共産主義者同盟(統一委員会)


1635号(2023年5月5日)







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狭山再審を実現しよう 5・23日比谷集会へ
                          



 二〇世紀前半の二つの世界大戦=帝国主義間戦争及び植民地・従属国への侵略を経て英国に代わり世界の覇権国家となった米帝国主義は、黒人・先住民・女性・性的少数者・障害者などに対する死の強要を含む差別に代表される己の残忍な本質とは真逆の「民主主義・人権・法治」を掲げながら国際的な反共同盟を作り上げてそれを「国際秩序」「国際社会」と名付けた。
 二〇〇七年に安倍が日本とインドで中国を挟み撃ちにする意図でぶち上げ、その一〇年後にトランプが自国の世界戦略として採択したインド太平洋戦略を、バイデン政権はまるごと継承した。米国の対中国政策の重点は〇八年にすでに協力から競争へ転換していた。二一年には「中国が二七年までに台湾を武力統一することを狙っている」とする根拠薄弱な主観的願望をインド太平洋軍司令官がぶち上げて基準化した。それを「根拠」に、「民主主義対権威主義」という構図を描き、「中国脅威論」のシナリオを用いた戦略を米国と同盟国の人民に強制している。この「台湾有事」論に基づいてAUKUS(米英豪)、クアッド(日米豪印)などの軍事的な同盟及び協力の枠組みを作り、中国に勝つためのアジア版NATO形成に猛進しつつ、日本・韓国・台湾に大量の兵器を売りつけて莫大な利益を得ているのだ。
 米国にとって、このアジア版NATOを作るためにはAUKUSとともに日米韓軍事同盟の形成が必須条件だが、それには日米韓軍事協力の強化が必要で、それを成すためには日韓関係の劇的改善が不可欠だった。こうした帝国主義によるアジア支配の継続策動という文脈において、韓国尹錫悦(ユン・ソギョル)(注:本紙では韓国現大統領の読みを「ユン・ソンニョル」としてきたが、韓国の運動圏は「ユン・ソギョル」と呼んでいること、また、韓国語をつかさどる国家機関である国立国語院の長も「ユン・ソギョル」が正しいと国会で答弁していることに鑑み、今後はそう呼ぶ)政権の三一節(サミルチョル)における「日本はパートナー」発言があり、日本の戦犯企業の謝罪と賠償を免除する三月六日の強制動員訴訟(元徴用工訴訟)の政府解決策の発表があった。韓国政府はまた、半導体材料の輸出規制の撤回を日本に求めて世界貿易機関に提訴した紛争手続きの中断も発表。その直後の現地時間深夜にバイデンと国務長官ブリンケンが支持を表明し、岸田も歓迎した。帝国主義者にとっては民衆の、それも他国の人権などどうでもよいのだ。これが連中の言う「価値観」なるものの無残な中身だ。二日後には尹錫悦が四月末に国賓として米国を訪問してバイデン米大統領と会談すると韓国政府が発表した。ワシントンがご褒美としてゴーサインを出したわけだ。そして迎えたのが日韓首脳会談だ。


