共産主義者同盟(統一委員会)
綱領
私たち共産主義者同盟(統一委員会)は、資本家階級(ブルジョアジー)を打倒し、労働者階級(プロレタリアート)の支配を打ちたて、階級支配ならびに階級そのものを廃止し、プロレタリアートの解放−全人民の解放−共産主義社会を建設していくことを、自らの全活動の基本目的として綱領にかかげる。
労働者階級の解放は労働者階級自身の事業である。労働者階級の一部である私たちの党は労働者階級の自己解放闘争の先頭に立ち、これを勝利に導くために全力をあげてたたかう。自国帝国主義−日本帝国主義を打倒し、プロレタリア社会主義革命の勝利を通じてプロレタリアートの独裁権力を打ち立てていくことを党は当面の最重要の任務におく。
労働者階級の解放はまた世界的な事業である。日本革命は共産主義世界革命の一環としてたたかいとられねばならない。世界革命の実現は国際プロレタリアートの共通の任務である。党は国際プロレタリアートの連帯と結合を推進し、全世界に新たなインターナショナルを組織し、日本革命と世界革命の強固な結合を組織するためにたたかう。
党は労働者人民を革命的階級に形成し、新たな社会の支配者階級に高めあげていくことを死活的任務として重視する。私たちは、日本にマルクス・レーニン主義に立脚した強大な革命的労働者党を建設していくために力をつくす。
共産主義者同盟(統一委員会)に結集し、ともにわが党の綱領のもとに結束してたたかうことをすべての労働者人民に対して呼びかける。
◆第1部
1 資本制社会
私たちが暮らしている社会は資本主義社会である。この社会の大きな特質は、生産物の大半が生産者が自分で消費するためにではなく、市場で販売するための商品として生産されているということだ。資本主義的生産関係にもとづく商品生産が生産の支配的様式だ。
資本主義のもとでは、主要な生産手段を私的に所有するブルジョアジーという一握りの階級が、プロレタリアートを雇い入れて財貨を生産する。その目的と動機は剰余価値の生産である。ブルジョアジーはプロレタリアートの無償の労働によってつくりだされる剰余価値を利潤として自分のものにする。すなわち搾取する。
プロレタリアートは生産手段をまったく持たないために、自分の労働力を商品としてブルジョアジーに売りわたし、その対価として賃金を得て生活する以外に生きるすべを持たない存在である。生きていくためにはプロレタリアートは、ブルジョアジーの下で、ブルジョアジーを富ませるために働くほかはない。階級としてのプロレタリアートは資本という鎖でブルジョア階級総体に縛られた賃金奴隷である。
ブルジョアジーはより多くの利潤を得るために、機械や技術や生産方法を不断に改良していくことに駆り立てられる。それによって労働の生産性は向上し、社会的な富は増大する。だが労働の社会的生産力の発展は資本の生産力の発展としてしか現れず、その成果はブルジョアジーによって独占されるので、労働者の生活の向上にはつながらない。資本主義社会では生産力の発展や富の増大は逆に全社会的な不平等を拡大し、労働者・農民・零細商工業者など働く大衆の生活の不安定さと困窮を増大させる。
大資本は小規模生産を駆逐してますます巨大になる。そして小生産者の一部をプロレタリアートに転化し、プロレタリアートに対する搾取を強化しながら、社会・経済におけるその支配的地位を強める。そのため資本に対する賃労働の従属はいっそう強まり、貧困や格差など社会的な諸矛盾も拡大する。
資本は「自由な労働力」としてのプロレタリアートを大量に生み出し、それをみずからの存立の基礎とする。しかし民族差別などさまざまな形態の抑圧・差別を解消せず逆に新たに再編して、資本主義的発展のテコとして利用し、拡大再生産する。
