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   伊勢志摩サミット反対!

 
「対テロ」戦争参戦許すな!  首脳会合粉砕現地闘争に決起せよ

 


 すべてのたたかう仲間のみなさん! 来る五月二十六日・二十七日の両日、三重県志摩市賢島(かしこじま)の志摩観光ホテルにおいて、第四十二回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開催される。日本においてサミットが開催されるのは、二○○八年七月の洞爺湖サミット以来、八年ぶりとなる。今回のサミットには、日本の安倍晋三首相、フランスのフランソワ・オランド大統領、アメリカのバラク・オバマ大統領、イギリスのデーヴィッド・キャメロン首相、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、イタリアのマッテオ・レンツィ首相、カナダのジャスティン・トルドー首相の七カ国の首脳および欧州連合委員長・欧州連合理事会議長が参加する。
 そして、首脳会合を前後して外相会合(四月十日・十一日/広島県広島市)、農業大臣会合(四月二十三日・二十四日/新潟県新潟市)、情報通信大臣会合(四月二十九日・三十日/香川県高松市)、エネルギー大臣会合(五月一日・二日/福岡県北九州市)、教育大臣会合(五月十四日・十五日/岡山県倉敷市)、科学技術大臣会合(五月十五日〜十七日/茨城県つくば市)、環境大臣会合(五月十五日・十六日/富山県富山市)、財務大臣会合(五月二十日・二十一日/宮城県仙台市)、保健大臣会合(九月十一日・十二日/兵庫県神戸市)、交通大臣会合(九月二十四日・二十五日/長野県軽井沢町)などの関係閣僚会合が日本各地で開催される。
 われわれは、戦争と貧困を拡大する伊勢志摩サミットと正面から対決し、各地での伊勢志摩サミットに反対する取り組みを積み上げ、五月二十六日・二十七日の首脳会合を焦点に全国から伊勢志摩現地に総結集することを呼びかける。そして、反帝国際主義の旗を高く掲げ、左派勢力の総結集と国際共同闘争をもって伊勢志摩サミットと対決していこうではないか。

  ●1章 戦争と貧困を拡大する伊勢志摩サミット

 サミットは一九七五年、フランスのランブイエに六カ国の首脳が集まり、会合を行ったことに始まる。翌年からイタリアの首相も参加し、G7サミットとして毎年開催されてきた。このようなサミットの開催は、アメリカを中心とした第二次大戦後の帝国主義による世界支配秩序の大きな動揺を背景とするものであった。一九七一年八月、アメリカは「ドル・金の兌換停止」を突如発表し、ドルを基軸通貨とするブレトン・ウッズ体制は瓦解した。一九七三年十月には第四次中東戦争が勃発し、アラブ石油輸出国機構はアメリカなどイスラエル支援国への経済制裁(石油禁輸)を発動し、第一次石油危機が起こった。資本主義諸国は七四―七五年恐慌に突入する。帝国主義による世界支配秩序は経済面だけではなく、一九七五年のベトナム解放戦争の勝利に示されるように、政治的・軍事的にも大きな危機に直面していた。G7サミットは、まさにこのような帝国主義の危機の深まりに対応し、帝国主義諸国首脳の結束を誇示、強化するものとして開始されたのである。
 一九九一年のソ連崩壊を経て、一九九四年のナポリサミットからロシアが政治協議に参加した。ロシアは一九九七年のデンバーサミットからはほぼすべての会合に参加するようになり、サミットはG8サミットとなった。そのことは、資本主義化するロシアを帝国主義の世界支配秩序に組み込むことを目的とするものであった。しかし、プーチン政権のもとで国力を増大させたロシアは、クリミア半島の帰属をめぐって帝国主義諸国との対立を顕在化させていく。二〇一四年六月、ロシアによるクリミア併合に反発するアメリカなど帝国主義諸国がロシアのソチで開催予定であったサミットをボイコット。ベルギーの首都・ブリュッセルでロシアを排除した形でG7サミットを開催した。今年の伊勢志摩サミットもこの事態が継続しており、ロシアは参加しない。
