共産主義者同盟(統一委員会)


1649号(2024年1月1日)







■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

     
 
  国際主義貫く反戦闘争で
  殺戮と破壊を即時停戦へ

  
搾取・収奪・排外主義強める現代帝国主義を打倒しよう
  
「代執行」判決弾劾! 辺野古新基地建設阻止






 二〇二二年二月ロシアがウクライナに侵攻して侵略戦争を続けており、二〇二三年一〇月にはイスラエルがガザに侵攻し殺戮と破壊を続けている。
 米帝をはじめとする帝国主義は世界支配の覇権を護持するために、分断と対立を強めてきたが、その結果引き起こされた戦乱を、軍事力で抑えつけることも、外交的に停戦させることもできない。
 それどころではない。現代帝国主義は、眼前の戦乱に軍事支援し、殺戮と破壊を激化させている。帝国主義の基幹産業である金属、機械、化学、航空宇宙産業は、この軍事支援で生産を回復させている。労働者人民から搾り取った税金、そして国債の形で未来の労働者人民から搾り取る税金が、莫大な軍事支援資金として投入されている。
 帝国主義が進めてきた世界の分断と対立ゆえに、二つの戦争が停戦しないまま、二〇二四年を迎えている。十分な食物がなく、暖かい場所で休むことができずに、大量虐殺の恐怖に直面して、二〇二四年を迎えている人々がいるのだ。
 われわれは今、戦争が続く世界に生きている。一刻も早く、殺戮と破壊を止めなくてはならない。
 二〇二四年、ウクライナとガザ、二つの戦場での殺戮を直ちにやめさせなければならない。
 労働者階級人民が全世界で反戦闘争に立ち上がり、闘い続ける世界で、今を生きているのだ。この困難な時代に、改めてプロレタリア国際主義を貫いて自国帝国主義打倒を闘うことを確認しよう。
 同志、友人、『戦旗』読者の皆さんに、今号(一月一日)と次号(一月二〇日)をもって、共産主義者同盟(統一委員会)の年頭の提起を行なう。今号に第一論文(情勢)を、次号に第二論文(総括、方針、党建設)を掲載していく。


第1章 世界情勢

▼1、二つの戦争と現代帝国主義の反動

(1) イスラエルのガザ軍事侵攻
 昨年一〇月七日、ハマスが敢行した越境攻撃「アルアクサの洪水」作戦に対して、イスラエル・ネタニヤフ政権は、「ハマスの絶滅」を宣言してガザへの空爆を繰り返した。ガザとの境界にイスラエル軍一〇万を結集させ、さらに三六万人の予備役も招集して、戦時態勢をとった。
 ガザ地区を陸上でも海上でも封鎖し、電力、燃料、水、食糧の供給を止めた。エジプトとの国境からの物資搬入も厳しく制限した。水、食糧の搬入がなされるようになっても、ハマスを利するという理由から燃料の搬入は禁じられた。そのために、病院の電力が停止し、患者が命を落とす事態にも至っている。
 一〇月二七日には「攻撃は第二段階に入った」と宣言して、本格的に地上攻撃を開始した。イスラエル軍は、ハマスの拠点がガザの地下にあるという「理由」で、ガザ市を無差別に攻撃。学校、病院、国連の難民施設まで爆撃し、地上軍が直接入り込んで攻撃した。
 ネタニヤフは、挙国一致の戦時内閣を樹立させて、ガザ攻撃に踏み込んだ。ヨルダン川両岸をユダヤ人国家の領土と主張する「大イスラエル主義」のリクードなど右派、極右が中枢を握ったネタニヤフ戦時内閣は、ハマスを壊滅させて、ガザ全域を制圧することを企図している。
 ネタニヤフはハマスを標的にしたとの主張を続けているが、ガザ攻撃は無差別であり、殺戮し破壊した地域をイスラエル軍が制圧しようとしている。「報復」と主張して戦争に着手したが、パレスチナ全土を制圧しようとする極右シオニストの意図をあからさまにした軍事侵攻である。
 一一月二四日から、捕虜交換などを条件として一時的休止が行われた。四日間の休止、そして二日間の延長、さらに一日延長された。しかし、ネタニヤフ政権は七日間で休止を打ち切り、殺戮、破壊に突き進んでいる。
 われわれはイスラエルのガザ無差別殺戮―パレスチナ軍事制圧の蛮行を怒りをこめて弾劾する。この戦争を「自衛権」として擁護し、軍事支援を続ける米帝をはじめとした帝国主義をこそ弾劾しなければならない。
 米英独仏伊の五カ国首脳は、イスラエルに対して「揺るぎない支持」を表明して、イスラエルの軍事侵攻を正当化した。ガザ侵攻に対する国連安保理決議に対して、米国は拒否権を発動して否決した。
 日本が議長国として主催した昨年一一月七、八日のG7外相・東京会合では、ガザ軍事侵攻の「人道的休止」を支持するとはしたものの、G7全体の一致は、ネタニヤフ政権の「自衛権」なのだ。
 ガザでの殺戮を正当化し擁護するG7―帝国主義を断固弾劾する。

