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    11・26-27 山口

  2011岩国行動報告
 




 ■11・26 岩国労働者反戦交流集会

 全国から100名の労働者結集

 熱気あふれる多彩な闘いの報告




 最初のプログラムは、岩国住民を交えての交流会であった。
 まず最初に、田村順玄岩国市議から岩国市の現状報告が行われた。
 「岩国基地への垂直離着陸機オスプレイの配備を前提とした環境調査が行われようとしている。米軍属の公務中の飲酒運転事故等についても日本側が起訴できるように日米間で合意した、と大きく報じられたが、それは昨年九月七日の岩国での米軍属の『事故』には適用されない。しかもそれについて岩国出身の平岡秀夫法相も、『岩国の件は別だ、済んだことだ』とだんまりを決め込んでいる」「十一月二十三日に、私たちは愛宕山で六百人の集会を持った。その翌日に市長は県知事を訪ね、愛宕山を防衛省に売る、ということを伝えた」「岩国は『超法規』の状態に置かれている、無法の街になっている。数えきれないほどの理不尽なことがまかり通っているのが現状である。現知事も、市民の心を持って執務している、というようなことは絶対にない」。
 続いて「住民投票の成果を活かす岩国市民の会」の大川清牧師が登壇し次のように発言した。
 これまで、金と圧力によって岩国市民は何度悔し涙を流したことかわからないが、そのつど信念を持って、目先の利益にとらわれず、立ち上がってきた。
 愛宕山のことは、岩国市民に対するだまし討ちだ。詐欺だ。その片棒を担ぐようなことを、市や県がやっていいはずがない。騒音対策、安全対策のためと言われて、千五百億もの税金を投じて、フタを空けたら米軍住宅と米軍関連の施設が出来る、などということは許されない。沖縄のことも(地位協定の)単なる「運用の改善」なのであって、当たり前の内容。これで辺野古や岩国に基地を持ってこられたらたまったものではない。
 「トモダチ作戦」で米軍が使ったお金はわずか六十億円。それで米軍は二千億円の思いやり予算を五年間分獲得した。一兆円の思いやり予算は、震災被災者のために使うべきで、米軍のために使うべきではない。
 皆さんもそうだと思うが、自分たちの街の未来のことや命のことというのは、どんなに苦しめられても諦めてしまっていいことではない。これからも、全国からの応援を得ながら、がんばって行きたい。
 続いて「愛宕山を守る会」代表、「愛宕山を守る市民連絡協議会」代表の岡村寛さんが発言に立って次のように述べた。
 十一月十二、十三日の五会場での住民説明会で、九割九分の人はもう今回の決定に反対だ、という意見を表明していた。説明会は一会場あたりわずか二時間で無理やり打ち切られた。
 もし愛宕山が米軍に提供されると、彼らはさらに二十年三十年と言い続けることになる。われわれはこのような重大な決定を市長に任せた覚えはない。福田市長の結論はまことにお粗末だ。県知事が引いたレールに乗っかっているだけだ。二井知事は四期目で来年で終わるが、その最後に愛宕山を売り払われたのではたまったものではない。
 岩国市の平地の25%が米軍基地になってしまう。一万人を越す米軍関係者が加わる。交通事故も増える。市民とのトラブルもまたまた多くなる。
 「基地の街」という烙印を一度押されてしまえば、将来の発展の芽はつぶされ、進出しようという企業もなくなる。そういうことを今後二十年も三十年続けられたら、岩国は何の発展性もない街になってしまうのは明らかだ。こういう状況はもう、やめにしていただきたい。岩国市民としての誇りも全くないような岩国市を作りたくない。
 本気で反対した人間がいた、ということを後世の人たちに示すためにも、必死になって頑張りたい。
 最後の発言は、岩国爆音訴訟の会事務局の、藤川俊雄さんからだった。
 藤川氏は、帝人グループのプラント機械の会社に勤めていた。モロに「上空制限」の影響を受け、帝人岩国はプラントの増設ができなくなり、今から二十二年前に四国に転勤になった。基地によって人口が流出し、グループの企業がなくなり、岩国市自体が衰退していくんじゃないかと考えて、爆音訴訟に関わった、という。発言は次のようなものであった。「訴訟は一昨年の三月に提訴して、六百五十四名の原告、二百八十世帯で取り組んでいる。艦載機部隊の移駐をも差し止めることを盛り込んでいる。これは『愛宕山に米軍住宅を作ってはいけない』ということにつながる。移駐となれば飛行機の数は百六十機にもなる。安全な離発着はできるのか。また民間空港ができれば、家の近くまでエンジンをふかしながら飛行機が駐機場までやって来るわけで、これも新たな騒音問題になるはずだ。こうしたことも踏まえながら、AWCの皆さんには全国で岩国のことを広めていただきたい」。
 以上の発言を受けた後、質疑応答が行われた。



