共産主義者同盟(統一委員会)


1468号(2015年10月5日) 政治主張






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 安倍政権は九月十九日未明、参議院本会議において戦争法案を強行採決し成立させた。われわれは、満身の怒りをもってこれを弾劾し、安倍政権の打倒にむけて総決起していくことを呼びかける。

 ●第一章 安倍政権の戦争法案強行採決弾劾

 安倍政権は、九月十九日からの連休までに採決を行えなければ廃案になる可能性が高まるというぎりぎりの状況で、これまでの国会におけるルールを踏みにじって強行採決に突き進んだ。安倍は十六日の地方公聴会の終了後、ただちに参議院の安保法制特別委員会を開催し、委員会採決を強行しようとした。しかし、国会を数万の労働者人民が包囲し、野党が激しく抵抗するなかで十六日中の特別委員会の開催を断念せざるをえなかった。そして、十七日に開催された特別委員会において、むちゃくちゃなやり方で強行採決を行った。地方公聴会の報告や総括質疑すら行わず、特別委員会の委員長が何を発言しているのかまったくわからない大混乱のなかで、自民党・公明党は採択されたと強弁したのである。そして、ただちに参議院本会議における採決を強行しようとした。これを阻止するために野党は、鴻池特別委員会委員長、中谷防衛大臣、安倍内閣の問責決議案などを参議院に提出し、衆議院に安倍内閣の不信任決議案を提出して抵抗した。これに対して自民党・公明党は、これらの決議案をめぐる討論での発言時間を一人十分に制限する動議を提出し、議論を封殺した。さらには、野党の牛歩戦術を封じ込めるために、投票時間を一人二分にまで制限した。こうした安倍政権による強行採決はまったく無効であり、断じて認めることはできない。
 追い詰められていたのは安倍政権だった。採決直前の『朝日新聞』の世論調査(九月十二日・十三日)では、「新安保法案」に賛成が29%、反対が54%で、今国会で成立させる必要があるが20%、成立させる必要はないが68%にのぼっていた。国会での審議が進むにつれて反対の声が広がり、今国会での成立には圧倒的多数の人々が反対していたのだ。アメリカに対して今年夏までに戦争法案を成立させると約束していた安倍政権にとって、この法案が廃案になることは政権の崩壊へと直結する。だからこそ、安倍政権は国会内多数派であることを唯一の条件として強行採決に突き進んだのである。
 戦争法案の成立は、まさに戦後の日本の歴史的転換、新たな戦前の開始にほかならない。戦後の日本は、かつてのアジア侵略戦争と植民地支配への反省のなかから出発した。憲法の平和主義・主権在民・立憲主義という原則は、歴代の自民党政権によって骨抜きにされ、侵害されてはきたが、それでも戦後政治の規範とされてきた。いま安倍政権は、戦争法案の成立を強行したことによって、これらを根底から破壊しようとしているのだ。
 それは第一に、海外での自衛隊の武力行使を可能とし、戦争をする国へと日本を根本的に転換させることにある。戦争法案は、これまでの政権が憲法違反だとしてきた集団的自衛権の行使を初めて法制化するものである。戦後の安保政策の枠組みとされてきた「専守防衛」を捨て去り、自衛隊を地球のどこにでも派兵し、武力行使することを可能とするものである。安倍政権は、自衛のための最小限度の武力の行使であれば個別的自衛権の行使だけではなく集団的自衛権の行使も許されるなどという詭弁を用いて、集団的自衛権の行使を正当化しようとした。しかし、そもそも集団的自衛権の行使は日本の防衛とは関係のないもので、このような説明は国会審議の過程でまったく破綻してしまった。そして、戦争法案がアメリカの戦争に世界のどこででも参戦し、ますます拡大する日本の海外権益を防衛するための武力行使を目的とするものであることが明らかになっていった。まさに違憲の法案であり、衆議院の憲法調査会で、自民党推薦の憲法学者をも含めて戦争法案を憲法違反だと明言したことは当然であった。
 第二には、戦争法案が立憲主義を破壊するものだということにある。日本国憲法を含む近代憲法は、主権者である人民が国家権力を縛る権力制限規範である。立憲主義とは、国家権力は万能ではなく、憲法の範囲でのみ権力の行使を許されているというものなのだ。しかし、安倍政権は閣議決定によって憲法解釈を勝手に変更した。ときの政権が、自らを縛る憲法の解釈を都合がいいように変更できるのであれば、それは立憲主義の破壊にほかならない。中谷防衛大臣は国会審議のなかで、「現在の憲法をいかに法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえて、閣議決定を行った」(六月五日)と述べた。また、礒崎首相補佐官は七月二十五日、「考えないといけないのは、我が国を守るために必要な措置かどうかで、法的安定性は関係ない。我が国を守るために必要なことを、日本国憲法がダメだと言うことはありえない」と言い放った。安倍政権は憲法による縛りをとことん邪魔だと考えており、まさに確信犯として立憲主義を破壊しようとしてきたのだ。
 第三には、主権在民を根幹とする民主主義の破壊である。主権在民とは、単に人民が選挙での投票権を持つということではない。それは主権者である人民が憲法によって国家権力の行使を制限する立憲主義に具体化されるとともに、主権者である人民が日本の将来にかかわる選択について自ら決定する権利を持つということである。いかに国会における多数派であったとしても、白紙委任をされているわけではなく、民意に背く政治を行うことは許されない。そして、権力が民意に背く政治を行うならば、人民は自らその権力を打倒し、新しい権力を樹立する権利を有していること、アメリカ独立宣言やフランス人権宣言に明記されているように、主権在民を根幹とする民主主義とはそのような人民の抵抗権、革命権をも内包したものなのだ。安倍政権は、圧倒的多数の人民が戦争法案に反対していることを承知したうえで、国会内の多数派であることを唯一の条件として強行採決を行った。それは民主主義を破壊し、単なる「議会における多数決主義」に解体するものである。この安倍政権による民主主義の破壊は、圧倒的多数の沖縄人民が辺野古新基地建設に反対してきたにもかかわらず、強権をもって沖縄人民の自己決定権を抑圧し、辺野古新基地建設を推進しようとしていることと同じ事態である。このような安倍政権は、人民の抵抗権、革命権の行使として打倒されねばならない。

