共産主義者同盟(統一委員会)


1386号(2012年1月20日) 政治主張






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   貧困・格差・失業を打ち破る決起を

  反原発!3・11福島現地へ

  環境アセス粉砕! 辺野古新基地建設阻止

  アジアから米軍を総撤収させよう






   【第二新年号論文】

  ■第4章―政治運動方針

  反帝国際主義の旗幟を鮮明に一二年階級闘争の前進を切り拓け




  
●1節 世界恐慌の深化のなか、激動するアジア情勢

 二〇一一年は、世界恐慌の深化が各地に波及し、格差と失業・貧困・差別抑圧からの解放をもとめる労働者・若者など総じて人民決起が大爆発した年であった。それは、中東・北アフリカ、ギリシャ・スペインなど欧州、さらにウォール街占拠運動など米帝本国においても顕著であった。
 アジア情勢も激動のうちにある。さる十二月十九日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、共和国)の金正日(朝鮮労働党総書記であり、朝鮮民主主義人民共和国国防委員長)の急死が公表された。米帝は、日帝・韓国との軍事一体化を進め、作戦計画五〇二九をもって、共和国への軍事介入の機会を狙っている。米帝の五〇二九計画は、金正日体制の崩壊を想定し、内乱・暴動・大災害・核事故などが発生した際に発動する朝鮮戦争計画の一つである。すぐに中国政府が「朝鮮半島の安定は中国の国益である」と米日韓に通告し、朝鮮戦争策動を牽制した。アジア太平洋地域において、米日中など帝国主義・大国間の支配権争いや、各地の階級闘争が激しくなっている。
 長期不況にあえぐ日帝本国では3・11大震災が発生し、被災者支援・反原発の全人民の闘いが巻き起こっている。米軍再編粉砕―普天間基地撤去・辺野古新基地建設阻止など沖縄解放闘争、岩国・神奈川の反基地闘争も連綿と闘われている。とくに女性差別と差別軍事支配をあらわにした沖縄防衛局の辺野古新基地攻撃は絶対に許されない。沖縄人民は怒りを沸騰させ、アセス評価書の年内提出を粉砕した。
 中国では、不動産バブルの不良債権化、腐敗と暴力的抑圧、格差拡大が進行している。欧州危機は中国経済にも打撃を与えた。欧州輸出市場が低迷し、欧州大銀行が中国・韓国などアジア各地から資本を回収している。「調和と均等開発」を掲げる中国胡錦濤政権は、金融引き締めから「高成長」維持の金融緩和へ切り換え、国内各地の矛盾と対立を「融和」し、大国主義的民族主義、対外権益を拡張している。中国各地の党官僚や企業家・経営者・外資など特権層・支配階級にたいする労働者・農民・少数民族そして若者の不満と反抗は極度に高まっている。暴力的統治に抗し、格差・貧困・無権利状態に怒り、民主主義と平等・公正を求める中国各地の人民決起はスト、デモ、「暴動」などとして噴出している。
 すさまじい貧富格差と競争社会へと再編され、非正規化・貧困化・新自由主義攻撃のはげしい韓国では、李明博政権打倒の闘いがはげしく行われている。学生・若者による授業料半減要求の大闘争、ソウル市の学校給食廃止にたいする大抗議、韓進重工での長期篭城闘争、非正規労働者の決死的闘い、強行された韓米FTAの撤廃闘争等である。反米統一闘争、反戦平和・米軍撤去・反基地闘争も活発である。とりわけ済州島江汀(カンジョン)の海軍基地建設反対闘争、群山の駐韓米軍反対闘争など、韓国各地の反基地闘争は地元住民や労働者民衆運動に根を張って取り組まれている。
