共産主義者同盟(統一委員会)


1671号(2025年1月1日)







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 革命的祖国敗北主義を貫き
 戦争と反動政治を打ち破れ

 
労働者階級人民の利害に立脚し
   資本・国家の横暴と対決しよう






 現代世界は戦争と分断・対立の新たな一時代を迎えている。帝国主義による労働者人民に対する攻撃の強まりの一方で、資本主義の矛盾、帝国主義の世界支配の危機はますます鮮明になっている。帝国主義に支えられたイスラエルによるパレスチナ人民大虐殺、長期化するロシア・ウクライナ戦争、あるいは、米国大統領選でのトランプの勝利は、そのような一時代を象徴する事態である。
 ますます不安定化する国際情勢のなかで、日本では昨年一〇月の衆議院選挙で、労働者人民の現状に対する怒りと不満の表現として、与党を構成する自民党、公明党の過半数割れという事態が引き起こされた。少数与党化した自公政権は、それにもかかわらず、侵略反革命戦争体制づくりや原発再稼働推進など、反人民的政策を引き続き推進していこうとしている。
 そのような情勢のなかで、プロレタリア国際主義に立脚した自国帝国主義の打倒に向けた闘いを推進していくこと、それを通して国際階級闘争の前進に寄与していくこと、共産主義運動の先陣を切り拓いていくことが求められている。
 共産主義者同盟(統一委員会)は同志、友人、『戦旗』読者の皆さんに対して、今号(一月一日)と次号(一月二〇日)をもって、年頭の提起を行なう。今号に第一論文(情勢)を、次号に第二論文(総括、方針、党建設)を掲載していく。二〇二五年階級闘争を共に全力で闘い抜こう。


第一章 世界情勢

戦争と分断・対立の一時代

 われわれは現代世界の歴史的な変動の渦中にいる。資本主義の不均等発展が加速するなかで、米帝の歴史的没落の趨勢は年を追うごとにますます鮮明となってきた。他方、中国の世界的な大国としての台頭とそれを中心としたBRICSの拡大、グローバルサウス諸国の政治的・経済的な台頭などにより、世界の「多極化」と呼ばれるような状況が現出しつつある。そのなかでの帝国主義の生き残り戦略、巻き返し戦略が、地域・世界の政治的・軍事的緊張の激化と戦乱をもたらしている。それはまた、資本主義の矛盾の拡大、G7に代表される帝国主義による世界支配体制の危機のいっそうの深化を意味している。
 このような状況のなかで、二〇二二年に始まったロシア・ウクライナ戦争、一年を超えて続くシオニスト国家イスラエルのパレスチナ人民虐殺戦争とそれに対する米欧帝国主義の支援、アジア太平洋および世界の覇権をめぐる米中対立の深化など、戦争と大国間対立をめぐる問題が国際情勢の前面に大きく押し出されてきた。それはすでに開始された新たな一時代を特徴づけるものである。
 一九九〇年を前後するソ連・東欧スターリン主義政権の崩壊以降、米帝の金融独占資本の利害を前面に押し立てながら推進されてきた新自由主義グローバリゼーションは、国境を越える資本のむき出しの搾取に各地の労働者人民を直面させ、貧困と格差を国際的・各国的に極限的に拡大してきた。その矛盾と限界は二〇〇八年のリーマンショックを契機とする世界金融恐慌を勃発させた。国家財政危機に直面した帝国主義諸国は、巨額の財政出動によって独占資本の救済に向かった。それは危機の時代における国家の役割をあらためて示すものであった。今日では、継続する米中の関税合戦や、いわゆる「同盟国・同志国内で完結するサプライチェーンの構築」に向けた動きが示すように、経済への国家の介入がいっそう強められている。全世界を舞台にした資本の野放図な展開は、その結果として国家の介入によって資本の一般的傾向・指向が大きく制約される事態を生み出した。
 そのような意味で、(資本の国際展開それ自体や各国における新自由主義政策は現在も継続しているが)新自由主義グローバリゼーションが全世界を席巻した一時代が「終焉」し、国家間対立とそれを背景にした戦争・軍事問題が国際情勢の前面に押し出される新たな激動の一時代が始まっている。
 この過程はまた、世界と社会の分断・対立がますます拡大する過程でもあった。米帝―バイデン政権は、中国・ロシアとの対立を念頭に、「民主主義 対 専制主義」のスローガンを掲げ、世界に分断線を引こうとしてきた。しかし今、帝国主義諸国が掲げてきた「民主主義」や「人権」といった「共通の価値観」の欺まん性がより鮮明となっている。貧困と格差を背景にして、帝国主義諸国においては移民排斥を掲げる極右・排外主義勢力が台頭し、ヨーロッパのいくつかの国で政権の座に就いた。米国ではトランプが勝利する事態が生み出された。帝国主義諸国との政治的・軍事的連携を強めてきた韓国大統領・尹錫悦(ユンソギョル)は、失敗に終わった戒厳令の布告によって、自らの政治生命に終わりを告げた。ドイツやフランスでの連立政権の崩壊もまた、拡大する社会の分断と対立の結果としてもたらされたものである。

