共産主義者同盟(統一委員会)


1451号(2015年1月1日) 第1新年号






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共産主義運動を前進させ改憲―反動攻勢を打ち砕け

   
戦争・排外主義と対決する革命的労働者党の建設を



 

 同志、友人のみなさん! 『戦旗』新年号を手にしたすべての皆さん! 二〇一五年年頭にあたって、共産主義者同盟(統一委員会)の現代世界認識と本年の階級攻防に向けた方針を提起する。
 二〇一四年、二〇一五年、現代帝国主義は混迷し、戦乱を引き起こし、新自由主義政策による貧困と格差を激化させてきた。
 米帝国主義は、〇八年恐慌以降の経済危機―財政危機を最大の要因として、軍事的にも政治的にも世界を編成する力を大きく喪失してきた。一昨年シリア問題、昨年のウクライナ問題、イラク・シリアをめぐる「イスラム国」問題に顕著に表れている。
 しかし、このような米帝と運命をともにしようとする日帝―安倍右翼反動政権は昨年、解釈改憲へと大きく舵を切った。集団的自衛権「合憲」化を閣議決定し、日米防衛協力の指針(ガイドライン)の改定に踏み込んで、戦争のできる国家への転換をはかろうとした。一方では、昨年四月消費増税を強行し、法人税減税を進めようとして、その階級的本性をあらわにした。
 二〇一五年年頭、安倍政権の反動攻勢が、辺野古新基地建設、川内原発再稼動から始まろうとしている。安倍は国家暴力を発動して、人民の憤激を圧殺しようとしている。反動攻撃を積み重ねて、戦争のできる国への国家体制再編を強行しようというのだ。沖縄をはじめとする反基地闘争、反原発闘争、労働法制改悪阻止闘争、あらゆる攻防の現場から、安倍政権打倒の階級決戦を組織していくことが決定的に問われている。
 集団的自衛権「合憲」化攻撃―戦争立法との対決は、安倍打倒闘争の重大な攻防となる。ここに、労働者階級、被抑圧人民・被差別大衆、青年、学生、市民、あらゆる階層の人々が結集し、街頭から決起する全人民運動を創出していくことである。
 今春、安倍右翼反動政権は、改憲を射程に入れた日米安保の画歴史的強化に突き進もうとしている。ガイドライン改定―戦争立法攻撃は、日米安保そのものを根本的に変質させ、憲法を破壊して、自衛隊が米軍とともに本格的に侵略反革命戦争に踏み込んでいこうとする攻撃である。
 二〇一五年の今、安保闘争は再び最も新しい課題となってきている。日本人民は、日米安保と天皇制という、戦後の日本階級闘争を抑え込んできた二つの足かせに苦しんできた。とりわけ、日米安保とそれに基づく軍事基地の強化、これを打ち破ることが、日本階級闘争の最も重要な闘争課題である。砂川闘争、六〇年安保闘争、七〇年安保―沖縄闘争、時代を越えて今一度日米安保粉砕の巨大な闘いが始まる。基地があるところのすべてで、全国いたるところで反安保闘争に立ち上がっていくときである。
 安倍晋三はさらなる反動攻勢に向けて昨年末、解散―総選挙に踏み切った。結果は自民が二百九十議席を獲得し、公明と合わせて三百二十五議席の与党勢力を護持することになった。安倍はこの勢いに乗って、増税、改憲―戦争立法に突き進もうとしている。しかし、この対極に沖縄がある。沖縄の四つの小選挙区すべてで、自民党が敗退し、「オール沖縄」勢力が勝利した。昨年年頭からの名護市長選、名護市議選、沖縄知事選、そして、衆院選・沖縄選挙区で、反基地勢力が全勝した。これこそ、沖縄人民が安倍政権に突きつけた普天間基地撤去―辺野古新基地建設阻止の民意だ。
 「オール沖縄」の圧倒的な勝利から、沖縄人民は日本政府との総対決を開始している。辺野古に基地を作らせない政治攻防、実力攻防が始まっている。沖縄人民と固く連帯し、安倍政権打倒を断固たたかい抜いていこう。
 そして、安倍政権打倒の全人民政治闘争から、日帝打倒のプロレタリア革命への反転攻勢を総力で切り拓いていこうではないか。共産同(統一委員会)は、二〇一五年の政治攻防を最先頭でたたかい抜いていく。
 以下、二〇一五年年頭にあたってのわれわれの見解を明らかにしていく。本号(第一四五一号)に、第一章 世界情勢、第二章 国内情勢、第三章 党建設方針を掲載する。続いて次号(第一四五二号)に、第四章 政治運動方針、第五章 労働運動方針、第六章 青年運動方針、第七章 学生運動方針を掲載していく。



  
■第1章  世界情勢

  新自由主義―グロ―バリゼ―ションの下

  新たな階級対立が拡大・激化


 二〇一四年、米帝は、イラク、シリアで、「イスラム国」空爆に踏みきった。帝国主義の「対テロ」戦争ははてしがない。また、新自由主義グローバリゼーションは、全世界で新たな階級対立の拡大と階級闘争の激化を生み出している。
 思えば、一九九〇年前後、旧ソ連・東欧圏におけるスターリン主義支配の崩壊によって、全世界は、再び資本主義の制限なき市場となった。当時、米帝は「新たな世界秩序」の形成を叫び、これに逆らおうとする国家への侵略戦争を全面化させた。「歴史の終焉」が語られ、ブルショアジーは、こぞって、資本主義こそが、人類史上、最高で最後の社会形態であると謳歌した。それから四半世紀が過ぎた。事態はどうであっただろうか。国家権力をもって発動され、全世界に強制されてきた新自由主義の嵐は、階級対立の拡大と階級闘争の新たな激化を呼び起こしてきた。中東などでは、帝国主義の侵略戦争の結果、はてしない戦争と内戦が引き起こされてきた。一方、圧倒的な経済的・政治的・軍事的力をもって世界の中心国として存在してきた米帝の世界支配は、次第に陰りを見せ、同時に、中国の台頭、さらに、ウクライナ問題やシリア問題に象徴的に現れた諸国間の力関係の変貌が引き起こされてきた。旧ソ連邦・東欧圏の崩壊と戦争、新自由主義が引き起こしてきたことは、階級対立、階級闘争、戦争と内戦、民族問題の激化、帝国主義諸国における力関係の変化と相互利害対立の激化であった。二〇一五年、こうした事態はいっそう明確な形で進んで行くであろう。


  ●1章―1節 世界各国で拡大する階級対立

  ▼1章―1節―1項 新自由主義。その野蛮な性格

 現代世界を特徴づけている第一の要因は、現代資本主義の新たな展開、すなわち、新自由主義グローバリゼーションとこれがもたらす階級対立の拡大、すなわち、労働者階級人民の苦悩の深まりということである。
 新自由主義は、第二次帝国主義戦争以降に主要な資本主義国で採用され一定の経済成長を支えてきたケインズ主義の行き詰まりにかわって、主要な資本主義諸国で採用されてきた。それは、ただ単に、すべてを市場にゆだねる、市場こそ「神」であるとする経済政策を意味するだけではなかった。新自由主義は、帝国主義国家権力による戦争や階級闘争弾圧を不可欠のコとすることで強力に推進されてきた。そして、その要は、労働市場における規制緩和の撤廃、雇用形態の自由化であった。資本主義各国で、正規雇用が激減し非正規雇用が大幅に拡大した。新自由主義は、資本蓄積の強力な手段となった。それは、労働者階級に対する野蛮でむきだしの搾取強化ということを顕著な特徴としている。
 労働者階級の圧倒的多数に強制される生活苦、貧困化、半失業状態と不安定雇用、そして、こうした状態を、これまでにも増して拡大することを必要条件に成立するのが新自由主義である。それ故に、新自由主義グローバリゼーションは、どこまでいっても、多国籍企業をはじめとする一部の資本家階級を潤すだけで、労働者階級をはじめとする圧倒的多数の人民には生活苦を強いるものなのである。

  ▼1章―1節―2項 恐慌と財政危機の深化

 〇八年世界恐慌は、こうした新自由主義グローバリゼーションが生み出した一つの帰結でもあった。アメリカ、EU諸国、日本と主要な資本主義国は、おしなべて金融機関や危機に瀕した独占資本への莫大な財政支出と極限的な金融の量的緩和で事態を乗り切ろうとしてきた。だが、この莫大な財政支出は、巨大な財政赤字を各国にもたらした。欧州は債務危機へと陥り、その弱い環であったギリシャやスペインなどが次々と破綻した。その結果、極端な緊縮財政を採らざるをえず、このもとで、こうした国々での労働者人民は、おしなべて、年金カット、公務員削減、失業の増大を強いられ、過酷な生活苦を強制されている。米帝は、再びの住宅バブルへと逃げ込むことで危機を回避しようとしてきたが、依然として投資も伸び悩み失業も根本的には改善されておらず、「景気回復」などほど遠い。日帝も、金融の量的緩和と財政出動をもって危機を繰り延べしてきた。そして、その本丸である「成長戦略」とは、より一層、労働市場の規制緩和を推し進め、一切の犠牲を労働者階級に転化することなのであり、労働者階級人民の生活破壊を意味する以外のなにものでもないのである。こうしたなかで、いまや、各国はおしなべて、財政破綻の危機に直面し続けている。
 世界資本主義は、〇八年恐慌から回復する景気循環には入っていない。EU諸国も日本も低成長にあえいでいる。失業が改善されない。BRICS諸国も一時の勢いを喪失してしまった。全世界は、慢性的な不況状態に覆われている。むしろ、〇八年恐慌はより深化し、次の爆発を準備している。こうしたなか、米連邦制度準備理事会(FRB)は、金融の量的緩和の終了を決定した。リーマンショックを引き金とした〇八年恐慌以来、三度にわたる量的緩和を行い、その額は四百兆円に相当する。ゼロ金利政策が構造化され、ここからの出口が見えないという事態に追い込まれてきたのである。だが、ゼロ金利政策はいつかはやめなければならない。米帝の量的緩和の終了と来年半ば以降を想定した利上げへの踏み込みは、いわば、見切り発車というべき博打なのである。だから、量的緩和終了後も「相当期間ゼロ金利政策を続ける」と言わざるをえず、利上げに踏みきることが簡単にはできない。
 全世界が低成長と失業高止まりにあえいでいる中で、唯一、米帝はみせかけの「景気回復」を頼みの綱に量的緩和の終了を決定したのである。だが、米帝の量的緩和の終了と利上げは、ドル高を招き、再び米国産業は打撃を受けざるをえない。そして、米帝が財政破綻するような事態となれば、全世界は再び、より深化した恐慌へと突入するしかない。こうしたなかで、投機へと過剰資本が流れ続け、実体経済と乖離した投機資本のみが肥え太る構造が固定化しているのである。