 フィリピンでは農村・貧農人民の武装解放闘争が続き、食糧・燃料・公共交通など生活必需品の投機的高騰に反対するストライキを含む労働者人民闘争が激化している。また全国一律最低賃金百二十五ペソへの引き上げや民営化・契約労働者化・労組つぶしと闘うKMUなど戦闘的労働運動の闘い、フィリピン・トヨタ労組の解雇撤回闘争などである。さらにバヤンなどが駐留米軍の撤収を求め、活動家への政治的虐殺・不当な逮捕拘束をゆるさない闘いなど、アキノ政権打倒―反帝民族解放闘争が進んでいる。タイでは、労働者・農民など人民大衆の不満と闘いの受け皿づくりに成功したタクシン派が総選挙で勝利し、インラック新政権が登場した。
 米帝―オバマ政権は、「太平洋国家」をかかげ、アジアでの支配力の回復を急激に進めている。輸出倍増と投資拡大などTPPによる経済覇権の巻き返し、中国・共和国への軍事的包囲・圧力を強め、日豪韓との軍事同盟と米軍配置の再編を強化している。イラクから米軍は撤収したが、いまだに相当な米軍兵力をクウェートなど中東地域に配備し、アフガン戦争が続行されている。イランへの「核施設破壊」を突破口とするアハマネジャッド反米政権を打倒する攻撃が、米帝・NATO諸国・イスラエルによって本格化している。莫大な戦費負担に苦しむ米帝は、アジア太平洋地域の権益を支配するために、米軍の下に同盟国の日帝や韓国、豪州、ASEANの軍事力を編成しようとしている。米軍と自衛隊の一体化、辺野古新基地建設・岩国基地大強化などの在日米軍再編の攻撃、日米統合軍事演習の激化、米海兵隊の豪州配備、韓国済州島江汀海軍基地建設、フィリピンなどASEANと米軍の軍事演習強化などは、その表れである。
 日帝―野田政権は、日米同盟を機軸とし、共和国・中国への対峙と民族排外主義を激化させ、新防衛大綱の下、与那国・宮古・石垣など琉球諸島への自衛隊配備を増強し、南スーダンPKOなど自衛隊海外派兵を強めている。武器輸出三原則も緩和する。これらは九条破壊―改憲攻撃にほかならない。野田政権は、日帝主導のASEAN+6に加えて、米帝が支配するTPPへの参加を表明した。これによって労働者人民にたいする「底辺への競争」が強まり、低賃金・非正規・失業・貧困化はいっそう加速する。農民と農村を切り捨て、食糧自給・安全な食品の破壊も進む。医療・介護・保険・教育は、「自己責任」論によって米日など多国籍企業の利権構造へ再編されようとしている。消費税増税については一四年8%、一五年10%へと段階的引き上げを打ち出した。1%の富裕層、99%の困窮層という階級格差が日帝本国でも構造化しつつある。
 橋下―大阪維新の会が「変革」を掲げて大阪知事選・市長選で圧勝した。大阪では、「君が代」起立斉唱の義務化とこれを拒否する教育労働者・地域住民を排除・処罰する「教育基本条例」や、公務員労働者の組合つぶし・大リストラ合理化を強行する「職員基本条例」の制定が橋下によって強行されようとしている。橋下―大阪維新の会は、困窮する人民の憤激を既存政治秩序の右からの再編へとねじ曲げ、民主的諸権利を破壊し、天皇制・天皇制イデオロギーと民族排外主義、新自由主義的弱肉強食の攻撃を進める現代のファシスト排外主義勢力である。断固粉砕していかねばならない。
 我々の二〇一二年政治闘争は、重大な攻防局面にある。我々の任務は革命的労働者党として帝国主義の世界的打倒にむけた内外の階級闘争に責任を果たしていくことである。とくに、日帝打倒―社会主義革命の本格的準備にむけて、各地・各戦線の抵抗闘争とその団結をすすめ、新たな階級闘争構造を建設していく。統一戦線を前進させ、革命のコミューン・ソビエト建設を目指していく。その核心的闘いは反帝国際主義の政治闘争路線である。米日など帝国主義国家権力・独占資本とその別働隊であるファシスト排外主義勢力との攻防を大衆的実力闘争で担い、アジア太平洋各地の労働者人民解放闘争との国際主義的連帯や団結を形成することである。これこそが帝国主義の侵略戦争・排外主義の攻撃を打ち砕くことができる。日本共産党や日和見主義勢力の部分的で改良的な闘いでは決定的に不十分である。それは差別排外主義・民族排外主義の暴風と闘えない。我々は反帝国際主義の政治闘争路線にたち、二〇一一年を総括し、二〇一二年政治方針を提起する。