(2) 膠着するウクライナ侵略戦争
 二〇二二年二月のロシア軍の侵攻によって始まったウクライナ侵略戦争は、軍事的かつ領土的な野心をもって戦争を継続するプーチン政権と、一方で、ゼレンスキー政権を全面的に支援することでロシアを封じ込めようとする帝国主義各国によって、長期化し泥沼化している。ウクライナ東部・南部を中心に戦争が続いている。
 ゼレンスキー政権は昨年六月に反転攻勢を開始したが、戦線は膠着している。戦闘が続き、ロシア軍、ウクライナ軍双方が、日々死傷者を出しながら一進一退の攻防を続けているのである。
 帝国主義諸国、NATO諸国などが供与した武器によって、ウクライナは戦争を継続している。しかし、停戦の展望なく継続する戦争への軍事支援=武器供与は、帝国主義諸国にも矛盾を生み出してきている。
 ゼレンスキー大統領は昨年九月一九日、ニューヨークで行われた国連総会で演説した。ロシアが世界を核戦争の恐怖に陥れ、食糧供給をも脅かしていると厳しく非難した。ロシアに対して「戦争犯罪は処罰され、占領された土地は返還されなければならない」、「すべての力を結集して、侵略者を打ち負かすために団結して行動しなければならない」として、軍事支援の強化を呼びかけた。ゼレンスキー大統領は二〇日の安全保障理事会にも出席。各国首脳との個別会談でも軍事支援を訴えた。
 米大統領バイデンも国連総会の場で、「違法な征服戦争」を行なっているとしてロシアを非難し、ウクライナ軍事支援を訴えた。

〈帝国主義の疲弊〉

 ゼレンスキーはワシントンも訪問し、当時の下院議長マッカーシー(共和党)に対しても軍事支援継続を強く訴えた。しかし、共和党内では追加の軍事支援に対する反対が強く、ゼレンスキー大統領の米議会演説は行われなかった。
 この後、米議会下院では、予算案をめぐって民主党と共和党が対立。九月三〇日に可決した「つなぎ予算」では、ウクライナ支援予算は除外された。さらに議会運営をめぐって議長のマッカーシーが解任され、その後三週間も下院議長が決まらない事態となった。一〇月にイスラエルのガザ侵攻が始まる中、米議会はイスラエル軍事支援予算を含む予算案を可決したが、ウクライナ軍事支援予算は共和党の反対で通らない状況となっている。
 欧州においては、ポーランドが、ウクライナ産穀物の輸入規制問題でゼレンスキー政権と対立し、ポーランド首相がウクライナへの「武器提供停止」と発言。発言は取り消されてはいるが、戦争の長期化によってウクライナ支援諸国の間に軋轢が生じていることは事実だ。

〈ロシアの疲弊〉

 ロシアは天然ガス、原油などのエネルギー、また穀物生産・輸出など資源大国ゆえに、帝国主義の制裁がなされても、戦争を継続してきているが、ウクライナ侵略戦争長期化の矛盾が拡大してきている。
 ロシアの同盟国アルメニアは、ナゴルノ・カラバフをめぐってアゼルバイジャンと争ってきた。二〇年の停戦合意以降、ロシアの平和維持部隊の下で停戦していた。ウクライナ侵略戦争が長期化する中、ロシアに軍事的な余力がないことを見定めたアゼルバイジャンが昨年九月一九日、「対テロ作戦」と称してナゴルノ・カラバフに侵攻。アルメニア軍は、ロシア軍の支援がないまま、一日で撤退した。
一一月二三日、ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構(CSTO)」はベラルーシで首脳会議を開催したが、アルメニア首相パシャニンは欠席した。ロシアをはじめとしてCSTO諸国がナゴルノ・カラバフ問題で軍事支援しなかったことに対して、アルメニア国内で不満が高まっている結果だった。
 アルメニアだけではない。CSTOを構成するカザフスタン、キルギス、タジキスタンは一昨年、米国主導の軍事演習「地域協力二〇二二」にウズベキスタンとともに参加している。とくに、カザフスタンはウクライナ侵攻後のロシアとは距離を置き、ロシア撤退企業を誘致するなど、欧米諸国資本との関係を強化している。

▼2、東アジア情勢

 米帝―バイデン政権は、かつて安倍が掲げたインド太平洋戦略を位置付け直し、日帝―岸田政権とともに、中国包囲の東アジア戦略として具体化してきた。二一~二二年段階では、クアッド(日米豪印戦略対話)、AUKUS(米英豪安全保障枠組み)を、その首脳会議をもって進め、中国包囲の陣形を作り出そうとしてきた。
 中東からアジアに軸足を移した米帝―バイデン政権に足並みを揃えた岸田政権は、二二年末に安保三文書改定を閣議決定し、能動的に参戦できる軍隊に自衛隊を改編しようと躍起になっている。
 米帝、日帝は、中国、台湾の現実を覆い隠して、「台湾有事」をでっち上げ、これを煽動してきた。中国の台湾への軍事侵攻が起こり得るかのように喧伝し、これを「根拠」に東アジアの軍事的緊張をむりやり高めてきた。
 昨年八月一八日、日米韓三カ国首脳が米国キャンプ・デービットで会談を行った。岸田、バイデン、尹錫悦(ユンソギョル)は、中国、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)との対決を鮮明にして、指針「キャンプ・デービッド原則」、共同声明「キャンプ・デービッドの精神」を発表した。三カ国の首脳および閣僚の会議を定期化し、政治・軍事・経済全般にわたる関係強化を進めることを確認した。米帝―バイデン政権は、日帝、韓国との軍事同盟の上に、三カ国の準軍事同盟化を強め、本年からは三カ国の軍事演習を計画的に進めていこうとしている。
 日米軍事同盟の下で、このバイデン政権の中国包囲戦略を一体的に進める日帝―岸田政権は昨年一〇月、フィリピン、マレーシアなどとの軍事協力を進めるために、アジア各国を訪問した。また、オーストラリアとの間では、自衛隊をオーストラリアに常駐させることを合意し、軍事協力をさらに深めている。
 ミャンマーでは、二〇二一年二月に国軍がクーデターで政権を握り、ミンアウンフライン司令官が「暫定首相」に就いて、「国民民主連盟」など民主化勢力や少数民族を軍事的に弾圧する状況が続いている。日本政府も民間資本も、クーデター以前から国軍および国軍系企業との関係がある。日本の援助と投資が、軍事政権を支えることを絶対に許してはならない。

