韓国のアルバイト労働組合(略称:アルバ労組)は、二〇一二年から始まったアルバ連帯の活動をへて二〇一三年五月一日にはアルバイト労働者のメーデーとして第一回アルバデーを開催、同年七月に正式に労働組合として結成。アルバイトと呼ばれ軽視される状況に「アルバイトも労働者だ」と叫び、人間らしく生きるための即時の要求として「最低賃金一万ウォン」を掲げた活動を続けている。アルバ労組は、青年非正規職労働運動であるとともに、大企業であるフランチャイズ本社からの収奪やビルオーナーの高い賃貸料と横暴に苦しめられる零細事業者との連帯闘争も展開している。昨年、逃げ場のない狭いコンビニ店内で有料コンビニ袋をめぐりアルバイト青年労働者が客に刺されて亡くなった問題に対し、遺族と連帯して本社の責任を問う闘いも担っている。二〇一六年十一月にはついにマクドナルド労組が結成され、「マック奴隷」「‘カンド’ナルド(カンドは「強盗」の意味の韓国語)」という新語を作り出しながら、韓国マクドナルドとの団体交渉を実現し、マクドナルドで働く多くのアルバイト労働者を組織するために奮闘している。
韓国では次年度の最低賃金(全国一律)が六月末に最低賃金委員会で審議・決定されるが、アルバ労組は結成以来、「最低賃金一万ウォン」を要求する各種の闘争や国会前でのハンスト闘争を粘り強く五年にわたって闘い続けてきた。「最賃今すぐ一万ウォン」は、労働者の60%が非正規職として生計を立てるしかない状況での切迫した「生活賃金」の要求だ。その結果、二〇一六年四月総選挙では、既成政党が「最低賃金一万ウォン」を掲げ、民主労総と韓国労総が共同で掲げる要求になり、さらに今年六月の民主労総の社会的ゼネストの筆頭要求項目ともなった。いまや最賃一万ウォンは大勢となった。二〇一七年六千四百七十ウォン(約六百四十円)だった最低賃金は、16・4%引上げられ二〇一八年の最低賃金は七千五百三十ウォン(約七百五十円)となった。「大幅引上げ」ではあっても、アルバ労組が掲げた「最低賃金、今すぐ一万ウォン」は新政権下でも実現していない。アルバ労組は声明の中で「喜べず、なすべきことも多い」とその立場を打ち出した。アルバ労組の闘いから学ぶことは多い。以下、声明本文を訳出・紹介する。
●喜べず、なすべきことも多い
2018年最低賃金決定に対するアルバイト労組の立場
結局私たちの要求である時給一万ウォンに達しえなかった。時給七千五百三十ウォン、月給百五十七万三千七百七十ウォンで二〇一八年最低賃金が決定された。時給一万ウォンは私たちが人間らしい生活のための最小限として主張した賃金だ。「歴代最高」の引上げ率にも喜べない理由は、その決定が相変らず人間に達しない暮らしを耐え忍べとの宣言であるからだ。相対的に高い引上げ率は、詰まった息の根をわずかなりとも広げてくれるだろうが、それでも月二十万ウォン程度の賃金引上げでは、生活を押さえ付ける経済的困難を一掃できないだろう。
課題は多い。今回、最低賃金一万ウォンを語りながら、この問題が単純に最低賃金だけを上げる問題ではなかったことを全国民が知ることとなった。何が本当に零細自営業者を苦しめているのかが明確になった。大企業による地元小規模商圏の占領、高騰する賃貸料、フランチャイズの横暴、カード会社だけが儲けるカード手数料問題(店舗が負担する―訳注)を直ちに解決しなければならない。経営者総協会(経総)と政府与党が本気で零細自営業者を心配しているならば、この課題をまず先に推進すべきである。
最低賃金を決める方式も変わらなくてはならない。今回の最低賃金決定で事実上、委員会の構成と関係なく政府方針が決定的だという事実が立証された。朴槿恵時代に6―7%引上げを主導した公益委員が、16%引上げに賛成する姿は納得し難い場面だ。現最賃委員会の議論では、低賃金を基に設計された精巧な収奪体系を手術することはできない。そのために最低賃金で働く当事者の声を十分に反映し、関連課題までも議論し解決できる、位置づけを格上げした社会的議論機構で最低賃金が公的に議論される必要がある。
究極的には労働者多数の賃金が最低賃金協議を通じて決定されてはいけない。結局、団体交渉に進まなければならない。2・8%に過ぎない非正規職労組の組織率、労組結成やストライキは夢のまた夢であるアルバイト労働者の現実では見込みがないというのか? いや、決してそんなことはない。多数のヨーロッパ国家は、団体協約の拡大適用で最低賃金に代えている。アルバ労組は韓国マクドナルドと団体交渉を始めた。あらゆる労働ヘイト悪法を廃止し制度整備がともなえば、私たちの力で全てやり遂げられる。誰でも自身が受け取るべき正当な給与を事業主と交渉できる時代、アルバイトもストライキができる時代、遅らせることはできない。なすべきことが多いと言った理由である。
二〇一七年七月十六日
アルバイト労働組合
|