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■9・29
県民大会が大勝利
教科書検定を撤回せよ!歴史のわい曲を許さない!
11万6千人の大決起!
「九・二九教科書検定意見撤回を求める県民大会」が大爆発・大勝利した。参加者は当初予定の五万人をはるかに上回る十一万人。同日開催された宮古郡民大会二千五百人、八重山郡民大会三千五百名を合わせると十一万六千人もの大結集がかちとられ、来年度の高校日本史教科書における日帝―文科省による歴史事実のわい曲・改ざんに断固たる糾弾の声をあげた。
まさしくそれは、天皇制延命のための「捨石戦」として強制され、米軍の圧倒的な軍事力の下で、日本軍(皇軍)による集団死の強制、いわれなきスパイ容疑での虐殺、壕からの追い出し、食料の強奪といった、二重三重にも「鉄の暴風」にさらされた沖縄人民、とりわけ沖縄戦犠牲者の怒り、戦後も天皇メッセージにより強権的米軍事支配にさらされた沖縄人民の苦闘、さらには「復帰」後もつづく前線基地下での新たな基地強化・差別軍事支配に対する怒りが、沖縄人としての誇りをかけた地響きのうねりとなったのだ。
●1 「復帰」後、最大規模の島ぐるみ集会を実現
九月二十九日、会場となった宜野湾市海浜公園はまさに人、人、人で埋め尽くされた。立錐の余地のない、という表現がぴったりだ。会場周辺にもあふれている。ステージなど見えない。スピーカーから流れてくる発言にじっと聞き入る状況だ。開会した午後三時には周辺の渋滞でまだ到着できない人も多数いて、途中からバスを降りて歩く人の列が延々と続いていた。同時刻、那覇市のバスターミナルではまだ参加者の長蛇の列があったという。実行委員会では地域ごとに駐車場を確保し、シャトルバスでピストン輸送、沖縄バス協会各社も九五年の県民大会と同様に路線バスの片道無料制を実施した。
参加世代も多様で、戦争体験者のオジーオバーから幼子をかかえた若いカップル、なかでも高校生の姿が目立ち、友人同士の中学生や小学生の姿も。命を守る会や伊江島土地を守る会の旗も会場内にひるがえっている。地域ぐるみ、学校ぐるみ、職場ぐるみ、家族ぐるみ……まさに「県民の十人に一人」が参加した「復帰」後最大規模の島ぐるみ集会となった。高校野球秋季大会など日程の変更も行われた。仕事や遠隔地のため参加できなかった人たちも、地元TV各社やラジオでの実況中継を注視した。
なお、米軍は、日ごろは宜野湾市民に「開放」し、県民大会参加者用の駐車場として予定していた普天間基地内の第四ゲート駐車場広場を「日本国内の問題で中立の立場を維持する」という屁理屈でゲートを閉鎖するという敵対と妨害を行った。また大会アトラクションの最中、米海兵隊のFA18戦闘機四機が大轟音を響かせて普天間基地を離陸したことも付記する。許さんぞ米軍!
●2 今こそマグマ爆発させ、福田・文科省に断固NOを
いよいよ開会だ。「沖縄戦の死者の怒りの声が聞こえないか/大和(ヤマト)の政治家・文科省には届かないか/届かなければ 聞こえなければ/生きている私たちが声を一つにして/押し上げよう 訴えよう」という県民へのアピールを発して大会は開始された。
そして、摩文仁の平和祈念公園で採火され、中学生たちのリレーで受け継がれた「平和の火」が到着し、拍手がうずまく中、点火された。つづいて、大会実行委員会を代表して実行委員長の仲里県議会議長が「検定意見は、審議会を隠れみのにした文科省の自作自演だ。全県民が一丸となり、全国に警鐘を発信し、断固ノーと叫ぼう」と訴えた。
「県」議会は、議会決議をもって撤回要請をした際の文科省官僚による居直りに怒りと抗議を表明するために、同一議会で異例の二回目の決議をするという不退転の姿勢を示していた。検定意見撤回の決議と意見書は全四十一市町村議会で可決された。与那原町議会から始まった全議員の大会参加決議は各市町村へ拡大し、全市町村首長参加も実現した。行政主導の官製大会への危惧も指摘されていたが、島ぐるみ―超党派大会を押し上げた力こそ、知事仲井真や前知事稲嶺がくしくも同様の感想としてのべている「爆発寸前の県民のマグマ」なのである。先の参議院選においても糸数けいこ氏、山内トクシン氏は基地問題とともに公約の最重要課題として訴え、勝利したのである。