 ●第二章 戦争法案に反対する全人民政治闘争

 このような戦争法案の廃案を要求し、安倍政権の打倒をめざす全人民政治闘争が五月の戦争法案の国会上程から九月にかけて全国で組織された。最大規模の結集となった八月三十日の全国百万人行動では、十二万人が国会を包囲し、二万五千人が結集した大阪・扇町公園での集会など全国各地で無数のたたかいが取り組まれた。また、九月十六日から十九日の参議院特別委員会・本会議の採決をめぐっては、毎日数万人が国会前に結集し、権力の規制線を決壊させようと徹夜でたたかい抜いた。国会前での闘いは日々先鋭化していき、権力の規制線を何度も決壊させた。それは、一九六〇年の第一次安保闘争、一九七〇年を前後する第二次安保闘争、これらの戦後史を画するたたかいを継ぐものとして組織された。この経験は、広く深いものである。ここではその特徴を概括しておきたい。
 第一には、「戦争をさせない一〇〇〇人委員会」「解釈で憲法9条を壊すな! 実行委員会」「戦争する国づくりストップ! 憲法を守り・いかす共同センター」が中心となった「総がかり行動実行委員会」が東京を中心に編成され、人民の総結集の受け皿となったことである。この総がかり行動の集会には、民主党・共産党・社民党・生活の党と山本太郎と仲間たちなどが参加し、議会内外を貫くたたかいとして組織された。それは、六〇年安保闘争における社共・総評を中心とした「安保改定阻止国民会議」のような位置をもつものであった。全国各地においても、総がかり行動のような結集構造が追求され、無数の活動家たちの努力によって最近にはない大結集が組織されていった。この構造は、戦争法制の廃止、安倍政権の打倒にむけて持続し、全人民政治闘争の基礎構造として継続していくであろう。また、そうしていかねばならない。
 第二には、戦争法案に反対する全人民政治闘争は、六〇年安保闘争とは大きく異なる特徴をもつたたかいとして組織されたことである。六〇年安保闘争の主力は、BUND全学連と総評に結集する労働組合であった。しかし、戦争法案に反対する全人民政治闘争においては、主権者としての意識にもとづき、さまざまな階級・階層の一人ひとりが自らの意思で立ちあがったことに大きな特徴がある。また、辺野古新基地建設阻止をはじめとする反基地運動、川内原発再稼働阻止闘争などの反原発運動、労働法制改悪に反対する労働運動などが総合流するたたかいとして組織された。そして、これまで集会やデモに参加してこなかった青年・学生、女性、研究者、弁護士、宗教者なども含めて広範な人々が立ち上がった。それは、日本の将来は主権者である自らが決定するという直接民主主義の巨大なうねりである。
 各地で戦争法案の廃案を求めるデモが組織された九月十二日・十三日の『朝日新聞』の世論調査では、「デモによって人々が意見を表明することに共感しますか」という設問に対して、実に57%が「共感する」と回答し、「共感しない」の30%を圧倒した。また、「デモに政治に対する影響力がどの程度あると思いますか」という設問に対して、「大いにある」と「ある程度ある」をあわせると47%に達した。地殻変動的な意識の変化だと言える。このような全人民政治闘争に参加した経験は、すべての世代、階級・階層のなかに刻みこまれた。このうねりは、戦争法案の成立によって終息するものではなく、これからの日本社会を揺るがすものとして持続していくであろう。