米大統領選でのトランプの勝利

 こうしたなかで行われた昨年一一月の米国大統領選挙でのトランプの勝利は、国際情勢の不安定性をいっそう拡大し、戦争と戦争情勢、世界と社会の分断・対立をいっそう加速させていくものとなる。
 選挙戦からのバイデンの撤退によって、最終的にバイデン政権の副大統領であった民主党ハリスと共和党トランプの間で争われることになった米国大統領選挙は、多くの事前予測とは異なって、早々にトランプの勝利として決着づけられた。七つの激戦州のすべてでトランプが勝利する圧勝であった。
 二〇一六年にトランプが最初に大統領に選出された際には、移民の規制・排斥を掲げるトランプの主張がラストベルト(錆びついた工業地帯)の相対的下層労働者の白人から大きな支持を受けたことが指摘された。今回の大統領選では、トランプはさらにヒスパニックや黒人の有権者などにも支持を拡大したと報道されている。国際的に大きな影響を与えた二〇二〇年のブラック・ライブズ・マター運動の大高揚にも関わらず、このような結果がもたらされていることに米国社会の分断の深刻さがある。
 トランプの勝利は、直接的には民主党バイデン政権の四年間の失政の結果である。民主党上院議員のバーニー・サンダースは選挙結果について、「労働者階級の人々を見捨てた民主党が当の労働者階級から見捨てられても、大して驚くには当たらないはずだ」と述べている。物価の高騰による生活苦の増大のなかで、それに対して有効な対策が打てず、一方でイスラエルやウクライナへの軍事支援を拡大し続けるバイデン政権への批判がトランプの勝利を後押しした。
 「米国第一主義」、「米国を再び偉大な国にする」といったスローガンを掲げるトランプが再び大統領の座を獲得したことは、それ自体が米帝の国際的地位の相対的低下を示すものである。同時にそれは、各国の支配階級を翻弄しながら、国際情勢の不安定化をいっそう促進するものになる。
 トランプはすでに、中国だけでなくカナダやメキシコへの高関税の適用に言及し、気候変動問題に関するパリ協定からの再離脱を準備している。さらに、パレスチナ・イスラエル情勢に関しては、ハマスに対して自らの大統領就任までに人質を解放することを要求し、そうでなければ「米国の歴史上、最も大きな打撃を受ける」などと恫喝している。国内政策としては、移民排斥、セクシャル・マイノリティに対する抑圧などを強めようとしている。米国内の社会運動はまた、トランプ政権下で労働者人民の闘いへの弾圧が大きく強化されると予測している。
 トランプ政権の下で、米帝国主義による戦争、差別・抑圧と搾取・収奪は、バイデン民主党政権とは異なった形態ではあるが、引き続き強められようととしている。これに対して、一月二〇日の大統領就任式に対する大規模な抗議行動が呼びかけられている。国際民衆闘争同盟(ILPS)米国支部は、「トランプの再選は米国の大衆の『右傾化』を意味するものではない」と指摘している。われわれは共和党と民主党の二大保守政党に収斂されない労働者人民の闘いが米国内で拡大していることに注目し、その闘いに連帯する。

パレスチナ人民の闘いへの連帯を

 イスラエルのパレスチナ人民大虐殺は、すでに一年を超えて続いている。ガザは破壊しつくされ、パレスチナ側の死者はすでに四万三〇〇〇人を超えた(二四年一一月末現在)。それはガザからパレスチナ人を抹殺・追放しようとする、まさに民族浄化の攻撃である。
 ネタニヤフ政権はまた、ヨルダン川西岸地区でも軍事作戦を展開している。さらに、レバノン侵攻とヒズボラへの攻撃など「抵抗の枢軸」の諸勢力に対する攻撃を強めることで、周辺諸国に戦火を拡大させてきた。ヒズボラとの停戦合意後もイスラエルはレバノン空爆を続けてきた。われわれはシオニスト国家イスラエルによるパレスチナ人民の大量虐殺、民族浄化、さらにレバノンなど中東・アラブ人民に対する攻撃を徹底的に弾劾し、パレスチナ人民の解放闘争に断固として連帯していなくてはならない。
 昨年一〇月の「アルアクサの洪水」作戦とイスラエルによるガザ全面侵攻は、世界各地の人民と政府に大きな衝撃を与え、国際情勢に深い影響を及ぼしてきた。この作戦は、イスラエルによる継続する占領と人民虐殺に対するパレスチナ人民の抵抗闘争の一環として敢行されたものである。しかし、米帝を先頭とした帝国主義諸国はそれを「ハマスによるテロ攻撃」として描き出し、イスラエルの攻撃を「自衛権」の行使として支援・容認してきた。第二次安倍政権以来、イスラエルとの関係を強化してきた日本帝国主義も今日までそれに追随している。
 一方で、このかんの事態は、イスラエルと帝国主義諸国の世界的な孤立、米帝の中東支配の危機を浮き彫りにしてきた。米帝―バイデン政権はこのかん、事態を調停することがまったくできなかった。一方、南アフリカによる国際司法裁判所(ICJ)への提訴や国際刑事裁判所(ICC)によるネタニヤフへの逮捕状の発行をはじめ、周辺諸国やグローバルサウス諸国の包囲、そしてパレスチナおよび全世界での労働者人民の闘いが、イスラエルと米帝を追いつめている。米帝は中東全体をコントロールする能力を大きく失いつつある。トランプがパレスチナ人民を恫喝し、イスラエルに対する軍事支援を拡大したとしても、事態の本質は変わらない。
 このかんの事態はまた、オスロ合意の最終的な破綻を示すものである。われわれはシオニスト国家としてのイスラエルを解体し、パレスチナ全土の解放をめざすパレスチナ人民の闘い、帰還権の実現と独立国家建設などその大義を全面的に支持する。
 パレスチナ人民の断固たる抵抗は、帝国主義と植民地主義の歴史を告発し、世界各地の労働者人民による国際反戦闘争を拡大させた。その一部として、国際的なBDS(ボイコット・投資撤退・制裁)運動はいくつもの企業にイスラエルとの商取引を中止させた。米国ではガザ連帯キャンプが全国のキャンパスに広がった。われわれは、日本政府・日本企業のイスラエルの占領・人民虐殺への荷担を許さず、反帝国主義闘争の第一級の課題として、パレスチナ人民の解放闘争に連帯し、引き続き国際反戦闘争に立ち上がっていかなくてはならない。

