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 ■4・14  山口

 被爆二世らが中国電力等に申し入れ




 三月十二日、田ノ浦では「長島の自然を守る会」によるスギモク観察会が開かれた。前日、東日本が大地震に見舞われ大変な時期だったが、黄金に輝くスギモクはこの時期でなくては観察できないため予定通り行われた。スギモクは普段は海底に横たわっている地味な海草である。しかし、春になると茎の先が黄色く浮袋状になり、起き上がる。その群落は黄金の花畑のようだ。もともとは日本海などの冷たく綺麗な海にしか住めないため、瀬戸内海ではほぼ絶滅している。群落が残るのは田ノ浦だけである。参加者は船から覗き眼鏡で観測する。私は揺れる船が苦手なので田ノ浦の海岸でその様子を観察した。海岸には祝島の人や若者がたき火をしていた。その方達の話を聞くと二月二十三日以降も中国電力の作業員や警備員は一時間おきに数十人でやって来て海岸を行進しているそうだ。また、中国電力の敷地内には物見櫓が建っており、四六時中、海や海岸を監視しているらしい。十二日は土曜日だったため物見櫓からの監視はしていなかったが、敷地内には多くの警備員がいた。観察会からの帰り道、カーラジオから「福島第一原発一号機が爆発した」というニュースが流れた。耳を疑った。その後、連日、テレビも新聞も福島第一原発の危機的な状況を報道しながら「ただちに健康に影響はない」と言い続けた。
 被爆二世の会は三月末に運営委員会を開き、今の状況での被爆二世としての役割を話し合った。東京電力と日本政府があまりにも被曝のリスクを低く見すぎている事へ抗議をしなくてはならないし、同時に住民や労働者に被曝のリスクを下げる提案しなくてはならないのではないかという結論に達した。そこでまず、緊急声明を発表することにした。内容は「一、子どもと妊婦の一刻も早い避難を実現すること。二、一層の被曝を避けるため、避難区域を拡大すること。三、被曝地域におられた方、今もなおおられる方に被災証明並びに三月十一日以降の行動を記録するものを配布すること。四、外国籍住民に対し母国語での情報提供をすること。五、全国の原子力発電所の新規・増設を白紙撤回させ、稼働中のものを停止すること。また国の原子力政策を抜本的に見直すこと。原発を輸出しないこと」である。この中での三の条項は今後の補償のことを考えての提案だ。日本政府は地震や津波で被災した人には被災証明を出しているので、原発事故による被災証明を出すことも可能なはずである。緊急声明は日本政府と東京電力本社に郵送し、被爆二世の会のホームページとブログにアップした。
 二つ目として、四月十四日に上関原発建設計画の白紙撤回を求め、山口県と中国電力へ申し入れを行った。山口県に対しての要請内容は「一、田ノ浦の公有水面埋立免許を取り消すこと。二、原子力発電所の建設計画の同意を取り下げること」の二つである。申し入れ参加団体は被爆二世の会、戦争はイヤだ!市民の会、アジア共同行動山口実行委員会、やまぐち障害者解放センター、全国一般労働組合全国協議会山口連帯労働組合、戦争・差別・貧困とたたかう学生グループあすじゃ山口の六団体だ。まず参加者がそれぞれの立場で原発を建てて欲しくない理由を述べた。それに対し山口県側は「県としては国のエネルギー政策に協力し、地元上関町の意見を尊重する立場です」と言う。そして「福島の事故が収束し、国からの意見を聞いて考える」と続ける。「いつ収束すると思うか」と聞いても「わかりません」。「チェルノブイリでは十年かかった。それまで待つのか」と聞いても曖昧な返事をするのみ。また「事故時避難地域半径十キロメートルは上関原発の場合どの地域となるのか」と聞くと、県側は「ほとんどが海」と答えた。申し入れ参加者は猛然と抗議をし、「祝島の人はどうなるのか?」と問うたが「十キロメートルはほとんどが海です」と繰り返す。福島原発の事故後、様々な団体が毎週のように申し入れに来ており、うんざりしているのかもしれないが、あまりにも緊張感も責任感もない態度に呆れかえってしまった。その後、中国電力山口支社に申し入れ書を持参した。内容は「1、上関原発建設計画を即刻中止してください。2、田ノ浦で行っている地質調査名目の発破作業を即刻中止してください。3、上関原発に関わる全ての裁判を即刻、取り下げてください」の三点だ。山口支社は初めから「申し入れは本社でしか受けていないので申し入れ書を受けとるだけしかできない」と釘をさしてきた。中国電力の本社は広島県にある。山口県に原子力発電所を造ろうとしているのに、山口県内で申し入れを受けないのはおかしい。抗議の意味でも山口支社に申し入れ書を持参した。山口支社ではイスも準備していない。参加者は立ちっぱなしだった。こちらが申し入れ書を読み上げると山口支社側は「現在運転中の島根原発の津波対策を実施している……」などと話した。そして「意見は聞きます」と言う。参加者が「山口県内で申し入れを受けるようにしてほしい」などの意見を言う。また「今回の申し入れに関しては文書で回答してくれますよね」と聞くと「それも意見として本社に伝えます」という。「意見ではなく申し入れに答えないのだから文書回答するのが当然でしょ」と言っても「本社に伝えます」しか言わない。あまりにも無責任な態度にここでも腹が立った。
 現在も上関原発建設予定地では地質調査名目の発破作業が続いている。福島原発事故を見れば、原発が人間の社会を壊滅させるものであると言うことはハッキリしている。今を生きる私達のために、そして未来のために原発に頼らない社会を作ろう!

       (被爆二世の会会員より)

 

 

 

 

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