  ●2節 反原発・反戦・国際連帯の前進をかちとった一一年

 三月十一日、東日本大震災が起こった。大地震・大津波は、死者一万五千八百四十四人、行方不明三千四百九十三人(十二月十一日時点)、今も三十三万人の避難者を出し、途方もない被害が続いている。同時に福島第一原発が崩壊し、メルトスルー、水素爆発へ至った。福島を中心とする広大な地域が放射能に汚染されている。現在まで原発震災は収束せず、放射能汚染と被曝が広がっている。福島現地や東北関東などで日々被曝が続いている。二十キロ圏内や計画的避難区域をはじめ、放射能汚染からの避難者はもちろん増え続けている。福島からの避難者は十五万人を越える。被災地域の離職・失業・生活破壊が大規模に発生した。岩手・宮城・福島の被災三県では、今日でも七万人超の失業増であり、離職票を受け取った者は十五万三千百七十三人となっている。
 大震災の直後、日米軍事同盟のもとで核戦争対策をとった日米共同作戦が「災害救援」として発動された。朝鮮戦争有事の適用である。自衛隊では初の陸海空三軍統合部隊が編成され、約十万数千が出動する。日米共同調整所(共同指揮所)が米軍横田基地、自衛隊仙台駐屯地、市ヶ谷の防衛省地下司令部に設置された。米軍は、兵力一万八千、米核空母ロナルド・レーガン、強襲揚陸艦エセックスなど艦艇十九隻、航空機百四十機、七十億円の経費を投じた。「トモダチ作戦」である。
 3・11大震災は、全人民と革命的労働者党に新たな階級闘争任務を要求した。我々はこれに全力で応えた。その第一は、復旧・復興にむけた被災地人民への全人民的支援を労働者階級・被抑圧人民の主導権によって推進したことである。被災地の労働者、農漁民、被差別大衆の自己決定権に依拠し、復旧・復興活動へ支援を注いだ。左派労働運動や青年学生など人民運動のルートから、被災地支援を展開した。被災地では、膨大な瓦礫の山、漁港・農地・住宅の崩壊、水・ガス・電気などのライフラインの破壊が長引いた。
 菅や野田の民主党政権は、独占資本の食い物とするための「復興計画」、「復興庁設置」や、規制緩和・新自由主義的再編の「特区」づくりなどに没頭した。復興の遅れは「自死」や心身の破壊などの犠牲者を積み重ねた。政府の復興財源は所得税増税・長期国債発行という大衆収奪となったが、民主党政権と自公の権力抗争や利権争いが復興事業を決定的に遅延させた。被災地の労働者・被抑圧人民は切り捨てられ、棄民化された。他方、大資本・大経営を優先する再編統合計画が進行中である。
 我々は、長期にわたる人民の被災者支援を位置づけ、階級的連帯として奮闘した。左派労働運動に依拠した義援金の募集と送付、現地の要求にもとづく緊急支援、瓦礫・ゴミの撤去などを闘った。被災した朝鮮学校へ激励と支援を促進した。天皇慰問をはじめとする「がんばろう日本」など帝国主義的民族主義・国家主義や、自衛隊出動・日米共同作戦の軍事活動を原則的に批判し、それらと分岐した階級的連帯活動を推進した。
 第二には、反原発闘争の一翼を担い、民主党政権打倒の全人民政治闘争として決起していったことである。福島第一原発の崩壊は、レベル7のチェルノブイリ事故と並ぶ、史上最悪の事態である。あらゆる生態系へ放射能汚染が広がっている。警告されていた大地震・大津波への対策を怠った東電・政府はぜったいに許すことができない。原発の根本問題が満天下に暴露された。原発は被曝労働を強制し、放射能被害を撒き散らし、人類と共存できない。使用済み核燃料の処理には、低レベル放射能で三百年、高レベル放射能は百万年の管理と隔離が必要とされ、莫大なコストがかかる。原発の技術基盤は、核兵器の原料であるプルトニュウムを蓄積し、日帝の核武装の基礎となる。政府官僚・電力独占と電機独占資本、御用学者、マスコミが膨大な原子力利権を食い物としている。原発の立地場所へ巨額の助成金・交付金が注がれ、放射能被害の危険にさらされ、差別され、依存経済に転落する。
