共産主義者同盟(統一委員会)


1609号(2022年3月5日)






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     ウクライナを戦場にするな 今こそ労働者が反戦闘争に

 
 22春闘
 階級的労働運動の再建をかけて
 貧困、格差、差別をなくす闘いを
  
                          中央労働運動指導委員会

 資本主義の危機が深化している。新型コロナ危機発生以来の二年間で六波にわたる感染拡大は矛盾を極端に推し進める方向に作用した。そして、それは今もなお収まりそうにない。国内的にも国際的にも分断は深まり、世界は階級闘争の激化を伴いながら、米中対立やウクライナ危機という形で戦争の危険を増大させている。このような情勢の下でわれわれは今春闘を迎えることとなった。

●1章 ウクライナ侵攻やめろ

 ウクライナに対する戦争危機が高まっている。ロシア軍は自国のウクライナ国境付近、並びにウクライナと北側で国境を接するベラルーシ領内で大規模な軍事演習を実施した。米帝はこの動きを激しく非難、米軍をウクライナの西側に位置するポーランドとルーマニアに派遣した。二月二〇日、ロシアとベラルーシの軍事演習が終了しても、ロシア軍はベラルーシから撤収しなかった。二一日には、ロシア大統領プーチンは、親ロシア勢力が名乗っていた「ドネツク人民共和国」「ルガンスク人民共和国」の独立を一方的に承認する大統領令に署名。さらに「平和維持」目的でロシア軍を進駐させると表明した。帝国主義各国は、これを非難し、制裁発動に進もうとしている。
 ブルジョアマスコミはこの危機においてロシアの「悪魔化」(それはわれわれにとって朝鮮民主主義人民共和国、中国、韓国などを対象として、残念ながら見慣れたものであるが)を推進しているが、米帝の側が戦争を煽っている事実は見ようとしていない。冷戦終結、ソ連崩壊以降のNATOの東方拡大、ウクライナクーデターへの介入、支持、ウクライナへの巨額の軍事援助(総額三〇億ドル、90%は米帝)などである。ウクライナをめぐって行われているのは「ロシアの一方的侵略」ではなく、米帝、欧州諸国帝とロシアとの百年一日の争闘戦である。
 ウクライナの未来を決定するのは、ロシアの利害でも、帝国主義の利害でもない。ウクライナ人民の自己決定権が徹底的に尊重されなくてはならない。プロレタリアートは帝国主義者、覇権主義者の戦争策動に断固反対しなければならない。

●2章 新型コロナ第六波

 一方、国内に目を転じれば、われわれは新型コロナ第六波の渦中にいる。一月九日、明らかに米軍基地がらみの沖縄「県」、山口県、広島県で開始されたまん延防止等重点措置は、二月一二日には三六都道府県にまで拡大(二月一八日時点)した。二〇日期限を迎える一部の県では解除が検討されているようだが、全体に感染状況は下げ止まっており、収まる気配がない。現在、感染の主軸となっているオミクロン株は重症化リスクについては過去のデルタ株より低いといわれているものの、桁違いの感染力で感染者数(二月三日には一日の最大感染者数が一〇万四三四五人に達しており、累計四一六万人が感染している)は過去最大を更新している。重症者数は昨夏のデルタ株の方が多いが、これにはからくりがある。途中でエクモ等の医療機器が必要とされるレベルまで定義が変更されたため、見かけの数字が小さくなっているだけだ。それでも重症者は増え続け一四六九人(二月一六日)となっている。再び医療崩壊が起こっている。治療どころか検査体制も追いつかず、検査なしでの診断や自宅療養までせざるを得なくなっている。それどころか、各自治体でのデータ処理も追いつかず、正確な感染者数等もあやふやになってきた。

●3章 ペテン師岸田

 こうした中、岸田内閣のほころびが目立ってきた。岸田は昨年からワクチンの三回目接種の拡大を喧伝してきたが、ここにきて大声で言うほどそれが進んでいないことが分かってきた。ワクチン接種は人々の関心も高く、話題になったが岸田の「口先だけ」はこれにとどまらない。総裁選時の富裕層や大企業への増税と貧困層への分配は首相になったとたんに封印したし、介護、看護、保育の報酬アップも怪しげな状況だ。介護では「一人月額九〇〇〇円」の賃上げがぶち上げられた。
 昨年時点で多くの介護労働者、事業者から「九〇〇〇円では一桁足りない(注1)」という声が上がったが、ここにきてどうもその九〇〇〇円も怪しくなってきた。「一人月額九〇〇〇円」というと、労働者一人一人の給与が九〇〇〇円増える印象があるが、実際の支給は違う。この補助金は、これまでの加算と同様にサービスメニューごとに加算率をかけて計算されるので、実は労働者の賃金には直接反映されるわけではない。一人九〇〇〇円というのも、あくまで正規職員が基準でパートタイムは勤務時間見合いで減額される。その上、事務職員や給食調理員、ケアマネージャーなど直接介護をしない職種は対象ではない。さらに、過去の加算に対応できなかった事業所は対象から外されるといった形で、貴重な真水(九〇〇〇円)は細分化され、介護労働者の手元に届くときには下手すると一桁どころか二桁足りないなんてことにもなりかねないのだ。そのうえ、この補助金の支給は六月(事業所の手元に届くのは七月)。二月から半年ちかく零細な介護事業所が自腹で賃金改善をしなければならない。いったい、どの程度の事業所が対応できるだろうか。
 一事が万事この調子の岸田である。安倍は反動、菅は陰険だったが、岸田はペテン師だ。

