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■米国における反戦・反帝国主義運動 国際部 この十数年間にわたる米国の民衆運動の展開は、反グローバリゼーション運動の高揚を刻印したシアトルWTO反対闘争、巨万の人々が参加したイラク反戦運動、ウォール街占拠から始まり瞬く間に全米・世界各地に広がったオキュパイ運動などを通して、全世界の人々の注目を集めてきた。アメリカ帝国主義が歴史的没落の趨勢をあらわにし、またそうであるが故に歴史の歯車を逆回転させようとして国内外を貫いて反動攻勢を強めているなかで、帝国主義の心臓部から生き生きとした人民の抵抗が生み出され拡大していることは、世界各地の抑圧された労働者人民を鼓舞している。 そのような米国の民衆運動・階級闘争の展開のなかで、とりわけ反戦運動の分野において、原則的・革命的な共産主義者とその党が重要な役割を果たし、たたかいの反帝国主義的・国際主義的な発展を牽引していること、それを通して党勢の一定の拡大を実現してきたことに、われわれは大いに注目してきた。それが、未完の先進国革命の実現に向けて、共産主義者はいかにたたかい、どのように階級形成を進めていくのかという問題と結びついた、すぐれて実践的な諸問題を内包しているからである。この論文では、この間の米国の反戦運動について、ANSWER連合のたたかいを中心にして振り返り、その米国および国際階級闘争における意義を概括することで、この問題を考察・深化するための序論としたい。 ●1章 ANSWER連合結成の意義 全世界の人々に衝撃を与えた二〇〇一年の9・11事件のわずか三日後、インターナショナルANSWERという連合組織が結成された。ANSWERとは「戦争をとめレイシズムを終わらせるために今こそ行動を」(Act Now to Stop War and End Racism)の略であり、そこに結集した諸団体・個人の共通の目的を示していた。その二週間後の九月二十九日、米国の首都ワシントンDCで二万五千人、サンフランシスコで一万五千人の人々が、ブッシュ政権のアフガニスタン侵略戦争に反対して街頭に繰り出した。こうしてインターナショナルANSWERのたたかいが始まった(その名称は後にANSWER連合と呼称されるようになる)。 急激に変化する情勢に素早く対応し、自国帝国主義の侵略戦争に反対する断固とした闘争を組織していったことにANSWER連合がつくりだした最初の意義があった。 当初、この年の九月二十九日には、一九九九年のシアトルWTO反対闘争を引き継ぐ反グローバリゼーションのたたかいとして、ワシントンDCでのIMF・世界銀行の年次総会に対する大規模な抗議行動が予定されていた。しかし、米国本土が歴史上初めて外部からの攻撃に直面するという事態は、この抗議行動にも大きな衝撃を与えた。9・11事件の直後から、米国内では「反テロリズム」と「愛国心」の大合唱が組織され、ブッシュ政権は急速にアフガニスタン侵略戦争に向かおうとしていた。FBIや州警察の権限が強化され、アラブ諸国の出身者やイスラム教徒が無実の罪で拘束され続けていた。かれらのコミュニティーに対する排外主義的襲撃も数多く引き起こされていた。こうした情勢のなかで、結局のところ、IMF・世銀の年次総会に対する抗議行動は中止されることになる。これに対して、ANSWER連合に結集した諸団体・個人は、予定されていた行動をブッシュ政権によるアフガニスタン侵略戦争に反対するたたかいへと切り替え、逆流に抗して反戦闘争に立ち上がるよう労働者人民に呼びかけていったのである。 当時の運動内部の雰囲気について、ANSWER連合のある活動家は次のように述べている。「政治的環境のラディカルな変化に直面して崩壊したばかりではなく、抗議を望んだ人々を非難したグループも多かったということを知っておくことは重要です。なかには街頭での抗議行動はもはやふさわしくないと言う人々もいました。かれらは続けてこう言います。世論はもはやデモを理解せず、われわれは厳しい弾圧を受けるだろう。今までとは違うのだ。米国が攻撃されたのだ。