膠着するロシア・ウクライナ戦争

 三年近くに及ぶロシア・ウクライナ戦争もまた、多くの犠牲者を生み出してきた。昨年九月の時点で、双方の死傷者は推定で百万人を超えたと報じられている。帝国主義諸国によるウクライナ―ゼレンスキー政権への巨額の軍事支援がこの戦争の長期化・泥沼化を助長してきた。日帝―岸田政権も「非殺傷性装備」の提供やNATОの基金を経由した財政支援、あるいはウクライナ(とイスラエル)への大量の武器提供によって備蓄が不足する米国への武器・弾薬の輸出計画などを通して、その一角に加わってきた。
 このような帝国主義諸国の支援に支えられつつ、昨年からはウクライナによる一部のロシア領への侵攻と制圧という事態も生み出されてきた。戦場はウクライナ領内にとどまっていない。さらに、昨年一一月からは米国、英国、フランスから供与された長距離ミサイルを使用したウクライナによる攻撃が始まっている。それを受けてロシアもまた、新型中距離ミサイルによる攻撃に踏み出した。また、ロシア軍と共に朝鮮民主主義人民共和国の軍隊がすでにウクライナ領内で戦闘を開始したとの報道もある。こうした状況は、事態をいっそう悪化させ、戦火と軍事緊張を拡大させるものである。
 同時に、長期化する戦争は帝国主義によるウクライナ軍事支援の限界、その疲弊状況をももたらしている。昨年六月のイタリア・プーリアでのG7サミットにおける経済制裁によるロシアの凍結資産のウクライナ支援への活用の決定はそうした状況を反映している。欧州の多くの国や米国で支援の継続・拡大に反対する世論が増えており、それが現政権を批判する極右政党の躍進をもたらすという複雑な状況も生み出されてきた。加えて、「自国第一主義」の下でウクライナへの軍事支援に消極的なトランプ政権の正式発足を控えて、これまで軍事支援を推進し続けてきたイギリスなど欧州のいくつかの国の首脳も、「外交的解決」に言及し始めている。
 われわれは当初から、大ロシア民族主義にもとづくロシア―プーチン政権のウクライナ侵略を弾劾し、ロシア軍の撤退を要求してきた。同時に、戦争を長期化・拡大させ、人民の犠牲を拡大する米帝および欧州各国帝、そして日帝のウクライナ軍事支援、NATОの拡大・強化に反対してきた。とりわけ、それを自国の戦争体制づくりに利用している日本帝国主義に対する批判と闘争は、日本の反戦運動とその前進にとって不可欠のものである。