資本制生産においては好況・恐慌・不況という諸段階が循環的にくり返される。好況期においては資本の蓄積が進んで生産が活発になり拡張されていくが、それは労賃を上昇させて利潤率を低下させ、過剰資本を不断に生み出していく。資本蓄積は停滞し、支払能力ある需要の制限を超えて生産される商品は、国内外の市場にあふれかえる。資本主義的生産様式に内在する基本的矛盾は恐慌となって爆発する。恐慌とその後の不況期は小生産者をいっそう零落させ、労働者階級・被差別人民・被抑圧民族の生活状態のさらなる悪化をもたらす。資本主義の世界的発展とともに、恐慌は世界恐慌という形態をとってしばしば立ち現れるようになる。恐慌は資本制商品生産のもとで生産力が発展することの不可避的な結果であり、みずからつくりだした巨大な生産力をもはやブルジョアジーが統制できなくなっていることを物語っている。かくして社会はもはやブルジョアジーの生存とはあいいれなくなる。
2 資本主義の新しい発展段階―帝国主義
こうした土台のうえで、資本主義は20世紀のはじめに新たな発展段階に入った。生産と資本の大規模な集積と集中がいっそう進み、独占が生まれた。独占資本主義は自由競争の段階の資本主義にとって代わった。銀行資本と産業資本が融合して金融資本という新たな資本が形成され、この金融資本の一群が一国の経済・政治の実権をにぎる金融寡頭制が出現した。対外的には商品の輸出とならんで資本の輸出が強まり、資本家の国際的独占団体が形成されて世界が分割支配され、植民地と市場の再分割をめぐる列強間の対立と抗争が激化した。国内では超過利潤によって一部の労働者層が買収され、労働者階級はその本来の革命性を宿すプロレタリア下層と上層とに分裂した。帝国主義の時代が、かくして始まった。帝国主義は資本主義の最高の発展段階としての独占資本主義である。帝国主義はまた死滅しつつある資本主義である。
ところで、資本主義は発生当初から世界経済関係として成立する世界資本主義である。世界資本主義は、産業・金融・通貨・貿易など全般にわたって資本主義世界を主導し編成する資本主義、しかも圧倒的な軍事力をもって世界を編成することのできる資本主義国が中心となって編成されてきた世界体制である。中心国は非中心国に圧倒的な影響を与えつつ、自らへの経済的・政治的な追随・適合を要求する。第二次世界大戦の前はイギリスが、その後は米国が中心国だ。歴史的には、資本主義諸国の対立・抗争、植民地諸国人民の反乱によって中心国は没落し、その行きづまりが恐慌−ブロック化−世界戦争へとつづいた。
第二次世界大戦後、資本と生産の集積と集中は世界的な規模でいっそう進み、国際的独占体は多国籍企業という形態をとって成長した。多国籍企業は全産業部門で世界市場に対する支配力を強め、多国籍企業の大規模な直接投資-産業資本の輸出によって資本主義は戦後世界において世界的な規模でさらに発展しつづけた。多国籍企業は、現代帝国主義の主要な経済基盤となっている。多国籍企業間の世界的競争は、それらの利害をそれぞれに代表する各国帝国主義のあいだの対立・抗争を不断に生みだしつづけている。
現代の大規模化した資本の運動は、かつてない破壊力をもっている。恐慌は一国の範囲をこえて世界的な規模で発生するようになっている。くわえて今日では膨大な過剰貨幣資本が投機的に運用され、実体経済に破壊的影響を与えている。2008年には再び世界金融恐慌が起こった。独占は恐慌の過程を通じて自らの力をいっそう強化した。人類の生存をも脅かす危機が世界規模で起きている。飢餓と貧困の深刻化、原発事故、環境破壊、失業、帝国主義による侵略反革命戦争、核戦争の危機などである。
これらは本質上、巨大化した新しい生産力と古い生産関係のあいだの矛盾の表現である。よりグローバルな枠組みを要求している新しい生産力は、私的所有と一国経済(国民経済)を前提とする古い生産関係と衝突しつづけている。この衝突は資本主義・帝国主義のもとでは決して解決できない。解決できないがゆえに、いっそう巨大な次の矛盾の爆発が世界的規模で準備されることになる。いまや新しい生産関係−社会経済制度をつくりあげていくことが人類史的な課題となっている。
すでに資本と商品制のもとで、世界的な規模で社会的生産と流通が組織されている。多国籍資本の生産と流通のネットワークはますます世界を一体化している。これらは世界的な社会革命の物質的可能性、資本主義的生産関係を新しい生産関係に代えていく物質的条件が広がっていることを示している。また他方では資本の運動そのものが、資本の支配を廃絶する革命をになう主体としてプロレタリア階級とともに被抑圧民族人民とそのたたかいを生みだしつづけている。これらは現代革命の客観的諸条件である。