●4章 22春闘の闘い

 22春闘をめぐっては、まず最初に連合の階級への裏切りが極まっていることを指摘しなければならない。連合の勢力は結成以前からの右派労戦統一運動ではあるし、この三〇年、日本の労働運動の解体状況をもたらした責任は重い。だがそれにしてもここ数年の、特に昨年後半からの振る舞いはひどすぎる。総選挙総括をめぐっての芳野会長の反共発言、トヨタ労組の組織候補取り下げ(事実上の自民への乗り換え)、新年賀詞交歓会への岸田の招へい、ついに二月一七日には立憲民主党、国民民主党への支援を行わず(注2)、今夏の参院議員選挙は「候補者本位」で取り組むと決定した。春闘は目標も示さなければ、結果の共有もしない、一律ベースアップは目指さないと完全に形骸化。ただただ、財界におこぼれをお願いするだけである。われわれは連合の階級敵対を乗り越えて進まなければならない。
 我々の労働戦線は産別(業種別)労働組合を経糸とし、地域一般労働組合(合同労組運動、ユニオン運動など)を緯糸として、階級的労働運動の再建を目指すとしている。この立場から22春闘の闘いを提起する。

▼4章―① 非正規労働者の賃上げ、均等待遇をめざそう

 非正規労働者の均等待遇を目指す闘いでは、二〇二〇年の三つの労働契約法二〇条裁判判決(注3)を画期として、ここで郵政ユニオンが勝ち取った諸手当の差別是正は各地で闘いが進められている。一方で、組合側が裁判に勝った日本郵便では、あろうことか差別解消のために正社員の待遇を非正規側に引きずり落とすという労働条件の変更案がまとめられており、許しがたいことに連合加盟のJP労組はこれを容認している。郵政ユニオンは真の均等待遇実現を目指して闘っている。
 また、均等待遇を目指す闘いは第二ラウンドが始まった。全国一般全国協宮城合同労働組合の株式会社キステム(注4)との闘いである。当該はただ、期間の定めのある契約というだけで正社員と全く同じ仕事を六割の賃金(一時金含む)で働いてきた。これは二年前の裁判で認められなかった賃金・一時金差別の本丸に挑む闘いである。全国の連帯で支援していこう。

▼4章―② 全国一律最低賃金一五〇〇円

 コンビニの商品の価格は全国一律。でも、コンビニ労働者の賃金は最賃張り付きで全国バラバラ。低賃金は労働者の長時間労働を招いている。誰でも、一日八時間働けば暮らしていける社会を目指して、最賃闘争が闘われている。ナショナルセンターの枠を超えた闘いの呼びかけに応え、「全国一律時給一五〇〇円」目指し、キャンペーンや審議会への署名、意見書に取り組もう。

▼4章―③ ペテン的月額九〇〇〇円乗り越え、介護産業の危機を乗り越えよう

 介護産業の危機は深刻である。ホームヘルプサービスの有効求人倍率は一五倍を前後し、保険とサービスメニューはあっても、実際のサービス提供者がいない。介護保険は保険料と自己負担割合は増える、提供されるサービスは減るという形で、お金ばかりが出ていくが、介護は保障されない。保険栄えて、介護滅ぶというのが現状だ。二月六日大阪から全国にオンラインで呼びかけて「介護労働者怒りの集会」(本号報告記事あり)が行われた。追跡報道がほとんどないこともあり、岸田のペテンは介護労働者に広く知られているわけではない。これを暴露し、①全産業平均並み、②全職種、③全額国庫負担の介護労働者待遇改善を目指し、介護労働者の業種別組織化を進めよう。

▼4章―④ あらゆる人に労働法適用を

 会計年度任用職員含む公務労働者は団体行動権(スト権)を奪われている。また、近年拡大しているフリーランスやギグワーカーといわれるウーバーイーツの労働者は法律上「個人事業主」とされ、全く労働法の庇護を受けられない。公務員のスト権の問題はILOから複数回の改善勧告を受けており、欧州ではギグワーカーの労働者性を認める決定が相次いでいる。こうした人たちの権利獲得のために闘おう。