「アジア版NATО」の形成を許すな

 このかんのアジア太平洋情勢の大きな特徴のひとつは、中国への対抗と包囲、朝鮮民主主義人民共和国への牽制を目的とした帝国主義諸国による「インド太平洋戦略」の下で、日米軍事同盟など二国間軍事同盟にとどまらず、米英豪のAUKUSや日米韓、日米比、日米豪など多国間の軍事協力体制の強化が推し進められていることである。それは、急速に進む日米韓の実質的な三国軍事同盟化を軸としながら、複数の安保協力体制を重ね合わせたかたちで「アジア版NATО」の形成に向かう動きとして推進されていこうとしている。
 石破が昨年九月の自民党総裁選を前にして自らの政策集のなかで掲げた「アジア版NATОの創設」については、「時期尚早」などと評論され、石破自身も自らの政権の政策としては言及していない。しかし、石破がその政策集のなかで想定したような単一の多国間集団安保機構の形ではなく、複数の安保協力体制を重ね合わせるかたちで実質的な「アジア版NATО」を形成していこうとする動きは、現実に進行している。安保三文書の下で急速に進む日本帝国主義の戦争体制づくりもそれと結びついたものに他ならない。
 アジア太平洋地域においては、かつてSEATО(東南アジア条約機構)が存在したが、ベトナム戦争での米帝の敗北によってそれが解体して以降、この地域を包摂するNATОのような単一の多国間集団的安保機構は存在してこなかった。日本帝国主義がかつての侵略戦争・植民地支配・占領に対する明確な謝罪と被害者への賠償を行っておらず、韓国をはじめそのような日帝に対するアジア諸国政府・人民の警戒心が存在していることもその一要因である。しかしこのかん、韓国での尹錫悦政権、フィリピンでのマルコス政権の成立などを契機として、米帝を媒介にしたかたちで、上述のような多国間の軍事同盟化・軍事協力強化が急速に進んできた。また、NATО諸国のアジア太平洋地域での軍事展開、およびその日韓との軍事協力も増大している。日本帝国主義もまた、独自の海外派兵体制の強化の野望を背後に持ちながら、米軍に加えて、オーストラリアやフィリピン、NATО諸国の軍隊との二国間軍事協力を強化している。
 このような帝国主義主導の軍事動向はまた、半導体や重要鉱物資源などに関する「サプライチェーンの強靭化」など、中国に対抗するための多国間(同盟国・同志国間)の経済安保戦略と一体となって推進されている。アジア太平洋地域が帝国主義諸国にとっての世界的・地域的覇権をめぐる争闘の最大の舞台、その死活のかかった地域であるがゆえに、このような動向は、米国でのトランプ政権の正式発足以降も地域の政治的・軍事的緊張の不断の拡大をともなって続いていく。帝国主義が主導するこのような策動に対する闘いは、アジア太平洋地域の労働者人民の当面する第一級の共通課題である。

国際階級闘争の前進を

 国際情勢が大きく流動し、戦争と戦争情勢、世界と社会の分断・対立が拡大するなかで、国際階級闘争のさらなる前進が力強く勝ち取られていかなくてはならない。
 国際反戦闘争をさらに大きく前進させていくことがまず何よりも重要だ。帝国主義に支えられたシオニスト国家イスラエルによる人民虐殺攻撃を弾劾し、パレスチナ人民の解放闘争、中東・アラブ人民の闘いへの連帯を推進していくことである。そして、ロシア・ウクライナ戦争の停戦を求める闘い、アジア太平洋地域における帝国主義主導の軍事同盟・軍事協力体制強化に対する闘いを前進させていかなくてはならない。同時に、われわれにとって重要なことは、日本における侵略反革命戦争体制構築に向けた攻撃を、これら国際的・アジア的な反戦運動の共通課題と結びつけて推進していくことである。
 また、物価高騰による生活苦の増大や実質賃金の低下に抗する労働運動を基礎とした闘いが世界各地で前進している。その闘いを国際反戦運動への決起と結びつけてさらに大きく推進していくことである。経済闘争と政治闘争の結合を通して労働者人民の階級形成、資本・国家に対する国際的な階級闘争の前進を勝ち取っていなくてはならない。さらに、気候変動をめぐる課題を、帝国主義・資本主義批判の見地から推進・牽引していくことが求められている。
 同時に、今日の情勢が要求する不可欠の課題として差別・排外主義との闘いを推進していくことである。生活と権利を防衛し、戦争と抑圧に抗する国際的な労働者人民の闘いは前進している。一方で、貧困と格差の拡大・構造化は、その対極に極右・排外主義勢力の台頭を各地でもたらしている。それとの対決は、労働者人民の闘いを真に前進させていくための国際階級闘争の共通の課題だ。
 こうした課題を引き受け、国際階級闘争を牽引する共産主義運動の新たな前進こそが実現されていかなくてはならない。資本主義の行きづまり、帝国主義の世界支配の危機はますます鮮明になっている。労働者人民のなかに根を張り、その抵抗と結びつき、資本主義・帝国主義を打倒して、階級廃絶・全人民の解放の実現に向かって進む共産主義運動の新たな前進と飛躍こそ、勝ち取られていなくてはならい。


第二章 国内情勢

解散・総選挙 自公過半数割れ

 二〇二四年七月二七日、解散・総選挙が行われ、自公政権は過半数を割った。裏金問題をはじめとする自民党の腐敗に審判が下り、日本維新の会も大阪府以外では議席を失った。従前改憲勢力とされてきた自公に維新、国民民主党、さらに参政党と日本保守党を加えても二八七議席と改憲発議可能な三一〇議席を割り込んだ。今回の選挙で躍進した国民民主党やれいわ新選組は、分かりやすい経済政策が有権者に響いたと分析されている。物価高騰、実質賃金の低下が大きな影響を与えている。一方で、共産党は二議席減、社会民主党は一議席で変わらずに対して、極右勢力の参政党、日本保守党が合わせて五議席増で六議席と右派政治の伸長を示す事態となっている。
 首班指名選挙で野党は足並みをそろえることができなかったため、政権は引き続き石破が担当することになった。しかし、少数与党でこれまでのような強行採決をすることはできず、税制や社会保険をめぐり国民民主党との調整が行われている。
今回の選挙で議席を伸ばした立憲、国民の両党は資本家の代理人たる第二保守党であり、日本国憲法に直接手をかけるかどうかはともかく、資本家たちのやり方や帝国主義諸国と組んでの中国、朝鮮との対立、戦争準備といった政策においては何ら歯止めにならない。政治闘争や労働戦線など現場での闘いはますます重要になってくるだろう。