他の米国の侵略戦争のように、単なる抗議を始めることは出来ない、と」(二〇〇一年十一月第十回AWC―CCB会議への米国報告。公刊されている同会議報告パンフレットより)。 実際には、ANSWER連合が呼びかけた九月二十九日の反戦行動には全米で約四万人の人々が結集し、米国の内部にもブッシュの侵略戦争策動に反対して声を上げる人々が存在することを全世界に知らしめたのである。いわゆるリベラル派を含む広範な民衆運動の内部で萎縮と自己規制が発生するなかで、情勢に毅然と立ち向かい、反戦闘争への断固たる決起を呼びかけたことが、ブッシュ政権の動向に疑問や批判をもつ広範な労働者人民の心をつかみ、街頭へと引き出したのである。 もちろんこうしたことは、一朝一夕で可能になったわけではない。たたかいには前史がある。ANSWER連合に結集した人々、そのなかの原則的な共産主義者は、それ以前から自国帝国主義の侵略戦争に対する断固とした闘争を組織してきた。一九九一年の湾岸戦争に反対するたたかいや、二〇〇一年六月にニューヨークで開催された朝鮮戦争時の米軍の戦争犯罪を裁くコリア国際戦犯法廷はその一部である。また、ANSWER連合が反帝国主義を掲げ、世界各地の被抑圧人民の解放闘争への連帯を組織し続けてきた諸団体を中心に結成されたこともブッシュ政権の侵略戦争策動に対する断固たる闘争を可能にした要因であろう。結成当初のANSWER連合の全国運営委員会は次のような諸団体で構成されていた。インターナショナル・アクション・センター、自由パレスチナ連合、ムスリム学生協会、ハイチ支援ネットワーク、バヤン米国支部、朝鮮真実委員会、メキシコ連帯ネットワーク、ケンシントン福祉権利同盟、市民正義のためのパートナーシップ、IFCO/平和をめざす牧師たち、である。 ●2章 反帝運動としてのANSWER連合の活動 以降、ANSWER連合は米国内で最も活発な反戦連合体として、ブッシュ政権がアフガニスタンに続いてイラクに対する侵略戦争へと向かっていくなかで、さらにそのたたかいを拡大し、いくつもの反戦行動を組織していった。とりわけ二〇〇三年一月十八日の反戦デモにはワシントンDCに五十万人、サンフランシスコに二十万人の人々が参加し、ベトナム戦争敗北以来、米国での最大の反戦行動となった。これはANSWER連合が初めて呼びかけた世界同時行動でもあった。その後も全世界で一千万人以上の人々が参加した翌二月十五日の世界同時行動の一角を担い、三月十五日の世界同時行動、イラク戦争開戦当日の三月二十日およびそれを前後する緊急抗議行動と休むことなく闘争を組織し続けた。それは米国および世界各地の人々がイラク反戦運動に立ち上がっていくことに極めて大きな貢献を果たした。実際、戦争が始まる前から米国および全世界でこれだけの規模の人々が反戦行動に立ち上がるということは前例のないことであった。米軍がバクダッドを占拠した後も、ANSWER連合は、「占領は解放を意味しない」「イラク占領をやめ、今すぐ軍隊を国内に戻せ!」などのスローガンの下、米軍のイラク軍事占領に反対するたたかいを組織し続けてきた。 ANSWER連合は、こうした今日に至る反戦・反占領のたたかいを、米国内における差別支配、市民的権利の剥奪、貧困の拡大などに対する闘争と意識的に結びつけて提起し、そうすることで広範な人々をたたかいへと立ち上がらせてきた。それは「アメリカ帝国主義の海外と国内での戦争との対決」という言葉で表現されることもあった。実際、二〇〇一年愛国者法の制定に代表される治安管理・監視体制の制約なき強化、アラブ諸国の出身者やイスラム教徒のコミュニティーへの弾圧や非登録移民の取締りの拡大、巨額の戦費に圧迫される国家財政、一部の巨大独占資本・軍産複合体が巨額の利潤を得つづけている一方で極限的に拡大する貧困と格差など、まさに米国内の労働者人民が直面している圧迫はアメリカ帝国主義の侵略戦争、世界支配の現実と直接に結びついた問題である。問題をそのように提起することで、広範な人々を反戦・反占領のたたかいへと立ち上がらせると同時に、そうした労働者人民の決起を一過性のものにとどめるのではなく、社会システムそのものの根本的な変革をめざす闘争とへ導こうとしてきたことに米国反戦運動内におけるANSWER連合の活動の特徴と意義のひとつがある。 