  ●1章―2節 戦争への際限なき衝動を深める帝国主義

 現代世界を特徴づけている第二の要因は、帝国主義による戦争が新たに激化してきたことにある。
 昨年、米帝は、「イスラム国」に対する空爆にふみきった。石油権益の確保を狙った帝国主義の中東への侵略戦争、イラク、アフガニスタンと続いた米帝を先頭とした侵略戦争は、中東におけるはてしのない内戦を生み出した。「イスラム国」は米帝の侵略戦争と、米帝に支援されたシーア派イラク政府によるジェノサイトといえる約十年に及ぶスンニ派狩りによって生み出されたものに他ならない。帝国主義による「対テロ」戦争は、いまや国境に左右されない無制限の恒常的な戦争状態へと転化した。そして、中東での帝国主義の侵略戦争に連動してイスラエルのパレスチナへの軍事侵攻も激化している。
 帝国主義による戦争は、これらにとどまらない。ウクライナをめぐって勃発したように、帝国主義による勢力圏をめぐる対立も局地的な戦争として勃発してきた。ロシア勢力圏からのウクライナの離脱に対し、ロシアは、クリミアを分離独立させ併合した。ロシア勢力圏を西欧帝国主義によって切り崩されてきたロシアが強硬な巻き返しに打って出てきたのである。ウクライナ内戦は、ロシアと西欧帝国主義による新たな分割戦が戦争を伴って開始されたということであり、帝国主義諸国による勢力圏獲得のための新たな分割戦争なのである。
 帝国主義による軍事的緊張の高まりと戦争策動は激化する趨勢にある。それは、東アジアにおいても同様である。東アジアでは、日米韓によって朝鮮民主主義人民共和国に対する軍事的包囲とさらに中国に対する軍事的対峙が形成され、中国を封じ込めつつ日米両帝国主義が世界中に軍事出動する体制が着々と構築されようとしている。アジア重視へとシフトした米帝と同盟した日帝による集団的自衛権の行使は、新たな段階を画するものである。それは、東アジアにおける戦争の危機を一層高めていくこととなる。
 帝国主義は、世界中で、戦争への際限なき衝動を強めつつある。「対テロ」戦争と称した中東への侵略戦争、開始された帝国主義による新たな分割戦争、現代世界は、再び帝国主義による戦火に覆われていこうとしている。

  ●1章―3節 帝国主義間抗争の新たな激化

 現代世界を特徴づける第三の要因は、局地戦争をも勃発させるまでに高まってきた帝国主義間抗争の新たな激化が全世界を覆いだしたということにある。
 それは、米帝の歴史的没落傾向、および、帝国主義国間における力関係の変化と帝国主義間対立の新たな激化として現れている。
 その特徴をいくつかあげておこう。第一は、中心国としての位置を占めてきた米帝の歴史的没落傾向が続いているということにある。政治的には、シリアへの戦争策動をめぐってそれは象徴的に示された。泥沼化する現在の中東侵略戦争においても同様である。むろん、いまだ米帝は、圧倒的な政治、経済、および軍事力を有している。ドルは世界通貨であり、これにかわる通貨はいまだ存在しない。それでも、米帝の歴史的没落傾向は長期的には避けられない。
 第二は、米帝の相対的な没落傾向と相まって、帝国主義相互関係が歴史的に変化しつつあることである。独帝や日帝は、敗戦帝国主義から蘇り有数の経済大国へとのしあがってきた。しかし、特に、日帝は、他帝国主義に後れをとり、中国や韓国などに追い上げられ、一時の勢いを完全に失った。いまや、一千兆に上る巨額の借金を抱え危機を繰り延べしているだけである。
 一方で、BRICSなどの台頭が世界経済を規定する新たな要素として大きく登場してきた。そして、西欧帝国主義とロシアによるウクライナ分割戦が勃発したように、BRICSをも巻き込みながら、帝国主義諸国間における力関係、相互関係の変化とこれがもたらす帝国主義間対立の新たな激化が現代世界を特徴付けていこうとしているのである。
 第三は、中国の台頭である。BRICSのなかでも、中国の経済的・政治的・軍事的台頭は著しい。いまや、世界第二位の経済大国へと上り詰めた中国は、世界経済を規定する大きな位置を占めるに至った。中国資本のアフリカ、東南アジアなどへの進出は急速に拡大している。軍事大国としてのプレゼンスも高まっている。だが中国は、決して、米帝にかわる新たな中心国としての条件を有しているわけではない。急速な経済成長は、さまざまな矛盾を激化させている。階級矛盾、民族矛盾は激化する一方である。中国共産党は、もはや生産力主義以外いかなる基準ももちあわせていないかのごとくである。中国の経済成長も不動産バブルがはじけつつあり、減速しはじめている。だが、一方で、石油など天然資源の確保や軍事戦略のために、フィリピンやベトナムなど近隣諸国との緊張をも高めており、軍事大国としての政策を次第に強めている。
 第四に、こうした米帝の歴史的後退、BRICSの台頭、帝国主義列強間の力関係の変化を背景に、米帝を中心とした戦後世界支配体制が激しく動揺していることである。
 国連安保理常任理事国―五大国は核兵器独占を柱として、対立をはらみながら、それぞれの利害にもとづく世界の分割支配を貫徹してきた。ソ連の崩壊以降、帝国主義国の支配機構として機能するはずだった国連安保理だが、イラク戦争をめぐっての米帝の単独行動によって、独自利害による侵略戦争の発動に対しては何も機能しないことが明らかになった。今日、国連安保理常任理事国内部の対立と亀裂の深まりは、帝国主義国間の力関係の変化を背景に一層拡大し、その機能は弱化する一方となっている。国連安保理「改革」はこうしたことを反映している。帝国主義列強による政治的・経済的支配体制が大きく動揺してきたのである。
 G8は、ウクライナ問題で分裂し、G20も、帝国主義諸列強、BRICS諸国を貫く力関係と相互利害対立のなかで動揺している。こうしたなかで、中東への米帝を先頭とした侵略戦争に象徴的なように、「有志連合」の形成をもって戦争へと踏みきるという事態が常態化してきたのである。
 第五に、帝国主義間対立の激化のなかで、再度、国民国家のもとに排外主義的に人民を統合する動きが新たに強まっていることである。各国で排外主義と愛国主義が扇動され一層強まっていく趨勢にある。「対テロ」戦争や帝国主義諸国による再分割戦をめぐって、再び、愛国心と民族主義が扇動され、国民国家への人民の統合が主要な帝国主義諸国を覆いだしている。安倍政権は、こうした趨勢をアジアにおいて促進している。それはまた、階級対立の拡大を根拠に、EU諸国における移民排斥運動の激化など、各国でおしなべて排外主義右翼の台頭を呼び起こしている。「在特会」なども、日本におけるこうした現れの一つに他ならない。
 以上を総括すると、現代世界は、米帝の歴史的後退、中国を先頭とするBRICSの台頭、帝国主義列強を貫く力関係の変化、勢力圏をめぐる対立の激化と局地戦争への突入、さらに、中東などへの帝国主義国による侵略戦争の激化のなかで、帝国主義の世界支配は、より一層、多極化、分散化、相互対立の激化へと向かっていると言えよう。

  ●1章―4節 各国労働者人民の闘い

 現代世界を特徴づける第四の要因は、階級対立の新たな拡大と階級闘争の激化、帝国主義間対立の激化、帝国主義のはてしのない侵略戦争と反帝民族解放闘争の激化、これらを始めとする全世界の労働者階級、被抑圧人民・被差別大衆のたたかいが新たに激化していくということにある。
 その特徴の第一は、主要資本主義諸国に顕著な階級対立の拡大と階級闘争の激化ということにある。
 米帝、EU諸帝、日帝、主要資本主義国では、新自由主義のもとで、おしなべて階級対立の拡大、階級闘争の激化ということが趨勢となりつつある。しかも、そのたたかいは、ヨーロッパ諸国において顕著であるように、労働者階級人民の直接行動、街頭行動を一つの特徴としている。それらは、ブルジョア国会を牛耳る既成政党が何ら貧困化に苦しむ労働者人民の利益を代表していないことの結果でもあるが、同時に、大衆自らの直接行動は、直接民主主義の要求と分かちがたく結びついたものとして拡大している。EUにおいては、EU統合に対応して、二十四カ国の政党が結集する欧州左翼党の形成や、より左派的な勢力による国境を越えた左派勢力形成の動きが活発になっている。米帝内においても、階級対立の拡大、貧富の格差拡大に根拠をもった大衆行動が拡大している。オキュパイ運動はその象徴であった。最近でも、最低賃金引き上げをめぐって全米百都市でデモが行われ四百名が逮捕された。しかも、これは民主党系労組などが主導したのであり、労働者階級の貧困化はここまで深刻であるということなのである。また、米帝の侵略戦争に抗する反帝国主義左翼も奮闘している。米国においては、貧富の格差拡大を背景として、警察官による黒人差別―射殺事件が相次ぎ、全米で抗議行動がたたかわれている。新自由主義と戦争という一時代のなかで、各国でおしなべて大衆行動が拡大していることが資本主義諸国における顕著な特徴である。
 第二に、中南米において、米帝主導の新自由主義に反対する反米左派政権のあいつぐ樹立と社会主義をめざそうとするうねりの継続である。
 中南米は、米帝の支配下におかれ続けてきた。この域内では、米帝が主導する米州自由貿易協定(FTAA)に対抗する新たな域内協力関係の形成が進んでいる。その核には、キューバ、ベネズエラ、ボリビアが位置している。二〇〇〇年代に入って続いた反米左派政権樹立の流れのなかで、ベネズエラなど社会主義をめざす政権が生み出されてきた。中南米では、キューバを先頭に米帝国主義とたたかい社会主義建設を志向する労働者人民のたたかいが営々と続いてきた。中南米の人民は、歴史的には、五九年キューバ革命、七九年ニカラグア革命の地平を継承し、二〇〇〇年代に入っては、米帝主導の新自由主義に対決する左派政権が次々と誕生してきた。そして、これを破壊しようとする米帝の巻き返しに抗し、社会主義をめざす第三の波が消えることなく続いていると言える。
 第三に、中東、北アフリカにおけるいわゆる「アラブの春」と言われる連鎖の如く飛び火した民主化革命で示された人民のたたかいである。
 中東・北アフリカにおけるたたかいは、帝国主義の侵略戦争とこれに抗する反帝民族解放闘争の坩堝となっている。米帝を先頭とした侵略戦争に抗するたたかい、さらに、帝国主義諸国と結託した独裁政権打倒の民主化闘争の爆発、こうしたたたかいが激化している。パレスチナ人民のたたかいは、歴史的にも今日的にもその一貫した拠点的たたかいであり続けている。同時に、中東・北アフリカにおける反米(帝)闘争においては、種々のイスラム勢力がその先頭に立ってしまっている。しかし、それは、決して「宗教戦争」などではない。かつて、全世界の反帝民族解放闘争の主導勢力は、明確に社会主義勢力であった。だが、スターリン主義への変質によって、その位置は大きく後退した。イスラム勢力が反米(帝)闘争の最前線へと躍り出ているのは、あくまでその結果でもある。すなわち、種々のイスラム勢力の増長は、帝国主義の侵略と戦争が引き起こしているのであり、一方で、帝国主義とたたかう社会主義・共産主義勢力の立ち後れの結果でもあるということに他ならない。そして、エジプトなど、民主化革命の内部で、こうした現状を突破しようとする左翼勢力の新たな胎動も開始されつつある。帝国主義の侵略戦争に抗する中東・北アフリカなどにおけるたたかいの内部から、必ずや、左翼勢力の復興もまた果たされていくであろう。
 第四に、中国における階級闘争である。
 十三億の人口を有し、大国としての経済的・政治的・軍事的位置の一角を占めつつある中国における階級闘争の帰趨は、アジアのみならず国際的に大きな位置を占めざるをえない。いまや、中国でも、階級対立が拡大し、民族問題は激化している。中国共産党は八千万人の党員を有する世界最大の共産党である。いまの中国は、生産力主義が主要な基準となっているが、階級対立の拡大、階級闘争の拡大、民族問題の噴出は、中国社会を大きく左右していく原動力となりつつある。香港における占拠闘争など、人民が民主主義を要求するたたかいもその深部でさらに拡大して行くであろう。中国共産党内外を貫き、労働者階級の利害に立脚するたたかいがいかに再生されていくかに中国プロレタリアートの未来はかかっている。
 第五に、帝国主義間対立の激化や国民国家への排外主義的統合の動きがつよまるなかで、他方では、スコットランドにおける独立を求める住民投票が行われたように、政治的な自決を求める動きが新たなかたちで強まっているということである。
 そもそも帝国主義の侵略・支配に晒されてきた諸国における反帝民族解放闘争は、民族自決権の承認を要求してきた。帝国主義支配に晒される地域で政治的独立を求めるたたかいは止むことがない。スコットランドにおける政治的独立要求など、新自由主義のもとにおける格差拡大、貧困、核基地の拒絶などを背景に政治的独立を要求する動きも新たに起こってきた。人民自身の自己決定要求、あるいは、直接民主主義の要求、こうしたたたかいは今後ますます強まっていくであろう。