 国際政治におけるG7サミットの位置は、確かにかつての時代よりも小さくなったのは事実であろう。とりわけ経済の領域では、一九九九年にサミット参加国七カ国とEUに加えて、中国・ロシア・インド・ブラジル・メキシコ・韓国・南アメリカ・インドネシア・トルコ・アルゼンチン・サウジアラビア・オーストラリアを加えた二十カ国地域財務大臣・中央銀行総裁会議が発足した。そして、二〇〇八年からはこの二十カ国地域による首脳会合(G20)が毎年開催されてきた。それはG7だけでは世界の経済を規定することができず、急速な経済成長を続けてきた中国、インドなどの諸国を組み込むことが不可欠になってきたことの反映であった。二〇〇九年のG20は、この現実を反映して「G20を国際経済協力の第一の協議体とする」ことを合意している。
 しかし、このような状況の変化にもかかわらず、帝国主義にとってG7サミットの持つ位置は依然としてきわめて大きい。とりわけ、帝国主義が「対IS」戦争「対テロ」戦争にのめり込む中で、むしろG7サミットの位置はあらためて大きくなってきていると見なければならない。G20は、確かに世界のGDPの90%を占めてはいるが、その構成国からして「対IS」戦争「対テロ」戦争の推進構造にはならない。帝国主義にとって、G7サミットこそが「対IS」戦争「対テロ」戦争の有志連合の中枢となる構造なのだ。このようなG7サミットの位置と性格は、この数年のISの台頭と中東から欧州・北アフリカでの戦乱の拡大のなかで明確になってきた。
 伊勢志摩サミットは第一に、中東における帝国主義の侵略戦争をさらに激化させ、戦乱を世界各地へと拡大していくきわめて危険なものである。伊勢志摩サミットを前にして、アメリカのカーター国防長官は二月十一日、ブリュッセルのNATO本部において有志連合の初の国防相会合を開催した。有志国国防相は、「IS掃討」軍事作戦の加速を協議した。伊勢志摩サミットは、帝国主義による中東侵略戦争の新たな段階への転換点になろうとしているのだ。
 そもそも現在の中東の戦乱をもたらした最大の要因は、二〇〇一年十月に始まるアメリカを中心とした帝国主義によるアフガニスタン侵略戦争、そして二〇〇四年三月に始まるイラク侵略戦争であった。さらに二〇一〇年に始まる「アラブの春」に帝国主義が介入し、リビア、シリアで激しい内戦へと至ったことが、事態をさらに複雑にした。このようななかで、イラク、シリアを中心にISが支配地域を拡大していった。ISは、二〇一四年に「カリフ制国家」の樹立を宣言したように、反帝をかかげた復古主義的宗教国家を標榜する反動的勢力であり、奴隷制の擁護や女性への差別・抑圧など、被抑圧人民の解放とはまったく無縁の勢力である。アメリカは、「自由シリア軍」を支援してシリア内戦に介入し、アサド政権の打倒を画策した。しかし、ISがイラクに侵攻し、支配地域を拡大して反米闘争を進めるなかで、対ISの有志連合を編成した。そして、二〇一四年八月からイラク領内でのIS拠点、二〇一四年九月からはシリア領内でのIS拠点への空爆を開始した。他方でロシアもまた、二〇一五年九月、アサド政権を支持する立場からISや反アサド政権武装勢力への空爆を開始した。
 しかし、このようなアメリカを中心とした有志連合による空爆によっても、ISを壊滅させることはできなかった。そればかりか、戦乱はイエメン、アフガニスタン、エジプトなどに拡大し、欧州にまで波及してきた。そもそも中東でのこれほどまでの戦乱をもたらした最大の要因こそ、アフガニスタン侵略戦争以来十五年におよぶアメリカを中心にした帝国主義の侵略戦争であった。この過程で、どれほど多くの中東の人民が犠牲になってきたことか。アフガニスタンやイラクにおいて、米軍はまさに憎むべき占領軍であった。そして、現在もまた有志連合によるすさまじい空爆によって、無数の人々が犠牲となり、住む家を失い、難民となって生まれた国を離れざるをえなくなっている。