3 もっとも革命的な階級としてのプロレタリアート
賃金奴隷階級であるプロレタリアートは同時に、資本主義社会を変革して、新しい社会―共産主義社会をつくりだしていく潜在的な力をもつ階級である。プロレタリアートの力によってのみ、資本主義がつくりだした巨大な矛盾は解決され、現代社会はその深刻な危機から脱出することができる。
プロレタリアートは大工業の発展とともに数を増し社会の圧倒的多数者となり、もっとも抑圧された存在として現代社会の最下層を形成している。プロレタリアートは生産手段を何一つもたない無所有であるがゆえに固く団結することのできる階級であり、また国境をこえて世界的な結合を可能とする世界的な階級である。何よりもプロレタリアートは資本主義社会でおこなわれている生産活動の真の主体である。プロレタリアートはもはやブルジョア階級という特別の階級を必要とせず、自分自身の力で社会に必要な財貨を生産し、社会と経済を運営することのできる潜在的な力を実際にそなえている。
プロレタリアートは資本家および国家権力とのたたかいを通じて競争や孤立の代わりに結合と団結を生み出せる存在である。プロレタリアートは階級として団結し、団結を不断に高め上げていくことによって資本や国家と対抗し、資本主義を政治的にも社会的にも乗り越えていくことのできる存在である。
またプロレタリアートは他の被抑圧人民と利益を共有し、ともにたたかうことのできる普遍的性格をもつ階級である。プロレタリアートの運動は、資本主義社会の圧倒的多数者階級の自己解放運動であり、階級を廃絶するまで終わることのない永続的な運動である。
4 プロレタリア独裁
プロレタリアートによる政治権力の奪取から始まる一連の社会革命の不可欠の条件をなすものは、プロレタリアートの独裁である。プロレタリア独裁は共産主義の低い段階としての社会主義にいたる過渡期の政治権力である。それは打倒されたブルジョア階級を収奪し、その反抗を打ち砕くとともに、プロレタリア権力の成立という新しい条件のもとでの階級闘争と経済建設を通じて共産主義への道を切り開く。
プロレタリア独裁権力は同時に、プロレタリア・被抑圧人民に対しては徹底的に民主主義的な性格をもつ政権である。膨大なプロレタリアート人民を結集し、その自発性・創意性・献身性、潜在する能力を引き出し、新しい社会の建設をになう主体へと形成していくためには、形式民主主義としてのブルジョア民主主義に代わる、直接民主主義を原理とするプロレタリア民主主義が必要である。
また、プロレタリア独裁権力は一つの階級独裁権力でありながら、いっさいの階級対立と階級搾取の廃止、国家の死滅を進めて行く手段である。プロ独権力のこうした基本的性格は所与のものではなく、たたかいとられるべきものである。それを保障し発展させていく決定的な条件は、プロレタリアートをソビエト(評議会)に組織しつづけ、国家・社会の実際の統治、政治・経済の実際の運営に広範な労働者人民を参加させつづけることにある。ソビエトを現実に構成し、その発展を実際にになう人々がプロレタリア革命の主体である。またプロレタリアートと被抑圧人民が社会・国家の本当の主人公として登場したとき、はじめて階級独裁の道具としての国家死滅の展望は現実のものとなる。
世界革命の勝利に先んじて成立した一国のプロレタリア独裁はまた、全世界のプロレタリアートの階級闘争と結びつきながら、世界革命の拠点―根拠地国家としての役割をになうことを国際主義上の義務とする。一国のプロ独政権は、全世界の被抑圧人民に耐えがたいまでの生活破壊と苦悩を強いている帝国主義とたたかう姿勢を常に鮮明に示しつづけることで、全世界プロレタリアート人民の解放の希望となる。
5 共産主義
プロレタリアートは、世界革命の勝利まで永続する革命によってブルジョア階級とその国家権力を全世界から打倒・一掃する。そしてこれを条件にして生産手段の私的所有を社会的所有に代え、商品生産を廃止して社会的生産過程を計画的に組織する。生産は社会全体の利益を第一義において計画的におこなわれるようになり、資本主義の時代の無政府的な生産や消費のあり方は根本から転換する。