  ●1章―5節 共産主義の歴史的再生が求められる一時代

 新自由主義による階級対立の拡大と階級闘争の激化、帝国主義の侵略戦争と帝国主義間抗争の激化のなかで、新たなプロレタリア革命の一時代を切り拓いていかなければならない。各国で、階級対立は深まり、階級闘争は各国でおしなべて拡大している。労働者人民の直接的な大衆闘争がさまざまな領域で拡大している。新自由主義と戦争が激化するこの一時代を、新たなプロレタリア革命の一時代へと転化していかねばならない。
 こうしたなかで、全世界で左翼勢力の新たな奮闘も始まりつつある。
 左翼勢力にとって、その現代的な最大の問題とは何だろうか。それは、すべての左翼勢力と労働者人民にとって、二十世紀を通して破産したスターリン主義、すなわち、旧ソ連・東欧の「社会主義」の再版はもはやいかなる意味でもありえないということにある。このことが、歴史的事実をもって、全世界の労働者人民、左翼勢力にとっての共通の歴史的条件とならざるをえないし、また、そうなっている。従って、全世界の労働者人民、左翼勢力にとって、スターリン主義と決別し共産主義を人民の希望へと復権していくことが、共通の歴史的・今日的課題となる一時代にあるということである。左翼勢力にとって直面する一時代の最大の課題がそこにある。それはまた、中国共産党にいかなる態度をとっていくかという問題とも連動している。
 共産主義は、かつて、資本主義・帝国主義のもたらすあるゆる災禍とたたかう人民の希望であった。だが、革命ロシアは、スターリン主義への変質によって、新たな人民抑圧体制へと変質してしまった。生産力主義、一国社会主義建設可能論、世界革命の放棄、二段階革命論によるプロレタリア永続革命への敵対、大ロシア民族主義への屈服、党・階級組織の変質、一党独裁、党と国家機構の癒着・一体化、ソビエトの否定、個人崇拝の導入……あらゆる領域でその誤りを全面開花させ、そして、それ故にまた、旧ソ連・東欧は不可避的に崩壊していった。労働者人民を抑圧することで成立する支配体制など、いかなるものでも、必ず、人民に打ち倒される。
 一方、ソ連・東欧の崩壊以降、新自由主義が全世界を席巻し、現代資本主義は新たに階級対立の拡大と階級闘争の激化を招来してきた。戦争と内戦、階級闘争の激化が新たに生み出されてきた。全世界の左翼勢力にとって、スターリン主義と決別した共産主義運動の新たな歴史的再生という課題が、共通の時代的要請なのである。共産主義の歴史的再生というこの現代世界が要求する課題のために、全世界の左翼勢力はともに奮闘していかなければならない。かつて、一九六〇年代、ソ連共産党を批判し、いわゆる第三世界諸国の反帝民族解放闘争に大きな影響力を有した毛派も、その影響力を大きく後退させた。また、スターリン主義を批判し第四インターナショナルを形成してきたトロツキズムも反対派以上の位置をもつことはなかった。そして、いま、現代世界において、新たに生まれ出る共産主義は、いずれにしろ、こうしたこれまでの勢力の単なる延長にはありえない。それは、現実の階級と階級闘争そのものが生み出すのであり、逆にこれに真に実践的に立脚し続けることで生み出していけるのである。そして、これにチャレンジし続ける左翼勢力の国際的協同によってのみ、共産主義の新たな再生はもたらされていくであろう。
 すでに、前節でふれたように、各国で新たな左翼運動が勃興しだしている。特に、ヨーロッパにおける左翼運動には、EU統合に対応した欧州左翼党の形成や、より左派的位置を有するヨーロッパ反資本主義左翼などの国際ネットワークなど、さまざまな動きが存在している。欧州左翼党の場合、社会民主主義的傾向が濃厚であり、ヨーロッパ反資本主義左翼はトロツキズムの流れを内包している。米帝内においても、社会主義勢力が自国帝国主義(米帝)の侵略戦争に抗し、反戦闘争の先頭にたっている。中南米では、キューバを先頭に反米左派政権の樹立が相次いできた。中東、北アフリカにおいてもイスラム勢力の圧倒的な影響力に抗しつつ、左翼運動もまた確実に奮闘している。アジアにおいては、韓国では新たな革命的な労働者党、社会主義党建設の不断の苦闘が続いている。インドネシアなどでも、スハルト独裁打倒の民主化運動のなかから、労働者階級の大規模なゼネストが登場するとともに、新たな左翼勢力が登場してきた。もちろん、例えばフィリピンがそうであるように、旧来からの毛派共産党が反帝闘争と武装革命路線を堅持しているところもある。
 要は、こうしたすべての左翼勢力が、スターリン主義と決別し、共産主義を現代に復権していくこの一時代の課題にともにたちむかっていくことなのである。スターリン主義の破産をうけて、これにかわる新たな共産主義を大衆的に復権していくたたかいは、この時代の最大の課題であるが、当然にも、それはいまだまったくの途上にあり、むしろ始まりにすぎない。それは、欧州左翼に見られるように、社会民主主義的傾向にその道を見いだそうとすることが往々にして主流であるように思われる。大衆的にも、例えば「社会フォーラム」がそうであるように資本主義にかわる「新たな社会」などと主張される。だが、現に開始されつつある階級闘争の新たな拡大に真にラディカルに立脚し、労働者人民の自己解放闘争を前進させるなかから、マルクスやレーニンが生きた時代、まさに人民の希望であった共産主義は、必ずや再び現代世界に蘇るであろう。資本主義・帝国主義に対する共同のたたかいを強め、共同の戦列を国際的に前進させていかねばならない。
 われわれも、そうした国際的一翼を担い続けるであろう。われわれは、昨秋から、安倍政権を打倒する全人民政治闘争の組織化とこのなかにおける左派共闘の形成を新たに訴えてきた。それは、左派勢力が共に共産主義運動の歴史的再生を進めていくことと切り離せない。そして、こうしたたたかいは、スターリン主義と決別した新たな共産主義の再生を実現していく国際的な共同の課題の一環なのである。二〇一五年、われわれは、こうしたたたかいを一層強めていくであろう。



  
■第2章 国内情勢

  改憲―戦争突撃体制構築に突き進む安倍右翼反動政権


  ●2章―1節 戦争のできる国への再編攻撃

  ▼2章―1節―1項 集団的自衛権「合憲」化と基地建設の攻撃

 「戦後レジームからの脱却」を掲げてきた安倍右翼反動政権は昨年七月一日、集団的自衛権の行使を「合憲」だとする閣議決定を強行した。
 安倍政権はそもそも、憲法九条の改悪、あるいは、そのための憲法九六条(改憲手続き)の改悪を自民党の党是として目指していたはずであった。しかし、「戦争のできる国」になることこそが敗戦帝国主義としての限界を突破することだと確信している安倍晋三は手段を選ばず、集団的自衛権を「合憲」とする解釈改憲の閣議決定を強行したのである。
 そのために、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)」に、集団的自衛権を「合憲」と強弁する報告書を出させた。そもそも、安保法制懇は、安倍の意に沿った人物だけを集めた私的諮問機関でしかない。安倍自身が「空疎な議論をする方は排除している」というほどに、極端に偏った改憲論者の集まりである。一方では、この極端な「合憲」主張を押し通すために、内閣法制局長官をむりやり小松一郎駐仏大使に入れ替えた。
 七月一日、首相官邸は労働者人民に取り囲まれ、「集団的自衛権反対」「改憲反対」「戦争反対」のシュプレヒコールが響き渡る中で、安倍はこの強引な手法で集団的自衛権「合憲」の閣議決定を行った。
 「密接な関係の他国に武力攻撃が発生し」た場合に、自衛隊を他国の領域に出兵して武力攻撃を行なう。これは、周辺事態法や武力攻撃事態法の範疇とは全く異なって、「自国の防衛」という論理では合理化することができない。他国での軍事行動に日本が踏み出すことを意味する。そして、日米同盟関係を根拠にした派兵―参戦ということだけでなく、国連決議に基づく集団的安全保障への参加=多国籍軍に参加することをも想定している。集団的自衛権、集団的安全保障、いずれにしろ、戦争と武力による威嚇、武力行使を永久に放棄した憲法九条を、明確に否定するものだ。まさに、侵略反革命戦争を行なう法体系―国家体制を作り出そうというのだ。
 十月八日、日米防衛協力小委員会は日米ガイドラインの改定に向けた中間報告をまとめ発表した。
 中間報告に明示されていることの第一は、憲法上の制約を突破する軍事協力関係に踏み込もうとしていることである。「後方支援」や「非戦闘地域」という制約を取り払って、米軍との共同の軍事行動を具体化しようとしている。第二は、全世界での軍事展開を想定しているということである。周辺事態法には「日本周辺」という地理的制約が一応はあった。しかし、中間報告は、世界中どこでも、自衛隊が他国の軍隊との共同作戦を行うことを想定している。第三には、「平時」「周辺事態」「日本有事」という事態区分を取り払って、「切れ目ない、実効的な、政府全体にわたる同盟内の調整」を行うとしていることである。平時から戦時に至る恒常的な米軍支援、共同軍事作戦、そして、労働者人民の戦争動員をなそうとするものだ。この内容を見るならば、日米ガイドラインの改定は、憲法改悪をも射程に入れた、日米軍事同盟の抜本的な改定に踏み込む攻撃なのである。
 アフガニスタン戦争、イラク戦争において、日本の自衛隊は全面的に参戦していくことができなかった。この状況を、米国側は日本の限界として指摘し「改善」することを要求していた。この外圧を最大限に利用し、憲法九条を破壊して集団的自衛権を行使できるようにすることを、安倍政権は急いできた。
 しかし、7・1閣議決定だけでは、一内閣が勝手な憲法解釈をしたにすぎない。明確な体制として戦争のできる国家に脱皮していくためには、憲法九条を具体的に形骸化させる戦争諸法の成立まで突き進む必要がある。安倍は当初、昨年秋の臨時国会において、この戦争立法に着手しようと考えていた。しかし結局、安倍政権は一四年中に戦争法案に着手することはできなかった。日米ガイドライン改定に関しても、この戦争立法が進まないところでは、中間報告以上の具体化ができなかった。安倍解釈改憲に対する人民の憤激が高まり、一方では、アベノミクスの失敗が濃厚になる中で、いかに強権を行使しようとも、安倍の描いたとおりのスピードでは反動攻勢を進めることができなかった。安倍晋三は解散―総選挙に踏み切り、勝利することで「白紙委任」をとりつけようとした。
 集団的自衛権「合憲」化攻撃に踏み込んだ安倍政権は、これと同時に、米軍基地再編を強行してきた。前沖縄知事仲井真に辺野古新基地建設を受け入れさせ、辺野古沖ボーリング調査―埋め立て工事に暴力的に着手してきた。
 この沖縄に対する暴挙の一方で、岩国―愛宕山における米軍住宅建設に着手し、さらにまた、京丹後での米軍基地拡張―Xバンドレーダー基地建設も強行してきた。そして、「沖縄の負担軽減」などと言いつつ、オスプレイ飛行訓練の全国展開を強行してきた。オスプレイは決して沖縄からいなくなった訳ではない。あくまで普天間基地を拠点として、岩国を中継拠点としつつ、オスプレイの全国展開を始めたのだ。