 全国各地で「原発いらない」の集会デモ、東電・関電など電力会社への抗議行動が爆発した。浜岡原発の運転中断をかちとり、全原発五十四基が次々に点検や故障などで停止に追い込まれている。6・11―12の反原発一〇〇万人アクションが全国で闘われ、9・19明治公園の「さようなら原発一〇〇〇万人アクション」に六万人、12・3敦賀のもんじゅ廃炉全国集会には千五百人以上が結集した。経産省原子力保安院を包囲する「人間の鎖」が9・11から12・11まで毎月連続的に取り組まれた。経産省抗議の占拠テントも続いている。福島の女性や全国の女性たちが経産省抗議の占拠テントを設置して抗議を闘った。上関原発反対の闘いも高揚した。侵略反革命と闘う被爆二世の会による反戦反核反原発被爆者解放運動の地平から、福島など新たな被曝者・被曝労働者への差別抑圧を許すことなく、解放運動に取り組み課題を浮き上がらせた。昨年の8・6広島青空集会では、福島原発崩壊を糾弾し、福島などの被曝者・被曝労働者を支援する決意が表明された。画期的な闘いとなった。
 第三に、沖縄解放闘争、岩国反基地闘争、神奈川の闘いなど米軍再編粉砕を闘い、アジア米軍総撤収を組織化した。沖縄解放闘争は、昨年も日米政府の辺野古新基地建設の攻撃を打ち砕いた。田中聡前沖縄防衛局長は、辺野古新基地建設強行にむけて「犯す前に犯しますよといいますか」と女性差別・沖縄差別の暴言を吐いた。その後任に、高江ヘリパッド工事強行や反対住民への損害賠償告訴を進めた張本人の真鍋がついた。その真鍋が十二月二十八日未明にコソコソとアセス評価書を沖縄県庁の守衛室に放り込んだ。沖縄人民は怒りを煮えたぎらせ、県庁前に数百人が結集し、連日の実力阻止を闘ってきた。オバマとの公約であったアセス評価書の年内提出は事実上粉砕された。大きな勝利である。高江ヘリパッド建設の着工も沖縄平和運動センターや住民の闘い、「本土」の支援により、実力で止めている。名護市では、米軍再編交付金に依存しない予算編成を実施し、稲嶺市長と市議会が辺野古新基地建設反対を高々と堅持している。MV22オスプレイ配備反対の怒りが充満し、与那国・石垣・宮古など沖縄への自衛隊配備強化への反対闘争も盛り上がっている。与那国島では、陸自の沿岸監視部隊誘致策動に住民の過半数が反対署名に立ち上がった。十一月中旬、与那国島で自衛隊誘致反対の集会・デモが闘われた。沖縄現地の闘いに連帯し、首都圏で辺野古実が闘い、AWC日本連や青年学生が5・15沖縄現地闘争を闘った。
 岩国市民は、艦載機移転と愛宕山米軍住宅の攻撃に粘り強く反対している。愛宕山住宅跡地に被災者支援住宅を要求する闘いが巻き起こった。愛宕山の跡地を見守る集い(座り込み)は二年目に入った。愛宕山の米軍住宅化に反対する裁判、飛行差止めを求める岩国爆音訴訟、基地拡張の公有水面埋めたてへの取消訴訟、これらの裁判を闘っている。AWCの九州山口実・日本連や、左派労働運動活動家の結集する岩国労働者反戦交流集会実行委は、年間を通じて、岩国闘争を支援した。AWC日本連は夏合宿を岩国で開催し、馬毛島への離発着訓練移転に反対する講演会、愛宕山座り込み二年目へ参加した。昨年末、二井山口県知事と福田岩国市長は岩国市民の民意を裏切り、愛宕山跡地を百六十九億円で防衛省へ売却すると決めた。岩国行動二〇一一は、これに反対し、沖縄・名護の川野市議、韓国群山米軍基地反対の活動家、滞日フィリピン人など約二百名が結集し、岩国市民への激励と岩国基地抗議デモを闘った。
 神奈川反基地闘争では、五月、韓国群山米軍基地活動家と神奈川県央共闘の交流集会に参加し、9・25米原子力空母の横須賀母港化反対闘争などに立ち上がった。