その知事仲井真は「文科省の検定意見に強く抗議し、速やかに撤回されるよう強く要望する」などと「あいさつ」をおこなった。だがしかし、当初は「(日本軍による集団死の強制について)断定することは難しい」「(二度の県議会決議で)目的は達成されつつある」「(教科書問題は)県民大会になじまない」と日帝―文科省と同様な態度に終始していたのだ。ふつふつと湧き上がる沖縄人民の「マグマの爆発」に恐れた仲井真の政治的ポーズには、とくに労働団体・住民団体エリアから厳しい糾弾の声があがったのは当然である。
大会は中山県教育委委員長、市町村団体代表の翁長那覇市長などが発言。高校生代表発言は、読谷高校生の津嘉山拡大君と照屋奈津実さんの二人だ。読谷村は米軍の沖縄島上陸地点である。八七年沖縄国体での「日の丸」焼却決起の原点であり知花昌一さんによって史実が発掘されたチビチリガマ「集団自決」の地である。二人はそのことにもふれ、「沖縄戦を体験したオジィオバァ達がウソをついていると言いたいのか」と静かな口調の中にも怒りを込めて糾弾した。また「分厚い教科書の中のたった一文かもしれないが、その中には失われた多くの尊い命がある。県民の強い思いがある」「あの醜い戦争を美化しないでほしい」と訴え、真実を伝える決意を表明し、感動と共感の拍手が会場いっぱいに響きわたった。
「今こそ、文科省のうその証言を十万人の力で、県民百三十万人の力で一蹴しよう」(玉寄沖縄県子ども会育成連絡協議会会長)、「戦争体験者が年々減るのをいいことに、戦争を風化させ、美化し、再び繰り返そうとする動きを、戦争体験者として絶対に許せない」(小渡県婦人連合会長)、「沖縄の青年は怒っている。歴史的事実を伝えるのはわれわれ青年の責務だ」(照屋県青年団協議会会長)と各界代表の発言がつづく。玉寄沖子連会長、小渡沖婦連会長は、この県民大会実現に奮闘してきた原動力だ。先の「六・九沖縄戦の歴史わい曲を許さない!県民大会」成功を推進し、全国への発信を継続してきた高教組・沖教組と連携し、県PTA連合・県高校PTA連合とともに実行委員会の中軸を担ったことはきわめて意義深い。
●3 日本軍による集団死強制の事実は消すことはできない
大会では沖縄戦体験者の証言がなされた。渡嘉敷島「集団自決」の生き残りである吉川嘉勝さん、座間味島「集団自決」の生き残りである宮平春子さん(体調がすぐれず代読)の証言に、会場参加者はじっと聞き入った。「渡嘉敷島、座間味島に日本軍がいなければ『集団自決』は決行されていない。軍隊の手りゅう弾が渡らなければ『集団自決』は決行されない」と当時の生々しい様子を明確に証言し「事実のわい曲を許してはならない」と訴えた。
そもそも今回の日本軍による集団死強制を削除・わい曲させた文科省の教科書検定意見は、文科省教科書調査官が、「集団自決の軍強制はなかった」として民事訴訟を起こしている「新しい歴史教科書をつくる会」などの「自由主義史観」者どものドス黒い動きを背景に、「沖縄戦の実態について誤解の恐れのある表現である」として削除意見書を教科用図書検定調査審議会に諮問したことにある。文科省が「教科書検定に政治介入はできない。審議会決定に介入できない」と居直り、責任回避の防波堤としているその当の審議会は、実際何ら歴史検証もせず、専門の研究者も不在で、教科書調査官の言いなりに検定意見を決定していることも暴露された。まさに文科省の「自作自演」だ。沖縄戦での「集団自決」(強制集団死)は日本軍(皇軍)の強制でしかありえなかった。渡嘉敷島・座間味島だけでなく、伊江島、読谷村……全島各地での日本軍による集団死強制の事実は消し去ることはできない。
大会もいよいよ佳境だ。実行委員会より大会参加者が十万人を越えていること、会場カンパが六百万円余集まったことが報告されると、一斉にどっと歓声がわきあがった。すごい、やったぞ、場内の熱気は最高潮に達した。「県民の総意として国に対し今回の教科書検定意見が撤回され、『集団自決』記述の回復が直ちに行われるよう決議する」と大会決議が提案され、満場の拍手で採択された。そして沖縄の声を全国に発信しよう! と徹底抗戦を決意して全員でガンバロー三唱をおこない、大会は大きな感動と沖縄人民の不退転の決意を歴史に刻印して終了した。