  ▼2章―1節―2項 右翼反動ゆえの拙劣な外交

 安倍は首相就任以来一年半で四十九カ国を訪問し、各国で政府開発援助(ODA)をばらまき、日本の国連安保理非常任理事国入りの賛同を取り付けてきた。
 安倍政権は、現状の安保理の非常任理事国になることを目指すだけでなく、国連安保理改革を進め、常任理事国になることを目指している。現在の安保理改革の論議において、日本、ドイツ、インド、ブラジルの四カ国は「G4」を形成して、常任理事国を現在の五カ国から十一カ国に増やす案を提示している。国連発足七十年にあたる二〇一五年九月までに、この四カ国が常任理事国になることを目指している。
 昨年九月の国連総会に際して、安倍は潘基文事務総長と会談し、「国連を二十一世紀にふさわしい姿に変えるため、日本はリーダーシップをとる」なる持論を展開した。国連総会の演説においても、「二十一世紀の現実に合った姿」に国連を改革すべきと主張し、日本は「常任理事国となり、ふさわしい役割を担っていきたい」と表明した。
 しかし、現在の常任理事国の中国は、日本の常任理事国入りに強く反対している。また、日本の同盟国のアメリカも、常任理事国の数を増やしたいと思ってはいない。さらに、韓国、イタリアなどのグループ「コンセンサス連合」も安保理の枠組みの現状変更に反対である。
 国際連合そのものが、第二次帝国主義戦争の連合国=戦勝国によって形成されたものであり、戦勝国である五大国が批准しなければ、国連憲章の変更は成立しない。米、英、仏、ロシア、中国が、現代世界体制における特権の位置を変更しようと考えていない以上、日帝、独帝の意向は実現することはない。
 安倍政権は、アベノミクス「成長戦略」の柱として環太平洋経済連携協定(TPP)を掲げてきた。しかし、TPPは、アジア太平洋地域の経済成長を取り込むことで延命を図る米帝のアジア太平洋戦略そのものだ。安倍政権は、日本の農業などの第一次産業、そして、労働者人民の生活権を守るための制度をことごとく押しつぶして、このTPPにしがみつこうとしている。中国は独自に各国とのFTA締結を進め、TPPに対抗してアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の推進を表明している。安倍政権は、この米中のせめぎあいの狭間で、中国との関係を回復できぬまま、アジアでの孤立の道に進んでいる状況にある。
 安倍政権は、アジア各国・地域との外交関係を破壊してきた。日本軍「慰安婦」制度の歴史的事実を抹消しようとする言動、釣魚諸島問題をはじめとする領土・領海問題での帝国主義的拡張主義、安倍自身の靖国参拝という侵略戦争翼賛行動は、中国・韓国をはじめとするアジア各国・地域人民から痛烈に批判されてきた。安倍晋三自身の極右体質ゆえの傍若無人な言動は、アジア各国・地域の不信感を高めてきた。それこそが、安倍政権の脆弱な側面となってきた。

  ▼2章―1節―3項 右翼反動としての本性を鮮明にした安倍政権

 安倍晋三は昨年九月三日に実施した内閣改造で、自民党内の極右勢力を集めて組閣した。内閣の十九人中十五人が極右議員団=「日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)」に所属していた。国家公安委員長・拉致問題担当相の山谷えり子などは、在特会幹部と親しい関係にあった。
 ヘイトスピーチが国連からも問題にされるという状況の中で、安倍第二次改造内閣は天皇主義者・排外主義者の集団となっていた。こんな政府がヘイトスピーチを「規制する」することなどできようはずがない。安倍政権こそ排外主義を煽ってきたのだ。
 この安倍政権の下で、右翼政治家、右翼ジャーナリズムは朝日新聞批判を拡大し、日本軍「慰安婦」制度自体の歴史的事実を抹消する攻撃へと暴走している。「日本軍『慰安婦』制度はなかった」なる国際的に非常識な主張が日本のマスコミでは大手を振っている状況だ。元日本軍「慰安婦」の日本政府糾弾―天皇糾弾こそ、日帝の侵略戦争に対する根源的な批判である。安倍の戦争体制構築の攻撃と一体に、この歴史改竄運動を右翼勢力が煽動しているのである。
 集団的自衛権「合憲」化―戦争立法、辺野古をはじめとする新基地建設攻撃との対決という、安倍政権に対する闘いは正念場を迎えている。われわれは安倍晋三とその側近の極右勢力としての本性を見定めて、激化する排外主義と対決していかなくてはならない。

  ●2章―2節 人民の声を踏みにじる原発再稼動攻撃

  ▼2章―2節―1項 川内原発再稼動攻撃


 昨年九月十日、原子力規制委員会は、川内原発に関して「安全性が確保された」などとして再稼動の「審査書」を決定した。十一月七日には、鹿児島県議会と県知事伊藤が、傍聴席の怒号の中で川内原発再稼動同意を決定した。
 川内原発周辺には多数の活断層が確認されており、原発直下で内陸型地震がおこる可能性があり、このような場所に原発が存在すること自体が危険なのである。さらに、百六十キロメートル圏内に「特に活動度が高い火山」である桜島、薩摩硫黄島、雲仙岳、阿蘇山が存在している川内原発が、なぜ最初の再稼動に選ばれたのか。
 これは、「科学的・技術的な」規制基準に基づくものでは決してない。鹿児島県議会、県知事伊藤、薩摩川内市長岩切が、原発容認派であるという政治的理由によるものだ。安倍政権は、規制委の審査、立地自治体の受け入れが進んで、再稼動が強行できるという政治的判断だけに基づいて、再稼動攻撃をかけてきたのだ。
 しかも、政府が「安全性」を強調しながら、「避難計画」は原発周辺自治体が策定することとされている。伊藤知事は県議会において、「三十キロ圏までの要援護者の避難計画は現実的ではない」などと主張している。住民の生命、生活を全く顧みぬまま、九州電力の経営のみを考えて原発再稼動を強行しようとしているのだ。

  ▼2章―2節―2項 福島の人々の切り捨て、被曝の実態の隠蔽

 原発問題の根本にあるのは、福島原発事故の被害者、避難者、そして、原発事故の収束にあたる被曝労働者の問題である。政府は再稼動問題を前面に出し、一方では、原発輸出を推し進めてきた。今、日本の原発問題において第一に考えなくてはならないことは、福島原発事故が収束していないということである。
 未だ避難生活を余儀なくされている人々は十四万人に及んでいる。福島第一原発内の放射能汚染水は今も増え続けている。多核種除去設備=ALPSは故障を繰り返し、役に立たないということが明らかになっただけだ。地下水バイパス計画もうまく進まず、汚染水を薄めて「基準値以下」だと強弁して海に垂れ流している状態である。「凍土壁」も失敗し、コンクリートで壁を作る計画に変更せざるを得なくなった。オリンピック招致時の安倍の発言とは正反対に、何も「コントロールされて」いない状況である。
 政府は「除染」を掲げながら、放射性廃棄物処分に関して具体的な方針を確定できない。「中間貯蔵施設」と言いながら、放射性廃棄物を福島に押し付けようとしているのだ。
 原発事故―汚染のこの現状を放置したまま、安倍政権は「避難指示」を解除して、住民を汚染地域に帰還させ、被曝生活を強制しようとしている。安倍政権が考慮している最大の問題は、東京電力の損害賠償をいつ打ち切るのかである。住民の生命よりも、東電の経営を考えているのだ。

  ▼2章―2節―3項 全原発停止から廃炉へ

 二〇一一年三月十一日の東日本大震災―福島第一原発事故以降、日本人民が直面してきたことは、原発事故と放射能汚染は「可能性」ではなく、引き起こされた現実であり、原発が存在する以上はこれからも起こるということである。この現実に向かい合って、市井の人々が立ち上がり、政府に対して原発の停止―廃炉を要求した。立ち上がらなければ、殺されるからだ。この人民の反原発運動は昨年五月、福井地裁―樋口裁判長の大飯原発三・四号機を「運転してはならない」と決定する判決をかちとるまでに至っている。
 電力会社と電機産業資本、銀行資本が最も恐れていることは、原発が停止したまま廃炉が選択されていくということである。停止している原発も、そこに貯め込まれている核燃料も、これら独占資本は再稼動を前提とした「資産」として計上している。停止のまま安全性が確認できず廃炉が決定される事態になれば、巨額の不良資産に転化する。日帝ブルジョアジーが最も恐れていることは、圧倒的多数の人民の意思を受け入れて全原発廃炉を選択する政権が登場することである。全原発が廃炉となれば、各電力会社は経営破綻し、主要な銀行も大打撃を被ることになる。日本帝国主義にとっては、将来の核武装の根拠が失われること以上に、経済破綻の危機に直面しているのである。
 だからこそ、この日帝支配階級の危機意識を体現した安倍政権は、あらゆる手段を弄して、原発再稼動を進めてきた。昨年四月に閣議決定した「エネルギー基本計画」で、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ直し、前民主党政権の「原発ゼロ方針」を葬り去った。
 東電と国は、まずもって原発事故に対する補償を全うしなければならない。それで、電力会社が経営破綻するかどうかは次の問題である。原発がいかにコストの大きな発電なのかということはもう隠すことができない。政府は、この事故の責任を最後までとらなくてはならない。