労働者人民の現状と日本資本主義

 物価上昇が止まらない。図1(二〇二四年一〇月一八日NHK)は二〇二二年九月から二〇二四年九月までの消費者物価指数の変動を示したものだ。前年同月比2~4%の物価上昇が続いている。要因は複数ある。コロナ危機明けの生産回復による世界的な資材不足から始まり、ウクライナ戦争やそれに続くガザと中東全体への戦争の拡大に伴う、エネルギー価格、小麦価格の上昇、日本国内では米穀の需要が伸びたのに、連年続く猛暑の夏により米の生産が量・質ともに低下し、米価の高騰も招いている。
 日本国内については円安の影響もある。輸出大企業に有利、労働分配率を低下させる政策が長期間継続された結果、国内市場は縮小し、目立った技術革新は起こらず、企業社会では不正が横行した。これらは日本資本主義そのものの相対的地位低下を示している。

上がらぬ賃金
 二〇二四年の春闘では「大幅賃上げ」や「満額回答」がマスコミの紙面を飾った。しかし、実際にはどうだったか? 図2(二〇二四年六月一九日朝日)は連合のまとめによる春闘の結果。大企業正社員の賃上げに中小は追いついていない。連合が組織していない中小企業をまとめた数字では3・62%(日本商工会議所調べ)、非正規雇用労働者では3・43%(日本経団連調べ)とどんどんその数字は低下する。さらに別の調査では実に四割弱の企業が賃上げをできなかった。その結果、二〇二四年五月まで二六カ月連続実質賃金低下が続いた。六月、七月は定額減税や賞与の影響でひさかた振りのプラスであったが、八月には再び低下(図3:二〇二四年一一月七日NHK)に転じている。

最低賃金
 中小企業で働く労働者や非正規雇用労働者の賃上げが進まない中で最低賃金の重要性がますます高まっている。二〇二四年七月二五日、中央最低賃金審議会は過去最大となる全国目安一律五〇円増を答申した。これはこの間のナショナルセンターの垣根を越えた最賃一五〇〇円以上を目指す闘いの成果でもあるのだが、まだまだ不十分であると言わざるを得ない。都市部と地方の格差が問題となってきたが、同額では当然のことながら差が縮まらない。さすがに物価高騰が反映されているとはいえ、もともとの金額が低すぎるので最賃近傍で働く労働者の待遇改善には不十分だ。
 特にこうした状況は現在最賃が低い地方で深刻だ。二〇二三年に続き、二〇二四年も「地方の反乱」は継続した。徳島県の三四円上乗せ(計八四円増)を先頭に二七県で上乗せが行われた。