 ■11・26 岩国住民との交流会

 「愛宕山米軍住宅建設反対」の意志鮮明に

 全国に岩国の現状広めるよう訴え


 十一月二十六日に開催された岩国労働者反戦交流集会には、全国から約百名の労働者が結集した。
 十一月二十四日に山口県二井知事と岩国市福田市長が愛宕山開発跡地を国に売却する合意を発表し、いよいよ愛宕山開発跡地問題が重大な局面を迎える中で行われた集会は、岩国基地大強化と愛宕山米軍住宅建設を阻止する闘いへの決意を固める場となった。
 集会は、陣内恒治さん(全港湾大阪支部)の司会で始まり、参加者から各地での闘いの報告や意見提起など多彩な発言が十八団体・個人から行なわれ、熱気にあふれるものとなった。
 集会冒頭に学生団体の「あすじゃ」から、フィリピン・ミンダナオで十月に国軍の空爆が行なわれ、二万人に及ぶ避難民が発生しているという事件の報告があった。
 基調提起の後、参加者からの報告、意見提起が集会の最後まで途切れることなく、次々と行なわれた。
 福山ユニオンたんぽぽとスクラムユニオンは、フィリピン人実習生に対する差別と暴力職場での闘いを報告。
 ユニオンぼちぼちは非正規や失業中の若者労働者が居場所作り、仲間作りを模索する中から、社会状況に目を向け、繋がって行動していける組合活動を目指していると報告。
 全港湾建設支部は、定年再雇用拒否に対して、労働委員会、裁判闘争と合わせて、九月から連日会社の前で座り込み闘争で闘っていると報告。
 連帯労組山口からは、福島原発事故での労働者の被曝問題と、原発反対の闘いを被曝労働、核武装、原発輸出による侵略の三つの観点で闘おうとの意見提起が行なわれた。
 AWC首都圏の仲間は、「神奈川では国道十六号線に沿って基地が集中している。横田の統合司令部を中心に日米軍一体化が進行している。反原発の闘いと共に反基地を闘う」と報告。
 辺野古に基地を絶対つくらせない大阪行動は、真実を伝えないマスコミを批判し、コツコツと闘いを積み上げていこうと呼びかけた。
 郵政労働者ユニオン福岡からは、日本最大の非正規労働者(二十万人以上)の職場で六十五歳以上の雇いどめが起こっている問題と、築城基地に対して毎月行なっている座り込み抗議などの反戦の闘いを報告し、労働組合が積極的に参加することで反戦運動はもっと大きく広がると提起した。
 ユニオン北九州からは、You tubeで有名になった争議の現状報告。「暴力会社の支配と闘い、必ず勝つ」と決意表明。
 ピースリンク広島・呉・岩国は、「平和産業港湾都市化を理念にしている呉市だが、海軍や『戦艦大和の故郷』を観光の目玉にしている。PKO派兵以来、人道支援や海賊対策などの名目で自衛隊の派兵が当たり前になっている」と警鐘。
 沖縄からは、辺野古の環境アセス、与那国島、宮古島の自衛隊基地建設、育鵬社の教科書採択、これらは沖縄の反基地闘争の成果を潰し、沖縄戦の歴史までも消し去ろうとする公民化攻撃だとの発言があった。
 関西共同行動は、「憲法審査会が動き出し、非常事態法まで議論され始めた。原発事故で政権は危機感を深めている。日本の核武装と直結する『もんじゅ』の再稼働を絶対に許さない闘いを」と呼びかけた。
 全日建連帯労組・関西地区生コン支部は、労働者の闘いに対する弾圧の実態とこれへの反撃、沖縄意見広告運動についてアピールした。
 大阪全労協は、翌日の大阪ダブル選挙の状況を報告し、「権利は闘いなしには守られない」と訴えた。
 元・闘う国労闘争団を支援する京都の会からは、二十四年間の国労闘争終結の報告と新たな闘いへの決意表明。
 首都圏の公務労働者は、教科書問題について報告し、「子どもたちを戦場に向かわせる教育と労働者に権利を主張させない教育は一体のものだ」と訴えた。
 北九州の教職員女性たちは、母親たちと女性教職員の語り合いの場を作って継続していくことの意義を語った。
 岩国の教育労働者は、市民を騙して基地強化を進める市政を批判し、「岩国が極東最大の基地になることは体を張ってでも阻止する」、と決意表明。
 集会のまとめとして、全日建連帯労組近畿地本の垣沼陽輔さんが、「米軍基地はいらない。米軍住宅は作らせない。権力も必死で弾圧をしてきているが、反戦・反核の運動は労働運動、市民運動の垣根を越えてどんどん広がっている。〇九年に民主党政権になってから野田内閣が一番悪い。悪い政治は闘いによってしか変えられない。ともに頑張ろう」と締めくくった。