 この現実ゆえに、アメリカなど帝国主義がいかに軍事力を投入しようとも、帝国主義による中東支配は決して安定することはない。この事態に終止符をうつために何よりも必要なことは、アメリカを中心とした帝国主義諸国が中東での侵略戦争をただちに中止し、中東から撤退することである。そして、これを条件として、すべての交戦国・勢力の停戦をただちに実現することである。しかし、アメリカなどの帝国主義諸国は、それとはまったく反対に、「対IS」戦争「対テロ」戦争を唱えて中東への侵略戦争をさらに拡大していこうとしているのだ。
 伊勢志摩サミットは第二に、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)への帝国主義による軍事的包囲をさらに強化することをもって、東アジアにおける軍事的緊張と戦争の危機を高めるものである。二〇一六年一月十五日、安倍首相は参議院予算委員会において、「北朝鮮問題をサミットの主要議題の一つとする」と表明した。そして、伊勢志摩サミット議長国という立場から、サミットの首脳宣言において共和国を厳しく非難し、共和国に対する圧力と軍事的経済的包囲をさらに強化しようとしている。
 朝鮮半島・東アジアをめぐる軍事的緊張は、昨年末から一挙に高まってきている。昨年十二月二十八日の日本軍「慰安婦」問題についての日韓合意は、被害女性たちの日本政府に対する公式謝罪と賠償の要求を踏みにじり、日韓両政府間で一方的に「この問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」という許しがたいものであった。こうして、アメリカからの強い圧力のもとで、日米韓の軍事同盟を強化する動きが急速に進行しはじめた。このような中で、共和国は一月六日、「水素爆弾実験を成功させた」と宣言。二月七日には、人工衛星の打ち上げを行った。これに対して国連安保理は三月三日、共和国への制裁を強化する決議を採択し、アメリカ・日本・韓国政府は独自制裁を強化した。
 三月七日、史上最大規模の米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」が開始された。この軍事演習には、例年の倍の米軍一万八千人、韓国軍二十九万人が参加している。米軍はこの軍事演習に、原子力空母「ジョン・ステニス」、F22ステルス戦闘機、B2ステルス戦略爆撃機などの最新鋭の兵器を投入している。
 この合同軍事演習は、米韓両軍の「5015作戦計画」にもとづく初めての軍事演習である。「5015作戦計画」は、共和国に対する先制攻撃を想定したものである。すなわち、この作戦計画では、共和国に「核兵器使用の徴候」が見られた場合、米韓両軍は三十分以内に共和国への先制攻撃を開始する。そして、一挙に共和国の首都・平壌を制圧し、朝鮮半島の武力統一を強行することすら計画されている。さらには、「斬首作戦」と称して、「核兵器承認権者」を特殊部隊によって拘束・殺害し、除去することによって核兵器を使用できなくすることも含まれている。まさに、金正恩の殺害によって、共和国と朝鮮労働党政権を崩壊させるというとんでもない作戦である。共和国は、このような米韓合同軍事演習に激しく反発し、核弾頭の実戦配備を指示した。
 われわれは、被爆者解放闘争に連帯し、すべての核兵器の廃絶を要求するという立場から、安保理常任理事国の核兵器独占による世界支配体制に断固反対し、共和国の核実験にも反対し、核兵器の配備に反対する。何よりも批判されるべきは、共和国への軍事的包囲をますます強化し、いつでも先制攻撃できる態勢を維持してきたアメリカなどの帝国主義諸国である。共和国は、一貫して朝鮮戦争の停戦協定を平和協定に転換させ、朝鮮戦争を終結させることを要求してきた。それはまったく正当な要求であり、平和協定の締結を拒否しつづけてきたのはアメリカである。