●日本帝国主義の毒杯―日韓首脳会談

 三月一六日、来日した尹錫悦と岸田による五年ぶりの日韓首脳会談が行われた。両者は日韓の「関係正常化」で合意した。首脳同士の相互訪問の再開、安保対話の早期再開を確認し、韓国への半導体関連材料の輸出規制強化措置を解除すると日本政府が発表。岸田は強制動員訴訟問題に関する韓国政府の解決策を評価した。また、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の弾道ミサイル発射を非難し日米韓安保協力の強化を確認した。さらに、二〇一八年末から翌年初めにかけて海上自衛隊所属の哨戒機が韓国海軍艦艇に対して低空危険飛行を四回行った(日本側は「韓国軍が自衛隊哨戒機に向けて、火気使用に先立つレーザー照射を行った」と主張している)挑発事件が話題になったが、尹錫悦は「この問題は互いの信頼関係に問題があって発生した。今後信頼関係ができれば互いの主張を調和させていくことができる」と述べたとの報道もある。両国間の最大の軍事的な対立点について不問に付すということだ。さらに、韓国の報道によれば、首脳会談で日本軍性奴隷制と独島(トクト、日本名「竹島」)の問題についても話題になったというが、韓国政府は否定している。
 会談後の会見で岸田は、強制動員問題に関連して「一九九八年の日韓共同宣言」に言及し、歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継いでいると述べた。これは安倍談話も含んでおり、お詫びはこれ以上しない、という宣言だ。己の基盤が安倍・麻生派など右派強硬派だということをで追認している。上記の日韓共同宣言の読み上げ、すなわち、お詫びに関する箇所を日本の総理大臣が口にすることを韓国政府は会談直前まで求め続けたが、岸田がこれを拒否して言及にとどめた。同じく会見で尹錫悦は、強制動員問題について、代わりに賠償を支払う韓国の財団が賠償金相当額の返還を将来日本企業に求める「求償権」の行使は「想定していない」と述べた。二〇一八年の韓国最高裁の判決を元検事総長の現大統領が否定し、戦犯企業である日本製鉄と三菱重工の犯罪責任を問わない、免罪してやるというのだ。
 翌一七日の前首相菅義偉らとの会談で尹錫悦は、福島原発汚染水放出問題について「科学的な分析が必要だ」と述べて反対を表明せず、実質容認した。会談の五日後には、四年前に文在寅(ムン・ジェイン)前政権が破棄を通告した日韓軍事情報包括保護協定に関して通告を撤回したと韓国政府が発表した。同協定は、共和国のミサイルなどの発射情報を数時間後に韓国が日本へ伝えるためのものだが、実際は一年前の現政権発足後に復旧しており、その追認に過ぎない。
 韓国では会談直後に被害当事者、運動圏、野党勢力が共同で弾劾闘争に立ち上がった。強制動員訴訟の原告一五人のうち、被害当事者三人全員を含む一二人が韓国政府の解決案に反対し、世論調査でも約六割が反対だ(ただし原告に対する政府の切り崩し工作がすさまじく行われ、遺族の原告の一部に対して「成功」している)。当然だ。韓国の労働者民衆は、他の案件も含めて日韓首脳会談総体を「屈辱外交」と批判し、怨嗟の声が各地で沸き起こっている。被害当事者の意思を踏みにじる案が解決に至るわけがない。私たち日本の労働者階級人民も、「解決」案に反対し、日本政府と戦犯企業が被害当事者に謝罪し賠償することを求めて声を出し、起ち上がって行こう。
 今回の日韓首脳会談は何を示したか? それはまず、先述した米帝の思惑通りに事が進んだということだ。次に、日本にとっては棚からボタ餅だった。つまり、日本の支配階級とその政治委員会にとっては嫌韓を基調とする現状で何も問題ないのだが、向こうの方から一方的にすり寄ってきて日韓間の懸案事項について日本側の主張を事実上すべて呑むと言ってきたので「苦しゅうない」と見下した態度で応じた。最後に、韓国にとっては、政権と与党「国民の力」(厳密に言えばその主流派)=ブルジョア右派の本質である反共主義と植民地根性(米国の宗主国性および自国の従属性の承認。その意味で今回の韓国の構えは日本のそれの鏡と言える)が「価値外交」のスローガンのもとで全面展開するとどうなるかを赤裸々に示す結果となった。