  ●2章―3節 アベノミクスと日本資本主義

  ▼2章―3節―1項 アベノミクスの破綻


 米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和策(QE3)終了の決定を発表した二日後の昨年十月三十一日、日銀は異次元緩和に上乗せして追加緩和を行うことを決定し発表した。異次元緩和として行なってきた年五十兆円の国債買い入れを三十兆円増やし年八十兆円とする。市場に流れる資金供給量をさらに増やすというのである。また同日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は公的年金の株式運用比率を50%まで高めることを発表した。この結果、株式市場に流れ込む資金量が増えるという予想から、三十一日の日経平均株価は七百五十五円高となり、円安も進み一ドル=百十二円となった。その後も、円売り=日本売りは続いており、十二月には一ドル=百二十円を超えるまでになっている。
 証券会社は「絶妙のタイミング」などと評価するが、根本的には安倍政権が掲げてきた経済政策が危機的であるがゆえの「正念場」の賭けなのである。
 昨年七~九月期の国内総生産(GDP)速報値はマイナス1・9%で、第二・四半期連続のマイナス成長となった。四~六月期に関しては「消費税増税後の景気の足踏み」などと説明されたが、そうではなかった。昨年一~三月期の消費増税前駆け込み需要以外には「経済成長」などないのである。異次元金融緩和や財政政策を続けても効果はなく、アベノミクスが失敗であることは明白になった。
 この事態に気づいた日銀総裁・黒田は、追加金融緩和を十月末に行なって、一時的に株価を吊り上げて、安倍の消費再増税への決断を支援した。しかし、安倍は、「デフレ脱却」が実現できぬまま再増税を行って、政権批判が一挙に高まることを恐れた。集団的自衛権―戦争立法も、沖縄知事選も思うようには進まず、改造内閣の閣僚の腐敗が次々と露呈していた。第一次安倍政権が追い詰められての、解散もできずに退陣したことの恐怖がよみがえってきた。追い詰められて退陣よりは、早く解散した方がいいと安倍は考えた。
 消費増税ができない状況を認めたことがなぜ解散の理由になるのか。消費増税延期を問題にしているのは、大衆増税で「財政再建」をめざす経団連や財務省である。労働者人民が問題にしている訳ではない。むしろ、消費税率下げろ、消費税廃止せよの要求があるだけだ。

  ▼2章―3節―2項 労働者階級の状態

  ◆1 雇用の実態と実質賃金の低下


 安倍政権は、「アベノミクスの成果」だと言わんばかりに「雇用が増えた」と主張してきた。昨年発表された二〇一三年の雇用統計では、雇用者は五千二百十万人で前年比五十六万人の増加となっている。しかし、その内実は、正社員は三千三百二万人で前年比三十八万人減、非正社員は一千九百六万人で前年比九十三万人増となっている。正社員は減って、非正社員だけが増え、結果として、非正社員の比率は36・6%となっている。
 厚生労働省が発表する二〇一四年六月の統計では、新規求人倍率が1・6倍、有効求人倍率でも1・01倍となっている。政府は、これをもって雇用が改善されてきていると主張するのだが、正社員に関してだけの有効求人倍率は0・63倍という水準なのである。安倍の「雇用の改善」という言葉の裏側には、正社員から非正社員への入れ替えが進んでいるという現実があるのだ。
 非正社員の増加ということは、昨年突然進んだ訳ではない。九〇年代以降、一貫した傾向として日帝資本と政府が推し進めてきたことだ。一九九七年に三千八百十二万人だった正社員は、二〇一二年には三千三百四十万人に、一三年には三千三百二万人に減少してきた。それに伴って、労働者の平均年収は下がり続けてきた。一九九七年には四百七十万円だった平均賃金が、二〇一二年には四百十万円にまで減少している。
 このように雇用の非正規化が推し進められてきた上に、安倍政権になって何が起こっているのか。
 二〇一三年、日本の労働者の可処分所得は前年比0・3%増とされているが、消費者物価の上昇によって実質可処分所得はマイナス0・2%となった。さらに、二〇一四年六月には、物価上昇に加え、消費増税によって、実質可処分所得が前年同月比でマイナス8・0%にまで急速に低下している。
 後述するように、所得の減少は非正規雇用労働者でとくに激しく、正規と非正規の格差はますます拡大している。そして、最低賃金が低く抑え込まれていることと連関して、社会保障費を抑制し、年金を削減していく措置も強行されている。アベノミクスの推進によって、格差が拡大し、非正規など下層労働者、失業者、生活保護受給者の生活権が奪われていく状況がますます強まっているのである。

  ◆2 「女性が輝く日本」の実態

 安倍政権は、「女性が輝く日本をつくるための政策」を打ち出してきた。その意図は、少子高齢化による労働力不足を、女性の労働参加率の引き上げによって解決しようということだ。労働者派遣法の改悪や「多様な働き方の提案」は、女性をさらに大量の非正規労働者にしていくということである。男女とも非正規労働者の割合は増えているが、とくに女性の非正規労働者の割合は二〇一三年には55・8%にまで上昇している。女性労働者の過半数が非正規なのだ。
 それは、賃金の格差にも端的に表れている。二〇一三年段階で、日本の男性の平均給与五百二万円に対して、女性の平均給与は二百六十八万円となっている。しかも、正規雇用労働者の平均給与が四百六十八万円なのに対して、非正規雇用労働者は百六十八万円であり、非正規労働者の比率が高まったことによって、女性労働者の賃金総体が押し下げられてきたのである。このような結果を強いてきた労働者派遣法を、安倍政権はさらに改悪しようとしている。
 安倍が掲げた「女性が輝く日本」とは、資本の利害の貫徹でしかなく、女性の利害に真っ向から敵対するものである。安倍「成長戦略」で進めようとしている規制緩和は、女性を低賃金の非正規労働者としてさらに動員することを目的とするものである。

  ▼2章―3節―3項 アベノミクスの反人民性

 インフレを誘導して景気回復するという日銀―黒田の主張の誤りははっきりとしてきた。とりわけ、一四年四月の消費増税以降、消費はさらに低迷し、あらためて「デフレ懸念」とさえ言われる状況になっていた。とにかく、インフレ目標を実現するために、異次元緩和をさらに極端に進めるというのだ。この通りに進めれば、日銀が市場から購入する国債の量は、毎月の新規国債の九割以上となる。日銀が政府の財政赤字を穴埋めしているという、まさに放漫財政である。
 安倍政権は、アベノミクスと銘打って景気回復のための政策をとるとしてきた。安倍が掲げた「三つの矢」とは、①異次元金融緩和、②「国土強靭化」なる公共事業拡大の財政政策、③「民間投資を喚起する成長戦略」だった。推し進められたアベノミクスこそ、新自由主義政策の徹底化である。安倍政権は、大企業・富裕層を優遇し、労働者階級に徹底的に敵対する政策をとってきた。
 アベノミクスの前提となっている論理は、サプライサイド(供給者側=資本、富裕層)を優遇する税制、財政政策、金融政策をとり、そこが豊かになれば、そこからの余剰が労働者人民にトリクルダウン(したたり落ちてくる)というものである。レーガン政権時代に使われた詭弁だが、その時には、この論議があまりに欺瞞的であるがゆえに、表向きはトリクルダウンとは言わず、サプライサイド経済学ともっともらしく名づけられていたのである。
 こんなものは格差を拡大する詭弁だということは、労働者階級ならば誰でも直感で気づくことである。
 資本家や富裕層に資金がばら撒かれても、生活に困窮していない彼らは投機にむけるだけである。社会の圧倒的多数の労働者人民の賃金を上げ、貧困層にこそ税制上の優遇を図らない限り、社会総体の需要は増大しないのである。
 アベノミクスでは内需が拡大しないのだ。しかし、それだけではない。「異次元緩和」で円安が進んでも、日本の貿易赤字は増大し続けている。経常収支の黒字幅も小さくなっている。安倍、黒田の想定が大きく外れており、アベノミクスの敗北は鮮明になってきている。
 その第一の理由は、日本の産業構造が大きく変容しているためである。一九八五年プラザ合意以降に急進した円高を契機として、日本の機軸産業である自動車、電機・電子産業は生産拠点を海外に移してきた。部品産業や素材産業なども含めた全面的な生産拠点の海外移転が進み、円安が輸出拡大に直結し、GDPを押し上げるという産業構造ではなくなっているのである。
 第二の理由は、〇八年恐慌の危機はG20規模で行われた大規模な財政政策によって一旦回避されたかに見えたが、その政策の限界が世界規模で始まっている。世界各国が財政政策と金融緩和を進めてもそのようなバブルはすぐに収縮してしまう。世界経済を牽引してきた中国の需要が落ち込んでおり、米投資銀行ゴールドマン・サックスが「鉄の時代の終焉」というリポートを発表するほどになっている。いくら「異次元緩和」を進めても、世界規模で需要が停滞していれば、資金の投資先がなく、資金があふれ、通貨の価値が低下していくのは当然である。

  ◆1 消費増税で「財政再建」という政策の反動性

 安倍政権は、消費増税で「財政再建」を行う一方で、「法人実効税率を国際的に遜色のない水準に引き下げる」としてきた。これはとんでもないペテンである。
 社会保障費の増大だけを理由として日本の財政が破綻するかのような論議自体がペテンである。九〇年代の金融機関の破綻への公的資金の投入、あるいは、〇八年恐慌に対するG20総体での財政出動など、資本主義総体の危機に対応して、日本の財政赤字は拡大してきたのだ。
 安倍政権は「財政再建」を国際的にも表明し、その明示的な政策として「消費増税」をなすとしてきた。しかし、これは所得の大部分を消費にあてなくてはならない労働者に重い負担となることは、分かりきったことである。
 安倍は、「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざすとして「法人実効税率を国際的に遜色のない水準まで引き下げる」と主張してきた。この論議の前提は、日本の法人実効税率が高い水準だということである。しかし、これは全く根拠がない。財務省の資料に基づいても、法人実効税率は、日本が34・6%、アメリカが40・8%、フランスが33・3%、ドイツが29・6%であり、何ら「遜色のない」現状である。決して、法人税率が高すぎるなどという状況ではない。それどころか、フランス、ドイツは、企業の社会保険料負担率が日本よりも著しく高いのである。
 安倍の論理で言えば、消費税増税ではなく、むしろ企業負担によって社会保障を「国際的に遜色のない水準」まで引き上げるべきである。

  ◆2 派遣法改悪攻撃

 安倍政権は昨秋の臨時国会に労働者派遣法改悪案を提出し、その成立強行を狙っていた。現行派遣法において二十六業務としている限定をはずし、「最長三年」についても抜け道を作ろうとするものだ。この改悪案が通れば、正社員が「生涯派遣労働者」に置き換えられ、資本の都合に合わせた雇用調整がなされることになる。労働者の使い捨てが横行することになる。多くの労働者が不安定・低賃金・無権利の働き方を強制される社会への転換をめざすものである。
 一方で、労働政策審議会・労働条件分科会は「残業代ゼロ」制度の本格討議を開始してきた。現行労働法制下でも、脱法企業においては超長時間労働が強制され、過労死という事態が引き起こされている。アベノミクスの根幹たる「成長戦略」とは、徹底した労働者の権利破壊である。これが新自由主義に基づく規制緩和の本質である。安倍は「岩盤規制を打ち破る」などと主張しているが、ここまで搾取を強めなければ利潤をあげられないほどに、日本資本主義が腐朽しているということでもある。
 労働者の権利を剥奪しようとする安倍政権の一切の攻撃を粉砕しよう。

