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■6月10日 東京 狭山事件の再審を求める墨田集会 石川一雄さん、早智子さんがアピール 六月十日、墨田区社会福祉会館において「差別捜査・差別報道・差別判決を問う!狭山事件の再審を求める6・10墨田集会」が行われました。会場には部落解放同盟墨田支部の方や地元の労働組合・市民団体など百名以上が参加。とくに今年の墨田集会は、地元小学校で解放教育を取り組んでいる若い教師の方がたくさんの同僚・後輩や生徒らと一緒に参加しているのが特徴的でした。 主催者で墨田解放共闘代表の方が「この間墨田では石川さんの無実を勝ち取るための取り組みを一貫して行ってきた」と、解放共闘のこれまでの活動を簡単に紹介。そして「これまでの三者協議で百八十五点の証拠開示が勝ち取られている。すべての証拠開示と事実調べを行わせることが重要だ」と述べ、「石川さんの無実を確かなものとし、明日からのたたかいにつなげていこう」と挨拶しました。 次に、スケジュール多忙な中駆けつけた石川一雄さんからアピールがありました。石川さんは「いよいよ裁判は大詰めを迎えている。今年には裁判官も結論を出すのではないかと思われるが、油断はできない。司法を追い詰めていくには、裁判所・検察に対するたたかいを一層強めていかなくてはならない」と述べ、自らの心境を「訴え出て全速力で五十三年、梅雨入りなのに狭山も晴れず」という短歌にしたためました。そして「検察側が隠している証拠をひとつ残らず出させていくたたかいが必要。そういう意味で、東京高裁・東京高検に対する抗議要請はがき運動の拡大は非常に心強い」と述べ、「私のえん罪が晴れたら部落解放が実現されていくと思う。皆様の支援を糧に、涙をこらえてこれからもたたかい続けます」と結びました。会場からは大きな拍手が送られました。 つづいて、石川早智子さんからアピールがありました。早智子さんは冒頭「この間私たちの家の写真が無断で撮られ、車のナンバーまで写され、それがネットを通じてばらまかれている」と述べ、「私はこれまで部落出身であることを職場で隠してきた。多くの部落の仲間が就職差別や結婚差別を今も受けている。そういう怒りや悲しみを真剣にとらえようとしないのは絶対に許せない」と、部落差別に対する激しい怒りを訴えました。そして「五月十七日の東京高裁前アピールで、五十年前の東京拘置所からの手紙をわざわざ持って来てくれた人がいた。手紙を大切にとっておいてくれたと思い、五十三年間のたたかいが意義あるものだったと改めて実感した」とのエピソードを紹介し、「石川一雄の両手にかかっている手錠を必ず外す、と改めて訴えたい。皆さんのご支援をよろしくお願いします」と結びました。早智子さんは話したいことが山ほどあり伝え切れない思いであふれていました。 石川一雄さん・早智子さんからアピールの後は、狭山弁護団・山本志都(しづ)弁護士からの報告です。山本弁護士はまず、再審の手続について紹介。「そもそも再審とは確定判決に対する事実認定の不当を救済するために認められた救済手続であるが、再審理由は『明らかな証拠を新たに発見した時』という厳しい要件が決められている」と述べ、「さらに、再審無罪を勝ち取るには東京高裁への再審申立などひとつひとつの手続にとても時間がかかる」と解説。狭山第三次再審を勝ち取るためには継続した粘り強いたたかいが必要なのだと改めて思いました。 次に山本弁護士からは三者協議、とりわけ証拠開示の現状についてお話がありました。山本弁護士は石川さんの「自白」がいかにして作られたものであるかを示す「取調べ自白テープ」を直に聞いたそうです。その録音テープは脅迫などで石川さんを自白させたのではないことを指し示すため東京高検側が開示したものですが、山本弁護士の話では「実際にテープを聞いてみると、検察側にとって都合の悪い部分は削除されてしまっている」とのこと。さらに山本弁護士は「狭山事件の脅迫状(真犯人の筆跡)と不当逮捕された当日に石川さんが書かされた上申書とは筆跡が明らかに異なっている。筆跡・書字能力・脅迫状・封筒などの状況から石川さんが真犯人でないことは明らかだ」と述べました。「二〇〇九年に開始された三者協議は今年五月で二十八回を数え、すでに百八十五点の証拠が開示されてきている。しかしまだまだ多くの証拠が不当に隠されている。東京高検は狭山弁護団の要求に対し、『不見当』(見当たらない)との文言でごまかさず、誠実に応えるべき」と検察への怒りをあらわにしました。結びに山本弁護士は「この間数々のえん罪事件で無罪判決が次々と勝ち取られてきている中、世論はえん罪を許さないという方向に動いている。そのうねりをバネをしつつ、さらなる証拠の開示・新証拠の提出を検察側に求め、事実調べを請求し、再審開始決定を勝ち取ろう」と訴えました。 弁護団報告の後は、解放共闘の皆さんによる構成劇です。墨田の狭山集会で行われる構成劇は集会の参加者から毎回好評を博していますが、今回のテーマは「みんなで石川さんの無罪を勝ち取るぞ」。狭山事件が部落差別による事件であることに焦点をしぼって演じられました。構成劇では、狭山事件の差別捜査がいかにひどい人権侵害だったかを伝えていました。五十三年前、警察・検察・マスコミ・地域住民が一体となって被差別部落の石川さんを罪に陥れたのです。劇の中で、解放同盟の方が話していました。小学校の頃部落、部落といじめられた時、「何言ってるの? 部落って石川さんの無実を晴らすために頑張っているところなんだよ!」といじめをはね返したそうです。また、劇の中で解放共闘の方が「狭山のたたかいは人の尊厳を守るたたかい」「組合で狭山現地調査やフィールドワークに参加し、狭山事件の本質を知った」「集会前に行った駅頭情宣で、狭山の映画を見たという女性が真っ先に再審要請署名をしてくれた。たたかいの輪をもっと広げたい」とそれぞれ熱い思いを語っていました。「みんなで石川さんの無罪を勝ち取るぞ!」とこぶしをあげて構成劇は締めくくられました。 集会の終わりに解放同盟墨田支部の方が「石川さんのえん罪を晴らすため、皆で声を上げ、支援の輪を広げていこう」と挨拶しました。「東京高裁・東京高検に抗議要請はがきを出して、再審開始を実現しよう」と呼びかけると、会場にいた人たちは次々とはがきを手にし、自分の思いをはがきにしたためていました。 狭山事件の「犯人」として五十三年もの長きにわたり見えない手錠をはめられている石川一雄さんは、絶対に無実です。徹底した証拠開示と事実調べを求め、第三次再審請求と再審・無罪を何としても勝ち取るため、地域から、職場から共に声を上げていきましょう。 (首都圏在住労働者) |
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