▼3、中国を軸にした枠組み

(1) BRICSの拡大
 中国―習近平政権は、日米帝がインド太平洋戦略なる中国包囲を進める中で、新たな世界戦略の構図を描いてきた。一つには習近平政権が進めてきた一帯一路戦略を再編することであり、さらには、友好国との多国間の枠組みであるBRICS、上海協力機構を拡大強化することである。また、米帝の外交の隙を突くような外交も行っている。昨年三月、習近平政権が仲介して、サウジアラビアとイランの国交回復がなされた。二一年の米軍アフガニスタン撤退後の中東、中央アジアの外交関係を、中国が主導しようとしているのだ。
 一帯一路首脳会議が昨年一〇月一七、一八日に、北京で開催され、プーチンもここに参加した。中国からの融資を受け入れた諸国が陥った「債務のわな」などアジア・アフリカ諸国との間で軋轢が生じている。また、イタリアのメローニ右派政権は米帝との関係強化を図り、昨年一二月、一帯一路からの脱退を正式に通告した。このような矛盾を抱えながら、習近平政権は一帯一路戦略を再編し拡大しようとしている。
 昨年、とくに注目すべきは、BRICSを拡大する新たな動きがあったことだ。
 BRICS首脳会議が昨年八月二二日から二四日に、ヨハネスブルクで開催された。その首脳会議では新たに、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、イラン、アルゼンチン、エチオピアの六カ国の参加が決まった。二四年一月から正式の加入となり、BRICS+6、あるいは拡大BRICSと呼称されている。
 南ア大統領ラマポーザは、BRICS+6への拡大を確認した上で、「BRICSはグローバルサウスの擁護者になる」と発言している。BRICS+6が、経済、軍事、政治、さまざまな問題において、米帝を軸にした帝国主義諸国と対峙する、新たな枠組みを創出しつつある。
 BRICS首脳会議の中では、新たな通貨体制案も主張されている。レアル、ルーブル、ルピー、人民元(RMB)、ランドとBRICS五カ国の通貨の頭文字がRでありことから「R5」なる用語で独自通貨構想が語られている。
中国は、その経済力の発展に伴って、現在のIMF体制の変革を主張してきた。「R5」なる新たな通貨構想は、IMFにおける基軸通貨ドルの特権が変更されない現状への、新しい対抗でもあるだろう。
 それは単なる思い付きではない。BRICS+6は、OPECなど主要な原油生産国、また、穀物などの食糧生産国を含んでいる。そして、その巨大な輸入国・中国がその中核にいる。世界規模での貿易の大きな部分が、人民元などドル以外の通貨でなされる状況が拡大し始めているのである。
 しかし、BRICS+6の登場が、現在の米帝を中心とした帝国主義のIMF・世銀・世界貿易機関(WTO)の世界経済支配に対抗する新たな体制とまでは言い得ない。それはまだ強固な機構にまで制度化されたものに至ってはいないからだ。
 BRICS+6の一国であったアルゼンチンは、昨夏は左派のフェルナンデス政権であったが、昨秋一一月一九日の大統領選で極右ハビエル・ミレイが当選し、一二月一〇日に新大統領に就任した。ミレイは親米路線で、中央銀行を廃止してドルを自国通貨にすることを主張している。BRICS加盟にも反対している。+6の一角が崩れることになるだろう。

(2) 習近平政権の国内政策と矛盾
 外交関係において、衰退する中心国―米帝を見据えながら、これに対抗し、独自の権益圏と独自の国際的枠組みを構築してきた中国―習近平政権であるが、その内政においてはさまざまな問題を抱えている。これまでも習近平政権は、香港民主化運動の弾圧、コロナ対策における力による統制とスターリン主義的な対応を強行してきた。この強権的な支配に対して、白紙運動という抗議がなされた。弾圧が強まっている状況を考えれば、中国の労働者階級人民は大きな矛盾を抱えて立ち上がっているのだろう。
 市場経済化が進む中国では、実体経済が成長を続けるのに伴って、米・日のような資本主義国と同様に経済のバブルも膨張してきた。厳密には土地の私的所有が認められてはいないのだが、土地使用権と住宅が不動産として売買され、値上がりが続いてきた。〇八年恐慌後のG20サミットにおいてG20諸国総体が財政出動をもって資本主義を救済する状況の中で、中国政府は四兆元の財政出動を行った。帝国主義諸国の市場ともつながった中国の工業生産を持ちこたえさせるための経済政策であった。しかし、地方政府も含めた莫大な財政出動の多くは、不動産に投資された。それまで、経済成長に伴って不動産価格は値上がりしており、その後も値上がりし続けると信じられていたからだ。
 「社会主義市場経済」の中で、日・米帝国主義と同様に不動産バブルが起こっていた。住宅が、投機の対象となり、その価格高騰が続き、労働者人民は住宅を入手できない状況が生み出されてきた。
 この状況に対して、習近平は「住宅は住むためのものであり、投機の対象ではない」とし、二〇二〇年に不動産会社に対して「三道紅線(三つのレッドライン)」と呼ばれる資金調達規制を導入した。「一部を除いた資産に対する負債比率70%以下」、「純債務が自己資本を超過してはならない」、「短期債務を上回る現金保有」というものだ。中国では、不動産企業も国有企業と民営企業が存在しているが、「三つのレッドライン」によって民営不動産企業の資金調達がとくに困難になった。
 「三つのレッドライン」の投資規制、そしてコロナ禍があいまって、二一年から二二年にかけて不動産投資は大きく落ち込んだ。その結果、中国不動産企業の一九年販売額一位だった碧桂園、三位だった恒大集団は、販売額が急落。いずれもデフォルト(債務不履行)を起こす事態になっている。不動産バブルが急激に収縮する中で、この規制強化によって、民営企業が淘汰され、国有企業が延命する状況になっている。
 恒大集団、碧桂園のデフォルトが巨大な不動産業の破綻でありながら、ある意味で習近平政権が意図した方向であるのかもしれない。しかし、不動産は値上がりし続けるという「神話」は崩れた。土地使用権の売却で収入を得ていた地方政府は、資金繰りが悪化する事態になっている。
 問題は、これが本当に労働者人民の住宅問題の解決になったのかということだ。市場経済化を進めながら、経済バブルに対して上から統制する習近平政権の経済運営は、結果としては国家権力に従う企業を選別しただけだ。労働者人民に住宅を供給する政策になってはいない。むしろ、新たな矛盾を生み出し蓄積させている。
 中国経済のバブル崩壊は、グローバルに資本が移動する現代世界では、帝国主義資本にとって対岸の火事ではない。中国経済の動向は、帝国主義資本に必ず影響を及ぼす。