 ■11・26 学生青年交流会

 岩国住民・韓国ゲストを交え活発に意見を交換



 十一月二十六日、岩国行動一日目、住民交流会が終わった後、学生青年交流会が開かれた。主催したのは学生団体「あすじゃ」とSYNだ。「住民投票の成果を活かす会」大川清さんと、クンサン基地反対闘争を展開している韓国の活動家二名を約二十人が囲んで交流した。
 最初に大川さんが、「岩国に来て十二年になりますが、その前は北海道の泊原発近くの教会に住んでいました。原発と基地、それぞれ国策として国が押し付けるのは良く似た構造です」と発言の口火を切った。
 「昨年九月の米軍属による人身事故は結局、不起訴になりました。〇七年の女性暴行事件もそうです。基地の町の住民はみな不安を抱えています。戦闘機が移駐して米兵が増えたら事件も増えるのは、火を見るより明らかです。住民にとって米軍は『抑止力』ではなく、『脅威』そのものです。愛宕山の売却についても、市民はなにひとつ納得していない。合意していません」と大川さんは静かな口調で、しかし怒りをこめながら語った。そして故・小田実さんが語った言葉を引用して、「『わたしたちは微力だが、無力ではない』。街の未来をあきらめず、平和をまもるためにたたかいます」と締めくくった。
 つづいて韓国からのゲストもまじえて、質疑応答にうつった。
 駐韓米軍に対する世論はどうかという問いに、韓国のある活動家は「駐韓米軍は、『北の脅威』に備えるためということで正当化されてきました。しかし米軍再編が進む中で、実は米軍がいつでも好きな地域へ行くために韓国に駐留しているということが、活動家だけでなく広く一般に認識されるようになりました。チェジュ島の海軍基地建設はその典型例です」と応答。
 「日本でいまTPP交渉入りが問題になっていますが、野田政権は普天間基地移設が進まないのでアメリカの機嫌をとるためにTPP交渉に入った、という意見もあります。米韓FTA締結と駐韓米軍問題はどう関係しているでしょうか」という問いには、「もし自分が大統領だったら、アメリカに対し『これだけ米兵犯罪が多いのだから、FTAで譲歩しろ』と迫るでしょう」とジョークを含ませながら、「しかしイミョンバクは骨の髄まで親米です。駐韓米軍駐留協定(SOFA)の改正を求めることすらできない。この間、米兵による女性暴行が繰り返されましたが、逆にアメリカ政府が『SOFAの運用改善』をみずから申し出る始末です」と応答。
 質疑応答は続く。「労働組合の青年たちは日々の労働に追われていて、基地問題を考える余裕がない。韓国では若い労組員がたくさん基地反対闘争に加わっていると聞きますが、どうでしょうか」。この質問に対する答えは、資本主義自体の批判からはじまった。「資本主義の最大の矛盾は、過剰生産だと思います。作りすぎてしまうので、たとえばFTAを使って消費しようとする。とくにアメリカは民主党であれ共和党であれ、危機に陥ると戦争をおこしてまで、過剰生産物を消費しようとします。ここに労働者が反戦闘争をたたかう理由があるのです。いま世界が大恐慌に至ろうとしています。かつて日本の労働者がベトナム反戦運動に立ち上がった経験を、私たちも学びたい」。
 こうした質疑応答のほかに、東北の被災地支援に行った学生から、「仮設住宅に住んでいる人に話を聞いた。街づくりから疎外され、孤立した住民のなかには自殺する人もいる。街のことを決めるのは誰なのか、大川さんの話を聞いて改めて考えました。街のことを決めるのは住民です。国が一方的に全部決めるやり方を変えなければ」との感想も出た。また、フィリピン・ミンダナオ島を訪問した学生は、「9・11以後、米比合同軍事演習という名目で、米軍が空爆を繰り返しています。数万人が避難を余儀なくされています。この米軍は沖縄の高江で訓練した部隊です。しかしミンダナオでおこっていることは日本でほとんど知られていません」と意見を述べた。
 こうして交流会は密度の濃い応答が繰り返され、成功して終わった。



