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                                                                2014年5月

第17回CCB会議へのAWC国際事務局報告




  以下の文章は、前号(六月五日付)で報じた第十七回AWC―CCB会議において提起されたAWC国際事務局の報告です。『第17回AWC―CCB報告パンフレット』(アジア共同行動日本連発行)より転載しました。


  

 
■資料


 米日帝国主義のアジア侵略・支配に反対するアジア・キャンペーン(AWC)は昨二〇一三年三月、台北で第十六回キャンペーン調整委員会(CCB)会議を成功裏に開催した。今回のソウルでの第十七回CCB会議はそれを引き継ぐものである。ここでは、この約一年間のアジア太平洋地域における情勢とAWCの活動について、簡潔に報告する。

 ▼1、 アジア太平洋地域の労働者・民衆をとりまく情勢

 この一年間を通して、米帝国主義の「アジア太平洋地域への戦略的回帰」に向けた動きは、ますます明確なものとなった。それはこの四月のオバマ米国大統領のアジア歴訪においても示された。アジア太平洋地域への政治的、経済的、軍事的な関与をより強化しようとする米国の動向は、同地域の労働者・民衆の生活と闘いに大きな影響を与えている。
 米国・オバマ政権は現在、アジア太平洋地域への経済的関与を強め、同地域を米国主導の自由貿易圏へと編成するために、環太平洋経済連携協定(TPPA)の締結を推進している。それは多国籍企業・巨大独占資本にのみ利益を与える一方で、抑圧されたこの地域の労働者・民衆にはさらなる搾取と収奪、権利侵害をもたらすだけのものだ。この四月のアジア歴訪においては、各地の労働者・民衆の抵抗を背景にして、米国政府は大きな成果を獲得できなかったが、TPPA締結交渉をさらに強力に推進していこうとしている。また、現在までにTPPA締結交渉に参加している日本や韓国だけでなく、フィリピン、台湾、インドネシアなどさらに多くの国・地域をTPPAのなかに呼び込もうとしている。
 このTPPA締結策動に代表される、帝国主義と巨大独占資本・多国籍企業が推進する新自由主義政策は、アジア太平洋各地の労働者・民衆に多くの苦難をもたらしてきた。一国的にも地域的にも貧富の格差が拡大し、ますます多くの労働者・民衆が貧困に直面している。各国・地域において非正規職労働者の数は傾向的に増大している。公共部門の民営化は抑圧された労働者・民衆をますます圧迫している。労働者・民衆の生存権を脅かし、貧困と搾取、収奪、権利侵害をもたらしている新自由主義政策に対する抵抗とそれに対する国際的な相互支援の組織化は、この地域の労働者・民衆の共通の課題になり続けている。この点で、鉄道分割民営化に反対する韓国鉄道労組の二十三日間のストライキは、アジア太平洋地域と世界の労働者・民衆を大きく激励した。
 同時に、米国・オバマ政権は、二〇一二年一月の「世界における米国のリーダーシップの維持:二十一世紀の国防の優先順位」で示したいわゆる「再均衡戦略」の下で、中国をけん制し、朝鮮民主主義人民共和国を威嚇しながら、アジア太平洋地域における米軍プレゼンスの増強と米国主導の軍事同盟のさらなる強化を狙っている。これはTPPAを通したアジア太平洋経済支配の強化に向けた策動と一体のものだ。二〇一四年三月に発表された「四年毎の国防態勢の見直し」においても、二〇二〇年までに米海軍兵力の60%を太平洋地域に再配置するという計画があらためて再確認された。
 そのもとで米国は今、ものすごい勢いで、アジア太平洋地域の米軍基地と米軍兵力配置を強化しようとしている。それには、沖縄、岩国、神奈川、京丹後での米軍基地の強化・新設、韓国の平澤米軍基地拡張や済州海軍基地建設、フィリピンにおける米軍の恒常的駐留の再開などが含まれる。また、オーストラリア、グアム、ハワイなどでも米軍駐留と米軍基地の強化が推進されている。米国・オバマ政権はまた、日米の帝国主義間軍事同盟の強化をはじめ、同地域において米国主導の二国間・多国間の軍事同盟の強化と同盟国との軍事的一体化を推進している。それはまた、日本の自衛隊の海外派兵態勢の強化など、各国の軍事化のエスカレーションを促している。
 米国・オバマ政権は、域内で継続し高まっている「領土紛争」を口実にして、アジア太平洋地域における米軍プレゼンスの増強を正当化しようとしている。オバマ米国大統領は先の日米首脳会談では「尖閣諸島(釣魚諸島)は日米安保の適用範囲」と明言し、比米首脳会談では南沙諸島問題を口実にしながら「米比防衛協力強化協定」に調印した。このような米帝国主義の策動は、この地域における軍事緊張を高めるだけであり、ただちに中止されねばならない。
 同時に、日本帝国主義のこのかんの動向が、アジア太平洋地域における政治的・軍事的な緊張を拡大させている。安倍政権とその閣僚たちは、かつての日本帝国主義のアジア侵略戦争・植民地支配の歴史を美化・正当化し、靖国神社に参拝することで、日本軍性奴隷制度の被害者をはじめとしたアジアの戦争犠牲者を冒涜している。安倍政権はまた、米日軍事同盟の強化を進めると同時に、その下で日本独自の侵略的軍事体制の整備に全力をあげている。安倍政権はいま、「憲法解釈」の変更によって、これまで否定されてきた集団的自衛権の行使を合憲化しようとしている。これはイラク侵略戦争におけるイギリス軍と同様に、日本の軍隊が米軍と肩を並べて侵略戦争・軍事介入を遂行できるようになることを意味している。安倍政権による歴史の歪曲と今日の日本の軍事態勢強化に向けた動きは一対のものである。
 このような日本帝国主義の動向は、当然にもアジア各地の民衆の憤激を呼ぶと同時に、この地域における政治的・軍事的緊張を拡大させている。日本帝国主義はまた、インドネシアやフィリピンをはじめアジア太平洋地域に膨大な経済権益をもち、各地の労働者・民衆を搾取・抑圧している。そのために各地での日系企業における労働争議も拡大している。日本政府はまた、福島原発事故がいまだ収束していないにもかかわらず、日本製の原発の海外輸出を推進しようとしている。このような日本帝国主義の策動に対する闘いは、米帝国主義に対する闘いとともに、ますますアジア太平洋地域の労働者・民衆の共通の課題になってきている。
 アジア太平洋地域の労働者・民衆が直面するこのような情勢は、AWC運動のさらなる発展を要請している。われわれは団結を深め、共通の敵に対する共同の闘いをさらに前進させていかねばならない。