新たな支配階級として登場するプロレタリアートは、同時に、すべての人間を労働者・生産者に変えて諸階級への社会の分裂をなくし、生産手段の社会化と商品生産の廃絶をとおして階級が存続する条件そのものをなくしていく。階級の消滅とともに、階級支配も国家もその成立の基盤を失う。階級支配と結びついたあらゆる差別・抑圧の根拠がこれによって取り除かれ、階級社会数千年の歴史に終止符が打たれる。
この無階級社会、すなわち共産主義において、これまでの社会の歴史はすべて前史となる。階級の廃絶と社会的生産力の発展を条件にして、まったく新しい生産関係・社会関係がつくられていく可能性がここに切り開かれる。何よりも人間の生命活動の根幹を占める労働のあり方が根底から変化する。共産主義社会において諸個人は社会の一員として社会のために労働するが、ここでの労働は資本主義社会のもとでの強制労働-資本家階級の利益のためにおこなわれる賃労働とは根本的に異なるものとなる。労働時間は大幅に短縮され、他の人間的諸活動にあてられる時間が拡大していく。精神労働・肉体労働などの固定的な分業からも人々は徐々に解放され、労働は人間の第一の生命欲求に転化していく。かくして、あらゆる人々がその能力におうじて働き、その必要におうじて生産物を受け取ることができるという、真に自由で平等な協同社会が誕生する。各人の自由で全面的な発展が可能になり、それがまた他のすべての人々の発展と対立するのではなく、その不可欠の条件になっていく協同社会が生まれていく。
6 共産主義者の活動
権力奪取・プロ独・社会主義・共産主義という、こうした一連の長大な歴史的事業をプロレタリアートの前衛として、その先頭に立って推進していくのが共産主義者(党)である。プロレタリアートは自らの解放のために、自らを政党へと組織化し、自己解放運動の発展のなかで自ら政党をうみだしていくが、共産主義者(党)はこれらの労働者政党のうち、もっとも断固たる、現実のプロレタリアートの解放闘争をたえず推進していく部分である。共産主義者(党)は各国のプロレタリアートの闘争において、国籍に左右されない全プロレタリアートの利益をおしつらぬき、つねに運動全体の利益、プロレタリアートの未来の利益を代表するために努力する。
7 ロシア革命の勝利とスターリン主義
世界の労働者階級は、歴史的に個々の資本家とたたかうにとどまらず、階級の解放をめざしてたたかいつづけてきた。1871年に、パリで決起した労働者たちは最初のプロレタリア独裁権力であるパリ・コミューンを打ち立てた。1917年にはロシアで、ロシア社会民主労働党(多数派)が主導する革命運動が勝利した。史上初のプロレタリア社会主義革命である。ロシア革命の勝利によって世界は、資本主義が世界的規模で社会主義に移行していく過渡期世界という歴史段階に入った。
ツァーリ専制支配と帝国主義の反革命干渉を打ち破ったロシア革命は、全世界の労働者人民・被抑圧民族を大いに励ました。全世界で階級闘争・反帝闘争・革命運動が前進し、世界社会主義・世界共産主義への現実性が生み出された。だが、革命ロシアが自らの存続の前提とみなしたヨーロッパ革命が挫折し、帝国主義諸国が革命政権打倒のための軍事干渉をつづけた。内戦は国内経済を荒廃させ、ロシア革命は国際的に孤立した。こうした条件の下、レーニン死後スターリンが党の実権を掌握した。革命の歩みは中断し、大きく後退した。
