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  8・14〜16韓国を訪問

  8・15統一大会に参加、韓国・全教組と交流



 今年も、「韓国・全教組と交流する教職員と市民の会」の教職員や市民の方々とともに韓国を訪問してきました。私は八月十四日の夜から十六日の早朝までという大変短い韓国滞在でしたが、できる限りの報告を送ります。

 十四日午後、羽田から飛行機に乗った私たちは夜に韓国に到着しました。金浦空港から地下鉄に乗って宿舎に向かいました。駅ではAWC日本連の方が迎えに来てくれました。その日は夜遅いということもあり、AWCの方からスケジュールの確認と情勢の説明、部屋の使用方法についての簡単なアドバイスを受け就寝しました。

 私たちより一足早く韓国に来ていた部落解放同盟の方々や東京、京都の教職員の皆さんは8・15大会の前夜祭に参加していたそうです。十二時ころ宿舎に帰ってきました。


●1 AWC韓国委員会が情勢説明

 翌十五日は、八時ころに近くの食堂で朝食をとり、九時半ころにAWC韓国委員会の事務所に向かいました。ここで自己紹介と韓国委員会代表の方から情勢の説明を受けました。

 「現在、韓国では新自由主義―グローバリゼーションによる労働運動の弾圧が強行されています。全ての公権力が動員されて労働運動をつぶそうとしています。すでに千名を超える労働運動をたたかう人々が不当にも拘束されています。政府は労働法を改悪し続け、非正規労働者が急増しています。同時に貧富の格差が拡大し、韓国国内では欧米日の帝国主義資本が進出し展開しています。一方、国内財閥資本は第三世界に進出し、より安い労働力を収奪している。こうした関係を背景として韓国は帝国主義の同盟員として侵略戦争に加担しているということです。こうした状況のなかで南北首脳会談が設定されました」と新自由主義―グローバリゼーション下の韓国の情勢を説明しました。さらに、「民主労総は十六個の産業別連盟の組織です。現在、組合員約八十万人を抱えています。これは韓国の全労働者の5・2%を組織していることになります。そして非正規労働者は全労働者の55%であり、そのうち0・2%の非正規労働者が民主労総に加盟しています。すなわち、非正規労働者がなかなか組織されにくいという現状を表しているとともに、今後の課題であるということでもあります。こうした中で雇用の安定と非正規職の撤廃を掲げてイーランド闘争が起きました。そしてホームエバーというフランスの流通資本を背景にした現場で同様の闘争が起きています。これも非正規職撤廃の闘争です。韓国の非正規労働者保護法は、非正規労働者として二年働いたら正規職にしないといけないという法律です。ゆえに資本は二年たったら非正規労働者を解雇します。これがイーランド闘争の背景です。韓国では『〜保護法』とは保護しない法律として機能する。女性労働者たちの激しいたたかいによって、時給三千三百六十ウォン(約四百五十円)の最低賃金を引き上げるたたかいに勝利しています。しかしそれでも月にすれば(日本円にして約十万円)、それだけで生計を立てることはできません。今後、より一層の最低賃金引き上げのたたかいをおこなっていく必要があります」と韓国の労働者の現状を説明。

 「六月に韓米FТAが政府間で合意されました。これに対して、金属労働者を中心に熾烈なたたかいがおこなわれました。金属労働者二十八名が連行されています。韓米FТAに反対する汎国民本部の七十歳になる代表が拘束されています。それ以外にも百名に及ぶ労働者が弾圧されています」。「また特殊雇用労働者(学習塾講師、ゴルフ場のキャディ、保険勧誘員など)は労働組合や労働三権が保証されていません。労働三権を勝ち取るたたかいが重要です。実は教育労働者や公務員労働者は公務員特別措置法によって労働組合が認められているが、あくまでも『特別措置』の扱いなのでスト権をはじめとした労働三権が制限されています。公務員の労組は十四万人を抱える組織ですが、現行法に対する意識の問題で対立しています。民主労総は公務員労働者のたたかいは、民主労総の路線と関連した重要なたたかいとして位置付けています。現在、民主労総は企業別組合の様相を呈しているが、産業別組合の転換を図っています。階級的たたかいとしては、いまだ不充分性を抱えているが、より広いたたかいを展望していきます。国民年金が今後二十年間で段階的に40%引き下げられようとしています。同時に医療・社会保障制度が改悪されようとしています。民主労総の主張は『無償医療、無償保障』です。新自由主義が民間の医療現場に入り込んだことの結果として批判しています」。