▼4、米帝を中心国とした世界体制の動揺と混乱

(1)米帝の力では和平も覇権も実現できない
 ウクライナ戦争は、ロシアの侵略戦争である。
 米帝―バイデン政権が激化させてきた分断と対立の世界構造の中では、停戦し和平に進むことができない。NATOの結束を強化し、ウクライナ軍事支援をもって、ロシアを弱体化させるという戦略=政略しかない。帝国主義を軸にしたウクライナ軍事支援だけを「民主主義」「正義」とする米帝の主張が繰り返されるだけだ。
 かつ、米帝は戦争に直接介入することはできず、武器供与―軍事支援をもって、戦争を継続し拡大している。
 ガザ軍事侵攻では、もっとあからさまに米帝の利害が主張されている。米帝の同盟国イスラエルを徹底的に擁護し、ガザ侵攻―無差別殺戮をイスラエルの「自衛権」と正当化してきた。国連総会でも米国とイスラエルこそが孤立している状況だ。
 これは、第二次世界大戦後の中心国―米帝の軸足であったはずの中東植民地支配政策が大きく破綻していることの結果でもある。
 米バイデン政権のアフガニスタン撤退はまさに壊走であった。大統領就任時にはトランプ政権を批判し、「イラン核協議」を復活させる主張を行っていたが、結局放棄した。
 米帝はかつてのように中東産油国を「死活的利害」と位置づけてはいない。現在の米帝は、シェールオイルによって石油輸出国となっている。バイデン政権は、中国への対抗を最大の政治課題とし、世界戦略の軸心を「インド太平洋」に移している。
 米帝自らは中東からの撤退を進め、外交的にサウジアラビアとイスラエルの関係改善を進めようと企図してきた。しかし、中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化、そして、決定的にはイスラエルのガザ侵攻によって、このバイデン政権の目論見は破産した。
 今、反イスラエル、反米の国際的な動きは急速に進んでいる。
 アラブ連盟(二一カ国・一機構)とイスラム協力機構(五六カ国・一機構)は一一月一一日に、サウジアラビアの首都リヤドで、合同の臨時首脳会議を開催した。イスラエルのガザ侵攻と米帝のイスラエル軍事支援こそが、アラブ諸国、イスラム諸国の結束を強める結果となっている。

(2)分断できないグローバル資本主義
 「インド太平洋戦略」を軸にして、軍事的に中国包囲を強める日帝、米帝であるが、これまで進めてきた新自由主義グローバリゼーションを軍事問題だけで切断することはできない。
 二〇年からのコロナ禍、そして二二年からのロシアのウクライナ侵略戦争によるだけでも、食糧をはじめとする国際的な物流が大きな影響を受け、世界規模で物価高騰が引き起こされてきた。
 バイデン政権が「民主主義と専制主義の闘い」なる政治的軍事的なスローガンで、分断と対立を進めてきた。しかし、現代資本主義は、商品の流れも、資本の流れも、そして人の流れも分断しては成り立たない経済関係になってしまっている。米中間においても、貿易、投資は拡大し続けており、政治的軍事的に対立しても、切断できない関係なのだ。
 このことを見据えた米大統領・バイデンと中国国家主席・習近平は昨年一一月一五日、APEC首脳会議の前段に、双方の主要閣僚を伴って四時間にわたる首脳会議を行なった。両国政府は、台湾問題、経済安全保障、中東情勢について協議した。
 バイデンからすれば、軍事的な同盟関係強化を幾重にも積み重ねて圧力をかけながら、習近平と直接対峙し、双方の力関係に基づいた「平等と尊重」を確認しようという戦略であっただろう。しかし、米国と中国の利害だけで、その思い通りに世界全体が動くということでもない。東アジアにおいても、日本、韓国は各々の利害に基づいて外交関係を探っている。一一月二六日には、日中韓の外相会談が釜山で開催された。岸田政権は、米帝に追随しつつも、日中韓首脳会談を模索している。
 バイデンが「民主主義と専制主義の闘い」などと単純化しようとするが、かつての冷戦時代のように、二つの勢力が対峙している状況ではない。資本主義世界全体を、米帝が圧倒的な軍事力、経済力によって支配している訳ではない。冷戦時代とも、中東湾岸侵略戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争とも違う国際状況の中で、米帝が同盟国との関係を強化してかろうじて、その覇権を護持している状況なのだ。

(3)「民主主義」の破綻
 バイデンが「民主主義」と言いながら、分断と対立を激化させてきた結果、差別排外主義を増大させた。欧州諸国では、改めて極右勢力が台頭してきている。
 昨年一一月二二日に行われたオランダ下院総選挙で、極右政党「自由党(PVV)」が第一党となった。PVVは、移民・難民政策の批判を強めて支持を集めてきた。PVV党首ウィルダースは選挙直後に「ここ数年の誤った移民・難民政策を元に戻し、オランダを国民の手に取り戻す」と語った。PVVだけで政権を担うわけではなく、連立交渉はこれからだ。しかし、移民・難民政策について、オランダのみならず、欧州連合(EU)内で対立が生まれる可能性もある。
 欧州では、移民政策をめぐって排外主義的政策を掲げた極右政党が台頭する動きが顕著になっている。
 イタリアでは、右翼政党「イタリアの同胞(FDI)」のメローニが二二年に首相に就任。フィンランドでは、移民・難民受け入れの制限を主張する「フィンランド人党」が二三年の総選挙で第二党になっている。ドイツでは「ドイツのための選択肢(AfD)」が世論調査の支持率21%で、与党・社会民主党の15%を上回っている。フランスの「国民連合」マリーヌ・ルペンは二二年の大統領選挙の決選投票にまで残っていた。