スターリン主義の誤りは、革命の原動力を階級と階級闘争に求めることを拒否する生産力主義と世界革命を永遠の彼方に追いやる一国社会主義である。スターリン主義は、労働者階級による社会主義建設の根源的力を形成していく労働者ソビエトの破壊を進めた。職場ソビエト・工場委員会を根こそぎ破壊し、労働者階級が新たな生産力と社会を形成していくことを不可能にした。また農村において農業集団化を強権的に進め、農民が社会主義建設に主体的に参加していく根拠を解体した。周辺諸民族に対しては、民族自決権の承認を否定して大ロシアへの併合政策を進め、被抑圧民族のソビエト権力への参加の道を閉ざし、社会主義のもとでの民族融合の可能性を破壊した。さらに、大規模な「粛清」をおこなって、多くの党員・労働者人民を根拠なく殺害・流刑し、恐怖が支配する非民主的な社会を作り上げた。政治的・経済的特権を確保した一部の国家官僚=党官僚が固定的な特権支配層を形成するにいたって、人民に対する独裁支配体制が確立されていった。ソ連共産党はプロレタリア階級の前衛としての性格を失い、国家機構の一部に変質した。
また、スターリン主義は一国社会主義建設路線を固定化し、世界革命の道を放棄した。一国社会主義建設可能論のもとで、ロシア国家の防衛とその影響力の地理的拡大を至上命令とした。各国の運動を帝国主義との取引の圧力として利用し、国際的なプロレタリアートの団結の組織化、帝国主義国革命と植民地革命の結合などの世界革命の勝利をめざす革命戦略を完全に放棄した。第三インターナショナルの解体はこれらの帰結である。
8 現代過渡期世界と共産主義運動
第二次世界大戦後には、植民地・従属国において共産主義者が指導する反帝民族解放闘争が次々に勝利した。1949年の中国革命の勝利をはじめ朝鮮、ベトナム、キューバなどで社会主義を理念とする新政権が成立した。それらは、新たな中心国・米帝による世界支配、スターリン主義による国際共産主義運動の統制、資本主義国における戦後革命の敗北という状況を打ち破る勝利だった。資本主義国においては、スターリン主義共産党とは別の革命的左翼の潮流が生まれた。日本では1958年、日本共産党の誤れる綱領・路線と決別してレーニン主義の継承をかかげる共産主義者同盟が結成された。
戦後40年以上にわたり米ソ対立の「冷戦」時代がつづいたあと、1991年にソ連が解体した。ソ連・東欧圏の崩壊はスターリン主義の破産にほかならなかったが、これにより全世界の共産主義運動は大きな後退を強いられた。だが少数ではあれ、社会主義をめざす「労働者国家」は存続している。
現代のプロレタリアートもまた、自己解放を求めずにはいられない賃金奴隷階級である。第三世界だけでなく資本主義国でも労働者階級の悲惨な労働条件や生活状態は、『共産党宣言』や『資本論』などで描かれたものとまさに同一である。資本主義諸国においては、非正規不安定雇用労働者と失業者の増大、賃金・労働条件の切り下げと権利剥奪といった状況のなかで、労働者階級下層はもとより、上層労働者もこれまでどおりにはやっていけない状況が深まっている。
他方で、資本主義が作り出す矛盾と災禍は、資本主義に未来を託すことができないことをますます多くの人々に認識させ始めるとともに、資本主義廃絶の要求を内包する大衆的な運動を世界規模で生み出した。90年代意向、反グローバリゼーション運動が高揚し、拡大した。2000年代には米帝を筆頭とした帝国主義の侵略反革命戦争に反対する反戦運動が巻き起こった。2010年代の中東アフリカ民衆革命は資本主義諸国の占拠運動につながった。各国の階級闘争は世界的な結びつきをますます必要としている。帝国主義・資本主義の世界支配を転覆し、新しい社会を建設する主体的な根拠は現実のたたかいのなかにある。
ソ連崩壊後、共産主義は資本主義に対する対抗思想としての位置を復権し始めた。スターリン主義の破産を受けて世界的に、社会民主主義やアナーキズム、イスラム主義が台頭した。だが資本主義の改良にとどまる社会民主主義や新たな国家のビジョン・変革の戦略をもたないアナーキズム、階級支配・階級制度の廃絶を抜きにして不公正や不正義を批判するイスラム主義などは、現代世界の根本的変革の問題に答えることはできない。
世界は今も過渡期世界である。ブルジョアジーとプロレタリアートとの世界的な階級対立が激化し、帝国主義による侵略反革命戦争発動と世界支配が強まるなかで第三世界の被抑圧民族・人民の反抗が高まり、米帝の経済的後退を背景にして帝国主義間の対立・抗争もまた激しくなってきている。現代世界の矛盾が新自由主義グローバリゼーションにより拡大・先鋭化するなか、私たちは新しい共産主義運動を創造しなければならない。