 ▼2、この一年間のAWCの地域規模での活動

 昨年三月の台湾での第十六回CCB会議は、アジア太平洋各地で米軍基地と米軍展開態勢が強化され、また、「領土問題」をめぐる軍事緊張が高まるなかで開催された。CCB会議の共同決議は、釣魚諸島や独島をめぐる日本の侵略と領土拡張主義を弾劾し、さらに、米日帝国主義が領土問題を利用して、米日軍事同盟の強化とアジア太平洋地域における米軍プレゼンスの増強を正当化していることを弾劾した。加えて、領土問題の平和的・外交的な手段を通じた解決を要求し、アメリカ帝国主義のあらゆるかたちでの介入・支配に反対することを確認した。会議参加者はさらに、在台湾アメリカ協会(AIT)に対する共同の抗議行動に取り組んだ。
 それ以降、現在までの約一年間を通して、各国・地域でのそれぞれの闘いを基礎にして、AWC参加団体間の連携した取り組みや共同闘争が様々に前進してきたということができる。そのいくつかを以下に取り上げる。
 第一は、アジア太平洋地域における米国主導の軍事同盟と米軍基地に反対し、アジア太平洋地域からの米軍の総撤収を求める共同の闘いだ。
 二〇一三年七月、AWCは「基地をなくせ!」ネットワークなどの国際団体とともに、フィリピン・マニラで開催された「米国のアジア太平洋への戦略的回帰、ミリタリズム、介入、戦争に関する国際会議」を共催した。これにはAWCの参加団体からはフィリピン、日本、台湾の代表が参加した。これは地域的・世界的な反米軍基地運動の前進のためのAWCからの貢献の一部である。
 二〇一三年四月には米比合同軍事演習バリカタンに抗議する連携した行動がフィリピンと日本で取り組まれた。二〇一四年二月から開始された米韓合同軍事演習「キーリゾルブ/フォール・イーグル」に対する韓国と日本での連携した行動が取り組まれた。
また、この四月二十日に行われた日本の京丹後市宇川地区での新たな米軍基地の建設計画に反対する集会にはAWCのすべての団体から連帯メッセージが寄せられた。
 第二に、かつての日本のアジア侵略戦争・植民地支配を美化・肯定し、侵略戦争体制づくりをおし進める日本の安倍政権に抗議する闘いだ。
 二〇一三年八月十五日、台湾の同志たちが推進する「両岸和平発展論壇」は、台北の日本交流協会前での抗議行動を行った。AWC日本連もまた、閣僚・国会議員らによる八・一五靖国神社参拝に反対する活動に取り組んだ。台湾の同志たちはまた、昨年十二月二十七日の安倍首相の靖国神社参拝に抗議して、その翌日にも日本交流協会に対する抗議行動をおこなった。台湾と日本の声明は相互に交換・共有された。
 この問題での韓国と日本の同志たちの共同行動も行われてきた。二〇一四年二月十一日、AWC韓国委員会とAWC日本連の訪韓団は、ソウルの日本大使館前での「共同記者会見」を実施した。さらに二月二十一日には、日本での「竹島の日」式典およびそこへの内閣府政務官の派遣に抗議する取り組みが韓国と日本で同時に行われた。
 第三に、直近のオバマのアジア歴訪に対する共同闘争だ。