●4 あくまで検定意見撤回を、自公の政治的決着許すな
県民大会の大爆発に恐れおののいた日帝―福田は、渡海文科相をして「県民大会の重みは十分理解した」「知恵を絞りたい」などと一見撤回要求に応じるかのような姿勢をみせつつも、「検定に政治は介入できない」と検定意見の撤回については拒否する姿勢を堅持している。
「爆発寸前のマグマ」を押さえ込もうと、自公は教科書会社からの「訂正申請」という形で、日帝―文科省の責任を棚上げにした決着を画策している。知事仲井真も同類だ。これでは日本軍の強制を削除させた文科省(教科書調査官)の検定意見を残す形となり、解決には程遠いものである。
米兵による少女暴行事件を糾弾し、日米地位協定改定を要求したあの九五年10・21県民大会以降、日帝は日米地位協定の「運用改善」でお茶を濁し、辺野古新基地建設をゴリ押ししてきた。沖縄人の苦闘の歴史を土足で踏み荒らし、歴史をかえようとする暴挙を絶対に許してはならない。沖縄人民の自己解放闘争のマグマを今こそ爆発させよう。
■資料―9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会決議
以下の文章は、「9・29教科書検定意見撤回を求める県民大会」の決議文です。編集局の責任で全文を掲載します。
去る三月三十日、文部科学省は、平成二十年度(ママ)から使用される高等学校教科書の検定結果を公表したが、沖縄戦における「集団自決」の記述について、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」との検定意見を付し、日本軍による命令・強制・誘導等の表現を削除・修正させている。
その理由として同省は、「日本軍の命令があったか明らかではない」ことや、「最近の研究成果で軍命はなかったという説がある」ことなどを挙げているが、沖縄戦における「集団自決」が、日本軍による関与なしに起こり得なかったことは紛れもない事実であり、今回の削除・修正は体験者による数多くの証言を否定し、歪曲しようとするものである。
このため、これまで口を閉ざしていた多くの体験者が、子どもたちに誤った歴史を教えることの危機感から、辛い体験や真実をようやく語り始めている。
また、去る大戦で住民を巻き込んだ国内唯一の地上戦を体験し、一般県民を含む多くの尊い生命を失い、筆舌に尽くしがたい犠牲を強いられた県民にとっても、今回の削除・修正が到底容認できるものではない。そのことから、激しい怒りを示し、そのうねりは県内全体を揺るがす力となって、沖縄県議会での二度の意見書決議、四十一の市町村議会全ての意見書決議へと結びつき、さらには県内地方四団体や民間団体が相次いで文部科学省へ要請するなど、県民が一丸となって取り組む結果となった。
これに対し、文部科学省は「教科用図書検定調査審議会が決定することであり、理解していただきたい」との回答に終始し、検定意見の撤回と「集団自決」に関する記述の回復を拒否し続けている。
また、今回の教科書検定に際して、文部科学省はあらかじめ合否の方針や検定意見の内容を取りまとめた上で同審議会に諮問していること、諮問案の取りまとめに当たっては係争中の裁判を理由にし、かつ、一方の当事者の主張のみを取り上げていること、同審議会では「集団自決」の議論が全くなされていなかったことなど、新たな事実が相次いで判明したのにもかかわらず、依然として対応を改めようとしていない。
教科書は未来を担う子どもたちに真実を伝える重要な役割を担っている。だからこそ子どもたちに、沖縄戦における「集団自決」が日本軍による関与なしに起こり得なかったことが紛れもない事実であったことを正しく伝え、沖縄戦の実相を教訓とすることの重要性や、平和を希求することの必要性、悲惨な戦争を再び起こさないようにするためにはどうすればよいのかなどを教えていくことは、我々に課せられた重大な責務である。
よって、沖縄県民は、本日の県民大会において、県民の総意として国に対し今回の教科書検定意見が撤回され、「集団自決」記述の回復が直ちに行われるよう決議する。
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