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1673号(2025年2月5日) |
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石破訪米―日米首脳会談反対 トランプ大反動を粉砕しよう 戒厳粉砕した韓国民衆とともに闘おう ●韓国の内乱 韓国情勢は、大統領尹錫悦(ユン・ソギョル)による非常戒厳の宣布とそれに基づく韓国軍全軍およびソウル警察庁をはじめとする国家暴力装置の全面発動という反革命内乱が、高位公職者犯罪捜査処と警察が構成する合同調査本部と、大統領の身辺を警護する警護処という二つの国家機関が武装して対峙する内戦的段階へ転化した。だが、大部分の警護処職員が任務を集団拒否することで交戦には至らず、合同捜査本部による内乱罪容疑者・尹錫悦の逮捕(一月一五日)と勾留(同一九日)により一旦収束した。国防大臣と国軍及び警察の指導部のほとんども逮捕・起訴されて裁判が開かれている(ただし、内乱への関与が疑われている国家情報院と検察からは被逮捕者が皆無)。また、国会での弾劾決議を根拠に憲法裁判所で始まった大統領の罷免の可否をめぐる審議は尹錫悦欠席のまま粛々と進んでおり、大統領代理人団(弁護団)の極右の論理の破綻が連日報道されている。 今後の見通しだが、内乱罪については一月一八日段階で合同捜査本部が尹錫悦の勾留状を請求し、翌日裁判所が発付した。検察が最長二〇日間補完捜査して、起訴し、遅くとも二月初旬に裁判が始まる。他方、憲法裁判所の判決は、早ければ二月末、遅くとも三月中に下される見通しだ。罷免が決定すれば大統領選挙が行われ、現時点での世論調査によれば支持率が群を抜いている第一野党代表の李在明(イ・ジェミョン)が当選する確率が高い。そうなれば、尹錫悦とその連れ合いの金建希(キム・ゴンヒ)および周辺の数多くの権力犯罪が解明されるだろう。 ●ユン・ソギョルの「ソッタル一二日」 「一二・三(シビーサム)内乱」のこれまでの経緯を振り返る。一二月三日午後一〇時二三分、尹錫悦が非常戒厳を宣布し、午後一一時に施行した。戒厳法第二条第二項はその条件を次のように規定する。「非常戒厳は、大統領が戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態の時に敵と交戦状態にあり、または、社会秩序が極度に撹乱して、行政および司法の機能の遂行が著しく困難な場合に、軍事上の必要により、または、公共の安寧秩序を維持するために宣布する」。 こうした状況にあったのか否かが、憲法裁判所で、国会の与野党間で、社会全体で、最大の争点になっている。 今回の戒厳は大統領と元国防大臣の指揮の下、国軍防諜司令部(=情報担当機関)内の秘密組織を実質司令部として数カ月前から計画され、首都防衛司令部および特殊戦闘司令部・国軍情報司令部を加えた国軍の中軸、さらには警察庁とソウル警察庁(日本の警視庁に相当)と連携して緻密に練られて実行された。憲法裁判所への答弁書などに示されている尹錫悦政権の論理はこうだ。昨年四月の総選挙は不正選挙で無効だ、無効な選挙で国会議席の過半数を占めた野党が中国と朝鮮民主主義人民共和国の手先即ち反国家勢力となって韓国を両国の植民地にしようと図っている、その反国家行為を止めるために非常戒厳を宣布したのであって内乱では断じてない、国会の機能を止めるつもりなど一つもなかった――。 しかし、非常戒厳の宣布に基づいて指名された戒厳司令官が発した「戒厳司令部布告令(第一号)」第一項は「国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど、一切の政治活動を禁じる」としている。朴正煕(パク・チョンヒ)の維新クーデター(一九七二年)、今回の内乱の手本である全斗煥(チョン・ドファン)の「12・12クーデター」になかった「国会と地方議会、政党の活動」の禁止が明示されたのだ。また、第四項では「社会の混乱を助長するストライキ、怠業、集会行為を禁じる」として労働運動をはじめ社会運動、反政府闘争を一切禁じ、最後に、「以上の布告令を違反する者については、大韓民国戒厳法第九条(戒厳司令官特別措置権)により、令状なしに逮捕、拘禁、押収捜索ができ、戒厳法第一四条(罰則)により処断する」として厳罰を予告している。光州民衆抗争を鎮圧した当の七〇七強襲部隊が国会の窓を破って本会議場の制圧を図り、また国軍情報司令部傘下の対北侵入・破壊工作を任務とするHID部隊が選挙管理委員会を「確保」するために出動した。だが、翌日午前一時二分に国会が非常戒厳解除要求決議を可決した。しかし、その後も国軍の動員は続き、国軍指導部全員が戒厳司令部へ結集して会議を開くなど、第二の非常戒厳策動が続いていた。しかし、一部に強い反対があったため、それを断念した尹錫悦が同午前四時ごろに同解除を発表。内乱は収束した。その間、尹錫悦は戒厳司令官ではないのに戒厳軍状況室(=指揮室)で陣頭指揮し(越権行為)、軍が思い通りに動かず、解除要求決議案可決に先を越される想定外の事態に激昂し、戒厳司令官を飛ばして特殊戦司令官、首都防衛司令官、国軍防諜司令官に直接電話して指示していた。