 四月二十三日から開始されたオバマ米国大統領のアジア歴訪に対して、日本、韓国、フィリピン、米国のAWC参加団体は、「アジア太平洋地域の民衆はオバマのアジア歴訪を拒絶する!」と題する共同声明を発表した。その共通のスローガンは「米軍プレゼンス強化反対!TPPA反対!帝国主義の支配、抑圧、収奪に抵抗しよう!」だ。
 さらに、オバマ大統領の訪問と各国首脳との会談に抗議する闘争が、日本、韓国、フィリピンで連続して行われた。AWC日本連は、共闘団体とともに、オバマ来日と日米首脳会談に抗議して、四月二十三日には東京の米国大使館、四月二十四日には大阪の米国領事館に対する抗議行動を行った。韓国では、TPPA交渉中断、韓米日軍事同盟強化と日本の軍国主義化反対、朝鮮半島平和実現などを要求する行動が四月二十五日・二十六日に行われた。フィリピンBAYANは、四月二十三日のオバマ大統領の日本上陸にあわせてマニラの米国大使館への抗議行動を実施するとともに、四月二十八日・二十九日のオバマ訪比と「米比防衛協力強化協定」に抗議する大規模で激しい抗議行動を展開した。
 この他にも、今年の三月十一日の福島原発事故三ヵ年に対する日本と韓国での同時行動、韓国と日本の青年労働者・非正規職労働者との交流も進んだ。今回のソウルでのAWCの活動はまた、日本やフィリピンの青年活動家と韓国の青年活動家・非正規職労働者との交流の機会ともなった。
 同時にこのような地域規模での共同闘争と相互支援の前進のなかで、AWCの活動は各国政府による入国妨害などの弾圧にも直面してきた。韓国政府が二〇一一年以来AWC日本連のメンバーらに対して行ってきた大量の入国禁止措置は、われわれの闘いを含む国際的な圧力の増大のなかで、昨年後半にいったん解除を実現した。他方、フィリピン政府によるAWC国際事務局長らに対する入国禁止措置はいまだ解除されておらず、その撤回のためのフィリピンの同志たちとの連携・協力した努力が続けられている。

 ▼3、反帝国際共同闘争のさらなる前進を

 一九九二年のAWCの発足以来、すでに二十二年が経過した。このかんAWCに参加する各国・地域の民衆団体は、反帝国主義に立脚した緊密な団結を維持し、アジア太平洋地域における民衆団体の共同闘争と相互支援を前進させてきた。しかし、このかん同地域の労働者・民衆が直面してきた情勢は、米日帝国主義の攻撃に対する労働者・民衆の共同の反撃のさらなる前進を求めている。
 われわれはこのかん実現してきた成果に踏まえ、相互理解をさらに促進し、アジア太平洋地域における民衆団体の共同闘争と相互支援のさらなる前進をかちとっていかねばならない。今回の第十七回AWC―CCB会議において、当面する共通課題を明確にし、具体的な共同キャンペーンの計画をつくりあげていきたいと思います。
 同時に、AWCのさらなる発展を実現していくことを目的にして、AWC国際事務局は、AWC第四回総会を来年二〇一五年の適切な時期に日本で開催することを提案します。それをAWCの運動と組織のさらなる拡大の重要な機会として成功させていきたいと思います。
 米日帝国主義の支配と侵略に対するアジア太平洋地域の民衆の共同闘争の更なる前進を!
                                                     二〇一四年五月