(4)沸騰する地球 地球温暖化の進展とこれに対する運動
 ウクライナ侵略戦争、イスラエルのガザ軍事侵攻―殺戮という政治的災禍に直面している中で、人類にとって皮肉なことだが、地球温暖化の急激な進行を実感する、史上最も暑い夏を昨年経験した。
 グテーレス国連事務総長は「地球沸騰化の時代が到来した」と表現した。気候変動枠組条約締約国会議(COP)が二〇一五年に採択した「パリ協定」では、産業革命以前との比較で「1・5度に抑える努力」を確認している。そのために、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス排出の削減目標を確認しており、先進工業国は二〇五〇年までにはネットゼロにしなければならない。それでも温暖化は進むが、かろうじて破局的気象変動を避けられるだろうという予測でしかない。
 コロナ禍に直面し、戦争に直面した帝国主義は、温室効果ガス削減の努力よりも、経済浮揚と大軍拡の政策に執心している。しかし、地球温暖化の危機は徐々にではなく、ある段階で急激に進むものであることが、まさに昨年突きつけられたのだ。
 大気と海水温の上昇は、巨大な熱帯低気圧や森林火災を多発させている。しかし、偏西風の蛇行や海流に大きく影響し、日常生活の基本となる農作物や水産資源に大きな変化をもたらしている。さまざまな気候変動が相乗的に影響しあって回復することができない破局的変動を引き起こす事態は、人類の想定よりも早まる可能性すらある。
 資本が主導する「経済成長」のみでなく、覇権のための大量の武器使用こそが、温室効果ガス排出を一挙に拡大し続けている。戦争をめぐり世界の分断と対立が深まることによって、人類と地球環境の総体の危機を協議して合意する場が失われていくのだ。ガザとウクライナの即時停戦が緊要だ。


●第2章 国内情勢

▼1、岸田政権の反動政策

 昨年の政治過程を通して、日帝―岸田政権が、安倍晋三、その後の菅義偉を忠実に引き継ぐ右翼反動政権だということがより鮮明となった。岸田は、一昨年末の「安保三文書」改定閣議決定―大軍拡路線、さらに老朽原発再稼働や放射能汚染水海洋投棄の強行など原発回帰路線への全面転換をはじめ、反動的政策のゴリ押しを繰り返し、安倍が敷いた改憲―戦争国家への道を突き進んでいる。
 ウクライナ侵略戦争の泥沼化と、日銀の金融緩和政策継続による円安の進行によって、物価は高騰し、労働者階級人民の生活はさらに困窮化している。岸田政権に対する怒りが人民の中に深く広く拡大していることが、世論調査結果の度に支持率最低を更新しつづけていることに如実に示されている。これら人民の怒りを岸田政権打倒の奔流へと組織していくことが、われわれ日本労働者階級人民の焦眉の課題だ。
 岸田政権は、下げ止まらない支持率への危機感から、一方では「経済」重視、「減税」を場当たり的に打ち出しつつ、他方では日帝支配階級の伝統的手法である、中国や共和国、ロシアの軍事的脅威を一層煽り立て、人民を排外主義的に組織し、政権危機を乗り切ろうとしている。
 われわれは、「台湾有事」や共和国のミサイルなどの「軍事的脅威」なるものの虚構を暴き出し、プロレタリア国際主義で武装して闘い抜いていかなければならない。戦争と改憲、大軍拡の道を突き進む日帝―岸田政権を打倒しよう。

(1)安保三文書改定弾劾 敵基地攻撃能力保有許すな!

① 二〇二三防衛白書分析・批判
 昨年七月、防衛省は二〇二三年版「防衛白書」(以下、二三白書)を公表した。「安保三文書」改定後初の防衛白書だ。
 二三白書では、中国の軍事的動向を、「これまでにない最大の戦略的な挑戦」と捉え、「軍事・経済両面で競争が激しくなっている米中のパワーバランスの変化が、インド太平洋地域の平和と安定にも影響する可能性がある」と、米帝の衰退と、それに代わり台頭する中国に対する危機感を露わにしている。「各国の軍事情勢の分析」の項目中、中国に最多の三一ページが割かれている。その動向を、「わが国と国際社会の深刻な懸念事項だ」と結論づけ、事実上の「主要敵国」と規定している。
 これは、米帝―バイデン政権が、中国を唯一の競争相手と位置付け、「中国との競争力を決める上で今後一〇年は決定的な意味を持つ」(二二年米国「国家安全保障戦略」)として、政治・経済・軍事などあらゆる領域での中国包囲網形成を推し進める動きと連動したものだ。
 ロシアについては、ウクライナ侵略戦争の長期化で通常戦力が大幅に損耗している可能性を指摘し、「核戦力への依存を深めると考えられる」と分析。中ロが日本周辺で実施している爆撃機や艦艇を使った共同活動は、「わが国に対する示威活動を明確に意図したもの」とし、中ロの連携強化に「重大な懸念」を表明した。共和国については、「弾道ミサイル」の発射を繰り返し、「従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威」だと強調した。
 二三白書は、「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している」として、軍事力の抜本的強化を訴え、一昨年一二月に安保三文書を策定して「敵基地攻撃能力」保有を閣議決定したことを紹介し、五年間で四三兆円の軍事費倍増を正当化しているのだ。
 だが、インド太平洋地域での軍事的緊張関係激化の最大の要因は、米帝国家戦略のインド太平洋シフトへの転換にこそある。米帝―バイデン政権は、「死活的」と表現する、自らの帝国主義的利害に、同盟国・友好国を巻き込みながら、中国封じ込めの動きをいっそう加速させているのだ。
 米帝は、クアッド、AUKUSの強化、日米韓、日米比など多国間安保の枠組み形成を進め、対中国軍事包囲網形成を加速させている。台湾に対しては、対レーダーミサイルや空対空ミサイル、高性能爆薬、地雷敷設システムなど大量の武器売却を行っている。このような米帝の露骨なインド太平洋地域への介入、中国挑発によって、今後も中台の軍事的緊張関係は不断に高まらざるをえない。
 日帝もまた、米帝と一体となって「台湾有事」を煽動し、中国が設定する防衛ライン「第一列島線」=琉球弧の島々へのミサイル基地配備を推し進めながら、「島嶼防衛」演習などの日米合同軍事演習を繰り返し強行している。これらの動きは中国、あるいは共和国、ロシアにとっては戦争挑発そのものとしてある。