 伊勢志摩サミットを通して共和国への軍事的包囲と戦争態勢をさらに強化することなど断じて許されない。日本は、一九四五年まで朝鮮を植民地支配したことにとどまらず、朝鮮戦争では米軍の出撃拠点となり、戦後一貫して共和国への軍事的包囲の重要な一角を構成してきた。このような共和国敵視政策を転換させ、平壌宣言の精神に立ち戻り、日朝国交正常化に進むことこそが要求されているのだ。
 伊勢志摩サミットは第三に、新自由主義政策を推進し、世界の労働者人民にさらに貧困と無権利を強制するものである。二〇〇八年のリーマンショックは、新自由主義政策の破たんを示すものであった。しかし、帝国主義諸国はこの深刻な危機に直面しても、新自由主義政策以外の方策をもたず、金融緩和・財政出動の拡大によって危機を先延ばしすることしかできなかった。しかし、それは各国の財務状況を急速に悪化させ、多くの国が緊縮財政を余儀なくされた。そのもとで、世界的に貧富の格差がさらに拡大してきた。
 このような中で、アメリカはTPP(環太平洋経済連携協定)など、世界各地で貿易・投資やサービスの自由化のための地域経済協定を推進してきた。それは資本の世界的な展開を妨げる障壁を取り払い、貿易・投資やサービスの自由化によって、多国籍資本に利潤追求のための新しい条件を形成するものに他ならない。しかし、それは世界の労働者人民にとっては、いっそう無慈悲な資本による搾取と収奪にさらされていくことを意味する。労働者の非正規雇用がさらに拡大し、資源・原材料が収奪され、農林水産業や自然環境が破壊されていく。
 サミットでは、TPPなど個々の地域経済協定の件が直接議題になるわけではない。しかし、新自由主義政策にもとづいて世界をつくりかえ、地域経済協定を促進し、貿易・投資やサービスの自由化を推進していくという多国籍資本の基調があらためて意思一致されていくのである。
 われわれは、このような戦争と貧困を拡大する伊勢志摩サミットに断固として反対する。そして、このサミットを通して世界を支配する帝国主義列強のひとつとして、帝国主義による「対IS」戦争「対テロ」戦争と称する侵略戦争に参戦しようとする日本帝国主義―安倍政権に対して、反帝国際主義に立脚して総対決していくことを呼びかける。

  ●2章 日帝―安倍政権のもくろみ

 日帝―安倍政権にとって、伊勢志摩サミットは第一に、サミット議長国としての威信をかけて首脳会合を成功させ、世界を支配する帝国主義列強としての位置を強化していく絶好の機会として位置づけられている。第一次安倍政権は、洞爺湖サミット開催前に崩壊し、安倍はサミットを主催することができなかった。安倍政権は、伊勢志摩サミットを二〇一六年における最大の外交課題として位置づけ、その成功のために総力をあげてきたのである。
 日帝―安倍政権は第二に、伊勢志摩サミットを通して「対IS」戦争「対テロ」戦争と称する中東での侵略戦争への参戦を意図し、東アジアにおける共和国への軍事的包囲と戦争態勢を強化していこうとしている。安倍政権は昨年九月、戦争法(安保関連法)の成立を強行した。それは集団的自衛権の行使を「合憲」化し、現憲法の平和主義・立憲主義・主権在民の原則を破壊するものであり、戦争国家への歴史的な転換点となるものであった。安倍政権はこれを基礎に、いよいよ憲法改悪に向かうとともに、侵略戦争への参戦を一挙に拡大していこうとしている。中東をめぐって、日本はすでに「対IS」戦争の有志連合の参加国となってきた。しかし、憲法上の制約から有志連合の軍事行動には参加できなかった。戦争法の制定は、この事態を根本的に変化させた。今や安倍政権は、集団的自衛権にもとづいて世界のどこにでも自衛隊を派兵し、米軍をはじめとする有志連合への軍事支援を行うことができる。いつ、どのような形から始まるにせよ、日帝―安倍政権は中東における帝国主義の侵略戦争への参戦に着実に向かっている。
