋において、紛争を抱える東アジアや中東にもっとも近く位置する前線基地がグアムである。グアムには、現在、沖縄の嘉手納空軍基地の四倍の大きさがあるアンダーセン空軍基地、原子力潜水艦の母港であり原子力空母が寄港するアプラ軍港、海軍弾薬庫地区、海軍通信基地などの米軍基地がある。グアム島の約三分の一がアメリカ国防総省の所有地となっている。ちなみに、グアム現地でも〇六年の米軍再編案が公表されるや大規模な反対運動がおこり、現在ではグアムへは四千人、ハワイなどへ五千人の移動となっている。
 グアム基地については、①西太平洋から中東に至るまでの広大な地域への米軍の介入能力が高まる、②移転後の海兵隊は、東南アジアや「不安定の弧」に現在よりも近づく、③グアムには、アジアのホット・スポット(不安定性をはらむ場所)に十分に近いが、他国の攻撃を受けにくい程度には遠いという地の利がある、④グアム基地は、外洋海軍化が進む中国の海軍力増強への備えとなる、などの基地のもつ重要性が指摘されており、そうした観点からグアム基地の再編強化が位置づけられてきたと考えられる。

  ●4章 日米軍事一体化に突き進む安倍政権を打倒しよう

 米軍再編協議は、沖縄の負担軽減を口実にしながら全国の米軍基地、自衛隊基地の再編強化を推し進め、今後も促進されようとしている。しかし、沖縄では、周知のごとく沖縄人民の声も法律さえもまったく無視して辺野古新基地建設が強行されている。北部高江ではオスプレイパッド六カ所の建設が強行され、米軍によると年間各四百二十回以上使用するとしている。沖縄と岩国では負担の軽減ではなく、基地の拡大、強化が進む中一層の負担増がもたらされているのである。
 米軍再編は、自衛隊そのもののトランスフォーメーションを迫るものであることは、すでに述べたがそうした自衛隊の再編・強化の動きも安倍政権の成立以降、急加速されている。
 第一には、防衛費が年々増加されていることだ。現在、すでに導入あるいは導入予定の自衛隊の装備関係では、①航空自衛隊・F35A戦闘機(四十二機 八千二百七十八億円)、②海上自衛隊・SH60K能力向上型ヘリコプター(約九十機)、③陸上自衛隊・オスプレイ(十七機 二千三百四十七億円)、④陸上自衛隊・新多用途ヘリコプター(約百五十機)、⑤陸上自衛隊・水陸両用車(五十二両 三百五十二億円)などがあり、新たな装備の導入と更新が図られている。
 防衛省は一八年度予算案の概算要求で、過去最大の五兆二千五百五十一億円を計上する方針を固めた。一七年度当初予算に比べ千三百億円(2・5%)増。海洋進出を強める中国や弾道ミサイル発射実験を続ける共和国に対応するためとして新型護衛艦や潜水艦の建造。島嶼防衛用のミサイル研究に着手。BMDの目玉として陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」も盛り込んだ。日本におけるミサイル防衛システムの歴史は、九八年の共和国による「テポドン一号」の打ち上げを受けて、九九年度からBMDに係る日米共同技術研究に着手し、〇三年十二月の安全保障会議及び閣議において弾道ミサイル防衛システムを導入することを決定してきた経緯がある。現在、海上配備のイージス艦、そして、射程が半径約二十キロメートル程度のPAC3が、「政権の中枢や都市機能が集中する地域、自衛隊や米軍の重要基地を優先的に守るため」と位置づけられ、首都圏や沖縄など全国十七の部隊に計三十四基が配備されている。基本は米軍基地の防衛である。
 第二には、釣魚諸島をめぐる領土問題、中国海軍による日本周辺海域への進出に対抗するためとして島嶼防衛を本格化させていることである。防衛白書(一六年版)では、「南西地域の防衛態勢強化のため、空自は、一六年一月、那覇基地に戦闘機一個飛行隊を移動し二個飛行隊とした上で、第九航空団を新編し、陸自は、同年三月、与那国島に与那国沿岸監視隊を新編した。今後、陸自は、南西地域の島嶼部に初動を担任する警備部隊を配置するとともに、本格的な水陸両用作戦機能を備えた水陸機動団(仮称)を新編するほか、海自は、固定翼哨戒機(P―1)や回転翼哨戒機(SH―60K)などを取得する。これらにより、常時継続的な情報収集・警戒監視態勢や事態発生時に迅速な対処が可能な体制を整備すること」としている。さらに「このほか、統合運用能力の向上や米軍との相互連携要領の確立のための訓練などにも取り組んでいる。一五年八月には、米西海岸で実施された米軍の統合訓練に陸・海・空自が参加し、日米共同統合訓練(ドーン・ブリッツ15)として、米軍との連携及び島嶼侵攻対処にかかる一連の作戦行動の演習を行った。また、陸自は、毎年カリフォルニアで米海兵隊との実働訓練(アイアン・フィスト)を実施しているほか、同年七月には豪州で実施された米豪共同訓練(タリスマン・セイバー)に初めて参加し、米海兵隊と実働訓練を実施するなど、水陸両用作戦機能の強化」を図っている。さらに、部隊の迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、おおすみ型輸送艦の改修、多機能艦艇のあり方を検討するための海外調査やオスプレイの導入により、機動展開能力の向上を図っていくとしている。
 第三には、米軍再編の推進のために膨大な予算をつぎ込んでいることである。そもそも在日米軍関係経費は、①在日米軍駐留関係経費、②SACO関連経費、そして、この間の米軍再編を推し進めるための③米軍再編関係経費の三つからなっている。そして、この③米軍再編関係経費の支出は、第一次安倍内閣から始まり、一五年までに六千七百億円がつぎ込まれているのだ。駐留経費(七八年から)とSACO関連費用(九七年から)をも合わせた合計は、七八年から一五年までの三十八年間で約二十兆円という巨額の税金が使われてきているのである。今年二月、トランプ政権成立後、初の日米防衛首脳会談が行われ国防長官マティスは、米軍の経費と負担に触れて「日本は『お手本』になってきたと考えています。われわれはこれについて、常に対話を持っています。日本と米国の経費分担は、ほかの国々が習うべきお手本だと言えます」と述べている。これほどの米軍駐留経費を支払っている国はなく、日米同盟第一主義ともいえる安倍政権の姿勢が鮮明に示されているといえる。
 以上述べたように、一七年を画期とした米軍再編が今まさに強行されている。安倍政権は、米軍再編に合わせて自衛隊の再編・強化を強力に推し進め、日米戦争体制構築へと突き進んでいる。一五年ガイドラインと戦争法の下では、米軍再編は同時に自衛隊の戦闘態勢変革としてあるのだ。東アジアにおいて、中国、ロシアとの対決を強める全面的な軍事力強化が、日米一体となって進められている。とりわけ、新たな朝鮮戦争、そして「対テロ」戦争という名の侵略戦争を具体的に準備していることを絶対に許してはならない。この戦争突撃との総対決として米軍再編阻止の反基地闘争に立ち上がっていかなくてはならない。
 辺野古新建設阻止、米軍艦載機移駐阻止の決戦段階に突入した沖縄、岩国における反戦、反基地、米軍基地撤去のたたかいを強化し、安倍政権の戦争体制構築を粉砕して安倍政権を打倒しよう。


 

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