  ●2章―4節 安倍右翼反動政権と対決する日本労働者階級

  ▼2章―4節―1項 街頭行動に立ち上がる労働者階級人民

 二〇一〇年末のチュニジア革命、二〇一一年年頭のエジプト革命から始まった北アフリカ・中東の独裁政権打倒闘争は、街頭において意思表示することの正当性を全世界の労働者階級・被抑圧人民に思い起こさせた。それは、〇八年恐慌以降には、欧州のゼネスト、米国ウォールストリート占拠闘争として爆発した。圧制や経済的格差・貧困、各国で表れた矛盾そのものは異なっていても、労働者人民にとって理不尽な状況に対して、既成のブルジョア民主主義の手法を突破して、街頭においてその怒りを表現し、行動し、さらに運動が結合して社会的政治的力を獲得してきた。最も直接的な民主主義がそこには実現されている。
 日本における街頭行動は、かつて六〇年安保・七〇年安保においては大規模で戦闘的なデモを実現しながら、「古い形態の闘い」だという既成概念がつくられてきた。しかし、二〇一一年東日本大震災―福島原発事故による放射能汚染の拡大の中で、もう一度新たな直接行動が復活してきた。原発は「安全」ではなく、必ずいつか事故を起こし、生活と生命を根こそぎにするという現実に、日本人民は直面している。自らの生命の問題、家族の問題として、多くの人民が自然発生的に立ち上がった。対政府行動として首相官邸、国会、そして経済産業省、東京電力に対して、当然の要求を行なってきた。
 原発再稼動阻止―全原発廃炉の闘いは、直接に自分の生命に関わる問題でありながら、一方では巨大な独占資本の電力会社・電機産業・銀行資本、そして御用労働組合が政治権力と深く結びついて強行してくる国家政策とのたたかいであり、極めて政治的な闘争なのである。既成政党も、ブルジョア・マスコミも、権力・資本の側に立つのか、人民の側に立つのかが、厳しく問われてきた。反原発闘争の拡大によって、労働者人民が街頭に進出して、政治的に行動する時代が改めて拓かれてきたのである。
 日本の労働者人民が、このような政治感覚を掴み取ってきた中で、ブルジョアジーの危機意識を背景にして安倍右翼反動政権が誕生した。労働者人民の意識と大きくかけ離れたところに安倍晋三の発想はある。二〇一三年末、国家安全保障会議設置法、秘密保護法の拙速審議―成立強行が、この安倍政権の体質を明示してしまった。この反対闘争に立ち上がった人民は、安倍政権が労働者人民に真っ向から対立するものであることをはっきりと捉えた。二〇一四年、この反動攻勢は、沖縄人民の声を踏みにじって強行した辺野古新基地建設、そして、集団的自衛権「合憲」化攻撃、「テロ対策」三法制定と連続してきた。
 国会における多数を根拠に何でも強行できると安倍自身は思い込んでいる。しかし一方で、日本の労働者人民は街頭から変革する力をつかみ始めている。「安倍政権との対決」「安倍たおせ」は、左派のみの言葉ではない。多くの労働者人民の言葉になってきている。

  ▼2章―4節―2項 辺野古新基地に反対し安倍政権と対決する沖縄

 昨年十一月十六日に投開票された沖縄知事選において、普天間基地の辺野古移設反対を鮮明に掲げた翁長雄志氏が、現職で移設推進の仲井真弘多を十万票もの大差で破り、当選した。
 沖縄人民は、オスプレイ配備反対、「普天間基地の県内移設」反対を掲げて、一三年一月二十七日二十八日の対政府行動をたたかった。しかし、安倍政権は、この「オール沖縄」の建白書を一顧だにせず、オスプレイ配備―訓練を強行した。それだけではない。安倍政権は、沖縄人民の反対の声を踏み躙って、4・28を「主権回復の日」だと強弁して天皇列席式典を強行した。
 そして、沖縄選出自民党議員と仲井真前知事を屈服させて、公有水面埋め立てを「承認」させたのである。このような一連の強権発動の末に、昨夏以降辺野古ボーリング調査を暴力的に強行してきた。沖縄人民は、これを沖縄差別だと断じた。
 利権のバラマキでごまかすことができる状況ではない。沖縄人民の憤りは保守勢力の一部まで巻き込んで大きな力を獲得してきている。

  ▼2章―4節―3項 労働者階級人民の利害に立脚し安倍政権打倒の政治決起を

 昨年、われわれは「戦争へ突き進む安倍右翼反動政権を打倒しよう 新たな時代を切り拓く左派勢力の結集をともに進めよう」と題した呼びかけを、『戦旗』とHPとで行ない、また、『共産主義運動年誌』にも掲載していただいた。多くの団体、個人から、賛同を含めた反応があり、さまざまな論議と共同行動が開始されている。
 集団的自衛権「合憲」化、日米ガイドライン改定、戦争立法、辺野古新基地をはじめとする基地建設・基地強化の攻撃、労働者派遣法改悪攻撃をはじめとする劣悪な労働条件の強制、資本の都合に合わせた解雇攻撃、原発再稼動、日本軍性奴隷制度をはじめとする侵略戦争の歴史の改竄。安倍右翼反動政権の反動攻勢に対する労働者階級人民の憤怒は、街頭に大きく広がっている。
 今こそ、日本の左翼が力を発揮しなければならない。この時代の政治闘争を切り拓いていく左派の統一戦線を構築することが問われている。さまざまな困難を乗り越えて新たな闘争をともに推し進めていこうではないか。



  
■3章 党建設

  戦後七十年、改憲粉砕―安倍打倒進め、プロレタリア革命への反転攻勢を


 二〇一五年の階級闘争と党建設の任務を次の各節にて提起したい。

  ●3章―1節 左派総結集で安倍政権の実力打倒を!

 戦後七十年の今年、安倍政権と正面から対決する階級決戦の現場と各地街頭―中央政治闘争を結合し、機動的に闘う左派勢力を断固として創出していこうではないか。その闘いの焦点は、次の政治課題にある。
 第一には、反基地闘争を基軸にして、反戦闘争―反帝闘争を全力で闘いぬくことである。辺野古新基地建設の実力阻止をはじめとする日米帝の差別軍事支配からの沖縄解放闘争であり、これと有機的に連関する米軍再編粉砕―集団的自衛権阻止―戦争諸法案の制定粉砕の闘いである。また岩国基地強化阻止、京丹後米軍Xバンドレーダー反対、呉・神奈川・横田などの反基地闘争の全国ネットワークの形成を促進することである。さらに韓国やフィリピン、台湾、オーストラリア、米国などの、反戦反基地の国際連帯も前進している。これら現地の反戦反基地闘争を牽引し、とりわけ集団的自衛権とその戦争関連法制の制定を粉砕する国会包囲の六月全国総結集の大高揚をつくりだし、基地撤去―安保破棄の大高揚とその国際連帯運動を進めていこうではないか。同時に、反戦闘争の拠点―三里塚闘争を推進することである。市東さんに対する農地強奪を許さず軍事空港粉砕を断固闘いぬこう。
 第二には、川内原発の再稼働阻止の現地実力闘争であり、連続した原発の再稼働・輸出をゆるさない大衆的実力行動である。大飯原発の再稼働阻止の大衆実力闘争と原発利権よりも「人格権」優先など画期的な大飯原発差し止めの福井地裁判決、経産省前脱原発テントひろば、福島の切り捨て・差別・被曝からの解放を求める闘いと支援連帯する粘り強い闘いは、社会変革の広範で深い内容を提起している。再稼働が狙われる川内や伊方、高浜に闘争拠点や占拠テントをつくり、現地住民の反原発への組織化と決起をすすめ、大衆的実力阻止闘争が繰り広げられている。われわれも、この再稼働と原発輸出の阻止を大衆的実力行動で総力で進めていかねばならない。現地実力闘争の先頭にたって闘い、左派勢力形成を促進していこうではないか。
 第三には、派遣法改悪や賃下げ・増税・TPPなどによる、雇用・生活・労働・農業など保護規制の破壊を許さず、新自由主義攻撃に対する反貧困・グローバリゼーション粉砕をたたかうことである。安倍は「企業活動が世界一しやすい国にする」「規制緩和・成長戦略」「国家戦略特区」を謳っている。それらは、新自由主義攻撃であり、労働苦・生活苦・貧困化と生活破壊・失業を構造化し、階級対立と矛盾を強めるものである。とりわけ若者にこの攻撃は集中して犠牲を強いている。労働者人民・青年・学生の総抵抗と団結・連帯を拡大し、闘おうではないか。左派勢力は、労働組合や諸運動団体の抵抗と団結の拠点を断固として前進させていかねばならない。
 第四には、在特会・田母神グループなど、ファシスト排外主義勢力を社会的に解体するたたかいである。二〇一五年、われわれは左派勢力の総結集を推進し、安倍政権打倒の階級闘争の歴史的前進を切りひらく決意である。