 「そして現在、韓国では進歩陣営の統一戦線が作られようとしています。『進歩連帯』という組織名で、進歩勢力の大連合を結成しようという動きが加速しています。当然、さまざまな論争があります。運動の拡大よりも階級的土台を獲得すべきだ、という主張も根強く存在します。また南北統一問題が優先されるべきだという話になると、一方で現政権による労働運動への弾圧問題と非正規労働者のたたかいを後景化させてはならないという主張が出てきます。今後、この進歩大連合の中身に対して民主労総が与える影響は少なくないものがあります。『進歩連帯』の具体的取り組みとしては国家保安法の撤廃、南北統一問題の推進、大統領選挙闘争が確認されています」と韓国のたたかいの現状が語られた。

 つづいて前代表から発言がなされた。「八月十五日は韓国では解放の日です。しかし、日本ではよその国に侵略した反省もなしに『お盆』として取り扱われています。こうした日に、皆さんが日本から来て共に運動に参加するということは大変に意義のあることだと考えています。挺身隊問題対策協議会(韓国で日本軍『慰安婦』問題に取り組んでいる団体)から、運動の責任団体としてAWC韓国委員会もやってくれないかという要請がありました。私たちはこれを快く引き受けました。本日の日本大使館前での水曜行動(毎週水曜日に元「慰安婦」のハルモ二たちを先頭におこなわれている行動)でも報告していきたいと思います」。

 次に質疑応答がおこなわれ、私たちは十一時すぎまでAWC韓国委員会の事務所におじゃまし、十二時ころに水曜行動に合流しました。


●2 「二百歳まで生きる」 水曜行動に参加

 日本大使館前は韓国の機動隊によって封鎖されています。路上に約五百名くらいの人々が集まり、集会がおこなわれようとしています。元日本軍「慰安婦」のハルモ二たちは集会の前面に座り、盛んにカメラ撮影がおこなわれています。「女性農民会総連盟」という団体が旗をかついで集会場に入ってきました。会場には中高校生くらいの子どもが多数きています。よく見ると、こまめにメモを取っている子もいます。聞けば、学校の夏休みの課題としてこの集会参加が位置付けられており、レポートにして提出するそうです。

 まずシュプレヒコールをあげました。「軍国主義反対! 公式謝罪をしろ!」。つづいて司会が壇上に立ちます。「『慰安婦』問題よりも恐ろしいものは日本が事実を忘れていることです! 歴史歪曲反対! ハルモニに勝利を! 日本は公式謝罪しろ!」「今日の行動は世界連帯行動日と銘打っています。六十二年前に解放が実現された日です。しかし日本軍『慰安婦』の方々はまだ泣いています。私たちは手放しで喜べない。本当の解放を勝ち取る歴史的な場にいることを皆さんと確認していこうではありませんか! 全世界に正義を打ち立てる場にしていきましょう!」と訴えました。

 次に挺身隊問題対策協議会が開会の辞が述べられた。

 「今日は解放六十二周年です。恨と正義を全世界に訴えていくためにともにたたかっていきましょう。六十二年前のあの日、私たちのハルモニも解放の日を迎えました。しかし、怒りと恨みはハルモニの胸に残りました。歴史を歪曲する日本政府に怒りをもち続けています。歴史の真実は歪曲できない! 今も戦争のなかで多くの女性たちが傷つけられています。これ以上、女性が傷つけられることがないようにしていかなければなりません。『慰安婦』問題解決のための世界連帯行動をこれからはじめていきます!」と力強い開会あいさつがなされた。

 次にこの集会に参加する各団体が紹介された。アムネスティの団体、釜山、馬山から来た団体、学生団体などが紹介され、AWC韓国委員会と「韓国・全教組に連帯する教職員と市民の会」も紹介されました。続いて国会議員や大統領候補者たちが紹介され、水曜行動の歌である「岩のように」を歌いました。

 次に、連帯発言がおこなわれました。まず、大統領出馬予定者から、「私が大統領になれば、日本に公式謝罪をもとめて解決までがんばります。日本の国会議員に会ったり、アメリカで皆さんの要求を掲げられるようにします」と発言。

 民主労働党の大統領候補の一人であるクォン・ヨンギル国会議員は、「いまだに解放されない8・15です。私たちは統一して初めて解放されるでしょう。一番重要なのは、日本政府に謝罪を要求しつづけることです」と発言した。