② 沖縄・琉球弧の戦場化許すな
 日帝政府は、「台湾有事」=中国脅威論を煽動し、琉球弧の軍事要塞化を急速に推し進めてきた。巡航ミサイル「トマホーク」四〇〇発配備などの「反撃能力(=先制攻撃能力)」保持を名目に、長射程の「スタンド・オフ・ミサイル」基地が宮古島、石垣島、与那国島などに建設、配備強行している。
 また、「離島奪還」「島嶼防衛」など、琉球弧を「戦場」と想定し、そこに向けて全国の自衛隊、米軍を集結させる大規模な実戦的演習が連続して行なわれている。「ノーザン・エッジ23」(七月)、「オリエント・シールド23」(九月)、「レゾリュート・ドラゴン23」(一〇月)、「自衛隊統合演習(=実動演習)」(一一月)などだ。
 演習実施に伴って、空港や港湾、鉄道などの輸送に携わる労働者をはじめ、社会全体の軍事化=戦時徴用、戦時動員も拡大している。一一月自衛隊統合演習では、北海道の美幌駐屯地から沖縄の那覇駐屯地へと、民間船舶が一六式機動戦闘車の輸送を行う機動展開訓練が行われた。また、他国からの攻撃で航空自衛隊の基地が使えなくなったとの想定で、空自戦闘機が奄美空港と徳之島空港をはじめて軍事使用した。
 さらに岸田政権は、改定「国家安全保障戦略」記載の、防衛力強化のための「公共インフラ整備」として、「有事」の自衛隊や海上保安庁の部隊展開や、「国民保護」、「平時」の訓練使用のために、空港・港湾の延伸や拡張などの整備を進め、軍民共用施設化しようとしている。全国で三八の空港・港湾が候補地となり、その七割が九州・沖縄に位置している。これは中国軍事包囲網形成の一環であることは明白だ。
 辺野古新基地建設においては、大浦湾埋め立てのための設計変更申請を玉城知事が不許可としたことに対し、「代執行」訴訟を提訴して、埋め立てを強行しようとしている。沖縄人民の民意を無視し、辺野古をはじめ、琉球弧の島々へと次々と基地をおしつけ続けるのが日帝―岸田政権だ。
 これらの琉球弧の軍事要塞化の行き着くところは、沖縄・琉球弧の戦場化だ。辺野古新基地建設阻止、琉球弧のミサイル基地撤去を掲げて闘い抜いていこう。
③ 大軍拡・戦争増税(戦時国債)許すな
 昨年一月通常国会の施政方針演説で冒頭に置かれていた「防衛力の抜本的強化」の項目は、一〇月の臨時国会所信表明演説において一二番目の項目に後退した。岸田は、五年間で四三兆円の軍事予算倍増のため、増税を明言したが、支持率の急速な低下に歯止めがかからない状況への危機感から、具体的な増税項目は先延ばしにしている。
 だが、岸田政権は、軍事費倍増をやめたわけでは決してない。「防衛財源確保法」を根拠に、法人税、所得税、たばこ税のほか、被災地福島の復興財源削減、医療、福祉、年金などの社会保障費の削減を狙っている。大軍拡のための増税を許すな。

▼2、岸田政権の経済政策のペテン

(1)支持率低下を更新し続ける岸田政権の失政
 昨年一〇月の第二一二回臨時国会冒頭所信表明演説で岸田は、「経済、経済、経済。私は何よりも経済に重点を置く」と「経済」を三連呼し、「経済第一」で対策に集中すると語った。
 岸田はこの演説で、新自由主義グローバリゼーションの三〇年間を「低物価・低賃金・低成長のコストカット型経済」だと総括し、これを「持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済」へと変革すると主張した。また「供給力の強化」策を講じて、「国民への還元」を「所得税減税」などとして行う「総合経済対策」として取りまとめ、実行するとしている。
 だが、その結果は、政権支持率回復を目指す岸田の思惑とは裏腹に、支持率は20%台前半にまで急速に低下した。その根底には、岸田の「総合経済対策」では物価高騰に全く追いつかず、実質的な賃下げ状況になっていることがある。さらに、昨年九月の内閣改造以降に政務三役の不祥事、パーティー券=政治資金の大規模な不正が発覚するなど、自民党そのものの腐り切った実態が次々に露呈したことがある。
 岸田政権が発足当初掲げていた「新しい資本主義」「分配」は後景化され、すでに触れられることはない。一昨年には、それを「国民資産倍増」として打ち出した。個人の資産を貯蓄から投資、投機に転換させようとするものであり、富裕層や資本家らの資産を増やすための政策でしかない。困窮化する労働者人民にとってまったく無縁な話なのだ。
 岸田は昨年一月の施政方針演説においては、「新しい資本主義」とはすなわち「経済安保」戦略と言いなしていた。その都度中身がすり替えられる岸田の経済政策には、まるで一貫性がないことが誰の目にも明らかだ。そもそも、一方で大軍拡のための増税を明言しておきながら、支持率急落に驚愕して、見かけだけの「減税」を突然主張しだす岸田のやり方は、その場しのぎのペテン以外の何物でもない。