  ●3章―2節 反帝国際主義派の潮流建設

 われわれは、反帝国際主義に立脚した労働者人民の闘いを拡大していかなくてはならない。
 第一に、安倍政権の中心的な攻撃の一つである民族排外主義・愛国心教育による日帝の侵略戦争への動員態勢づくりと闘うことである。これに屈するのか、それとも跳ね返すのかは、反帝国際主義の闘いを自らのものにできるのかどうかにかかっている。
 戦後七十年をむかえ、安倍政権は「戦後レジームからの脱却」=改憲攻撃を強めている。靖国神社への首相や政府閣僚の参拝策動、かつてのアジア侵略戦争・植民地支配の謝罪・反省を公式表明した「村山談話」の無化、日本軍「慰安婦」制度への政府・軍関与を認めた河野談話の改竄に向けた「検証」作業、愛国心・道徳教育の正規授業化などが行われている。民族排外主義と日帝のアジア侵略・植民地支配の居直りや賛美を進める安倍に対して、アジア人民の怒りと批判は沸騰している。安倍政権そのものへの怒りはもちろんのこと、極右ファシストの安倍を政権に座らせている日帝本国の労働者人民の行く末にも、闘うアジア人民は深い危惧を抱いている。日帝本国の労働者人民は、かつてアジア侵略戦争に動員され、アジア人民虐殺の加害者となった。戦後、日本政府・資本が欺瞞的な戦後賠償やODA援助によってアジア各地の経済侵略を広げていった。莫大な日帝の海外権益を軍事力=自衛隊によって守るために、アジア各地の人民を殺戮し支配するために、日帝―安倍政権は自衛隊海外派兵の無制限な強化に踏み出そうとしている。それ故に、アジア人民と連帯し、米日帝のアジア侵略戦争を阻止する反帝国際主義のたたかいは極めて重要なのである。
 第二に、反帝国際主義を闘う路線は、現代のプロレタリア世界革命の路線を復権し、かつ反資本主義と共産主義の運動を再建する一つの機軸となる。
 東アジアでは、中国の大国化と民族主義・対外膨張の強まり、米帝のアジア重視・再均衡戦略としての巻き返し、日帝のアジア権益支配の護持と強化、韓国・台湾・ASEAN諸国・インドの台頭など、各国の支配階級が激烈な競争をくりひろげている。その内部では、階級矛盾・民族差別・政治抑圧ならびに人民解放闘争が不断に生み出されている。朝鮮民主主義人民共和国は米韓日の朝鮮戦争策動や制裁を六十五年間も強いられている。許されざる核武装などの戦時体制を強化し、一部開放経済など、生き残りを模索している。
 日帝本国の労働者人民の解放運動は、民族排外主義や国益主義・差別分断のくびきを打破し、アジア太平洋地域人民との国際連帯の思想と行動を実践してこそ前進するのである。各地で闘う労働者人民の相互交流と国際支援、共通の階級敵である日米帝との国際共同闘争はきわめて重要である。「万国の労働者、被抑圧民族・人民は団結せよ」このマルクス主義的国際主義とプロレタリア世界革命を単なる理念にとどまらせず、現実の実践路線として復権できる。それは、現代の資本主義・帝国主義の世界支配をラディカルに変革する共産主義運動の希望と確信を再建する闘いの核心である。スターリン主義や社会民主主義は、労働者人民のインターナショナリズムを破壊し、共産主義運動の希望に満ちた闘いを一国主義・民族主義の対立へと捻じ曲げ、崩壊へと至らしめた。この負の歴史を乗り越えなくてはならない。日帝本国だけでなく世界中の原則的な共産主義や左翼の諸グループと実際に連帯し、スターリン主義の誤りと分岐した反帝国際主義派の国際潮流を創りだしていかねばならない。
 第三には、アジア太平洋地域の反帝国際統一戦線を前進させていくことである。
 われわれ共産同(統一委)の国際主義実践は、アジア太平洋地域の革命勢力の結合=アジア・インターの創設、さらには各国地域の左派労働運動・人民運動の基盤に立った反帝国際統一戦線の建設、この両輪の活動を牽引するものであった。
 この間、アジア太平洋地域の共産主義・左翼の諸グループの交流と連帯行動は、国境や弾圧を越えて、確実にすすめられている。各国地域の労働者人民の闘いに立脚した反帝国際統一戦線の建設は、国際階級闘争の第一級の課題である。われわれは、その国際建設に断固として寄与する決意である。
 現在、「日米の侵略支配に反対するアジアキャンペーン」(アジア共同行動、AWC)が一九九二年の「日米軍事同盟と自衛隊海外派兵に反対する国際会議」開催から二十三年目を迎える国際ネットワーク組織として活動している。AWCフィリピン・バヤン、AWC韓国委員会、台湾労働人権協会、インドネシア文化団体、そしてアジア共同行動日本連絡会議(AWC日本連)、オブザーバーの米国ANSWER連合で構成されている。侵略戦争反対、日米軍事基地の新増設反対闘争、アジアからの米軍基地撤去運動、APEC・WTO・TPPやG8などに対する現地反対闘争を含む新自由主義グローバリゼーション阻止闘争などが行われてきた。大衆的な反帝国際連帯のAWC運動を支持し、われわれはその前進を断固として支える。

  ●3章―3節 革命準備―階級闘争構造の建設

 安倍政権打倒を進め、プロレタリア革命に向かう新たな階級闘争構造を建設しなければならない。新たな階級闘争構造は、革命的労働者党の大衆的基盤建設の路線形態である。それは、階級闘争主体の組織化であり、全国各地における将来のコミューン・ソビエトにむけた今日的闘いなのである。即ち、階級的労働運動、被抑圧人民・被差別大衆の解放運動、そして青年運動、学生運動、これらの強化をかちとるのである。

  ▼3章―3節―1項 階級的労働運動

 革命的労働者党にとって、階級的労働運動建設はその核心的基盤である。現在、労働運動は、政府・大資本の攻勢を激しく受けている。非正規職労働者の構造的拡大、賃下げ・長時間労働の攻撃、労働三権・労働基準法などの切り崩しと空洞化、解雇自由化の先取り攻撃など、労働者と労働運動を取り巻く状況は大変厳しい。職場・地域における労働者の雇用・労働条件・生活・健康・いのちを守り、労働苦・生活苦の相談と解決の受け皿となり、抵抗と団結の砦となる労働組合を拡大することは決定的である。われわれは、全国各地にて、労働組合の強化となる活動をすすめ、左派労働運動の発展を担っていかねばならない。とくに搾取と差別抑圧の集中する非正規職・女性・青年の労働者を労働組合に合流させていくことは、現代の階級的労働運動建設の要である。これは労働運動再生に不可欠である。われわれは、労働者大衆が労働組合へ団結する組織化路線を前進させ、党として労働運動活動家の建設や配置を断固として強めていく。また反戦反基地・反差別・国際連帯を担う左派労働運動を総力で発展させる。沖縄解放闘争・辺野古新基地阻止の現地闘争、岩国・労働者反戦交流集会実行委の現地行動、神奈川や東京・横田の基地反対など各地の反戦反基地を積極的に進めよう。韓国・フィリピンの戦闘的労働運動や外国人労働者支援などの反差別・国際連帯も大切である。安倍政権打倒を進める社会的勢力として大きな役割を担う左派労働運動の発展を断固として支えていかねばならない。

  ▼3章―3節―2項 被抑圧人民・被差別大衆の解放運動

 被差別大衆の解放は、共産主義の重要な課題である。世界の労働者階級の団結、革命と共産主義の実現のためには、差別問題を止揚しなければならない。それぞれの歴史や社会的在り様が異なるが、部落差別、障害者差別、女性差別、被爆者差別、その他の差別問題がある。われわれは、被差別大衆の差別糾弾権を支持し、解放運動の大衆的組織を発展させるために努力し、被差別解放戦線の活動家・共産主義者を育成していかねばならない。安倍政権の戦争国家化を受けて、在特会や田母神グループなど排外主義集団が勢いづき、被差別大衆や左翼への襲撃、ヘイト・スピーチを激しくしている。被差別解放戦線の闘いは、重大な局面にある。闘いの防衛と発展を断固かちとっていかねばならない。
 部落解放運動では、激発する差別事件を糾弾し、石川さんの無実・狭山再審闘争の勝利、福島・沖縄に連帯した反差別共同闘争、地域共同闘争などを、推進しなくてはならない。障害者解放運動では、各地で拠点・センターを築き、反戦反基地闘争、路上生活者支援、医療観察法など障害者隔離抹殺・保安処分攻撃を許さない闘いを進め、日帝―安倍政権の障害者抹殺攻撃と対決し、プロレタリア解放の一翼としてたたかおう。被爆者解放運動は、戦後七十年のなかで「核と人類は共存できない」という運動の地平をいっそう前進させている。8・6広島の日韓共同行動、原発の再稼働阻止と廃炉、福島被曝者への連帯、核戦争阻止、被爆者・被爆二世三世への国家補償など、反戦反核被爆者解放運動を進めていこう。女性解放運動では、あらゆる差別を許さず、女性労働者が団結する階級的労働運動や「軍隊と性暴力」に反対する闘いを前進させよう。
 被抑圧人民の闘いとしてある沖縄解放闘争は、重大な決戦状況にある。沖縄人民の自己決定権を支持し、沖縄―「本土」を貫く基地撤去―安保廃棄を前進させ、日米帝の差別軍事支配を粉砕する沖縄解放闘争をすすめよう。在日朝鮮・韓国人、在日中国人の自己決定権を支持し、また滞日外国人労働者の諸権利を擁護し、差別・排除の入管法・入管体制を粉砕しよう。

  ▼3章―3節―3項 青年運動・学生運動

 新たな階級闘争構造建設の課題にとって、学生運動、青年運動の拡大強化は文字通りの戦略事業である。厳しい就活と差別選別、新自由主義の自己責任論や貧困化・失業など、これらによる抑圧や閉塞感が、青年、学生に集中している。次代の社会を中心で担う青年・学生たちが安倍政権打倒や反戦・反基地、反貧困、反資本主義、反帝国際主義へと決起することを工夫して推進しなくてはならない。若者たちが現代資本主義・帝国主義打倒―共産主義運動と切断されている状況をなんとしても突破しなくてはならない。若者が参加する現代の共産主義運動とその希望を再構築していこうではないか。これは一時代をかけた総力戦である。

  ●3章―4節 日共スターリン主義と宗派主義の誤り

 安倍政権打倒の全人民政治闘争とその広範な政治統一戦線を牽引していかねばならない。その中でプロレタリア革命、共産主義運動の再建にとって、これに敵対・対立する日本共産党や黒田・革マルの宗派主義集団などの誤りへ原則的批判が強められなくてはならない。