同時に、ANSWER連合は全世界の被抑圧人民の解放闘争への連帯を掲げた反帝国主義派の反戦運動としての性格を実践的にも鮮明にしてきた。ANSWER連合は、一貫してアメリカ帝国主義に支えられたイスラエルのパレスチナ占領に反対し、パレスチナ民衆の解放闘争への連帯を表明してきた。このことは米国反戦運動の反帝国主義的発展にとってとても大きな意味をもっている。パレスチナ民衆への連帯とイラク侵略戦争策動への反対を掲げてANSWER連合が呼びかけた二〇〇二年四月二十日のワシントンDCでの集会・デモには約十万人の人々が結集した。これは米国での過去最大のパレスチナ連帯行動となった。この取り組みの後に、ANSWER連合は次のように報告している。「このデモンストレーションはふたつの理由で画歴史的なものとなった。第一に、パレスチナ民衆への公然たる連帯を控えようとする米国の伝統的な平和運動のなかに存在するタブーを打ち破ったことである。第二に、米国の反戦運動が、あるいは少なくともその一部が、アラブ系アメリカ人、イスラム教徒、南アジア出身の人々との統一戦線を形成することができるということを明らかにした、ということである」。 この他にも、ANSWER連合は、性的少数者の権利のためのたたかい、移民の権利のためのたたかい、労働組合のたたかいへの支援、アフリカ系アメリカ人などへの警察の差別的な弾圧・虐待に対するたたかい、さらには米国のキューバ経済封鎖やベネズエラへの介入に反対するキャンペーンなど様々な活動を行ってきた。 総じてANSWER連合、そのなかの原則的な共産主義者は、アメリカ帝国主義の侵略戦争・世界支配に対する闘争を、米国内のマイノリティーと呼ばれる人々に対する差別支配・無権利の強制に反対する闘争と結びつけ、かれらを広範に結集させつつ、それを大衆的な基盤に社会と世界の根本的な変革に向けた闘争を組織しようとしてきたと言える。ANSWER連合自身はその核心を次のように振り返っている。「十数年前の発足以来、ANSWER連合の活動の中心的で一貫したテーマは以下のものであった。すなわち、@米国と世界における搾取・抑圧に対するたたかいの不可分の結びつき、Aアメリカ帝国主義の支配階級が米国の人民のみならず、世界の人民の第一の敵であるという事実、B世界を変えるための核心としての階級意識と戦闘的大衆運動の必要性、である」(二〇一二年一月第十五回AWC―CCB会議への米国報告。同会議報告パンフによる)。 ●3章 米国反戦運動内部の論争 すでに見てきたように、ブッシュ政権がイラク侵略戦争に突き進む過程で、それに反対する人民の巨大な決起がつくりだされた。そのなかで様々な反戦団体やその連合体がつくりだされていった。ANSWER連合を別として、その最も大きく著名なもののひとつが、二〇〇二年十月に結成された「平和と正義のための連合」(UFPJ)という反戦連合体であった。二〇〇三年二月十五日の世界同時行動を米国において主要に組織したのはこのUFPJであった。参加団体の規模から言えば米国最大の反戦連合体であり、そのなかにはいわゆるリベラル派から社会主義・共産主義を掲げる諸政党までが含まれていた。 このUFPJとANSWER連合は、米国のイラク占領への反対を中心的なスローガンにして二〇〇三年十月、二〇〇四年三月、二〇〇五年九月と三度にわたって全国的な統一集会・デモを開催してきた。これらの集会・デモはそれぞれ十万人規模(〇五年九月の行動は約三十万人の参加)で成功した。それは統一した行動によって米国政府に対してイラク占領の即時終結を迫力をもって突きつけようという広範な人々の要求に応えるものであったと言える。 しかし、こうした米国における反戦運動の拡大は、同時にその発展方向をめぐる不可避の論争をともなうものであった。二〇〇五年九月の集会・デモの後、UFPJはANSWER連合を批判する公開書簡を発表する。それは、この取り組みの運営をめぐってANSWER連合が両者の「合意事項に違反した」と非難し、それゆえ「UFPJ全国運営委員会は全国レベルではふたたびANSWERと連携した活動は行わない」(『ANSWERについてのUFPJの声明』〇五年十二月)というものであった。