(2)闘う労働組合運動の再生が急務
 コロナ禍とウクライナ戦争、さらに円安の進行によって物価が上がり続けており、労働者人民の生活を圧迫している。
 最低賃金(時給)が、昨年秋の改定で、史上初めて「全国加重平均一〇〇〇円」を超えた。引き上げ額は過去最大ではあるが、たとえフルタイムで働いたとしても年収二〇〇万円程度にしかならず、物価高騰にはまったく追いついていないレベルでしかない。物価の違いを調整した経済協力開発機構(OECD)公表の最低時給データ(二〇二〇年)によれば、日本は約八・二ドルにとどまっている。オーストラリア(一二・九ドル)やフランス(一二・七ドル)、韓国(八・九ドル)など、他国と比べ極めて低水準のままなのだ。
 日本の労働組合は、この間ナショナルセンターの違いを越えて、「全国一律、時給一五〇〇円以上」への大幅アップを要求している。この賃金水準を実現しない限り、日本の労働者人民の実質賃金低下に歯止めはかからない。
 日帝ブルジョア支配階級、岸田政権は、労働者人民の切実な要求を無視して、「リスキリング」など、労働者諸個人の能力向上の問題へとすり替えている。また、「スキマバイト」が喧伝され、「ギグワーカー」や「フリーランス」など、労働者としての在り様を否定され、個々人に分断し、一層の不安定化、低賃金化を推し進めようとしているのだ。
 闘う労働組合に対しては、関西生コン支部弾圧にみられるように、のべ八〇名に及ぶ不当弾圧を強行し、組合そのものを破壊する攻撃を強めている。組合員であることを理由とした解雇や不利益な取り扱いも横行している。
 強まる弾圧に対する反撃の闘いが粘り強く取り組まれており、関生弾圧の和歌山事件では完全無罪判決をかちとり勝利している。階級的労働組合運動の再生は極めて重要な課題だといえる。

▼3、反人民的権力構造
 他にも二三年を通して岸田政権が行ってきた反動的反人民的政策は、入管収容所によるスリランカ人ウィシュマさん虐殺事件によって頓挫していた入管法の改めての改悪強行や、人民管理・抑圧・収奪強化のための「マイナンバー法」改悪、および「インボイス制度」導入による実質的増税の強行、「LGBT理解増進法」なる差別増進法制定の強行などがある。外国人技能実習制度については、雇い入れる資本の側にとってだけ都合の良い改定をなそうとしている。
 安倍晋三の銃撃死によって暴き出された反共宗教集団・統一教会と岸信介以来の歴史的癒着構造についても、あいまいなまま幕引きをしようとしている。しかし、岸田自身も統一教会と関係していたことが明らかになり追及されている。
 日帝―岸田政権は、戦争、改憲、治安弾圧をより一層強化し、困窮化する労働者階級人民に対する搾取を強め、差別排外主義の下に組織し、階級性を剥奪し、戦争へ向けて動員しようとしている。反抗し闘う人民に対しては、不当なでっち上げ弾圧によって鎮圧し、組織犯罪対策法や共謀罪などによって、組織丸ごとの解体をしようとしているのだ。
 二五年には、人民の圧倒的な中止の声を無視し、大阪万博を強行開催しようとしている。大阪万博を口実に夢洲に建設されたインフラは、IRカジノ施設建設へと利用されるのであり、万博はカジノ施設建設の「露払い」でしかない。これらが、困窮化する人民からむしり取った税金で強行されることなど、とうてい認めることはできない。大阪万博の開催を強行しようとする日帝―岸田政権を、日本維新の会もろとも打倒しよう。

原発回帰路線を鮮明にした岸田政権許すな
 岸田政権は、一昨年八月の原発回帰政策への転換表明以降、高浜二号機の再稼働(二二年九月)をはじめ、危険な老朽原発の再稼働を次々と強行している。
 昨年五月には、「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法」、そして「電気事業法等の一部改正」を強行成立させた。「脱炭素」を口実に、六〇年超えの老朽原発――運転休止期間を加えれば七〇年超えも可能――再稼働の促進と、新型原発の新増設など、原発政策の大転換へと舵を切り、その実現化を加速させている。岸田は今後、東海第二、女川、柏崎刈羽、島根、志賀、浜岡の計七基の原発を再稼働すると明言している。
 昨年一一月から一二月に開催されたCOP28に参加した岸田は、再生可能エネルギーの主力電源化とあわせて「原発活用の推進」を主張した。地球温暖化対策の口実で、原発政策を推進することを絶対に許してはならない。
 昨年八月には、地元漁連との約束を反故にして、福島第一原発事故で発生した汚染水の海洋放出を強行した。岸田は、所信表明で「ALPS処理水に関しては、引き続き科学的根拠に基づき、透明性の高い情報発信を行っていきます。中国政府による日本産水産物の輸入停止に対しては、即時撤廃を求める」と語り、あたかも中国だけが汚染水放出に反対しているかのように排外主義的デマを喧伝している。ブルジョア・マスコミもまた、岸田政権に追随し、放射能汚染水を「処理水」と言い換え、国際・国内の世論を誘導している。
 だが、放射能汚染水は地震による津波で福島第一原発の原子炉が破壊され、溶け落ちた核燃料棒(デブリ)を冷却したり、地下水と接触した結果発生したものであり、多くの放射性核種が含まれているのだ。汚染水は現在でも一日一〇〇トンが流れ出している。これを止めるにはデブリを取り出す以外にないが、未だそれがどこにあり、どのようにして取り出すのかは全く目途が立っていない。その間汚染水が発生し続けることになるのだ。
 日帝の核武装のため原発回帰路線へと全面的に転換した岸田政権を打倒しよう。