 ■11・27 岩国国際集会

 岩国の闘いを全国、アジア―世界へつなげる


 市民激励し、基地への抗議デモ打ち抜く


 十一月二十七日、シンフォニア岩国において「岩国国際集会」がアジア共同行動日本連の主催で開催された。集会後には、岩国市民を激励する岩国基地への抗議デモがたたかいとられた。
 集会開始に先だち、会場では「岩国のたたかい」と題したDVDが上映された。この間の岩国市民の反基地闘争の様子が映し出され、それを見る集会参加者は意気を高めている。前日から取り組まれている一連の岩国行動に参加する労働者、学生、市民の熱気が、会場を満たしている。
 そして午前十時から、AWC九州・山口の阿部さん、AWC首都圏の遠藤さんの司会で集会が開始された。
 まずはじめに、東日本大震災で亡くなった方々にむけた黙祷が行われた。ひきつづき、アジア共同行動日本連の共同代表である白松哲夫さんが開会あいさつに立った。白松さんは「二日間にわたって取り組まれる岩国国際集会を、世界人民の反帝闘争の一環として私たちは取り組んでいく」とたたかう決意を明らかにした。
 つづいて、岩国からの訴えとして岩国市議の田村順玄さん、「愛宕山を見守る会」代表の岡村寛さんが登壇した。田村さんは、「在日米軍地位協定の『運用改善』が報道されているが、昨年に起こされた岩国での自動車ひき逃げ事故は『適用除外』とされている」という事実について訴え、「航空祭では、私の入場を拒否するという事態になった。米軍が岩国市民をどう見ているのかが明らかとなっている。本質的に市民を敵視しているのだ」として、軍事基地と住民生活が相容れないことを鮮明に打ち出し、反基地闘争への決意を明らかにした。
 岡村さんは、「岩国はいま、正念場を迎えている。国は山を買おうとし、県は責任を放棄し、負担と決断を市民に押し付け、市は基地を容認する行動を取っている。そして跡地を国に売却するのが、岩国市民の民意だと宣言して、手続きを進めようとしている。これらいずれも『超法規』とうべきもので、認めるわけにはいかない」との立場を明らかにし、裁判闘争や住民説明会で、粘り強く闘い抜いてきた経過を報告した。岩国住民の発言を受けて愛媛大学の本田博利さんも登壇し、「これだけ岩国がめちゃくちゃなのは、まず首長の決断ありきで、あとづけしていくからだ。住民の意思が全く無視されている。それは裁判闘争にも表れている。岩国市のやり方は常軌を逸している」と弾劾した。