●帝国主義戦争会談のG7広島サミット粉砕

 多くの軍事専門家が指摘しているように、ウクライナ戦争はロシア対NATOの戦争へとその基本的性格を完全に変えて久しい。米帝にとってこの戦争は、自分に敵対または対抗する国であるロシアの国力を低下させる戦争であり、バイデンが心配しているのは米国人が死んだり怪我したりすることで、他国の人民の生命や生活や人権や民主主義や法治がどうなっているかは本質的にどうでもいいのだ。
 五月中旬の広島サミットは、G7=帝国主義諸国が米国の主導の下に全世界レベルで戦争について相談して方針を決める会議だ。その目的は、第一に、ウクライナ戦争でのウクライナ軍事支援を強化すること、つまり、ウクライナ戦争への更なる関与を米帝が加盟国及び招待国に要請して受け入れさせることだ。
 第二に、「台湾有事」論に基づく中国との軍事衝突の可能性を見据えてのアジア版NATO結成に向けた意思統一を、招待国を含めて行うことだ。
 帝国主義者どもの狙いは招待国――韓国・ブラジル・オーストラリア・ベトナム・インドネシア、そしてオンライン参加予定のウクライナ――を見れば明らかだ。第一に、オーストラリアは、インドがロシアとの関係を維持・強化しているために中国との競争における核心国としての位置が浮上している。米帝にとってアジア版NATOの基軸が日豪だ。第二に、昨年一一月に日米に同調してインド太平洋戦略を打ち出した韓国は、同国政府が来年四月の総選挙をにらんで支持率上昇のために望んだ「三月日韓首脳会談、四月米国国賓訪問、五月広島サミット参加」という外交方針という性格が極めて濃い。対ロシア制裁に参加していないベトナムとインドネシアは、地政学的に中国包囲網形成の不可欠の環であるため指名された。ブラジルは、最近政権交代があって就任したルラ労働党政権が前の極右政権とは真逆に中国との友好関係を重視しているのに加え、米帝が己の「庭」と考えている中南米の政治経済的な基軸国でもあるので巻き返し対象になっている。
 しかし、帝国主義諸国による対ロシア制裁に同調する国・地域は世界全体では極めて限られた少数派に過ぎない。ブルジョア新聞が報道する国連の対ロシア制裁決議に賛成する国は多いが、石油をはじめとする原材料などの貿易に関してはロシアとの関係を維持する国・地域が圧倒的多数だ。インド太平洋戦略からインドが実質的に外れて久しく(「インドのない「インド太平洋戦略」は「実質破綻している」(ワン・ソンテク)「あんのないアンパンだ」(キム・ジョンデ))、決定的には広島サミットの招待国名簿にその名がない。
 また、習近平が三期目の国と党の代表に確定した中国はアジアのみならず欧州・中東・アフリカ・中南米と全世界的に外交攻勢を強めている。今年に入ってG7加盟国の英仏独を中国に招いて首脳会談を開き、南アメリカとブラジルとの友好関係をさらに強め、イスラエルに加え、米国との関係が冷却している中東諸国とも極めて良好だ。ロシアで中露首脳会談を開いた一方で、最近ではゼレンスキーがウクライナ戦争への中国への関与に期待を表明した。決定的なのは今年三月にイランとサウジアラビアの外交修復を仲介したことだ。北京は、まるで覇権国のような、米国に取って代わらんばかりの勢いで国際政治地図の塗り替えを次々に行っている。
 ロシアに対する戦争と中国に対する戦争準備の態勢を地球規模で強めることを目的とする帝国主義者の強盗会談を、日本の労働者階級人民は総決起して打ち砕かなければならない。G7広島サミット粉砕闘争を広島現地及び各地での全人民的な反帝闘争として闘おう。G7広島サミット反対現地デモ実行委員会が呼び掛ける直接抗議行動を闘い抜こう。また、反帝国際共同闘争としてやり抜こう。プロレタリア国際主義の旗の下でアジア―全世界の人民の連帯の力を結集して、帝国主義の侵略反革命戦争を阻止するのだ。さらに、被爆者解放闘争への連帯として立ち上がろう。核保有国と、その核兵器の傘の下で同盟関係を結ぶ諸国が、ヒロシマで核兵器容認―「核共有」論の会議を行なうことなど絶対に許されない。この闘いを通して、反帝・反資本主義の左派の総決起を実現しよう。


●沖縄解放闘争に起ち上ろう

 五月一五日の沖縄現地闘争を広島サミット粉砕闘争と一体のものとして取り組もう。沖縄解放―安保粉砕―日帝打倒・米帝放逐の革命的路線に基づいて沖縄―「本土」を貫く沖縄解放闘争に起ち、岸田政権の侵略反革命戦争策動を打ち破るのだ。第二の沖縄戦を許すな。沖縄・琉球弧の島々での軍事要塞化・ミサイル基地化阻止の闘いを強化しよう。辺野古新基地建設を阻止しよう。
 共に闘おう。


   

 


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