実際これ以降、両団体による統一行動は行われていない。そのような「違反」があったのかどうかを探ることはここでは重要ではないだろう。むしろ重要なのは、そのような批判の背景にあると考えるべき政治内容あるいは運動の発展方向をめぐる違いである。しかし残念ながら、UFPJの公開書簡はこの点については具体的なことは述べていない。 これに対してANSWER連合は、『UFPJへのANSWER連合の回答:反戦運動の統一に関するわれわれの立場』(〇五年十二月)という書簡のなかで、「合意違反」という非難を反駁するとともに、次のように両者の違いについて触れている。少し長くなるが引用しよう。「このふたつの連合体の間の論争の根本的な政治問題となったのは、パレスチナ人の参加、運動のリーダーシップにおけるアラブ系アメリカ人やイスラム教徒のコミュニティーの中心的位置、ハイチ占領について、であった。本質的にこれらの課題は反帝国主義的展望の一部であった。もうひとつの背後に横たわっている関連する問題は、UFPJが民主党への志向性と接近を強めていることである。これは普段は隠されているのだが、かれらの戦略的展望にとっては死活的なものになっている。UFPJ指導部の中心はジョン・ケリーと民主党の選挙のための休みなく活動している諸政党・諸組織であり、『左派―中道連合』というかれらの展望は、実際には民主党を支援することを意味している」「反戦運動にとっての問題は次のものである。われわれは全面的に帝国主義に挑戦する運動をつくるのか、それとも、明らかに一方的な軍事侵略など帝国主義が採用する特定の戦術だけに反対するのか? さらに、帝国の戦争によって最も影響を受けている人々やコミュニティーは単にこの運動の飾り物なのか、それとも、かれらはこの運動の真のパートナーであるのか? ということである」。ここには確かに米国反戦運動の政治的・大衆的な発展方向をめぐる諸論点が鋭く提起されていた。 ところで、ANSWER連合からUFPJ指導部に向けられた民主党に期待しているという批判は、単なる決めつけとは言えないものであった。実際、米大統領選挙に向かう過程の二〇〇七年六月に開催されたUFPJの第三回全国会議の報告文書は次のように述べている。「代表団は(活動の)優先事項を決定する投票をおこなった。最多得票は、議会に圧力をかけることであった。次いで、秋の大規模な動員、軍のリクルートへのカウンターおよび抵抗する軍人とその家族、退役軍人への支援であった」。これは実践的には、大衆行動ではなく、ロビー活動によって戦争・占領に反対する民主党議員を育成していくことを運動の主軸にすることを意味している。現実には、このような展望が無効であったことをわれわれは知っている。UFPJは今日でも存在しているが、もはや大規模に大衆を動員した闘争を組織しなくなって久しい。これに対してANSWER連合は「共和党も民主党もどちらも資本家支配階級の政党だ」「人民の運動だけが戦争・占領を止めることができる」として、二〇〇八年のオバマ政権の発足以降も、あくまで大衆とその闘争に依拠して活発にそのたたかいを展開してきたのである。 ●4章 反戦兵士の組織化、女性組織の結成 この章ではANSWER連合の活動と結びついた最近の組織的発展について簡潔に紹介したい。そのひとつは反戦兵士の組織化であり、もうひとつは女性組織の結成である。 二〇〇九年に「マーチ・フォワード!」(前に向かって進もう! の意味)という団体が結成された。それは、反帝国主義を掲げ、イラクやアフガニスタンからの米軍の即時撤退を要求する現役・退役の男女の米軍兵士で構成される反戦兵士の組織であり、現在まで軍隊の内外をつらぬく活発な活動を展開している。 「マーチ・フォワード!」は次の十項目の要求を掲げて出発した。@違法で不道徳な命令を拒絶する権利、Aアフガニスタンでの犯罪的占領の即時終結、B既存の将校団の廃止、C軍隊内のレイシズム、性差別、同性愛嫌悪をやめさせること、D退役軍人省への適切な予算配分、E雇用、住宅、医療、教育への権利、Fアメリカ帝国主義に奉仕している諸政府への軍事援助の即時中止、G恒常的な軍産複合体の即時解体、H利潤のために戦争を追求してきたすべての者たちの起訴、I米軍によるすべての被害者への完全な賠償の支払い、である。