 沖縄・名護市議の川野純治さんは、「米軍再編反対のたたかいは継続して取り組まれている。岩国も辺野古も、米軍にとって使い勝手のいい、新しい軍事基地をつくるということだ」として、アセス報告書の提出を許してはならないと訴えた。神奈川の県央共闘の檜鼻さんからの連帯メッセージがAWC首都圏によって代読された。
 次に、韓国ゲストの発言だ。まず司会から、韓国政府による入国拒否弾圧に反対する署名が呼びかけられた。そして韓国ゲストが登壇した。群山米軍基地わが土地取り戻し市民の会のユン・チョルスさんと群山飛行場被害対策住民協議会のハ・ウンギさんの二人だ。ユンさんは、駐韓米軍基地内で、燃料やアスベスト、枯葉剤など有害廃棄物が埋められ、環境汚染によって周辺住民の生活が破壊されている実態について説明した。そして、これに一切責任をとろうとしない米軍の無責任性を弾劾した。ハさんからは、「岩国と群山はよく似ている。基地の維持拡張が住民に基地被害をもたらしている」として、あきらめず共にたたかっていこうと訴えられた。
 つぎに滞日フィリピン人組織のミグランテ名古屋の代表が発言に立った。まず参加者と共にシュプレヒコールをあげ、「日本、韓国、フィリピンの民衆が肩を並べてたたかっていることを全世界に示そうではありませんか。国際連帯万歳!」と発言し、会場を盛り上げた。つづいて台湾人権協会からのビデオメッセージが上映され、国際的な民衆連帯を実感するものとなった。つづいて、労働者実行委から全港湾大阪支部の大野さんが発言にたち、「この集会の経験をさらに広げて、来年も多くの人々を結集させていく」との決意を明らかにした。被爆二世の会からは、上関原発の建設阻止のたたかいの報告がおこなわれた。あすじゃ・山口の学生は、このかん取り組んできた被災地支援や反原発闘争の報告を行い、その思いを詩にして読み上げた。
 最後に、司会が集会決議を読み上げ、参加者全体で採択し、集会を締めくくった。
 さあ、デモ行進だ。岩国市民を激励するために、参加者それぞれが工夫をこらしてつくったプラカードやのぼり、横断幕をかかげて岩国市内を行進する。にぎやかなデモ行進に、行き交う住民も注目している。岩国基地正門にたどり着くと、デモ参加者は怒りのシュプレヒコールを米軍基地にたたきつけた。そして、岩国基地そばの公園までのデモ行進を貫徹し、一連の行動を終えた。



