1579号(2020年10月20日) |
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「学問の自由」の統制を許すな! 独裁的強権を振るう菅政権打倒 『戦旗』読者の皆さん、同志、友人の皆さん。私たちは今夏、七年八カ月にわたる安倍晋三の執政を終わらせました。春先から始まった新型コロナウイルスの世界的流行=感染の拡大を前に、安倍政権は人民の暮らしと命を守ることができない、無策無能ぶりをさらけ出しました。いくら改憲を呼号し、いくら史上最高額の軍事予算を計上し、いくらアメリカ帝国主義との軍事的一体化、蜜月ぶりを誇示したところで、人民の暮らしと命を守り、安心を与えなどしないことが明らかになってしまいました。支持率が低迷し、政治的展望を失った安倍の打倒は、全く当然のことです。 しかし一方で、私たちは安倍と自公連立政権にとどめを刺すまでには至らず、延命を許してしまいました。安倍は辞任の理由をあくまでも自身の持病の悪化のせいであると強弁し、政治責任を認めることなく逃げ切ってしまいました。安倍を強く支持して来た右派は、健康回復後の安倍の「再々登板」すら、期しています。冗談ではありません。 私たちは、恥知らずにも「安倍政権の継承」をうたう菅義偉の新政権など、認めることは出来ません。「いち議員として菅政権を支え」るなどとうそぶく安倍晋三を許すことは出来ません。安倍には、森友学園、加計学園、「桜を見る会」問題などで露呈した恣意的な利益誘導、買収の政治的な、そして刑法上の責任を、取らせ切らなくてはなりません。官房長官として、「問題なし」とし、情報の隠蔽をまさに最先頭でやって来た菅義偉に、首相として居座ることを許してはなりません。安倍を退場させた人民の力で、菅も同様に追い込んでやろうではありませんか。 ●1章 反人民的で危険な菅政権 九月一六日に政権を発足させた前官房長官義偉は、就任会見で「新型ウイルス、感染症の拡大と戦後最大の経済の落ち込み」という現状を「国難」であるとし、「この危機を乗り越えていくため安倍政権の取り組みをしっかり継承して行く」と表明しました。 確かに、菅政権は第一に、何よりも安倍と自民党中枢を守るべく発足した体制ではありましょう。安倍は政権末期、モリカケ、桜の腐敗疑惑に加え、河井案里陣営の大規模買収のため使われた巨額の資金は、自民党の総裁たる安倍と幹事長二階の決裁によって支出されたという疑惑が、安倍だけではなく自民党の中枢を直撃しかねない中で、進退極まって政権を投げ出さざるを得ませんでした。 自民党総裁選に立候補した菅以外の候補は、そもそも河井と同士討ちで落選の憂き目を見た溝手陣営側であった岸田文雄と、一貫して安倍に批判的だった石破茂でしたので、安倍や二階を防衛するためには、番頭格だった菅が総裁になる以外の選択肢がなかったのです。その意味で菅政権は間違いなく安倍政権を「継承」しており、発足の時点でその手は、真っ黒に汚れているとみなさなくてはなりません。 しかし第二に特記すべきことに、菅は就任会見で改憲について一言も言及しませんでした。そして「この内閣は、既得権益を打破し、規制を改革する、国民のために働く内閣であります」と発言しました。これは、菅が改憲よりも、アベノミクスでいうところの「第三の矢」=成長戦略=「構造改革」に注力するのだという意志表明です。つまり単純に安倍政権の継承とばかりは言い難い、菅の独自性がここにあります。 安倍は、明文改憲をこそ自身の悲願とし、常にその実現を追求していました。第二次政権で突如言い出した「アベノミクス」は、経済政策というよりは、改憲のための高支持率を手っ取り早く調達するためのツールに過ぎず、だからこそ安倍は「それこそが本丸なのに」とブルジョアジーからすら批判されながらも、「第三の矢」にはまともに着手しませんでした。もしそれをやれば、没落を余儀なくされる層が圧倒的となり、政権への支持、ひいては改憲への支持が揺らぎかねないので、改憲を目指す安倍には出来なかったのです。 菅は自民党総裁として改憲を企図しながら、安倍のように改憲の期限を明示して、自らの手をしばるようなことはしません。もっと狡猾です。新自由主義むき出しの社会体制の「改革」を、改憲を考慮に入れることなく遠慮なくやる、という姿勢を見せています。性急な改憲を口にしないから安倍よりもマシ、などということは決してなく、「国民のため」と言いながら生活破壊と格差の拡大をもいとわない、危険な政権だということです。 菅は「われわれが目指す社会像は『自助、共助、公助そして絆』です」と順位づけをしてみせました。自助努力と、家族など手近な助け合いを経てからでないと、国は助けない、という冷酷な宣言です。二〇一〇年に作られた自民党の現綱領ですら、こうまで明確な順位づけをしてはいません。自助を基本としつつも、共助、公助はそれと並存するものとしてうたわれていますし、当時の総裁谷垣もそのように「解説」しています。菅はそれをよりむき出しに新自由主義的に読み替えて、人民に強制しようというのです。絶対に許してはなりません! ●2章 強権を発動する菅を許すな まだ臨時国会さえ召集されていないというのに、菅政権は矢継ぎ早な攻撃をしかけて来ています。 九月二六日、菅はビデオ収録の形で国連総会での演説を行いました。この中で菅は、中華人民共和国の伸張を念頭に、「法の支配への挑戦を許してはならない」「自由で開かれたインド太平洋を推進していく」と表明しました。