●第3章 今こそ帝国主義の支配を打ち崩す闘いを

 米バイデン政権が同盟国とともに世界覇権を護持するための「民主主義と専制主義の戦い」なる考え方は、全世界で矛盾を極端に拡大してきた。現代帝国主義の押し広げた分断と対立がウクライナ侵略戦争とガザ制圧戦争という残虐な事態をもたらしている今、これに抗する闘いが全世界で始まっている。
 貧困と差別を極限化し、殺戮と破壊の侵略戦争を引き起こし、取り返しのつかない気候変動を放置する。現代帝国主義の延命は、この最悪の事態を加速させているだけだ。
 労働者階級人民は、闘いの中で、本当の敵を見定めている。

▼1、国際反戦闘争
 イスラエルのガザ軍事侵攻に対して、弾圧、制動を打ち破って全世界で反戦闘争が巻き起こっている。
 ガザ空爆直後から、アラブ諸国、そしてトルコ、インドネシア、マレーシアなどのイスラム諸国では、一斉にイスラエルを批判し、停戦を求める反戦集会・デモが始まった。
 欧米の帝国主義諸国はイスラエルの「自衛権」を支持し、イスラエル批判―パレスチナ連帯の言動やデモを規制した。しかし、イギリス、フランス、ドイツなどの帝国主義足下でも、弾圧に抗して反戦デモが闘い抜かれている。
 ロンドンでは一〇月二一日、イスラエルのガザ侵攻に反対するデモに一〇万人が結集。イスラエルが地上戦に踏み込んだ直後の一〇月二八日には、全世界で反戦デモが闘い抜かれている。一一月一一日には主催者発表八〇万人(警察発表でも三〇万人)のデモが取り組まれた。
 「親イスラエル国」米国でも、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルスで数万規模の反戦デモが取り組まれている。
 フランス政府は親パレスチナデモを禁止。ドイツ政府も「反ユダヤ主義」だとしてパレスチナを支持するデモを禁止した。
 弾圧に抗して、一〇月二二日にはパリで一万五〇〇〇人がデモ。一一月四日にはパリで六万人のデモが行われた。ドイツでも、デュッセルドルフで一万七〇〇〇人、ベルリンで九〇〇〇人のデモが取り組まれた。

▼2、ストライキの拡大
 コロナ禍とウクライナ戦争を主要因として原油、天然ガスなどの資源、また穀物などの食糧の価格が上昇し、世界各国で物価高騰が続いている。これまでの賃金では生活できない状況の中で、賃上げを鮮明にした労働運動が進んでいる。
 イギリスでは二〇二二年以降、ストライキが頻発している。地下鉄など公共交通、港湾、空港、郵便、清掃など公共部門での賃上げを要求するストライキである。二二年一二月には一〇万人の看護師がストライキを闘った。
 フランスでは、マクロン政権が昨年一月に年金支給開始年齢を引き上げる制度改革を示したことに対して、労働組合が激しく反対し、ストライキとデモに立ち上がった。一月一九日に大規模なストライキが闘われ、街頭デモも取り組まれた。三月七日にはフランス全土で三五〇万人が反対デモに立ち上がった。「フランスを停止させる」のスローガンの下に鉄道、地下鉄、電力、学校などで一斉にストライキが敢行された。三月二三日にも大規模なストライキ、デモが取り組まれた。
 米国では全米自動車労組(UAW)と、自動車大手三社GM、フォード、ステランティス(クライスラー)は、昨年が四年ごとの賃金改定の年にあたっていた。UAWは昨年九月以降、物価上昇に見合った賃金を要求してストライキに突入し、賃上げをかち取っている。
 自動車産業ばかりではない。米映画俳優組合―テレビ・ラジオ芸術家連盟は、AIによる画像が俳優の仕事を奪う事態に抗議して、昨年七月以降ストライキに立ち上がった。脚本家労組もストライキを闘っている。
 米国では労組の組織率は10%と、日本と同様に低い。しかし、物価高騰で生活苦が進んでおり、労働運動に対する社会的関心は高まっている。とくに、青年層は格差問題に敏感である。世論調査での労組支持の回答は、約七割になっている。
 韓国では、検察出身でその弾圧手法で権力を握ってきた大統領・尹錫悦が軍事独裁に向けて専制政治を強める中で、これに抗して昨年七月、「尹錫悦政権退陣」を鮮明にした汎国民大会に立ち上がり、反政府闘争が展開されている。昨年一一月一一日には、労働者大会と連続して、「尹錫悦政権退陣総決起」を掲げた民衆大会・デモが六万人の結集で闘われている

▼3、二〇二四年、反帝闘争を闘おう
 現代帝国主義は、その経済、政治、軍事全般にわたる力をもって、全世界の覇権を護持することができなくなっている。その矛盾を労働者人民に押しつけ、階級支配においては新自由主義政策を徹底することでしか延命できなくなっている。ウクライナ侵略戦争、ガザ虐殺を停戦へと持ち込むことができず、現実の戦争を利用して戦争総動員体制を構築し、さらに強化することで人民を統制しようとしている。
 この破綻と混乱の帝国主義の支配を打ち破るのは労働者階級人民の闘いだけだ。
 搾取と収奪を強めて貧困化を強制するブルジョア階級に対して、団結した労働者階級の力を対峙する時だ。今こそ、労働組合が先頭に立って、階級的要求を掲げた労働運動を闘い抜くときだ。
 労働者階級人民が立ち上がって、眼前で進む侵略戦争、占領のための虐殺を、一刻も早く止めなくてはならない。プロレタリア国際主義に立脚し、自国帝国主義打倒の反戦闘争に立ち上がろう。
 われわれ共産主義者同盟(統一委員会)とともに、日本―世界の共産主義運動を切り拓いていこう。

   

 


Copyright (C) 2006-2007, Japan Communist League, All Rights Reserved.