  ▼3章―4節―1項 日共スターリン主義批判

 日共は、「鮮明野党」をかかげ、「自共対決時代」と宣伝し、存在感や党勢拡大を実現している。一昨年夏の参院選では野党勢力のなかで唯一の議席増を実現した。「第三の躍進の時代」「対決、対案、国民との共同」なる政策実現力量を誇示している。脱原発、辺野古新基地建設阻止など米軍基地問題や秘密保護法廃棄・集団的自衛権反対、反TPP、消費税増税反対、労働法制改悪阻止などでは「一点共闘」として統一戦線を強め、諸派や無党派などとの共闘を進めている。国際活動の面では、国連や地域機構を梃子として反米・日米安保反対の平和外交路線を主導し、日帝のかつてのアジア侵略・植民地支配など戦後補償問題や共和国核問題を北東アジア平和協力構想で解決するという。社会主義・共産主義論では、これまでのレーニン「国家と革命」などの「労働に応じた分配」の社会主義段階、その後の「欲求に応じた分配」の共産主義段階といった未来社会構想を見直しはじめた。不破によれば、労働時間の大幅短縮に基づき、生存と自由時間の保証を担保として、人間的発達の解放を開始する「人類本史の始まり」論というモチーフで共産主義・未来社会論を構想している。
 日共は、スターリン主義右派の一国主義・民族主義・議会主義・平和革命論の路線を体現してきた。彼らの方法論は、機械的で図式的な発展段階の史観とその学説の啓蒙主義でしかない。労働者人民の革命的実践や自己解放運動を抑圧し、議会政党・日共とその支援団体へ集約し「枠組み」づける。日本革命は資本主義の枠内の民主主義革命と定めている。
 昨年一月に行なった日共の第二十六回大会の大会決議は、共産党の路線の特徴と誤りを端的に示している。
 まず第一に、日本資本主義の改良―社会民主主義の国民闘争路線という小ブルジョア民主主義派へ成り果てた。政治情勢分析においては、日帝や米帝の批判、独占資本と労働者人民の階級闘争の分析と見地が皆無である。「国民」を圧迫する「異常」な支配勢力として「アメリカ」と「財界」その利害に立った自民党政治の打開が主張されている。
 第二に、世界情勢では、階級矛盾・貧困や帝国主義の戦争と民族抑圧が措定されず、二十世紀の植民地体制が崩壊し、民族自決権の原理の公認化と主権国家の多数登場として、二十一世紀を特徴づける。これは、米帝など帝国主義と民族・植民地問題が後景化した「世界の構造変化」だと賛美する。「平和と社会的進歩」を促進する力が高まっているという。大国中心主義は終わり、戦争や貧困、環境問題などは、「国連」や「地域機構」などの平和秩序や経済主権の形成で対処するとし、新興国・途上国のめざましい台頭・前進を打ち出している。核兵器廃絶を求め、「アメリカ型のルール」などの押し付けに反対し、経済主権、対等・平等・互恵、多国籍企業や投機資本への民主的規制などの国際経済秩序を主張する。
 第三には、社会民主主義としての改良路線とその政策の数々を方針化している。安倍政権の暴走と国民との矛盾の拡大、アベノミクスのトリクル・ダウン、おこぼれ経済学などに反対する。賃上げと雇用安定を求め、大企業・富裕層への課税と内部留保吐き出しによる経済危機の打開策を方針とする。
 「アメリカいいなりをやめ、独立・平和の日本」をめざし、沖縄をはじめとする米軍基地問題、TPP撤退、安保廃棄を国民多数派形成で実現する。統一戦線の現状と展望については、すでにのべたように一点共闘で成果をうみだしていると総括する。民主連合政府をめざし、無党派層や革新懇談会、そして保守における資本主義修正派も連合政権の相手とする。「二つの異常をただす」という一致点をもって、「国民が主人公」の日本へ変革するという方針である。
 第四には、日本の民主主義革命をすすめ、その後の発展段階の歴史を展望する社会主義・共産主義論をめざすとする。だが日共の共産主義は、マルクス主義の革命的実践という性格を放棄し、歴史の法則を歪曲し、バラ色の未来社会の啓蒙学説へ転落させるものである。巨大な経済力の水準を継承した日本の社会主義がめざすことを次のように語る。「健康で文化的な最低限度の生活をすべての国民に保障」。「浪費型経済」「利潤第一主義」の問題を解決する。「生産と経済の推進力」が「資本の利潤追求から、社会および社会の構成員の物質的な精神的な生活の発展に移される」。これによって、「人間による人間の搾取を廃止し、浪費的部分の一掃、労働時間短縮を基軸にして、人間的発達をおこなうことが可能となる社会」が共産主義であると。こんなバラ色の啓蒙宣伝が日共の社会主義・共産主義論なのである。
 天皇制と自衛隊については、その階級支配の暴力と差別抑圧の役割・性格の規定を捨て去り、それらの廃止や解体は「将来、情勢が熟した時」「国民の合意や総意」によるとして、完全に容認している。天皇一家の「慶賀」には、日共として祝福さえしている始末である。
 日共の日帝免罪、愛国主義への屈服は、釣魚諸島・独島・北方諸島にたいする日帝の帝国主義的領土拡張主義の擁護、テロ資金弾圧法への賛成、朝鮮民主主義人民共和国への敵視決議への賛成などに顕著である。徹底的に断罪されなくてはならない。
 日共批判の最後に、われわれ共産同(統一委)の革命路線を対置しよう。労働者階級・被抑圧人民・被差別大衆の自己解放運動、青年学生運動、それらの革命的実践を進め、アジアの革命運動と国際連帯したコミューン・ソビエトの直接民主主義の自己権力機構とその全人民武装によって、日帝ブルジョアジ―の暴力的打倒・米帝放逐―プロレタリア独裁権力を樹立し、共産主義への過渡期をかちとる路線である。プロ独―共産主義未来論では、労働時間短縮―人間的発達にむけた自由時間論も含むが、労働の解放を措定しなくてはならない。即ち「固定的な分業のない社会」(『空想から科学へ』)という差別・搾取からの人間解放、「各人の自由な発展が万人の自由な発展の条件であるような協同社会」(『共産党宣言』)、「労働がたんに生活のための手段であるだけでなく、生活にとってもまっさきに必要なこと(生の第一の欲求)」(『ゴータ綱領批判』)を復権しなくてはならない。

  ▼3章―4節―2項 宗派主義批判

 一九五〇年代、国際的なスターリン主義批判の影響をうけ、日共スターリン主義を批判し、プロレタリア世界革命をめざす日本のトロツキスト・グループの潮流が存在した。そのなかから、日共スターリン主義の没主体的で客観主義的でかつ機械的で図式的な「唯物論」の誤りを批判し、反スターリン主義の党派組織が登場した。黒田・革マル集団である。彼らは、主体性哲学と初期マルクスの経済学・哲学に依拠し、その中心的テーゼとして労働力商品化による人間疎外論-疎外からの人間解放という、いわゆる疎外革命論を定式化した。それを体系化づけた「プロレタリア的人間」「共産主義的人間」といった思想と主体形成・自己変革の活動によって、労働者・学生などの「革命化」、日帝・ブルジョア国家の暴力的転覆、「反スターリン主義」の主体形成活動・思想闘争・路線闘争を組織内外で徹底化―他党派解体を推進するのである。彼らは、「宗派主義集団」に転落し、階級闘争・統一戦線の牽引や共産主義運動の創造的再建に対して、制動・偏狭な囲い込み・敵対をするに到っている。
 宗派主義集団の誤りの第一は、いわゆる「共産主義・党母体論」にある。マルクス主義の共産主義運動とは、『ドイツ・イデオロギー』でいう「現実的な運動、現在の状態を止揚する現実的な運動」である。この現実的な運動から遊離した社会主義のある潮流について、かつてマルクスは『共産党宣言』で「空想的な宗派主義」の誤りと鋭く批判した。共産主義者とプロレタリアート・労働者諸党の原則的な関係は、「特別の位置や利害にたたない」「特定の型をおしつけない」、現在にあって将来の利害を、民族的利害だけでなく国際的で全体の利害を推し進めるのである。「労働者階級の解放は労働者階級自身の事業である」という労働者人民の自己解放運動の原則にたち、その運動と団結を支えながら先進的牽引を積極的にすすめるのが革命的労働者党の役割である。そこでは、大衆的階級闘争と共産主義運動における各々の区別と連関を明確化したうえで、相互の信頼と発展をすすめる活動となるのである。現代の宗派主義集団における党・階級の組織論は、党組織は「実現されるべき将来社会の萌芽形態」であり、「共産主義的人間」の主体形成の永遠の今として意義と役割をもつというのだ。将来の共産主義社会をつくりだす母体は、党組織の「共同体」に存在するという転倒した内実なのである。
 反スターリン主義運動をかかげて社会民主主義勢力や共産党への永遠の反対派運動をすすめることや、党と労働組合を区別できずに一体的推進などが繰り広げられている。
 これらの誤りとセクト主義の発生ならびに大衆運動の引き回しと破壊、党・「統一戦線」の一体化した同心円的拡大の組織化は、「共産主義党母体論」から不断に湧き起ってくるのである。
 第二には、現代のプロレタリア革命の主体を「組織された労働者」に狭めて、被抑圧民族・人民や被差別大衆を革命主体から排除するという誤りである。現代の資本主義・帝国主義は、階級支配の重層的な差別抑圧の分断構造を編成している。被抑圧民族・人民や被差別大衆は、歴史的経過と解放闘争への弾圧によって差別抑圧と分断・排除・抹殺の構造へ陥し込められてきた。これらの階級支配と差別抑圧の現実を変革する日帝打倒―プロレタリア社会主義革命は、労働者階級解放とともに、被抑圧民族・人民、被差別大衆のそれぞれの解放運動も革命主体と措定しなくてはならない。宗派主義集団は、「疎外された労働」の当該労働者の直観から革命的労働者階級へと自覚していくという主体形成路線のために、被抑圧民族・人民や被差別大衆の解放運動を共産主義運動に位置づけることができない。敵対してくる。決定的なあやまった路線内容である。

  ●3章―5節 共産主義運動の再建と党勢拡大

 わが共産同(統一委)は、いまから十一年前、旧戦旗派・旧全国委員会派が統合し、綱領・規約、組織テーゼ、戦術テーゼをかちとった。その要旨は次のものである。
 第一に、綱領をもって、現代の革命的労働者党の建設を宣言した。綱領一部では、現代の資本主義・帝国主義支配を打倒し、プロレタリアート・被抑圧人民の任務である社会主義世界革命、永続革命・共産主義運動を規定した。綱領二部は、日本革命の内容である。日本革命の基本性格、天皇制と日米安保を軸とする現代日本帝国主義の形成、日本革命の性格と特質を明確化した。続く日本のプロレタリア独裁政権の政策についての基本的考え方では、プロ独下の政治・経済・社会・国際の革命的諸政策について記してある。綱領三部の革命準備は、政治闘争・国際連帯・労働運動・民族問題・反差別運動・環境問題・反原発・教育問題・議会の利用・反ファシスト闘争など、労働者人民の具体的な闘争方針によって構成されている。
 第二に、戦術・組織の各テーゼは、階級闘争の様々な発展段階に応じた革命的労働者党の活動形態を規定している。反安保・反改憲など全人民政治課題の牽引一般や、社共の左翼反対派活動など、これまでの共産同の戦略戦術主義的限界は転換された。要するに、プロレタリアート・被抑圧人民・被差別大衆の階級形成を営々と組織するのである。組織原則では、民主主義的中央集権制のもと、警察権力の弾圧と闘いながら、可能な「公開制と民主的運営」を定めている。
 第三には、第二次共産同が掲げた「プロレタリア国際主義と組織された暴力」を発展させた。国際主義活動を実際に組織し、暴力革命路線は武装蜂起戦術とした。
 現在、われわれは、共産主義運動の再構築、その希望の復権にむけ、現綱領を労働者人民解放の武器とする強化―改定に取り組んでいる。そのポイントは、労働者人民の解放運動とくに若者に深く立脚することにある。また、スターリン主義路線の誤りとソ連崩壊を教訓とする新たな共産主義論・未来社会論の理論作業に向き合っている。さらには、日本革命とプロレタリア独裁の基本政策をより具体化すること、その他である。この作業は、今後、数年をかけ、推進する方針である。
 綱領改定活動をはじめとする共産主義の理論・思想の活動強化は、現実の労働者人民・青年学生の運動や闘いと有機的に結合し、彼らの内在的な解放の希望を物質化することに結実させていかねばならない。
 同時に、国内的にも国際的にも原則的な共産主義者・社会主義者・左翼グループとともに、共産主義運動の再建活動を切磋琢磨していくつもりである。機関紙誌の『戦旗』や『共産主義』において不断に発信し、左翼友好団体の媒体も積極的に活用する予定である。また折にふれて、研究学習会、フォーラム、党の公開企画などを、各地で工夫し、進めたい。
 二〇一五年、われわれは、職場や街頭、ターミナル、官邸前や国会など、あらゆるところで、安倍政権打倒の全人民政治闘争を牽引し、左派勢力を形成してたたかっていく。同時に、日帝打倒―プロレタリア革命にむけた階級闘争構造の建設に総力で取り組んでいく。労働者・被抑圧人民・被差別大衆、青年・学生の闘いの発展を全力で牽引していく。こうした闘いの中で、青年・学生の大規模な決起をつくりだし、党勢拡大の躍進をかちとっていく決意である。ともにたたかわん!


 

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