◆第2部
(1)日本革命の基本的性格
今日の日本社会は資本制生産を支配的生産様式とする資本主義社会であり、また資本主義の最高の発展段階としての帝国主義段階にある社会である。
1 日本帝国主義の形成
日本資本主義は1868年の明治維新を契機に本格的に発展した。明治維新はたんなる封建勢力内の権力移動ではなく、日本における資本主義社会の成立を準備した政治改革であった。だが階級としてのブルジョアジーの未発達により、この革命は天皇制を中心とする絶対主義的な国家権力を生み出した。この権力はアイヌモシリと琉球を併合した。明治維新政府は富国強兵・殖産興業政策を通して、国家主導で大工業の移植など資本主義的生産様式の育成を強行した。欧米の先進資本主義国が帝国主義段階に移行しつつある中で出発した日本の資本主義は、国内では飢餓賃金に苦しむ労働者、高い小作料にあえぐ貧農の生活を犠牲にし、部落差別や民族差別などをテコに差別・分断支配を強めた。他方、日清・日露・第一次世界大戦と相次ぐ侵略戦争を通じて台湾、朝鮮、中国大陸の一部を占領・植民地支配し、資本の強蓄積を進めた。
20世紀初頭に日本は四大財閥という金融寡頭制が支配する独占資本主義国家となり、帝国主義列強の一員になった。30年代に天皇制ファシズム支配体制を確立し、米英とのアジアの再分割戦争(第二次帝国主義戦争)に突入した日本帝国主義は、アジア諸国人民の反帝民族解放闘争と米帝国主義の圧倒的な力量により全面敗北した。日本資本主義はこれにより壊滅的打撃を受けた。
日本帝国主義は広大な植民地を失い、生産力が徹底的に破壊され、存亡の危機に陥った。この危機を救ったのは、米帝であった。米帝は日本におけるプロレタリア革命を防止し、中国・朝鮮をはじめとしたアジアの革命運動の前進をおしとどめるために、天皇制を存続させ、日本資本主義を復興させた。
戦後日本の歴史は、日本資本主義の帝国主義的復活の歴史であった。戦後日本資本主義は朝鮮戦争とベトナム戦争の「特需」というアジア人民の血の犠牲のうえに実現され、一握りの巨大独占のもとに膨大な中小・零細企業を組み込んだ二重構造下で、長時間・過密労働を国内の労働者階級に強要することによって急速に成長した。朝鮮戦争によるばく大な戦争特需によって、日本の鉱工業生産は50年代初めに戦前の水準を回復した。50年代中盤以降の高度経済成長期に、重化学工業部門・輸出産業を中心にして独占資本が再形成され、産業の二重構造をもとに帝国主義復活の経済的基礎が準備された。65年の日韓基本条約の締結が画期となり、70年代から80年代にかけて米帝に次ぐ経済力をもつ帝国主義として復活と台頭をとげた。同時に米帝のアジア戦略と結びついた帝国主義的な対外膨張と軍事・外交を本格的に展開し始めた。
日本帝国主義ブルジョアジーは現在、全世界の労働者人民、とくに第三世界諸国の人民に過酷な支配と収奪を強い、絶望的な貧困をおしつけている。そして日帝はみずからの権益をアジア・全世界に広げていくために、軍拡と侵略反革命戦争の道を歩んでいる。国内では政治反動と支配体制を強め、労働者人民への搾取・収奪を強め、零落を強制している。日帝国家権力は、日米軍事同盟により駐留する米軍によって補完されている。
2 日本革命の性格と特質
日本革命の性格は、日本帝国主義を打倒するプロレタリア社会主義革命である。日本帝国主義ブルジョア国家権力を打倒し、国内外のプロレタリア人民に対する支配の根を絶ち、資本主義に代わる新しい社会=共産主義社会を建設する革命である。日本革命は全世界のプロレタリアートと被抑圧人民によるプロレタリア世界革命の一部である。
日本革命の主体は社会の圧倒的多数であるプロレタリアートと被抑圧人民である。日本社会は支配者階級である資本家階級(全就業人口の約4%)と被支配階級としての労働者階級(同約80%)および農漁民を含む自営業者層(同10数%)が構成する階級社会である。日本の労働者階級は上層と下層に分裂しており、上層労働者のほとんどはブルジョアジーによって買収されている。