▼4章―⑤ 外国人技能実習生とともに闘おう

 各地の地域合同、ユニオンに外国人技能実習生からの相談が絶えない。経営や日本人同僚からの暴力、パワハラ、セクハラなど実習生を人間として扱わない状況が蔓延している。大阪の介護・医療事業では新型コロナウィルス感染した実習生を狭い寮に閉じ込めて「自宅療養」とするなどの事案も起きている。この事案では、組合の仲間が呼びかけて全国の介護労働者からの支援物資が届けられた。
 技能実習制度との闘いは、滞在期間がさらに延長される在留資格「特定技能」の制定により、新しい局面を迎えた。日本滞在の安定性が増したことで外国人労働者自身が先頭に立つ「技能実習ユニオン」の可能性が開けてきたのだ。今、先進的に技能実習制度との闘いを進めてきた労働組合を中心にこの組織化が進められている。階級的労働運動再建に外国籍労働者とともに闘うことは不可欠だ。

▼4章―⑥ 労働運動弾圧粉砕

 五年目を迎えた全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部への弾圧は複数の事件で重要な無罪判決を勝ち取っている。一二月一三日の京都事件大阪高裁判決では、要求や団体交渉や会社の監視活動などまっとうな労働組合ならやって当然のことすべてについて1審を破棄し無罪を言い渡した。また、白バス弾圧についても国家賠償を認め、排外主義右翼・瀬戸弘幸に対する賠償とネット記事の削除も認められた。関生弾圧以外にも昨年末相次いで、全国一般ユニオン北九州に対する不退去罪弾圧も起訴猶予を勝ち取り、長きにわたって拘束されていたサンケン弾圧の尾沢さんを奪還した。司法の反動化は極まっており、この勝利は裁判外での闘いの高まりによって勝ち取られたといえる。
 この春、関生弾圧は京都事件(注5)の審理が始まり、輸送スト(注6)をめぐる大阪第二事件高裁判決(二月二一日)、和歌山事件(注7)地裁判決(三月一〇日)と重要判決が続く。すべての弾圧粉砕まで闘おう。

▼4章―⑦ 改憲阻止、労働者反戦闘争を闘おう

 岸田は首相就任以来、改憲実現を公言してはばからない。昨年総選挙より改憲勢力は既に改憲発議に必要な両院三分の二以上の議席を確保しており、今年は改憲阻止の正念場となる。
 沖縄は今年反革命的統合から五〇年を迎える。民意を無視した辺野古新基地建設強行、琉球弧の軍事要塞化などが強まっている。沖縄をはじめとする琉球弧を戦場とすることを拒否しようと「ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会」が結成された。「本土」の労働者には沖縄を日米の差別軍事支配のままにして五〇年間を過ごさせてしまった責任が問われる。沖縄人民と共に闘おう。新型コロナウイルスの感染状況により、流動的な部分もあるが、5・15闘争への決起を準備しよう。
 ウクライナで、もわれわれのくらす東アジアでも、資本主義のゆきづまりの中で、帝国主義と覇権主義は矛盾を戦争準備という形でプロレタリアート人民に押し付けようとしている。やつらの戦争は断固拒否だ。労働者反戦闘争を組織しよう。

●5章 階級的労働運動再建の道

 日本の労働運動は戦前からの弱点を抱えたまま、右派的労戦統一以来の三〇年、後退を続けてきた。闘う労働運動はその中でも少数派である。その中でわれわれの労働戦線同志が担っている任務は多い。しかし、階級的労働運動再建の道はこの苦闘の中にしかない。確信を持って闘おう。

(注1)全産業平均との差額は月額八・五~一〇万円。
(注2)もちろん、第二保守党に過ぎない両民主党を支援したからと言って、連合がプロレタリアート側にいるかどうかは怪しいところだが、今回はそれすらかなぐり捨てて、自らの立場をブルジョアジーにさらに一致させた点が画期である。
(注3)大阪医科大学、メトロコマース、日本郵便。手当は広範に差別是正を認めた反面、賃金、一時金は差別を容認するという判決になった。なお、労契法は現在、パートタイム・有期雇用労働法に変わっており、二〇条にあたる規定は八条、九条、一四条に移っている。
(注4)NTTの工事警備を請け負う関連会社。
(注5)前委員長と現委員長が被告。本文中で報告した京都事件の「共謀」が容疑である。
(注6)二〇一七年。大阪広域生コンクリート協同組合が労使共同の取り組みで実現した生コン販売価格の値上げ実現で大きな利益を上げたにもかかわらず、組合との約束であった輸送運賃の値上げに応じなかったため実施。輸送運賃が上がらないと、生コン運転手の賃上げ原資が手に入らない。
(注7)和歌山での関生支部の活動に対し、経営が暴力団員を使って組合事務所を監視、嫌がらせ。組合がこれに抗議し、謝罪を求めたことが逆に強要、脅迫容疑にされたという逆立ちした事件。





   

 


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