 さらに緊迫しているのは、朝鮮半島・東アジアである。米日韓と共和国はまさに一触即発の状態にある。三月七日から開始された米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」「フォール・イーグル」は単なる軍事演習ではない。いつでも共和国に対する本格的な武力侵攻に転化できるものである。このようななかで、米韓両軍は韓国へのTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)配備に合意した。また、自衛隊もTHAADミサイルの配備の検討を開始している。これまでの米軍のミサイル防衛システム(MD)は、大気圏外を慣性飛行する弾道ミサイルの迎撃を目的としたSM3と地上に到達する直前の段階で迎撃するPAC3を中心とした二段階の迎撃システムであった。アメリカは、弾道ミサイルが大気圏に再突入する段階で迎撃するために、THAADミサイルとこれに連動するXバンドレーダーの配備をすすめ、三段階のミサイル防衛システムをつくりだそうとしている。共和国が核開発とそれを搭載する弾道ミサイルの配備をすすめる中、アメリカは強固なミサイル防衛システムなしに共和国への先制攻撃を行うことができないからである。
 日帝―安倍政権は第三に、伊勢志摩サミットを天皇制と治安弾圧体制の強化のために最大限に利用しようとしている。安倍政権が伊勢志摩をサミット開催地とした理由は、四方を海に囲まれた賢島が警備しやすいことだけではない。安倍首相は昨年六月五日、サミット開催地を伊勢志摩とすることを公表するにあたって、「日本の美しい自然、豊かな文化、伝統を世界のリーダーたちに肌で感じてもらえる場所にしたいと考え、三重県で開催することを決定した」と述べた。そして、「伊勢神宮は悠久の歴史を紡いできた」「日本の精神性に触れていただくには大変よい場所だ」として、伊勢神宮の存在を考慮して開催地を決定したと明らかにした。
 伊勢神宮は、天照大御神を祀る内宮と豊受大御神を祀る外宮からなり、神道において天照大御神は皇室の祖神、日本国民の総氏神とされてきた。そして伊勢神宮は明治から敗戦までは国家神道のもとで全国神社の頂点と位置付けられ、敗戦後は神社本庁のもとで全国神社の本宗とされてきた。そこには、天皇を天照大御神の子孫、万世一系の神聖不可侵の存在として絶対化した戦前の天皇主義、皇国史観にもとづく天皇制賛美がそのまま引き継がれている。そんなものは日本の「伝統」でも「精神性」でも何でもない。一九六七年に当時の佐藤首相が伊勢神宮に参拝して以降、歴代の首相は憲法の政教分離の原則を踏みにじり、毎年閣僚を引きつれて伊勢神宮への参拝を行ってきた。伊勢志摩サミットでは、安倍首相は各国首脳を伊勢神宮へと引きつれていこうとしている。そうすることによって、天皇主義・天皇制賛美を人民のなかにあらためて浸透させていこうとしているのだ。
 このような天皇制賛美とともに、伊勢志摩サミットでは日本の治安弾圧体制を飛躍的に強化していくことがもくろまれている。三月十四日、警察庁は全国からのサミット警備の派遣部隊の指揮官ら約百八十人を三重県に集め、警備対策会議を開催した。この場で金高警察庁長官は、「サミットは主要国の首脳が一堂に会する会議で、安全確保については日本の警察が全世界に対して責任を負うものだ。過激派組織ISが日本をテロの標的にするとくり返し表明するなど、これまでと異なる厳しい国際テロ情勢のもとで行われる。そのことを肝に命じ、総力を結集して警備を完遂しなければならない」と訓示した。
 具体的には、警察庁は全国から洞爺湖サミット時を上回る約二万千人以上の警察官を動員して警備体制を編成する。そして、サミット会場の賢島に乗り入れる近鉄志摩線の賢島・鵜方間をサミットの一週間ほど前から運休とする。代替バスについては、配布されるIDパスを持つ住民と関係者のみが乗車できるようにし、賢島を封鎖するという計画である。また、海からの侵入を阻止するための海上保安庁による警備や政府施設・サミット会場などの上空のドローンの飛行禁止などの措置をとる。テロリストとみなす活動家などの海外からの入国規制を徹底し、左翼勢力への監視と事前弾圧など、空前の治安弾圧体制を編成しようとしている。