日本革命は、プロレタリア階級のもつ組織性と力に依拠して行なわれるプロレタリア社会主義革命である。それはまた広範な被抑圧人民・被差別大衆を結集し、日本ブルジョア階級と米帝など国際帝国主義との闘争に勝利する革命である。プロレタリアートは革命において指導階級としての役割を果たし、小ブルジョア階級である都市中間層・農漁民の反政府闘争を支持し援助するとともに、そのなかから革命の味方を組織し、日本のブルジョア政府とたたかうあらゆる進歩的社会勢力を革命の同盟軍として引きつける。
日本革命は、これまで敗北を重ねてきた帝国主義本国における革命である。ヨーロッパ革命の敗北はロシア革命を国際的に孤立させ、スターリン主義が発生する一条件となった。戦後においては、帝国主義国の革命運動が遅れたために、第三世界の反帝民族解放闘争は苦しんできた。共産主義運動におけるこうした負の歴史を覆す革命という任務を、日本革命はもつ。日本はアジアにおいて唯一の帝国主義であるため、日本のプロレタリア革命がアジア諸国の革命運動におよぼす影響は大きい。日本革命の勝利とアジア革命の勝利は不可分一体である。日本革命はアジアの労働者人民の労働者解放闘争および反帝民族解放闘争の勝利と結合する革命である。
ブルジョア国家権力の打倒から始まるプロレタリア革命は、暴力革命によってしかなしえない。日本における革命は議会における多数派形成によっても、また農村や山岳地帯を拠点とする解放区型革命によっても勝利しない。プロレタリアートの武装蜂起を国家権力打倒の戦術の中心にすえるべきである。日本のプロレタリアートは武装蜂起の勝利を可能にする革命党を建設しなければならない。
革命党は日本のプロレタリアートの先頭で、まず自国のブルジョアジーを打倒し、プロレタリアートの権力―プロレタリア独裁を打ち立てる。過渡期社会建設において党はプロレタリアートの階級闘争を組織し、社会主義に向けて労働者人民の団結を形成し強化する。このためにプロレタリア独裁政権の基本的方策を作る。
(2)日本におけるプロレタリア独裁政権の基本的政策
1 政治の分野で
(a) ブルジョア議会制度を廃止する。ソビエトを基礎にしたコミューン的原則にもとづいて運営される革命政府を樹立し、このもとで新憲法を制定する。
(b) 日米安保条約を破棄し、米軍基地を前面撤去する。
(c) 警察機構とブルジョアジーの常備軍―自衛隊を解体し、民兵制度と赤軍を創設する。
(d) ブルジョア国家機構・官僚機構を解体する。天皇制を廃止する。
(e) 旧制度の裁判所を廃止し、裁判官を労働者のなかから選出する。
(f) 労働者人民に集会・結社・出版・信教の自由、参政権、適正な手続きの保障などの諸権利を保障する。すべての人民に生存権を保障する。
(g)
性・性的指向・性自認、人種、民族、宗教の別にかかわらない同権を保障する。アイヌ、沖縄人民の自己決定権を承認する。在日朝鮮人・韓国人、在日中国人および滞日外国人の自己決定権を承認する。被差別大衆の差別糾弾権を保障する。
2 経済の分野で
(a) 生産手段の社会化をめざし、主要産業・金融機関・運輸機関を国有化する。大土地所有を廃止する。
(b) 労働者人民が生産過程における決定権を握る。
(c) 平等の労働義務制度を導入する。
(d) 資本主義下の無計画的な大量生産・大量浪費型の生産・生活様式を、計画的な適量生産・適量消費様式へ根本的に転換する。
(e) 生産協同組合・消費協同組合を発展させ、労働者人民が流通過程についても統制する。
(f) 農業における共同生産の組織化を進める。
(g) 勤労人民の労働の軽減と生活の向上をはかる。
(h) 強度の累進税の導入及び相続権の廃止などを通じて、資本家階級の特権を剥奪する。
3 社会の分野で
(a) 労働者人民を国家統治・経済の運営の仕事に広範に参加させる。
(b) 過渡期社会建設主体としての自覚と能動性を労働者人民が獲得できるように教育を行う。
(c) 政党、労働組合、協同組合、NGOに自主的活動を保障する。労働者には団結権・交渉権・ストライキ権が保障される。
(d) 学校教育を無料にして、教育を受ける権利を保障する。少数民族の母語による教育を保障する。教育と生産的労働を結合させる。教育からあらゆる反動的偏見、差別排外主義思想を排する。