 ■11・27

 愛宕山・岩国基地フィールドワーク参加者の感想

 ●愛宕山

 だまし打ち許さず、住民と共に闘う決意を固める



 私は、「安心して暮らせる岩国を子どもたちに残したい」と日々たたかっている岩国の方々に会わせたいと、友人達を岩国集会に誘った。そして、五日朝、攻防の地である愛宕山のフィールドワークに参加した。AWC山口の方に愛宕山現地を案内していただき、説明を聞いた。
 フェンスの向こうは、去年は更地であったのだが、左手奥には大型クレーンが立ち、手前の方では建物の基礎工事が始まっていた。米軍住宅の建設が始まったのかと思い、どきっとしてしまった。さすがにそれはありえないのだが、この間の自治体や国の詐欺師まがいの対応を伝え聞いていると、つい錯覚してしまう。
 神社のあった愛宕山は鎮守の森で、四季を通して地元の方々のいこいの場だった。数年前、米軍基地を沖に移す為に、愛宕山を削ってその土砂で海を埋め立てることになった。
 地元の地権者の方々は、悲願であった騒音軽減が叶うということで、一大決心をして愛宕山がなくなることに同意されたという。さらに、その跡地に住宅供給公社が請け負ってニュータウンを作るという県の計画も提示され、それならそこに孫子を呼び戻すこともできると地権を手放すことを決意されたのである。
 ところが、最終的には、沖合に移された基地には厚木から騒音のひどい戦闘機が来ることになり、愛宕山の跡地には、孫子ためのニュータウンではなく米軍のための住宅ができることになったという。
 友人達は、愛宕山の跡地を見つめながら、「住民の幸せや安心安全を保障していく国や地方自治体が、法からはずれたことをして良いのか。人を騙すようなことをして良いのか」と、憤りを隠せない様子だった。「岩国の方々頑張れ。周りの人に伝えたい」と、私たちは、岩国の方々と共にたたかう決意を新たにした。



 ●岩国基地

 訓練増加で騒音被害拡大、基地は全て廃棄すべき



 十一月二十七日、午前八時すぎからの岩国基地フィールドワークに参加した。労働組合のマイクロバスに乗車し、アジア共同行動九州・山口の仲間が運転する乗用車の先導で岩国基地へと向かう。
 岩国市内から海の方角に向かって進んでいくと、広大な敷地がフェンスで囲われているのが見えてくる。二〇一〇年も岩国基地フィールドワークに参加したのだが、当時フェンス内は、重機が見えたりしてまだ工事の途中という感じであったのが、米兵用の新しい宿舎が建っていたりバスケットコートなどの施設が作られているなど、巨大な軍事空港が目の前に存在しているということを実感した。
 フィールドワーク当日は、飛行訓練などが行なわれていなかったので、実際の騒音などは聞くことができなかった。しかし、アジア共同行動九州・山口の仲間の説明では、二〇一〇年五月二十九日から新滑走路の運用が開始されたが、「騒音の軽減」どころか以前にもまして訓練が頻繁に行なわれるので、騒音がひどくなっているという。
 そして、基地滑走路北側の「パブリックアクセスロード」へと進んでいく。ここは以前、海沿いに市道があった場所であり、地元の人たちが海釣りを楽しんだりしていたのだが、滑走路沖合移設で市道が埋め立てられ、消滅してしまった代替施設として整備されたという。入り口には、ここから米軍施設であることが表示され、看板には利用にさいしてのさまざまな「注意書き」が書かれている。もともと岩国市民の公共の場であった市道を、米軍が占拠し、それを岩国市が米軍の「許可」を得て市民に利用していただくものだとされている。先をどんどん進んでいくと、基地側の側面沿いは高い塀とフェンスが張られ、さらには有刺鉄線まで設置されているなど、パブリックアクセスロードとはとても言える代物ではない。
 フィールドワークを終えて感じたこと。アメリカ国内では深刻な財政難から軍事費の削減が保守の内部からも叫ばれている現状にもかかわらず、ここ日本においては軍事基地は別物扱いで、労働者人民から徴収した税金が湯水のごとくつぎ込まれている。その軍事基地は、朝鮮半島や中国、アジア諸国地域を最新鋭の軍事兵器で威嚇する巨大な基地であり、アジア諸国地域の労働者人民にとっては脅威でしかないはずだ。こんなものは日本の労働者階級人民にとって「百害あって一利なし」であり、すべて廃棄すべきだとあらためて感じた。



 

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