資本家たちの処方箋
 実質賃金の低下はそのまま国内市場の縮小を意味する。これは日本の資本家たちにとっても困ったことだ。彼らはこの事態にどのような処方箋で臨んでいるのか? まとめれば①搾取強化と②経済の軍事化、③原発回帰、④経済安保による市場の囲い込みだ。
①搾取強化
 国内においては大企業の利潤の確保は労働者の搾取強化によるしかない。ご褒美は大企業正社員のみでさらなる格差拡大。さらなる雇用の不安定化や下請けいじめだ。こうした流れを妨げる労働者の権利は解体が進められる。解雇の金銭解決やフリーランスの拡大とさらなる無権利化そして労働基準法の解体だ。しかし、このような政策を継続して労働者を貧困にたたきこめばこむほど国内市場は縮小の一途だ。一時的な業績は上がっても、これではタコの足食いにしかならない。
 それなら、帝国主義らしく海外投資からの搾取で利潤を確保するか? 日本の対外投資額は二〇二三年時点で一八二〇億ドルを超える。近年は特に中東、アフリカで伸びている。だが、こうした地域では他の帝国主義諸国や中国、インドなども巨額の投資を行っており、競争=市場争闘戦が激化している。
②経済の軍事化
 かつて日本政府は武器輸出三原則を掲げ、海外への兵器の輸出を「慎ん」できたが、二〇一四年に防衛装備移転三原則なる閣議決定で、なし崩しに兵器輸出への道を開いた。そして、二〇二四年三月二六日にはイギリス、イタリアと共同開発を進める次期戦闘機の輸出を容認。他にも、ウクライナへのドローンの輸出(戦闘目的で実際に使用されている)やアメリカへの対空ミサイルの輸出(実質的にはウクライナへの間接輸出)など紛争当事国に武器を売りつけてもうける「死の商人」に実際になっている。
 日米の軍需産業の緊密化・一体化も進んでいる。二〇二四年六月九日DICAS(日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議)の第一回会合が開催された。今後、超音速滑空弾の迎撃兵器の開発や在日米軍の兵器の日本の軍需産業による修理・整備などが協議され、進められるという。
 軍事費四三兆円の大軍拡にはすでに大資本が群がっている。下請け企業に新工場建設が可能かどうかの打診が来たり、三菱などでは労働者の増員が進められている。
 こうした大軍拡は「東アジアの厳しい安全保障環境」なる枕詞で正当化されているが、実際には日本の大軍拡や多国間共同演習の拡大こそが、「安全保障環境」を悪化させている。
③原発回帰
 福島第一原発事故による多大な被害にも関わらず、あるいは相次ぐ輸出の失敗に関わらず、経済界と政府は原発にしがみついている。「原子力は一度燃料装荷してしまえば、長期にわたって大量かつ安定的に発電を継続できる」ことを根拠に、燃料価格の変動に影響を受けにくいと、大資本がこれにこだわってきた。しかし、ウクライナ戦争で示されたように攻撃にもろく、戦時リスクとなる。ザポリージャ原発は実際に戦場となり、ウクライナどころか全ヨーロッパに放射能汚染の危機をもたらした。ウクライナは原発を守るために原発をロシアに明け渡すしかないという決断を強いられた。
 平時であっても原発は極端に地震に弱い。原発プラントは冷却系や緊急系など多数の配管が入り組んでおり、このどこかが地震で破断しても過酷事故に至ってしまう。皮肉なことに今となっては新築の民間住宅の方が原発プラントよりも耐震性能が高くなっている。
 そのような危険な原発であるが、財界から見ると「事故しても儲かる」という現実がある。一四年前に大事故を起こした福島第一原発周辺の福島県浜通りはいま、「イノベーションコースト」として廃炉技術やロボット開発など大資本の投資の舞台となっている。
 結局、財界が原発と縁を切らないのは儲かるからだ。ただし、それは事故で健康被害を受け、故郷を追われた地域住民の人権蹂躙が前提となっている。
④経済安保
 経済安保とは半導体のようなエレクトロニクス産業に不可欠な戦略的な製品を帝国主義諸国の競争相手として台頭した中国をはじめとするグローバルサウスの特に帝国主義諸国と一致できない国々に依存しないで済むように産業ごと囲い込んでいこうとする取り組みだ。「社会主義」陣営の崩壊以来三〇年以上にわたった新自由主義グローバリゼーションは曲がり角を迎えた。
 しかし、新自由主義グローバリゼーションによる国際分業はある種の経済合理性があったのであり、実際には経済安保の具体的取り組みはコスト増に見合わない。再編には国家権力による強制が必須となる。
 二〇二四年五月一〇日に成立した重要経済安保情報保護活用法ではセキュリティ・クリアランス制度が経済安保の分野に導入された。経済安保の対象となる産業や分野にたずさわる労働者は、本人の思想・信条や嗜癖、家族関係から経済状態に至るまで調べ上げられる。そこには憲法に定められた人権の保障はない。
 資本家たちの処方箋を総括すれば、利潤追求のためならば民主主義や平和主義はかなぐり捨てるということだ。その上これらの政策は日本資本主義の矛盾を何ら解決しない。資本が手に入れる利潤は一時的に過ぎず、社会はますます不安定になる。

戦争準備・改憲攻撃 社会の右翼的再編成

 二〇二四年の通常国会でも多くの悪法が成立した。前述の重要経済安保情報保護活用法。強制作付けなど農民の権利を踏みにじる食料供給困難事態対策法。現代の奴隷制度ともいわれる人権侵害には手を付けないまま、技能実習制度の「育成就労」への付け替えと抱き合わせで、永住資格の取り上げを拡大する入管法改悪。自治体の政府への抵抗を押しつぶす地方自治法改悪。これまでのマイナンバー、共謀罪、特定秘密保護法、重要土地規制法、集団的自衛権行使容認、軍事費倍増、敵基地攻撃能力保有、武器輸出解禁などを含め、日本国憲法が権力を縛ってきた主権在民、平和主義、基本的人権がなし崩しにされている。

