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                                                                   2013年11月23日

台風災害救援を口実とした自衛隊フィリピン大規模派兵に抗議する声明

米軍・自衛隊参加の防災訓練に反対する実行委員会二〇一三


  以下の文章は、「米軍・自衛隊参加の防災訓練に反対する実行委員会」が台風災害救援を口実に自衛隊をフィリピンに派兵したことに抗議する声明です。編集局の責任で全文を掲載します


  

 十一月八日、スーパー台風、台風三十号がフィリピンに上陸し、レイテ島などに甚大な被害をもたらした。レイテ島の中心都市タクロバンでは、食料などの物資不足に困窮した住民たちが「略奪」したと報じられている。フィリピン政府も、「略奪」など治安の悪化を理由に非常事態宣言を発した。だが、困窮した住民が目の前にある物資を手に入れようとする行為は、「略奪」などではない。生き抜くための行為だ。それを非難して警察権力・軍事力で住民を抑えつけようとすることには、国家が災害時に優先するのは治安であることを示している。
 日本政府は、この甚大災害を利用して大規模な自衛隊派兵の絶好の機会とした。フィリピン政府の要請を待たず、早くも十日には調査チームを派遣し、十一日には国際緊急援助の医療チームを派遣した。十二日には、フィリピン政府の要請を受けたという形で自衛隊部隊による国際緊急援助活動への協力の検討に入り、自衛隊員を先遣調整係として派遣。そして十三日には、医療チームと連絡・調整要員五十人と、自衛隊航空機での物資輸送にあたる空輸隊五十人の派兵を決めた。さらに十八日には増援部隊七百人を海上自衛隊護衛艦「いせ」と輸送艦「おおすみ」に載せ、呉港から出発させた。派兵された自衛隊員は総勢で千人を超える。しかも「おおすみ」は、参加を予定していた沖縄近海での離島防衛訓練から離脱してフィリピン派兵のために待機させていたものである。「いせ」は、これが初の海外派遣だ。さらには、情報収集衛星から得た被災地情報の活用も行った。加えて、米軍とも連携し、緊急援助隊の隊長である自衛隊員三人は、米軍機オスプレイを使ってタクロバンに到着した。
 この派兵は、甚大災害を演習よりも実戦に近い状況で短期間での緊急展開も含む日米共同実働演習の場として利用するものだと言わざるを得ない。しかも、墜落事故を度々起こし、沖縄への配備や「本土」上空での飛行訓練に反対の声があがっているオスプレイの配備・訓練を受け入れさせるデモンストレーションの場としても利用している。これらは、フィリピンが、特にレイテ島が、日米の戦場となり、現地住民に多大な死傷者を出したことを忘れ去っていると言わざるを得ない。そもそも、偵察衛星で得た情報を基に、洋上作戦拠点ともなる大型ヘリ空母「いせ」を展開させ、上陸作戦の要の役割を果たす「おおすみ」を使って千名以上の自衛隊員を展開させたこと自体が、旧日本軍のフィリピン侵略の歴史を顧みない行いである。さらに言えば、この災害救援を通してフィリピンの日本軍・自衛隊に対する警戒感を払拭して、フィリピンを自衛隊の軍事活動に利用することに道を開こうとする意図が透けて見える。そしてそれは、グローバルに自衛隊の大部隊が展開する布石を打つ行為でもある。また、その能力を保持していることを誇示する行為ともなっている。それと同時に、「尖閣」をめぐって緊張関係にある中国に対して圧力をかけるものでもあり、南シナ海への自衛隊進出によって中国を威圧する意図まで有していると言えよう。いわば対中緊張を煽るものだ。その渦中にフィリピンを巻き込み、フィリピンをグローバルな自衛隊の展開拠点化しようとすることは、短期的には自衛隊へのフィリピン民衆の抵抗感を弱めることになっても、いずれフィリピン民衆の反発を買うことにつながりかねない。
 災害被災者をダシにして自衛隊の強化を図ることを、これ以上、続けるべきではない。国際緊急災害援助を真剣に考えるのであれば、そのあり方を根本的に検討すべきであり、まず自衛隊ありきといった対処そのものを問い直すべきだ。
 以上から、私たちは、台風災害救援を口実とした自衛隊フィリピン大規模派兵に抗議する。

                          二〇一三年十一月二十三日

                   米軍・自衛隊参加の防災訓練に反対する実行委員会二〇一三