隊内民主主義の要求や種々の差別をなくすことなどとあわせて、米軍による戦闘で犠牲となった人々への賠償の実施を要求していることにも注目させられる。 以下の文章はマーチ・フォワード!の『戦争と利益』と題するリーフレットの冒頭である。「私たちは様々な理由で入隊した。ある者は大学教育へのアクセスを望んで。ある者は職業訓練と確実な給与の支払いを求めて。ある者は米国の市民権を得るために。またある者は誇りと愛国心を持ち、何か偉大で集団的な利益の一部となることを真に願って。私たちの多くはごく早い時期―まだ高校生の頃に、現金ボーナス、冒険、機会を約束するリクルーターにそそのかされて入隊を決めた。別の仲間は何年間か働いた後、軍の保険と住宅手当に惹かれて入隊した」。ここには貧困や無権利ゆえに軍隊に入隊する米国の若者の現実が、短いが端的に描かれている。 リーフレットは続けて言う。「私たちは米軍の兵士として自分たちは米国の利益を守っているんだと聞かされてきた。そこにはわずかな真実がある。しかし、ごくわずかだ。私たちは米国の特定の階級の利益を守っているのだ。イラクやアフガニスタン、米軍が駐留している百三十以上の国々に利益をもつごく少数の富める者たちの利益を守っているのだ」「私たちの敵は世界の別の場所にはいない。敵は企業の重役会議室やペンタゴンの高官たちのなかにいる。そうした敵を打ち負かすということは、かれらの帝国主義的計画に利用されることを拒絶し、真の正義を要求して互いを組織することだ」。 現在、マーチ・フォワード!は現役兵士にアフガニスタンでの従軍の拒否を呼びかける「私たちの命、私たちの権利」というキャンペーンをおこなっている。 さらに昨二〇一二年には、ANSWER連合の活動に参加してきた女性たちが中心となって、「ワード」(WORD)という女性組織が結成されている。ワードとは「抵抗と防衛を組織する女性たち」を意味する英語の頭文字をとったものである。ワードはこの年の八月二十六日の「女性平等デー」でのデモンストレーションからその対外活動を開始した。 ワードのミッション・ステートメントは次のように述べている。「女性の権利が激しい攻撃にさらされています。避妊と妊娠中絶を含む医療、保育、住宅、福祉、その他の手当が全米各地で削られています。私たちは政治家たちが私たちの生を手玉にとって政治的ゲームに興じていることにうんざりしています。いまこそ行動を起こすべきときです。いまこそ自らを組織し、反撃すべきときです」「右翼の攻撃を打ち負かす力強く新しい運動をつくりだすことが必要です。議員たち、政治家たち、その道の権威者たちに対して、かれらが私たちの自由を欲しいままにし、私たちを闇医での中絶と社会的不平等の暗い日々に連れ戻すのを許さないということ示すことが必要です。私たちは女性運動の成果を防衛し、すべての女性のためのより大きな正義をおし進めます。私たちは貧困層の女性やその家族が必要とする社会保障のために、経済的平等のために、性差別を終わらせるためにたたかいます」。 ワードは、@完全なリプロダクティブ・ライツの実現、A職場での女性の権利の防衛、B社会福祉予算の削減の中止、C完全な平等と尊重、という要求を掲げると同時に、反戦運動、レイシズムおよび警察の暴虐とのたたかい、移民の権利への支援などへの積極的な参加を行うことによって、その実践的・階級的性格を明らかにしている。 今年の3・8国際女性デーには「女性への暴力をとめよう! 現状を変えなくては!」というスローガンの下、全米各地でデモンストレーションが行われた。その呼びかけ文は次のように始まる。「立ち上がって! 私たちには性暴力を終わらせる力がある。私たち女性が今日もっているすべての成果、すべての権利は、闘争の結果です。反撃しよう!現状を変えなくては!米国では、百三十万人の女性が毎年レイプされており、四人に一人の女性が現在のパートナーか以前のパートナーによる暴力を受けています。