(e) 宗教と国家を分離する。
(f) 自然環境破壊の進行を防ぐ。資源の収奪と大量消費に依存した生活様式の根本的転換を進める。
(g) 医療・介護・保育の無料化、住居の完全な供給、社会保障の内容充実及び個人負担廃止により、貧困を無くし、すべての人々が十分に食べ、活動できる安心した文化的生活を保障する。社会保障制度は当事者との話し合いを通じてつくる。
4 国際の分野で
(a) 日本帝国主義政府が結んだあらゆる帝国主義的条約・協定を破棄する。
(b) 第三世界における日本帝国主義のすべての権益・債権を放棄する。日本帝国主義の戦争責任・戦後責任を明確にし、戦後補償を行なう。諸民族の同権を擁護し、被抑圧民族の民族自決権を支持する。
(c) 全世界の飢餓と貧困の問題の解決に力をつくす。
(d) 帝国主義とたたかう国際的階級闘争・革命運動をあらゆる形態で支持・支援し、世界革命・世界プロレタリア独裁の実現をめざす。
(3)革命の準備
日本におけるプロレタリア独裁政権の樹立に向けて党は、当面、次のような任務をかかげてたたかう。
(a) 日本帝国主義による軍拡と侵略反革命戦争に反対する。天皇制・天皇制イデオロギー攻撃とたたかう。核兵器の廃絶を要求する。日米安保・戦争・憲法改悪に反対する全人民的政治闘争と政治統一戦線を建設する。
(b) 帝国主義の侵略反革命戦争および新自由主義グローバリゼーションとたたかう全世界の闘争に連帯する。
(c) アジア諸国と日本の階級闘争および革命運動の実践的結合を推進する。アジアにおいて日米帝の支配とたたかう反帝統一戦線を形成し強化する。戦闘的労働組合のアジア・ネットワークを形成する。アジア・インターを建設する。
(d) 労働運動に革命の強固な基盤を築きあげる。国家・資本の攻撃と大衆的・戦闘的にたたかう階級的労働運動をつくりだす。
(e) 長時間労働の強制に反対し、労働者の精神的・肉体的摩滅を防止する。時間外労働・夜間労働の原則禁止を要求する。8時間労働制を守らせる。インターバル制度の導入。裁量労働制の廃止。同一価値労働・同一賃金の原則を掲げ、非正規雇用労働者に対する差別の禁止を要求する。均等待遇、非正規職の撤廃。労働災害の防止・廃絶。
(f) 全世界の労働者人民と農民の生活を破壊する、農産物輸入自由化等による農業破壊に反対する。
(g) 日本帝国主義の戦争責任・戦後責任を明確にし、責任者の処罰、被害者に対する謝罪・賠償を日本政府に行なわせる。
(h) 入管体制に反対し、在日・滞在外国人の市民権の確立をめざす。
(i) 女性差別、部落差別、障害者差別、民族差別、性的少数者差別などあらゆる差別に反対する。
(j) 大気・海洋・河川・土壌汚染などの環境破壊に反対する。急激な気候変動、地球温暖化の防止。
(k) 原子力発電所の新設・増設・再稼働の中止。輸出の中止。全原子力発電所の即時停止、廃炉作業への着手。再生可能エネルギー中心へのエネルギー政策の転換を求める。
(l) 差別・選別・管理教育に反対する。愛国心教育に反対する。
(m) あらゆる人々に健康で文化的な生活を営む権利を保障する福祉制度を要求する。
(n) さまざまな反政府的・進歩的運動を支持・支援し、その発展を進める。
(o) 国政・地方議会選挙を革命的に利用する。
(p) あらゆる治安弾圧を許さない。弾圧法を撤廃し、弾圧目的での一般法の脱法運用を許さない。
(q) 国家権力やファシスト勢力の攻撃から階級闘争と革命運動を防衛する。プロレタリアートの自衛と武装力の強化をはかる。
(r) 軍隊内の兵士を革命の側に獲得する。
(s) 日本プロレタリア階級にしっかりと根をおろし、ブルジョア国家権力と非妥協的にたたかう革命的労働者党を建設する。
このような要求と闘争に日本プロレタリアートを組織することを通じて、その政治意識を高め、革命的階級へと形成し、プロレタリアートを中心とした革命勢力を広範に組織し強化していくこと―日本革命の準備期における私たちの根本的任務はここにある。
(2004年採択、2018年改訂)