 戦争法案に反対する全人民政治闘争の中心となった総がかり行動の基調は、安倍政権が戦後の日本の規範であった平和主義、立憲主義と主権在民を根幹とする民主主義を破壊しようとしたことに対して反対することにあった。そのことは、保守勢力の一部をも含めて最も広範な全人民政治闘争をつくりだしていくために、否定されるべきことではない。しかし、われわれはそこにとどまることはできない。この半年におよぶ攻防のなかで、自民党は最後まで結束を維持し、総裁選挙において安倍は無投票で再選された。戦争法案をもって、米帝や欧州各国帝、オーストラリアなどとともに世界を支配し、ますます拡大する日本の海外権益を自らの軍事力で獲得・防衛できる帝国主義へと飛躍すること、それは多国籍資本を中心とする日本のブルジョアジーの一致した強い意思であった。われわれが打倒すべき敵は、このような日本帝国主義である。自衛隊の銃口を向けられていくアジア・世界の人民に連帯し、日本帝国主義の打倒へとたたかいをさらにおしあげていかねばならない。
 第三には、この全人民政治闘争に青年・学生たちが広範に立ちあがり、大きな推進力となっていったことである。たたかいの最終局面では、それは高校生・中学生にまで波及していった。その基底には、戦場に動員され、殺し殺されるのは自分たち若者だという危機感があった。とりわけ、SEALDsのたたかいには広範な青年・学生が合流した。SEALDsは、「戦後の平和と民主主義の防衛」「リベラル勢力の総結集」を掲げ、戦争法案を本気で止めると奮闘した。それは、これまでの階級闘争、左派勢力のたたかいの経験と地平から切断されたところで生みだされた青年・学生の巨大な自然発生性であった。SEALDsのリベラルな基調を批判することはたやすい。しかし、問題はそこにあるのではない。これまでの階級闘争、左派勢力のたたかいの経験と地平からの切断を固定するのではなく、結合させていくこと。立ちあがった青年・学生たちと左派勢力の合流を実現していくことこそが問われたのだ。そのことは、これからのたたかいに引き継がれていくべき大きな課題だということができる。
 このようななかで、われわれは反帝国際主義派として全力でたたかいつつ、左派勢力の結集を呼びかけ、左派共闘をもって全人民政治闘争を牽引しようとした。東京においては「9条改憲阻止の会」の呼びかけによって、「集団的自衛権法制化阻止・安倍たおせ! 反戦実行委員会」(反戦実)が結成された。反戦実は三月二十一日の新宿デモを出発点として、六月二十一日の全国総決起集会と渋谷デモ、九月六日の新宿デモを組織し、参議院での採決に至る九月の連日の国会闘争をたたかい抜いた。ここには、いくつもの左派の政治党派、政治グループ、個人が参加し、注目された。とりわけ六月二十日の集会には全国からの総結集が実現された。また、反戦実は八月二十七日から九月二日に至る国会前での学生ハンストを全力で支援した。この学生ハンストは、SEALDsとは異なる左派の学生の闘いを可視化させ、大きな位置をもつものとなった。このような左派勢力の結集、左派共闘形成の第一歩を切り拓くことができたことを大きな成果として確認したい。
 六〇年安保闘争は、結成されたばかりの共産主義者同盟と全学連によって牽引された。七〇年安保闘争において、共産主義者同盟は「反帝統一戦線と階級的労働運動」という社共・総評に対抗する左派の新たな階級闘争構造の建設を提唱し、反戦青年委員会や全共闘という新たな青年・学生運動に立脚して激しい大衆的実力闘争をたたかいぬき、階級闘争を牽引した。しかし、八九年以降、ソ連・東欧の崩壊や中国の「社会主義市場経済」化変質などスターリン主義の破産が明確になり、世界的に共産主義運動が後退するなかで、日本においても左派勢力は分散し、階級闘争への規定力を大きく後退させた。われわれが戦争法案をめぐる攻防を目前にして、左派共闘の形成を呼びかけたのは、このような分散状況を克服し、左派勢力による階級闘争への規定力を再建していくことが決定的に重大だと確信するからであった。スターリン主義の破産を克服する共産主義運動の再生という課題を内包しつつ、階級闘争の先頭に立って牽引する左派共闘の形成をぜひとも推進していかねばならない。この努力はまだまだ始まったばかりである。