首都防衛司令官に電話で直接「国会のドアをぶち破って議員を引きずり出せ」「必要なら銃を使え」と指示していた。 もしも、国会での手続きが三〇分遅れて、採択前に強襲部隊が国会本会議場を制圧し、非常戒厳が続いていたらどうなっていたか。大量の死傷者・不当逮捕者が出て、光州事態が規模を拡大して現出していた。国会証言と検察調書などから次のことが明らかになっている。 第一に、国会議長、野党指導部が大量逮捕され連行・監禁された。大統領の側近だったが最近は反目状態にあった与党代表(当時)韓東勲(ハン・ドンフン)を射殺し、また野党国会議員と反政府的なジャーナリストなど一六人を逮捕して船に乗せて移送中に船を爆破して殺害し、それらを朝鮮民主主義人民共和国の仕業に仕立てた。米軍兵士を数名殺害して共和国の仕業に仕立て、米軍が共和国を爆撃するよう誘導した。共和国製のドローンに共和国製の爆弾を積んで韓国内の要所を攻撃させた。HID部隊が、F35のある清州(チョンジュ)飛行場、駐韓米軍THAAD基地、大邱(テグ)空港など数カ所で爆破などを行い、「北の攻撃」に見せかけた。つまり、「外患」を自作自演で引き起こし、それを非常戒厳宣布の根拠にしようとした。 第二に、戒厳宣布と同時に投入された強襲部隊数千人以上に加え、三八度線付近に駐屯する戦車と装甲車をソウルへ進撃させ、国会・国家機関・放送局・新聞社・大学などを軍事的に制圧した。 第三に、元国軍情報司令官で民間人のノ・サンウォンの総指揮の下に国軍情報司令部の隊員と、日頃は民間人で作戦時にだけ動く「ブラック要員」で構成されたHID部隊が、選挙管理委員会を制圧して同職員三十数名の手足を結束バンドで縛って頭巾をかぶせて拉致し、金属バットと紙裁断機を使って尋問し(場合によっては指を落とすつもりだったのだろう)、今年四月の総選挙が不正選挙だったと作り上げ、野党議員を起訴して野党をつぶし、国会を解散し、別の「立法府」を設けた。 また、上記布告令に基づき、戒厳反対運動を繰り広げる民主労総をはじめとする在野の活動家・マスコミ関係者・司法・宗教者まで数百人、数千人が「反国家勢力」として「収集」(ノ・サンウォンのメモ)すなわち逮捕・監禁されて尋問・拷問を受け、無数の死者と行方不明者が出ていたはずだ。 非常戒厳宣布の試みはしかし、すでに昨年九月から一一月に相次いでいた。韓国軍が自走砲K9の大量発射やドローンの平壌侵入とビラ散布など軍事挑発を繰り返した。これらで共和国の軍事対応を引き起こし、局地戦から全面戦争へ拡大させ、この「外患」を口実に非常戒厳宣布を狙っていたことが分かっている。しかし共和国側の軍事対応が皆無だったために、これらの試みは失敗に終わった。第二次朝鮮戦争を自作自演で勃発させ、戒厳体制を作り、「反国家勢力」を一挙に壊滅する――これが元検事総長尹錫悦の計画だった。 けれども、尹錫悦の「ソッタル(一二月)一二日」は、一七三年前のフランスのルイ・ボナパルトとは異なり、数時間で破産した。非常戒厳を解除させ、反革命内乱を止めたのは、第一に、死ぬ蓋然性を見据えながらひるまずに国会に駆けつけて肉弾戦の実力闘争で兵士の侵入を阻止し、また、国会に向かう装甲車など軍車両の前に起ち、あるいは座り込んでこれを阻んだ民衆の闘いだ。第二に、同じように、軍による逮捕・監禁・虐殺を覚悟して国会へ結集した野党国会議員と、強襲部隊と対峙し、バリケードと消火器噴射、肉弾戦で本会議場侵入を遅らせた(労働運動・学生運動経験者を含む)秘書などの闘いだ。また、軍兵士の多くが全斗煥のクーデターを描いた大ヒット映画『ソウルの春』を観ていて「軍は市民に銃を向けてはならない」という心情を有していたため、軍事行動上の躊躇が至る所で視認された。これは、民主化運動が生み出した文化の力だ。さらに、軍内部の指揮系統の混乱、警察内部の対立もその要因に加えられる。 その後、大統領の弾劾と内乱罪での逮捕を求める反革命内乱阻止闘争が朴槿恵弾劾時のろうそく革命と同じように全国各地で続いた。 八~九年前に延べ一〇〇〇万人が結集した光化門広場、弾劾を求める国会前、逮捕を求めての大統領官邸前は二十代三十代を中心に大学生・高校生・中学生も含む民衆で連日埋め尽くされた。また、民主労総はゼネストに起ち上がり、年末年始には雪の中で大統領官邸前の闘いを、反共右翼の隊列と対峙しながら数日間主導した。抗議集会会場ではKポップスターを応援する色とりどりの「応援棒」(ぺンライト)が揺れ、Kポップと民衆歌謡がともに歌われた。若い人々は、大統領と与党と極右への怒りを燃やして起ち上がり、その中で、親・祖父母世代の民主化運動の意味と歴史を認識し噛み締めた。 尹錫悦の反革命内乱を韓国民衆が打ち破っている最中に、米帝―トランプ政権、日帝―石破政権は、日米韓の軍事同盟化に向けて、軍備強化―戦争準備を推し進めている。 今こそ、韓国民衆に連帯し、帝国主義の侵略反革命戦争を阻止すべく闘おう。二〇二五年、反戦闘争・反基地闘争を断固闘い抜こう。 |
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