 第四に、反帝闘争拠点の三里塚闘争を支えた。天神峰現闘本部の撤去攻撃を阻止する闘い、市東孝雄さんの農地を守る闘いにおける攻防を担った。5・20、東京高裁の天神峰現闘本部撤去の反動判決への実力抗議に恐怖した国家権力は、北原事務局長など反対同盟・支援五十名を不当逮捕した。わが同志三名もその弾圧をうけた。だが、反対同盟・支援の完黙・非転向の闘いは、国家権力の弾圧を粉砕し、処分保留の釈放をかちとった。あせった日帝国家権力は、8・6広島の当日、天神峰現闘本部を強制撤去した。反対同盟と支援は緊急の抗議闘争を展開した。市東さんの農地を強奪しようとする空港会社・国家権力の裁判攻撃にたいして、その欺瞞性や文書捏造を暴露し、完全に破綻させている。農地死守・実力闘争を堅持し、三月と十月の現地総決起集会・デモをかちとった。青年学生の援農や反対同盟農民との交流を組織した。6・22―23、市東さんの農地を守る会沖縄の会との共催集会を支え、三里塚反対同盟農民と沖縄反基地闘争の連帯を深めた。
 第五に、ファシスト・排外主義勢力との闘いである。在特会などファシスト排外主義勢力は、在日朝鮮人や被差別大衆の解放運動などを襲撃し、高揚する反原発運動、戦後補償運動への敵対行動を繰り返してきた。我々は、ACAN関西の一翼を担い、関西では戦後補償運動を一貫して防衛した。とくに、韓国の元日本軍「軍隊慰安婦」の方々が日本大使館を抗議する水曜行動の千回目にあたる十二月十四日、在特会による外務省包囲行動、大阪キャンドルナイトなどへの襲撃を跳ね返した。大阪・鶴橋での在日朝鮮人への殺戮扇動や差別排外主義の罵詈雑言、8・6広島の原爆ドーム前の青空集会への妨害攻撃、朝鮮学校無償化実現の様々な取り組みへの襲撃・差別排外主義扇動、反原発デモ・東電前抗議への敵対など、こうした在特会の敵対攻撃をことごとく実力ではねつけてきた。ファシスト排外主義勢力を社会的に解体する闘いは大きく前進した。
 第六に、AWC運動を支援してきた。AWCは、アジア太平洋地域の大衆的な反帝国際主義政治統一戦線として前進している。フィリピン・バヤン、AWC韓国委員会、台湾労働人権協会とともに中軸をになうアジア共同行動(AWC)日本連は、反原発・被災者支援を闘い、沖縄・岩国・神奈川の反基地闘争を結合して米軍再編粉砕を進め、韓国やフィリピンと連帯し、アジア米軍総撤収を闘った。米韓・日米の軍事演習=朝鮮戦争策動に反対する国際共同闘争も組織した。韓国民主労総活動家を招請した六月アジア共同行動の各地集会、ISAやILPS第四回総会への派遣、韓国済州島ツアーを企画し、韓国海軍基地建設反対への連帯、民主労総と共同で新自由主義・雇用破壊・貧困化とたたかう日韓労働者連帯フォーラムに取り組んだ。このAWCの反帝国際主義運動にたいして、アキノ政権や李明博政権がAWC日本連会員の入国拒否という攻撃を加えてきた。理由すら告げず恣意的に国家の敵とされ、異議申し立ての適正手続きもない入国拒否。極めつけの人権侵害である。現在、大衆的抗議署名キャンペーンなどの反撃が闘われている。AWCは、十一月G20フランス・カンヌ首脳会合粉砕の現地闘争へ遠征団を送った。欧州債務危機の真っ只中で、フランス労働者人民や韓国民主労総、関西生コン労組などと一緒にニースで抗議した。「日の丸・君が代」強制反対を担う教育労働者との連帯、在日朝鮮人・韓国人とともに朝鮮学校無償化実現の闘いなども各地で闘った。
 反帝国際主義派の党派共闘である反戦闘争実・反戦実は昨年も活動した。中東・北アフリカの人民決起への連帯、沖縄解放闘争連帯、朝鮮戦争阻止、安保粉砕、反原発・核武装阻止などの集会・デモ・抗議を行った。橋下―大阪維新の会による天皇制攻撃・労働者弾圧策動への街頭抗議を闘った。


