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                                                                               2009年11月10日
■サミット弾圧裁判闘争への支援を  

                             6・10サミット弾圧に抗議する会

  以下は6・10サミット弾圧に抗議する会が09年11月10日に発表した声明です。
  編集局の責任で、全文を掲載します。






  十一月六日、京都地裁で「サミット弾圧裁判」の判決公判が開かれ、「懲役二年(執行猶予三年)」という不当きわまりない判決が出された。

 この判決は、「被告人」とされたAさんの「有罪か、無罪か」というだけの問題ではなく、@雇用保険の運用の問題(職安窓口で多くの失業者が失業認定をされずに切り捨てられてしまう)や、A警察による労組や反戦団体などに対する不法・不当な弾圧を、違法の疑いはない、と是認している点、B企業の労働基準法違反・派遣法違反・雇用保険法違反などの重大な法律違反が明らかなのにそれにはまったく触れていない点など、多くの問題を含んだ全く不当なものであり、決して許してはならない。

 Aさんは即時、控訴の手続きを行い、新たな闘いの準備に入っている。皆さんの注目と支援を訴える。


 ●1 「08年サミット弾圧裁判」これまでの流れ

昨年、G8サミット(北海道洞爺湖サミット)の財務相会合(大阪)、外相会合(京都)、首脳会合(北海道)などを直前に控えた六月十日、Aさんが逮捕され、自宅や所属する労組事務所などに強制捜査が行われた。

 この時期、各地で一斉に同様の弾圧があり、全国で百人をこえる不当逮捕や捜索が行われている。警察権力によるサミット対策と、サミット警備をきっかけにした、労働組合、市民団体、活動家への不当な弾圧である。

 逮捕・捜索の理由とされたのは、五年前の二〇〇四年に失業保険を不正に受給したという「詐欺」容疑。

 昨年八月八日には第一回公判が開かれ、当然、Aさんと弁護団は、捜査・逮捕・起訴が政治弾圧を目的とした不当なものであること、起訴状にあるような「詐欺」の事実はないことなどを挙げ、「公訴棄却」「無実」を主張した。

 裁判はその後「期日間整理」にうつり、昨年九月から今年六月までの間に、計七回、争点整理のための手続きが行われた。

 これを踏まえ、第二回公判(九月九日)、第三回公判(九月十六日)が、連続して闘われた。


 ●2 職安・労働局の問題

 第二、三回公判(九月九日、十六日)には、京都府伏見職安窓口担当職員、京都労働局職業安定課雇用保険監察官がそれぞれ出廷し、失業認定の取り扱いなどについて証言を行った。今回の裁判で最も重要な部分は、「詐欺」が行われたとする二〇〇四年五月十日の時点で、Aさんに失業給付の受給資格があったのかどうか、という点だ。

 厚生労働省の通知(二〇〇三年四月)では、「就職」の状態にあたることの要件の一つに「週所定労働時間が二十時間以上」という項があるが、Aさんのアルバイトは仕事に出た日に次の出勤日を決める(そもそもきちんとした契約が何もない)というものであり、所定労働時間など決められていなかった。従ってこの通知に従えばAさんは「就職」の状態にあるとは、とうてい言えないにもかかわらず、京都の職安では、「所定労働時間ではなく実際に働いた時間」で判断していると証言した。弁護人にその根拠を尋ねられても、法令や通達などの根拠はない、とも証言した。これは、明らかに厚労省通知に反した運用である。しかし京都地裁の判決は、職安窓口の、こうした根拠のない運用を「合理性がある」と認めた。職安窓口でこうした運用をすることによって、多くの失業者が、職安の窓口で申請を却下され、失業給付を受給できないでいることは明らかだ。この点からも、京都地裁判決の誤りは正されなければならない。


 ●3 京都府警による不当な捜査

 この裁判には、今回の弾圧の「捜査主任」であった堀英明(当時の役職は京都府警本部警備三課課長補佐)が検察側証人として出廷し(九月九日)、「捜査」の経緯について驚くべき、証言を行った。

 雇用保険の「不正受給」や「詐欺」事件などの管轄ではない警備課が、なぜ今回、雇用保険に関わる「詐欺」事件を摘発したのかという弁護人の質問に対して以下のように答えた。

 堀は、「事件」に着手する前に、Aさんに関わる公共料金の契約名義や、住民票、さらには銀行口座などの照会を、何の具体的な嫌疑もないまま行ったこと、それだけではなく「京都の活動家についてはすべて問題意識を持って」このような捜査を行っていることなどを証言した。

 堀は、「捜査は適正に行われた」と証言するために出廷したのだが、この検察側の意図とは逆に、京都府警が日常的に政治弾圧のために活動家の日常生活を、銀行口座の照会をはじめとしてありとあらゆる方法で監視している実態を、自ら明らかにすることになった。こうした京都府警の行いは、全く不当・不法であり同時に思想・信条の自由を侵害するものだ。決して許してはならない。

 捜査の不当性を明らかにしたのはこの証言だけはない。昨年六月の不当逮捕と同じ日に、警察はAさんの自宅や労組事務所など五か所に強制捜査に入り、数十点にのぼる「証拠品」を押収したにもかかわらず(この中には労組の名簿や会計書類などが含まれている)、裁判には何一つ提出されていない。そもそも、個人の「詐欺」事件の捜査に、労組の事務所に捜索に入るということ自体、およそ常識では考えられないことであり、「詐欺」事件を口実にした労働組合やアジア共同行動など反戦・国際連帯を闘う団体に対する監視や情報収集、弾圧がその目的であることは明らかだ。

 「何が書いてあったか…見ただけではものが特定できなかったというようなもので、押さえて精査する」(堀の証言)、「何があるのか調べてみなければわからない。」(労組事務所に捜索に入った京都府警捜査員)などの発言に示されるように、一つの「事件」をでっち上げ、それを口実に、強制捜査も押収もまさに警察の「やりたい放題」となっている現実の一端が明らかにされた。

 公判の中で弁護人から「(押収した書類に関して)これを読めば、保険金詐欺を励奨するような、そういうものがあるのですか」と質問された堀は、素直に「まず、ないと思います」と回答し、事件と無関係に書類などを押収したことを明言している。

 しかし京都地裁は、こうした不法きわまりない京都府警の捜査を、違法な点は見あたらない、として是認している。


 ●4 控訴審闘争に勝利しよう

 裁判には、Aさんのアルバイト先であった企業の実質的経営者も証人として出廷し、派遣法違反、労基法違反などの経営実態を次々と認める証言をした。京都地裁は、しかし、このような違法企業はもとより、京都府警の不法な捜査、京都労働局の法令に基づかない窓口での対応の実態など、是正されるべき多くの問題が明らかになっているにもかかわらず、これらを是認するか不問に付したうえで、Aさんに対してのみ「有罪」判決を言い渡した。

 以上見てきたように、今回のでっち上げられた「事件」の本質は明らかだ。G8サミットに反対する闘いに打撃を与えようと画策するとともに、こうした闘いをすすめる労組・反戦運動団体に対する弾圧である。これらを決して許してはならない。

 不当な一審判決は正されなければならない。Aさんは控訴審(大阪高裁)での闘いに向けて準備を進めている。全国の読者の皆さんの注目と支援をお願いするとともに、すべての闘う仲間の力ででっち上げ弾圧を粉砕するよう呼びかける。
                                     (十一月十日)