日米軍事同盟を基軸とした、インド太平洋地域での侵略反革命戦争に乗り出せる体制づくりを、前政権と同様目指していくとの宣言です。新型コロナ対策での国際協力を口実に、アジアのみならずアフリカ地域にも積極的に踏み入って行くことも表明しました。 一〇月一日には、前代未聞の事態が発覚しました。三年おきに半数が入れ替わる日本学術会議の会員の推薦名簿から、菅が六人を任命しなかったことが明らかになりました。同会議はアカデミシャンの立場から政策提言を行うため一九四九年に発足した首相所轄の政府機関で、日本学術会議法で政府からの独立がうたわれています(同法第三条)。現行制度になってから、会議側が推薦した会員を首相が任命しなかった例はありません。そもそも一九八三年の国会で、「首相による会員の任命はあくまで形式的なものである」(会員が選挙を経ずに特別職の国会公務員となるため)という政府答弁がなされています。 官房長官加藤は記者会見で「監督権を行使した」とだけ述べ、ではどういう理由で任命を拒んだのかについては明らかにしませんでした。日本学術会議はこのかん、大学における軍事研究推進への批判的提言を繰り返しており、政府との軋轢は高まっていました。そして今回任命を拒否された六人はいずれも、かつて秘密保護法や安保関連法、共謀罪法への批判を公にしていた大学教員です。政府の政策に批判的な学者を、学術会議のメンバーに加えない、ということは、政府への批判的な提言を許さない、ということに他なりません。 もともと総裁選の過程で菅は、「政府の方針に反対する官僚は移動させる」と言い放ち、目的達成のためには強権発動をいとわない姿勢を誇示していました。二〇一四年の内閣人事局発足以降、官房長官として人事を握り、官僚を統制し続けて来た菅にあらためてこう宣言されては、官僚たちは震え上がるしかありませんが、同様の手法を本来独立した機関であるはずの日本学術会議に対しても行使し、憲法二三条にうたわれている「学問の自由」すら、突き崩そうとしているのです。実質改憲を徹底的に進めようとする菅の悪らつな意志が貫かれています。 菅政権の反人民性と危険性はすでにして明らかです。九月段階で、コロナ禍による失業、雇い止めは、公式に明らかになっている分だけで全国で六万人を超えています。来年の新卒採用を縮小するか行わない企業が続出しています。自殺者の数も、急激に増えています。 「ふるさと納税」を自らが発案したことを誇る菅は、富裕層が得をするだけのこの制度をごり押しし、自治体を返礼品競争、寄付金獲得競争へと駆り立てて来ました。七月から開始された「GoToキャンペーン」も、新型コロナウイルスの感染対策を取ることの出来る、大規模な資本と富裕層のみが得をするばかりで、競争力のない旅館や飲食業者、利用する暇もない貧困層には何のメリットもありません。 今年四月の段階で、自民党内ではコロナ禍の渦中でもちこたえられない中小企業は「潰す」ということがすでに言われていました。菅の経済ブレーンの一人である小西美術工藝社社長のデービット・アトキンソンは、中小企業の淘汰と再編を唱えてきた人物です。菅が、コロナ禍を利用してこれを進めようとしていることは明らかでしょう。菅の推し進める「新型コロナ対策」とは、自力で生き残れない者は死ね、退場せよ、というものでしかないのです。 菅に殺される前に、立ち上がりましょう! ●3章 「先制攻撃」論弾劾! 反戦・反基地の闘いを 防衛省は九月三〇日、二〇二一年度の概算要求で過去最大の五兆四八九八億円を計上しました。宇宙やサイバー攻撃、電子戦などに対応するという「宇宙作戦群」「サイバー防衛隊」「電子作戦群」などを新設するのだと言います。人民の反対で粉砕されたイージス・アショアの「代替」についても、金額を示さない「事項要求」がなされています。 地元の反対運動を避けるためだけに、イージス・アショア代替案を、防衛省は様々に構想しているようですが、石油採掘のリグのような洋上施設に配備する案などは、アメリカ側から「揺れる洋上に配備することを想定して設計されておらず、適切ではない」とたしなめられる始末で、迷走を余儀なくされています。 自民党内部からは、ミサイルを発射される前に攻撃し破壊しようと「敵基地攻撃能力の保有」が公然と唱えられ始めました。いうまでもなくこれは「先制攻撃」そのものなのであって、明確な国際法違反です。また、現代のミサイルは、多くが自由に移動出来る発射台から発射されるので、発射のせいぜい一五分前にしか停止しておらず、そうしたものを標的として特定し破壊するということは不可能です。ただ周辺国への敵意と排外主義を強めるためだけに唱えられる「敵基地攻撃能力保有」=「先制攻撃」論など決して許さず、日本帝国主義の軍事大国化に反対しましょう。 アジア共同行動日本連絡会議と、岩国・労働者反戦交流集会実行委員会は、二〇二〇岩国行動の開催を打ち出し、すでにその準備に入っています。コロナ禍と弾圧を敢然とかいくぐって、闘う岩国市民との合流を果たそうではありませんか。沖縄はじめ、全国の反戦・反基地の闘いを結合させ、アジアから米軍の総撤収を実現させましょう。 菅政権下にあっても、私たちの任務は変わらず鮮明です。ともに闘いましょう! |
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