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 ■6・22 北九州

 「軍事と貧困を一体にたたかう」

 アジア共同行動が講演集会を開催


AWC九州・山口実のデモ

 「撃て、のさばる貧困・ひろがる軍事 6・22集会」が、北九州市においてアジア共同行動―九州・山口実行委主催で開催された。

 G8洞爺湖サミットや一連のG8閣僚会合が開催され、また「米軍再編」―日米軍事基地強化・一体化が進行する中、「反戦・反グローバリズム」運動の内実を講演学習を通じていっそう深化させてゆこうという意図の下で準備されてきた企画である。

 集会の冒頭に、「住民投票の成果を活かす岩国市民の会」代表大川清さんからのメッセージが読み上げられた。当日、岩国においては「米軍再編反対 神奈川・沖縄・岩国連帯シンポジウム」が開催されてもいた。「わたしたちは命や平和を決してあきらめない。全国の人々と連帯して粘り強くたたかってゆく」とのメッセージは会場からの拍手で確認された。次いで、九州・山口実行委代表の白松哲夫さんから、6・10弾圧への弾劾意思が表明された。「反サミット闘争を前にした国家権力の不当かつデタラメな弾圧を絶対に許さない」「いっそう反戦・反グローバリズムのたたかいを強力に進める」との発言を受け、さっそく学習講演に移る。

 講演者は、九州国際大教員の中野洋一さん。丹念に世界経済論の見地から「軍拡」と「貧困」についての研究を重ねられてきた方である。講演のために作成された原稿をもとに、「9・11事件後の世界の軍拡」「軍事費の対GDP比上位国の教育費、保険医療費との比較」「今日のグローバル経済と世界的な『マネーゲーム』の展開」「世界的な貧富の格差の現状」「先進国および日本の貧富の格差」という順序にしたがって、データ分析をもとに、「軍事」と「貧困」とをキーワードとして世界および日本の現状を解明する講演であった。

 特にSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)統計資料を元にした分析を通じて、「9・11事件」以降世界は「第三の軍拡期」に入っていること、そしてその主軸は世界の軍事費の半分を占める米国であることが明白に示された。そしてまた世界の軍事費は総額にして一兆ドルを超えている実態も明らかになった。最新のSIPRI報告書によれば〇七年の世界の軍事費は一兆三千三百九十億ドル、冷戦後最高となり世界の軍拡が継続的に進展していることも明らかにされた。

 他方、急増する世界の軍事費と並行して世界的な貧富の格差が拡大している点がUNDP(国連開発計画)やUNICEF(国連児童基金)などの調査統計資料をもとにして明らかにされ、さらに「先進国」における貧困の増大が指摘された。いわゆる「途上国」においては年間一千万人(一日にして三万人)もの子どもが貧困のゆえに死亡している事実の指摘には一堂息を飲んだところでもあった。

 こうした分析の積み重ねの上で、市場経済と「新自由主義」(ネオ・リベラリズム)がすべてを支配する現代世界において、世界の軍拡を終了させ、巨額の軍事費を人々の生活の改善のために使い、市場経済と「新自由主義」の暴走を食い止める事が緊要である点を強調して講演をまとめられた。質疑においては、G8サミットへの批判や新自由主義グローバリゼーションへの対抗策などの点がさらに論じられた。

 講演を終え、築城から、空自築城基地での米軍機訓練移転反対とともにグローバリズムの破壊的影響に触れた渡辺ひろ子さんからの発言、AWC山口からの岩国の状況報告、相次ぐ米兵による性暴力について特に「広島事件」についての論及、熊本から、労働現場からの報告などが続き、最後に洞爺湖サミット粉砕行動に決起する決意の表明が反侵略アジア学生共同行動からなされて集会は終了し、デモへと移った。

 いま「貧困」が大きな社会的問題として浮上し、これとあいまって世界各国政府の進める「新自由主義」政策、あるいはグローバリズムの民衆生活への破壊的影響が論じられている。アジア共同行動の仲間もまた、新自由主義的帝国主義的グローバリゼーション反対のたたかいを推進してきたところである。釜山APEC反対行動、香港WTO反対行動は記憶にあたらしいところだ。そしてG8サミットの一連の行事の一つひとつに対して反対行動をアジア共同行動の全国の仲間が組織し、たたかっている。
 こうした中で、現代帝国主義世界の顕著な特質として「第三の軍拡期」が始まり、その終わりが見えない状況、そして「グローバリゼーション→貧富の拡大→貧困・抑圧・絶望→テロリズムの爆発という悪循環」(講演より)がますます深刻化している状況とを、一体の問題、メダルの表裏の問題ととらえこの状況そのものの変革へ向けてたたかう視座を講演を通じて確認した意味は大きいといえる。

 講演においても触れられたところであるが、『世界』誌本年四月号掲載の「軍事ケインズ主義の終焉」(チャルマーズ・ジョンソン)や、J・スティグリッツ氏らの『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』(徳間書店)などが指摘しているのは、米国の軍事予算の巨大性と止まることの無い増大傾向という点である。そしてそれとともに、この軍事費は途方も無い浪費そのものであるという点だ。従来マルクス経済学の観点からいっかんして指摘されてきた論議がいまや、大方の論者からも指摘されているのが現状である。チャルマーズ・ジョンソン氏の計算では、〇八年度の米軍事予算は一兆ドルを超えるという。またスティグリッツ氏らの計算では、アフガン・イラク戦争において米国は三兆ドル超の戦争コストが見積もられるという。そして米国における「貧困」の進行と民衆の生活破壊の激烈性については『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波書店・堤未香著)が指摘しているところだ。日本の貧困に関してもいまや多数の研究が蓄積されている。

 今回の集会を通じて「貧困」と「軍事」とを一体の問題としてとらえたたかう観点を形成した点は、アジア共同行動がおしすすめる「反戦・反グローバリズム」運動をさらに内容豊かに創造してゆく上で貴重なものであったといえるのではないだろうか。
 

 

 

 

 

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