 次に、チョンジュから来た全国女性連帯の人が「日本は自衛隊法を改悪し、憲法九条を改悪しようとしている。在日同胞に対する抑圧政策を取っています。いまだに日本には軍国主義が残っています。軍国主義とハルモニの問題は関連しています。日本の軍国主義は、朝鮮半島の分断を利用しています。ハルモニたちの問題は過去の戦争の問題だけではなく、世界各地で女性が直面している問題です。国際連帯を通じて挺身隊問題を解決するために、ともにたたかっていきましょう」と発言した。

 次にアメリカ・ワシントンの挺身隊問題会長が、アメリカ下院議会での決議について報告していきました。

 つづいてハルモニ自身からイ・ヨンスさんが発言しました。「私が連行されてから六十五年たちました。米下院議会で日本に対する謝罪要求決議が上がったときは本当に胸がスカッとした。日本は世界各地で悪さをしています。世界各地で性奴隷問題を引き起こしてきた。みなさん! 私は日本が公式に謝罪するまで二百歳まで生きます! 今から最後までたたかっていきます!」と熱い決意が明らかにされた。
 私たちは一時ごろまで水曜行動に参加しました。遅めの昼食をとり、三時十五分ころ8・15統一大会に参加しました。


●3 平和と統一の8・15大会に参加

 四車線道路を埋め尽くす人々が参加しています。私たちはAWC韓国委員会のはからいによってかなり前の方に座ることができました。今年の8・15大会のスローガンは「南北首脳会談歓迎! ウルチフォーカスレンズ訓練中止! アメリカのない朝鮮半島実現!」です。民主労働党、民主労総の歌の後、民主労総委員長が発言に立ちました。

 「八十万組合員を代表して発言します。8・15は毎年おこなわれますが、今年は違います。朝鮮半島の平和と労働者のたたかい、6・15南北共同宣言の精神をかけて六十年にわたるたたかいの実を結ぶ時です。平和の道を後戻りすることはできない! 八月二十八日から南北首脳会談がおこなわれます(注、しかしこの後、共和国を襲った水害のために首脳会談は延期となった)。分断の壁に大きな穴をあけることが確実です。しかし統一には労働者民衆の生存権が含まれなければなりません。それは、労働者民衆のたたかいによって駐韓米軍を撤収させることです! 戦争の放火者が朝鮮半島に居座っている。国際的サギ師である米国を追い出していかなければならない。朝鮮半島の分断体制を支えているのが米軍です。民族の大団結によって駐韓米軍をたたき出していこうではありませんか! 今が最後の決着をつける時です。労働者民衆による一大決戦に立ち上がろう! 民主労総は百万労働者の未来をかけて、本日のたたかいを全国的なたたかいへの突破口としていきたいと思います! 分断と戦争のある8・15から平和と統一の8・15に変えていきましょう!」

 次に、韓総連の代表が登壇した。「現在、アフガニスタンで韓国人の拉致問題が続いています。体調の悪い二人の女性が解放され、いったんは安堵しました。アフガニスタン戦争の本質とは、アメリカが『テロとの戦争』を掲げた戦争です。そしてアメリカは韓国に派兵を強要したためにこのような問題が発生した。アメリカはアフガニスタンで自国民が拉致された時、タリバンを解放した。しかし、韓国人が拉致されたら、タリバンの解放は認めないと言っている! まるでハエをたたき殺すかのように韓国人を殺したのがアメリカです! 韓国の家族たちは一日も早い解放を願っています。六十二年間、朝鮮半島を強制的に支配してきた米軍を追い出していかなければなりません。不平等な韓米関係を覆していかなければならない。第二回南北首脳会談を歓迎し、アメリカに対する隷属的な関係を打破していかなければならない! 韓総連はこの任務を最先頭で果たしていきます」。

 次に決議文が採択され、ここで進歩陣営の大統一戦線である「進歩連帯」が九月十六日に正式に発足することが発表された。

 この集会の後、私たちもデモに合流しソウル市内を行進しました。


●4 ピョントンサのの総括集会に合流

 デモ行進の後、ピョントンサ(平和と統一をひらく人々)の総括集会に合流しました。歩道上に約百名ほどの人々が固まっています。まず最初はシュプレヒコール、そして歌と踊りがあり、各人士の発言がありました。

