■伊勢志摩サミットに反対する決議
日本政府―安倍政権は二〇一六年、四十二回目の七カ国首脳会合(G7サミット)を三重県の伊勢志摩で開催することを決定している。
第二次世界大戦後の資本主義世界経済体制の画期となった七四―七五年恐慌に際して、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、日本、カナダの七カ国は、資本主義体制の護持を目的にして七五年にフランス・ランブイエで首脳会合(サミット)を開催した。以降毎年開催されてきたG7サミットは、現代帝国主義の政治的代表が、世界支配、世界分割について討議し、調整する場となってきた。その協議内容は経済問題にとどまらず、政治・軍事に及ぶものである。アメリカ帝国主義をはじめとする帝国主義は、このサミットの場において残虐な侵略戦争を相互に承認しあってきたのである。この主要国のサミットは、ソ連崩壊後、ロシアが新たに加わった時期もあったが、ウクライナをめぐる大国同士の争いで、ロシアはぬけたまま、今日に至っている。
G7サミットを構成する帝国主義諸国、すなわち、一部の大国だけでものごとを決定するなどということは、そもそも、許されることではない。そして、G7サミットを構成する帝国主義諸国によるグローバリゼーションのもとで、世界は、貧困と戦争を強いられ続けてきた。だから、G7サミットは、世界の人民の反グローバリゼーション闘争の標的となってきたのである。また、今回の伊勢志摩サミットは、ISに対する「対テロ」侵略戦争を続行し、連日の空爆によって、シリア、イラクの人々を殺戮する主要国が、「対テロ」侵略戦争を一層強めるための協議の場としようとしている。そして、開催国の安倍政権は、昨夏の戦争法成立をうけて、こうした「対テロ」侵略戦争への参戦を虎視眈々と狙っている。わたしたちは、こうしたなかで開催されるG7サミットを、強く弾劾し、各国・地域の労働者人民の共同闘争で、これとたたかう。
特に、開催国である日本の安倍政権は、九一年中東湾岸戦争、二〇〇一年アフガニスタン戦争、二〇〇三年イラク戦争など近年の侵略戦争に日本が全面参戦できなかったことを失政であると捉えてきた。日本国憲法の戦争放棄条項は、第二次世界大戦敗戦までに日本がなしてきた植民地支配と侵略戦争の国家的反省というべきものであるだろう。安倍政権はあらゆる手段をもって、この憲法を破壊しようとしてきた。昨二〇一五年、安倍政権が強行した戦争法は、憲法前文と九条を否定して、日本が集団的自衛権を行使して派兵―参戦するための法である。安倍政権は「対IS」戦争への参戦、あるいは新たな朝鮮戦争への参戦を実現することで、敗戦帝国主義としての限界を突破しようとしている。安倍晋三は、五月伊勢志摩サミットを議長国として主導し、この軍事外交を貫こうとしている。
安倍は、日本の天皇制の重要な拠点である伊勢神宮が存在することを強く意識して、G7サミットの開催地を伊勢志摩に決定した。昨年末十二月二十八日の日本軍性奴隷制度に関する欺瞞的日韓「合意」、そして本年一月二十六日から三十日の天皇アキヒトのフィリピン訪問外交と一体である。日本帝国主義の戦争責任を曖昧にし、あらためて天皇制を強めていくことは、労働者人民の国際連帯を踏みにじる攻撃である。
わたしたちは、二〇〇〇年沖縄サミット、二〇〇八年洞爺湖サミットに対して、帝国主義の侵略戦争と経済支配に反対し、国際共同闘争として現地での反対行動を闘ってきた。この闘いを引き継いで、本年五月伊勢志摩サミット反対闘争に立ち上がることを宣言する。
二〇一六年二月二十八日
AWC第四回総会(於・京都)にて
■アジア人民に敵対する安倍政権の歴史認識、および、安倍政権による日本軍性奴隷制度被害女性への敵対を弾劾する決議
安倍政権は、アジア人民に敵対している。安倍首相およびその政権は、かつての日本帝国主義の植民地支配と侵略戦争を美化し肯定している。安倍首相は、国会答弁でも、かつてのアジア侵略戦争を認めず、「侵略かどうかについてはさまざまな説があり、政治家ではなく歴史家が判断するもの」と開き直っている。昨年八月の安倍談話も、アジア侵略を認めなかった。かつての日本帝国主義のアジア侵略を反省することを自虐史観であるとし、日本民族の誇りをとりもどすというのが、安倍首相やそれを支持する右派の主張である。また、安倍首相や閣僚、国会議員達は、かつてのアジア侵略戦争で戦死した兵士をまつる靖国神社への参拝を繰り返している。それだけではない。「日の丸」「君が代」の教育現場などへの強制、愛国心教育の強化、さらに、南京大虐殺の否定など、枚挙にいとまがない。
こうした策動のなかでも、最も中心的な攻撃対象が、元日本軍「慰安婦」制度問題の否定である。十二月二十八日に発表された「日韓合意」は、元日本軍「慰安婦」に対する国家謝罪と賠償を回避し、「慰安婦」制度問題の「最後的決着」をつける意図でなされた。それは、被害当事者を無視し、かつ、十億という金で韓国政府に元日本軍「慰安婦」たちと支援組織の反対を抑え込めという傲慢な態度に他ならない。また、少女像の撤去を要求するのは、日本が強いた戦時性奴隷制を謝罪・反省しそれを記憶していこうとすることを拒否しているのであり、決して、許されることではない。むしろ、少女像を国会議事堂や首相官邸にこそ建立すべきなのだ。さらに、日本軍の性奴隷にされたさまざまな国・地域の元日本軍「慰安婦」もまったく無視し、韓国政府とのみ外交決着を図ったものなのである。「日韓合意」の破棄、日本政府、国会による謝罪決議による謝罪と賠償の実現こそ必要なのである。
私たちは、日本政府に対し、「日韓合意」を破棄し、韓国のみならず、朝鮮民主主義人民共和国、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、東ティモール、オランダなど、さらに、日本を含む、すべての国・地域での日本軍の性奴隷被害当事者に対する国家謝罪と賠償を行うことを要求する。
今回のこの「日韓合意」には理由がある。いま、安倍政権は、こうした歴史認識のうえに、また再びの軍事大国化と新たな軍事出動を拡大しようとしている。同時に、朝鮮民主主義人民共和国に対抗して、さらに、中国に対抗して、日米韓の軍事協力体制の構築が不可欠だからである。「日韓合意」を米政府が用意したこともそういうことだからである。すなわち、元日本軍「慰安婦」制度問題を反動的に清算することで、新たな日米韓軍事協力を強化していこうとすることにある。そうした策動のなかで、その要の位置をもつこととなる、安倍政権によってなされた戦争法に強く反対するとともに、強まる自衛隊の海外出動の拡大策動に強く反対する。
私たちは、あらためて、アジア人民に敵対する安倍政権の歴史認識を弾劾する。また、日韓両政府によってなされた「日韓合意」の破棄を要求する。すべての国・地域の元日本軍「慰安婦」、および、すべての戦争被害者に対する国家謝罪と賠償の実現を求める。安倍政権に、戦争法の破棄と、自衛隊の海外出動策動を一切断念することを求める。
二〇一六年二月二十八日
AWC第四回総会(於・京都)にて
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