報告されたレイプ事件のうち、起訴されるのはたった37%で、有罪になるのは18%だけ。女性は職場で脅され、米軍の女性はたくさんの性暴力にあっています。投獄された姉妹たちは恐ろしい目にあっていて、逃げ場がない。高校やキャンパスの若い女性たちは、日常的に脅され、攻撃され、レイプされています。こんなことは終わらせなくては!」。 ワードはまた、昨年十月に起こった沖縄での米兵二人による女性レイプ事件に対しても、ただちに「女性に対する攻撃を終わらせよう―軍隊は沖縄から出ていけ!」と題する声明を発している。 ●5章 反帝国際主義にもとづく連帯の発展を 以上、ANSWER連合のたたかいを中心にして、米国反戦運動を概括してきた。そこにおける論争をはらんだ展開および組織的発展は、われわれにとっても極めて示唆的・教訓的である。 今日、このANSWER連合のたたかいを政治党派として牽引しているのはPSL(社会主義解放党)である。この党は二〇〇四年六月にWWP(労働者世界党)から分裂して結成された。この分裂は今日では結局のところ、綱領や政治路線の違いというよりは、むしろいかに労働者人民を組織し、階級形成を進めていくのか、そのために党はどのように活動すべきなのかという実践的・組織的な路線の違いに起因するものであったと見ることができる。ここではそのような分裂の是非をめぐる評価はいったん置くとして、いずれにせよPSLを結成した部分はANSWER連合への影響力を維持し、WWPはインターナショナル・アクション・センターを中心にして別のかたちで大衆的な反戦運動を展開することになる。その後、PSLは党として公式にANSWER連合の全国運営委員会の一団体に加わった。本来ならば、ANSWER連合による反戦・反帝国主義闘争の展開と同時に、それを牽引するPSLの綱領や共産主義の実現に向けた展望の評価、党による政治指導、階級の組織化・階級形成という観点からの米国における反戦・反帝国主義運動の展開の捉え返しなど、党の活動と大衆運動の展開を立体的に評価・考察する必要があるが、それについては次の機会に譲りたい。 今日においても、ANSWER連合は米帝・オバマ政権によるリビア空爆や直近のシリア軍事攻撃策動に反対する闘争など活発にそのたたかいを展開している。そのたたかいはまた、リビアのカダフィ政権(当時)やシリアのアサド政権の性格を理由に、アメリカ帝国主義の軍事侵略に対する反対を呼びかけることに躊躇する部分に対する論争を含めて展開されてきた。そのような論争もまた別の機会に紹介したいと考える。 最後になるが、ANSWER連合は、二〇〇一年十一月に初めてAWC―CCB(キャンペーン調整委員会)会議に参加して以来、二〇〇五年香港WTO反対闘争、二〇〇八年G8洞爺湖粉砕闘争、そして今年三月の台湾でのAWC―CCB会議など、今日に至るまでほとんどすべてのAWCによる反帝国際共同闘争に参加し続けてきた。そのような米帝本国の反帝国主義勢力の継続した結集は、反帝民族解放闘争をたたかうアジア諸国・地域のAWC参加団体を大きく鼓舞するものとなってきた。われわれ日本の共産主義者、反帝国主義闘争を推進する日本の労働者人民にとっても、アメリカ帝国主義の内部から反戦・反帝国主義闘争を推進するANSWER連合やそれを政治的に牽引するPSLに代表される原則的・革命的な共産主義者の党との結合は、日米間のみならず、アジア太平洋地域における反帝国際共同闘争の前進、沖縄・日本「本土」を含むアジア太平洋地域から米軍を総撤収させていくたたかいの展望に関わる重要な問題である。世界の被抑圧人民との実践的な連帯を鮮明にした帝国主義足下の反戦・反帝国主義闘争の相互の結合と連帯ということが重要なのである。われわれは反帝国主義・プロレタリア国際主義の旗を高く掲げ、アジア・世界の反帝民族解放闘争勢力、さらには帝国主義本国内の原則的・革命的な反帝国主義・社会主義勢力と連帯し、労働者階級・被抑圧人民の解放と共産主義の実現をめざして、われわれの共同のたたかいをさらに前進させていくだろう。 |
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