 日本から来たということで私たちにも発言の要請がありました。「韓国・全教組と交流する教職員と市民の会」として全員が前に立ちました。元足立区の教員であり現在は不当処分反対闘争をおこなっている女性教員の方が代表して発言しました。「私は扶桑社による歴史歪曲教科書の採択に反対し、韓国と日本の正しい歴史を教えようとして不当に処分されました。しかし決してくじけることはありません! これからも、韓国のたたかい、全世界の人々のたたかいと連帯してたたかっていきます」と発言すると、集会参加者から大きな拍手が沸き起こりました。

 集会後、代表発言にたった教職員に全教組に加盟している教職員が「感動しました。私たちも日本の教組と交流しています。ともに頑張りましょう!」と、握手を求めてきました。


●5 全教組と交流、活発な討論

 五時三十五分に全教組ソウル支部との交流会に向かいました。場所は「進歩教育研究所」の事務所であり、ここでは「現場実践社会変革労働者戦線」という雑誌をもらいました。

 双方の自己紹介の後、全教組から情勢の説明がありました。

 「今年九月にでも教員評価をABCDと等級にわけようとしています。あたかも豚肉みたいにランク付けするものです。そして成果給制度がこれにかみ合って機能してきます。一方、九九年に制定された教員労組法を変えようとしています。教職員は公務員や特殊雇用労働者とともに労働三権が認められていません。労働三権を勝ち取るたたかいが重要になります。また教育の新自由主義政策とのたたかいとして、入試の撤廃と大学の標準化に取り組んでいます。入試の撤廃に関しては大統領選挙を通じて多くの人に提起していきたいと考えています。国民年金法を根拠として、公務員の年金制度が改悪されようとしています。これともしっかりとたたかっていく必要がある。そしてイーランドの女性労働者のたたかいやKTX労組の女性労働者のたたかいを支援していく必要があります。非正規雇用労働者のたたかいは重要です」。

 こうした概略的説明を受けて、あらためて質疑応答形式で討論が進められた。

 「一般の民間の給与システムはどのようなものなのでしょうか。日本では二〇〇〇年に人事考課制度が導入されたのですが、韓国の場合はこの前まで年功序列制度だったのですが」という質問に対しての回答では、「まず、韓国の教員の賃金体系について言えば、公立・私立・小・中を貫いて同じ体系で算出されています。公立・私立の差はありません。ある意味で、完全な年功序列制度と言ってもいいと思われます。九〇年代の末から民間で年俸制度が導入されました。金泳三政権の時、これを教職員にも適用しました。金大中政権の時、評価制度導入の動きがありましたが、教員の大衆的抵抗によって頓挫しました。そして現在の盧武鉉政権が、まさに新自由主義政策の一環として評価制度を導入しようとしているわけです」。「現在給与は年にして平均1・5%づつ上がっています。そのうちの数%を成果給にしようとしています。すると、ABCDのランク付けで約十五万ウォンの差が出ます。全体の給与からみれば微々たるものですが、これは明らかに教員間の競争をあおる攻撃であり、格差を意識的に作り出していく攻撃でもあります。この人事評価制度というのは、かつてサムソングループが採用した制度です。ご存知の方もいるかもしれませんが、サムソンはノーユニオン政策をとっている企業です。つまり成果給の導入は単に給料に差がつくというだけの問題ではなく、新自由主義政策の導入ということです」と詳しく説明を受けた。

 また、「日本では教育基本法の改悪から教育関連三法案の改悪がおこなわれ、教員間の分断と免許更新制度が導入されました。韓国の報告を聞くと、韓国の教育を巡る問題と日本の教育を巡る問題は連動しているように思えます」という意見に対しては、「おっしゃる通りだと思います。それは日本のたたかいが不充分だったというよりも、新自由主義の問題だと思います。世界的に進行している新自由主義政策を一国だけで止めることは難しい。であるからこそ全世界の労働者が団結してたたかう必要があるのではないでしょうか」という返答がありました。

 以上のような討論をおこない、このあと近くの食堂で会食をして全教組との交流を終えました。

 そして私は、次の日の早朝に韓国を飛び立ち、お昼ごろ日本に帰ってきました。短い滞在期間でしたけれども、それなりに有意義な体験ができました。できれば来年も、今年韓国にいったみなさんと共に8・15に韓国現地でお会いしたいものです。

 

 

 

 

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