改憲の危機は決して去っていない
 国会憲法調査会はハイペースで開催され、「九条の二」(自衛隊明記)による現行九条死文化や議員任期の延長と権力の集中を画策し、戦前の戒厳令やナチスの全権委任法と同様の効果をもたらす緊急事態条項創設などが俎上に上がっている。前節のとおり、衆議院の改憲発議可能議席は一〇月の総選挙で割り込んだものの、立憲民主党には改憲を支持する保守系議員が多数おり、少数与党となった自公政権が抱きこみをかけて改憲を前面に押し出してくる可能性も決して低くはない。あらゆる闘いの場所で改憲攻撃との対決を押し出していく必要があるだろう。
多国間軍事演習と軍事協力の拡大
 前述したように、戦争準備、大軍拡は日本資本主義の生き残りをかけた政策であるがゆえに、国会の勢力がどうであろうとも今後もこの傾向、攻撃は続く。二〇二四年も大規模かつ多数の演習と軍事協力が進められた。六月には日米韓三国が直接参加するものとしては初となるフリーダム・エッジ演習が行われた。七月には自衛隊のフィリピン駐留に道を拓く日比円滑化協定が締結された。七~八月はレゾリュート・ドラゴン演習、一〇~一一月にかけてはキーンソード演習、さらに一一月一三日からは二回目のフリーダム・エッジ演習と、大規模な多国間軍事演習が行われている。二〇二三年の多国間軍事演習は大小含めて五六回と二〇〇六年の三回の実に一八倍まで拡大しているのだ。
軍備強化
 ここ数年九州から南の島々で進められた自衛隊基地建設はミサイル部隊の編制(第二特科団=湯布院、第七地対艦ミサイル連隊=うるま、宮古、石垣、第八地対艦ミサイル連隊=湯布院)という段階に到達した。こうした部隊にミサイルを供給する弾薬庫建設が敷戸(大分県)や祝園(京都府)をはじめとして全国で進められている。ミサイルはじめ、弾薬、燃料、食糧、部隊機動は民間空港や港湾を軍事利用して行う。そのための整備も進められている。キーンソード演習では名古屋から与那国島に至る三六の民間空港・港湾が軍事演習の舞台となった。
 辺野古新基地建設は沖縄「県」の抵抗を司法の反動判決で踏みつぶし、二〇二四年八月二〇日ついに軟弱地盤への砂杭打設が開始された。だが、沖縄人民は決してあきらめていない。数次にわたる県民大集会など闘いが継続されている。
排外主義煽動と「戦死できる自衛隊」づくり
 戦争準備や軍事演習の拡大と並行して中国や朝鮮、あるいはその他の外国人に対する排外主義煽動がさらに激しくなっている。退職した自衛隊幹部が靖国神社の宮司に就任したり、沖縄の陸上自衛隊が摩文仁の丘の第三二軍慰霊碑に集団参拝し、元司令官の牛島満を賛美するなど、実際に戦死者が出ることに備え始めている。そして、そのような中で「聖なるもの」として天皇制の強化も進む。
性暴力事件、隠蔽弾劾!
 戦争準備態勢は人権を侵害し、安全を脅かしている。沖縄で米兵によるレイプ事件が二〇二三年一二月に発生した。満腔の怒りをもって弾劾する。しかし、問題はそれだけではない。報道によって事件が明るみに出たのは二〇二四年六月二五日、「県」議会選挙の九日後、慰霊の日で岸田前首相が訪沖した二日後だ。政治的理由で隠蔽されたのは明らかだ。隠蔽が続いていた中でもさらに性暴力事件が発生し、二〇二四年沖縄では判明しているものだけで過去一〇年最多の性暴力事件が発生している。厳しく弾劾しなければならない。沖縄では米兵の性犯罪に対する怒りの集会が何度も取り組まれている。二〇二四年一二月二二日に県民大会。「本土」でも連帯行動が取り組まれた。さらに性暴力事件の隠蔽は沖縄だけでなく、全国(神奈川、山口、青森、長崎)で行われてきたことも発覚した。
平時から圧迫される民生
 戦争準備が踏みにじっているものは直接的な人権侵害だけに限らない。大軍拡予算は教育・医療・福祉といった民衆が生きていくための公共サービスに大きな影響を与えている。出生率の低下は様々な影響から起きているが、格差拡大と労働者人民の貧困化と性差別が主要な原因の一つだ。ところが、それは資本家たちの利潤確保の動きがその原因であるがゆえに、その本丸には手が付けられない。結局少子化対策は小手先となるのだが、それですら財源は高齢者医療での自己負担の拡大から出されている。
 さらに、介護保険の問題がある。介護保険の長年にわたる低報酬政策から、介護労働者の平均賃金は全産業平均より月額で八万円以上低い状態が続いている。物価が高騰しても事業体には賃上げ原資がなく、結果、実質賃金は下がる一方だ。それを極端に反映しているのが、ホームヘルパーだ。ここ数年、有効求人倍率は一五倍という異常な数値を前後し、人事倒産や事業所の閉鎖、縮小が相次いでいる。にもかかわらず、二〇二四年の介護報酬改定では減額となってしまった。軍事予算の圧迫で必要な場所に予算が回らず、民生予算の中で奪い合いになってしまっているのだ。これでは戦争で殺し、殺される前にのたれ死んでしまう。
「抵抗する者には弾圧で応えろ」
 北村滋に代表される警備・公安畑の警察官僚が官邸を牛耳って久しい。格差拡大は階級対立と差別排外主義の拡大を生み出し、社会が不安定化していく中で、これはある意味必然の動きではあるだろう。腐敗議員の裏金は批判されても、こうした弾圧体制の強化が大手マスコミなどで問題にされている例は少ない。
 近年の弾圧についてまず挙げなければならないのは二〇一八年から続く全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下関生支部)に対するものだ。容疑とされたのは抗議行動やストライキ、要求、コンプライアンス活動、宣伝、解決金取得などまともな労働組合ならばあたり前に取り組んでいることばかりだ。捜査に当たった警察・検察は容疑と関係なく組合脱退を迫ったり、「個別の事案は(労働組合法的に)合法であっても、関生がやれば違法」と裁判で主張するなど、もはや法治主義の外面すらかなぐり捨てている。
 そのほか、近年の弾圧事例では微罪逮捕が労働組合や市民運動にまで拡大している。まず暴力団に対して実践され、その手法が左翼運動に拡大し、今や全面化だ。違法捜査の合法化として、共謀罪・特定秘密保護法・重要土地規制法・セキュリティクリアランス制度といった弾圧諸法が次々と制定された。
 戦争準備は大資本とその代理人たる政府・権力が生き残りをかけた日本社会の再編成にこそ本質があるのかもしれない。彼らの生き残りが民衆の犠牲しか意味しない以上、打倒あるのみだ。