 日帝―安倍政権は第四に、伊勢志摩サミットの成功をもって安倍政権の威信を高め、七月参議院選挙(衆参同日選挙)の圧勝へと持ち込もうとしている。GDPのマイナス成長や年始以来の株価の暴落が示すように、アベノミクスの破たんは明らかである。安倍政権はそのことを中国の経済成長の鈍化などの国際的条件の変化の結果であるかのように描きだし、来年四月の消費税増税の延期を画策し、衆議院解散・同日選挙を強行しようとしている。そして、改憲に必要な衆参両院での改憲派の三分の二の議席を確保しようとしているのだ。

  ●3章 反帝国際主義に立脚し、左派勢力の総結集で闘おう

 すべてのたたかう労働者人民に対して、われわれは伊勢志摩サミット闘争に総結集することを呼びかける。
 たたかいの第一の基軸は、反帝国際主義に立脚し、伊勢志摩サミット闘争を徹底した反戦闘争として組織することにある。伊勢志摩サミットの主議題は、「対IS」戦争「対テロ」戦争と称する帝国主義による中東での侵略戦争をさらに拡大し、朝鮮半島・東アジアでの共和国に対する軍事的包囲と戦争態勢をさらに強化することにある。まさに戦争を拡大するサミットである。このような反人民的なサミットを絶対に許すことはできない。しかし、日本における伊勢志摩サミット闘争は大きく立ち遅れている。昨年の戦争法制定に反対した勢力のほとんどがサミットに対する態度を明確にしていない。その根底には、これらの勢力においても帝国主義による「対IS」戦争「対テロ」戦争を擁護、容認するという立場が広く存在していることがある。
 日本共産党はISによる後藤健二氏殺害直後の声明(二〇一五年二月一日)において、「国際社会が結束して、過激武装組織『イスラム国』に対処し、国連安保理決議2170(二〇一四年八月)が求めているように、外国人戦闘員の参加を阻止し、資金源を断つなど、孤立させ、追いつめ、武装解除と解体に追い込んでいくことである」と主張した。そして、ISのパリ攻撃直後の昨年十一月十五日、「テロを世界から根絶するために国際社会が一致結束していくことが急務」だとする志位委員長談話を公表した。
 これらの声明では、アフガニスタン戦争・イラク戦争に始まり、現在のイラク・シリアでの有志連合のすさまじい空爆として継続する中東への侵略戦争への批判がまったく欠落している。いかにしてISを追いつめ、武装解除と解体に追い込んでいくのかという立場からのみ態度を打ち出したものとなっている。これらの声明において、日本共産党は「対テロ」戦争に反対してはいるが、それは「テロと戦争の連鎖」をつくりだすから有効ではないというものであり、帝国主義による侵略戦争として正面から批判しようとはしない。まさに反帝国主義という立場を解体させたものである。「国際社会」とは、帝国主義があたかも世界を代表しているかのように偽るために好んで用いる表現である。日本共産党は、このような「国際社会」という用語を無批判に用い、帝国主義との協調を唱え、帝国主義の侵略戦争への屈服を労働者人民に迫っているのである。
 この局面において問われていることは、反帝国主義という立場を鮮明に掲げることであり、帝国主義による中東での侵略戦争の中止と中東からの撤退を要求してたたかうことにある。そのことは、昨年の戦争法案に反対する全人民政治闘争がはらんでいた弱点、戦後の平和主義・立憲主義・主権在民を保守するという限界をこえて、日本の反戦運動を反帝国主義へと変革していくたたかいでもある。戦争法制の廃止を要求し、憲法改悪を阻止するたたかいと「対IS」戦争「対テロ」戦争と称する侵略戦争に反対するたたかいをしっかりと結合させていかなければならない。伊勢志摩サミット闘争は、そのことを先進的労働者人民に要求しているのだ。