 ●第三章 反戦―安倍打倒闘争のさらなる発展を

 戦争法案とのたたかいは、参議院での強行採決をもって終焉したわけではない。安倍政権は、戦争法制の制定に引きつづいて、いよいよ宿願の憲法改悪に向かおうとするであろう。来年夏の参議院選挙で参議院の三分の二の議席を確保し、改憲発議の条件を獲得することが当面の焦点となる。これに対して、野党は戦争法制の廃止を参議院選挙の争点におしあげようとしている。このようななかで、日本共産党は「戦争法制の廃止を課題とする国民連合政府」の樹立を提唱し、参議院選挙での野党の選挙協力を呼びかけた。このような政権協議と選挙協力が成立するかどうかはわからない。しかし、階級闘争は新しい段階を迎えようとしている。安倍政権を打倒してどのような政権を樹立するのかという課題を内包しつつ、実際の派兵阻止闘争に立ち上がり、戦争法制廃止のたたかい、安倍政権打倒を正面からの課題とした全人民政治闘争へと発展させていかねばならない。これを見据えつつ、この十月のたたかいを全力で推進しよう。
 その第一の課題は、辺野古新基地建設をはじめとした基地の新設・強化を阻止するたたかいに全力で取り組むことである。辺野古新基地建設をめぐる国と沖縄「県」の協議は九月七日に決裂した。安倍政権は工事を再開し、十月には埋め立て工事に着工しようとしている。これに対して翁長知事は、九月十四日に仲井真前知事による埋め立て承認を取り消すと表明し、九月下旬にも執行しようとしている。たたかいはまさに決戦的局面を迎えた。海上阻止行動やゲート前阻止行動への派遣と連帯を強化し、大衆的実力闘争をもって埋め立て工事着工をなんとしても阻止しよう。また、岩国基地大強化とのたたかいや米軍Xバンドレーダー基地撤去に向けたたたかい、横須賀への原子力空母ロナルド・レーガン配備阻止闘争など、全国各地で反基地闘争を推進していかねばならない。十月三十一日には、「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」の呼びかけによる京丹後現地集会が予定されており、ぜひとも成功させていこう。そして、十一月二十八日・二十九日の岩国行動二〇一五を反帝国際主義派の全国からの総結集をもって成功させていこう。十月一日には「岩国☆希望の祭」のプレイベントが現地で開催され、十月二十四日には京都での岩国連帯集会が開催される。これらの成功をかちとり、岩国行動二〇一五に総結集するうねりをつくりだそう。
 第二の課題は、川内原発再稼働と対決するたたかいを継続し、伊方原発・高浜原発再稼働を阻止することにある。九電は八月十一日の川内原発一号機の再稼働につづいて、十月中旬には二号機の再稼働を強行しようとしている。これに対して、十月十二日には「川内原発二号機再稼働を許さない! 全国集会」(鹿児島中央駅東口広場)が開催され、その数日前から川内原発ゲート前行動が予定されている。また、十一月一日には、「STOP伊方原発再稼働! 11・1全国集会」(松山市城山公園)が開催される。高浜原発をめぐっては、十一月八日から二十日にかけて、高浜から関電本社までの二百キロのリレーデモが呼びかけられている。これらの原発再稼働阻止闘争に結集していこう。
 第三の課題は、三里塚芝山連合空港反対同盟主催の「最高裁の強制収用を許さない! 第三滑走路粉砕! 安倍政権打倒! 10・11全国総決起集会」(十月十一日正午/成田市東峰・反対同盟員の畑)に総決起することにある。最高裁段階に入った市東孝雄さんの農地法裁判に勝利し、農地強奪を何としても阻止しなければならない。また、「第三滑走路建設」の策動を粉砕しなければならない。国策と五十年にわたって対決してきた三里塚の地から、安倍政権を打倒していくために総結集しよう。
 第四の課題は、十一月のマニラAPEC粉砕闘争をアジア太平洋地域の人民の反帝国際共同闘争としてたたかう準備をおし進めることにある。マニラAPECは、十一月十八日・十九日に首脳会合が開催される。これに対して、十四日から十六日にILPS(国際民衆闘争同盟)第五回総会がマニラで開催され、十八日から十九日にかけてAPECに反対する民衆キャラバンが組織される。AWCはこれを反帝国際共同闘争として組織することを決定しており、アジア共同行動日本連も代表団を派遣する。これらの国際主義に貫かれたたたかいを断固として支持し、その成功をかちとっていかねばならない。



 

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