労働者人民の反撃

 攻撃は激しく、情勢は厳しい。しかし、民衆の希望は闘いにこそある。決してやられっぱなしではないことが、以下に挙げる数々の闘いから明らかになるだろう。
 労基法解体攻撃が急ピッチで進められている。いくつか課題が存在するが、一番深刻なのはデロゲ―ション(適用除外)の拡大だ。過半数労働組合や労働者代表との合意で労働基準法が規制してきた勤務時間などが無意味化されることが狙われている。しかも合意の主体は労働組合でなくとも懇親会などでもよいなどと言っている。こんなものが成立したら集団的労使関係はなくなる。労働組合の死だ。これを阻止するため、ナショナルセンターの垣根を越えて監視、情報発信、抗議を行っている。自民党総裁選で解雇規制の解体を主張して小泉進次郎が非難されたように、労働者の権利解体は大資本・権力の思惑どおりには進めさせていない。
 関生支部弾圧では和歌山広域協事件とビラ撒き事件で無罪を確定させた。特に和歌山事件では産業別労働組合が憲法二八条の保護下にあることを判例として確定させた。
 最賃闘争は全国一律一五〇〇円以上の主張が拡がり始めている。これは中央と地方の資本家の矛盾に付け入る闘いとなっている。
 介護政策運動は軍事費倍増との矛盾の激突がより鮮明になった。事業所の縮小、閉鎖、倒産は毎年過去最高を更新している。介護の必要性が高い人がサービスを受けられない事態が地方で広がっている。労働者にも利用者の間にも公的介護制度の抜本改革を求める声が広がっている。
育成就労に看板が掛け代えられた技能実習制度との闘いをはじめとする外国人労働者の組織化は、入管法改悪情勢の中でも進展している。人権保障の観点では、まだまだ不十分だが、人手不足の現状を反映して在留資格が少しずつ安定化している中で、外国人労働者自身が中心となって組織化する流れが各地で発展している。
 市民の安全な暮らし、反差別・人権を巡る闘いもいくつもの分野で進展している。
 大資本・権力の日本社会再編攻撃は三里塚においては第三滑走路建設、空港機能強化として表現されている。二〇二三年には市東さんの農地に対する強制執行攻撃があったが、市東さんは権力の狙いを打ち砕き、今も元気に三里塚で農民として営農を続けている。これは反対同盟、支援の勝利である。昨年耕作権裁判が結審した。裁判の内容的には「勝っている」。しかし、三里塚の裁判闘争では「法と良心に基づいた」判決が出ない場合が多いのであって、法廷外での闘いが重要である。
 日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞を受賞した。被爆者・被爆二世解放の闘いでは長崎被爆体験者問題で一部原告を認容、双方控訴で二審の闘いとなっている。被爆二世を第五の被爆者として認めよという被爆二世裁判は、長崎は最高裁、広島は一二月一三日二審判決だ。これらの闘いは原告救済の枠を超え、すべての被爆者の解放と核廃絶の闘いの一環として重要だ。
反原発の闘いでは日本原電敦賀二号機の再稼働審査不合格を勝ち取った。各地の原発再稼働や中間貯蔵施設稼働・建設に対する闘いも続いている。全原発廃炉を目指す闘いは待ったなしだ。
 九月二六日、静岡地裁は袴田巌さんに再審無罪を言い渡した(一〇月九日確定)。「次は石川さんだ」と狭山事件第三次再審請求が大詰めを迎えている。万年筆のインク問題など大量かつ重大な無実の新証拠が提起されており、事実調べと鑑定人尋問の実現が焦点だ。
 九月一三日名古屋高裁で画期的な判決が出た。風力発電所建設計画を巡る市民に対する公安警察の情報収集を違法と断罪したものだ。この判例をどのように活用していけるか、研究する必要がある。
 七月三日、最高裁は旧優生保護法による強制不妊手術を違憲であると判断し、国に賠償を命じた。これに先立ち、二〇二三年一〇月には性同一性障害特例法の性別変更の条件のうち、戸籍の性を男性から女性に変更する際に義務付けられていた生殖能力の喪失を違憲とした。このように優生思想・ジェンダーを巡っても攻防が繰り広げられている。
 以上みてきたように、大資本・権力による日本社会の右翼的再編はあらゆる場所で抵抗を受け、ほころびを出している。さらに反撃を強化するとともに右翼的な再編ではなく、労働者人民のための社会再編、すなわち革命のための闘いがさらに求められている。プロレタリア国際主義と共産主義を掲げ、われわれの闘いを民衆の希望へと高めていこう。
   

 


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