 たたかいの第二の基軸は、共和国に対する軍事的包囲と東アジアにおける戦争態勢とのたたかいを正面から押し出していくことにある。安倍政権は、共和国による「水爆実験」と「人工衛星打ち上げ」に対してすさまじい排外主義キャンペーンを組織してきた。そして、国会においては一月八日、衆参両院において棄権した山本太郎参議院議員を除く全会派の賛成で核実験非難決議が採択された。また二月九日には、衆参両院で「弾道ミサイル発射非難決議」が全会派の賛成で採択された。まさに共和国非難の翼賛体制が形づくられている。
 しかし、何よりも批判されるべきは朝鮮戦争の終結を拒否し、共和国への軍事的包囲と戦争態勢を強化しつづけるアメリカをはじめとした帝国主義である。共和国は、イラクのフセイン政権がイラク侵略戦争によって打倒され、軍事占領された過程を眼のあたりにしている。共和国は、帝国主義による共和国への戦争を抑止し、戦争態勢と対抗するために核開発・弾道ミサイル開発を急いできた。われわれは、被爆者解放闘争に連帯し、すべての核兵器と原発の廃絶を要求する立場から共和国の核開発に反対してきた。しかし、そのことは帝国主義の共和国に対する軍事的包囲と戦争態勢を打ち破るために全力でたたかうこととしっかりと結合されていなければならない。ここにおいて、日本の労働者人民のたたかいは余りにも弱く、立ち遅れている。伊勢志摩サミットを通して、共和国への軍事的包囲と戦争態勢がさらに強化されていこうとしている中で、それはわれわれの反帝国主義、プロレタリア国際主義を問う主体的課題なのである。
 たたかいの第三の基軸は、反帝国際主義に立脚し、左派勢力の総結集で伊勢志摩サミット闘争を現地闘争としてたたかいぬくことにある。伊勢志摩サミット闘争をめぐる状況はきわめて厳しい。それは、世界的には「対IS」戦争「対テロ」戦争を焦点に、また東アジアにおいては共和国問題を焦点に、日本国内において排外主義の嵐が吹き荒れ、日本共産党や社民党をも含めて「新たな祖国擁護派」ともいうべき流れが強まってきているからである。この間の中東問題や共和国問題をめぐっての日本共産党の志位談話はその典型だと言える。
 そのようななかで、反帝国際主義に立脚し、左派勢力の総結集でたたかうことがますます要求されてきている。われわれは、戦争法を廃止し、憲法九条改悪を阻止していくために、最も広範な全人民政治闘争をつくりだしていくことを呼びかけてきた。同時に何よりも重要なことは、このような全人民政治闘争の内部において排外主義ともっとも意識的にたたかい、「新たな祖国擁護派」の流れと対抗しつつ、反帝国際主義という立場からたたかいを牽引していくことである。われわれは日本の階級闘争を規定しうるものとして左派共闘の形成を呼びかけてきたが、それは机上の議論によってではなく、まさに現実のたたかいの烈火の中でこそ前進させていくことができる。
 伊勢志摩サミット闘争において求められていることは、まさにそのような左派勢力のたたかいを伊勢志摩現地に登場させていくことにある。伊勢志摩サミットをめぐって、首都圏では「戦争法廃止! 安倍たおせ! 反戦実行委員会」などの諸団体によって実行委員会が編成され、五月八日の集会と五月二十二日の街頭デモ、サミット首脳会合時の現地闘争派遣が準備されてきている。関西においては、五月二十一日にサミットに反対する大衆集会を開催するために実行委員会が編成され、現地闘争の準備がすすめられてきている。また、東海においてもサミット前段の五月二十四日・二十五日の連続企画が準備されてきている。
 われわれは、これらの各地における取り組みを積み上げつつ、戒厳令的弾圧体制を突き破り、首脳会合開催時の伊勢志摩での現地闘争に反帝国際共同闘争として断固として決起する。ともにたたかうことを呼びかける。


 

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