  ●3節 階級闘争の飛躍かけ一二年闘争を闘い抜こう

 消費税増税、原発の再稼働と輸出、TPP、辺野古新基地建設・岩国基地強化など米軍再編・日米軍事一体化=改憲攻撃、南スーダン派兵を進める野田政権。我々は、二〇一二年の政治任務として、野田政権打倒の全人民政治闘争を断固組織する。以下、二〇一二年政治闘争方針を提起する。
 第一には、格差・貧困失業に反対する闘い、反資本主義の決起を進めることである。反貧困反失業と被災地支援を結合することである。完全失業者約三百万人、就職活動をしない・できない層が四百万人超、「企業内失業者」五百万人等、すでに千二百万人を超える大失業情勢が生まれている。生活保護二百五万人、非正規雇用38・1%となった。貧富格差は激化している。日帝本国においても、「99%」の生存権・雇用を求め、「大企業・大銀行は強盗をやめろ」といった世界的な反貧困・反失業、反資本主義の闘いをつくりだしていかなくてはならない。これは、正規・非正規・失業者を貫く労働者、若者、女性等の連帯と団結を組織する闘いである。労働者階級・被抑圧人民の階級基盤を再構築する闘いでもある。(社会)経済闘争と政治闘争の結合というプロレタリア階級形成の基礎的闘いであり、重要な課題である。中東・北アフリカ人民決起、ウォール街占拠運動、欧州労働者の緊縮政策・増税・福祉切り捨てへの抵抗闘争などと連帯し、日帝本国での反貧困・反資本主義の決起・国際共同行動を進めていこうではないか。反貧困反失業・新自由主義グローバリゼーション粉砕の一環として、被災地労働者人民の自己解放運動への支援を継続しよう。
 第二には、反原発の全人民政治闘争を進めることである。同時に、被曝者・被曝労働者への差別抑圧を許さず、被曝者解放運動を進めていくことである。野田民主党政権は、経団連など独占資本の利害と一体化する路線へ転換し、「脱・原発依存」を後退させ、原発の輸出や再稼働、核武装の基盤確保にしがみついている。反原発・野田政権打倒の全人民政治闘争へ総決起していかなくてはならない。原発輸出を阻止するために、反核反原発の国際共同闘争に取り組んでいかねばならない。
 2・11の「さようなら原発一〇〇〇万人署名アクション」など全国一斉行動日、3・11震災一周年の闘いへ、全国各地で総決起していこう。とくに3・11は、福島・郡山現地の開成山球場集会や、大阪・中之島公園の集会・デモなど、反原発の大闘争が計画されている。郡山現地や大阪・中之島公園などで巨万の決起をつくりだし、原発の輸出・再稼働を策動する野田政権を全人民の実力で打倒しよう。経産省抗議の占拠テント、東電・関電・九電・中電などへの直接抗議行動、上関原発建設阻止・もんじゅ廃炉化など原発反対の現場闘争を全国的に推進しよう。
 今年の8・6広島―8・9長崎の闘いは、反戦反核被爆者解放闘争の地平を発展させ、反原発闘争・被曝者被曝労働者の反差別・解放運動と結合させる非常に重要な取り組みとなる。在特会など右翼ファシスト排外主義勢力による「平和運動解体と日本の核武装推進」を絶対に許してはならない。
 福島原発崩壊による放射能被害との闘いや原発廃炉化は、四十年を超える長期闘争である。我々は、被爆者解放闘争の歴史的経験を継承し、被曝者・被曝労働者への差別抑圧を許さず、被曝者の解放運動を本格的に開始していかなくてはならない。
 第三には、沖縄解放闘争、岩国・神奈川の反基地闘争を進め、国際反戦闘争を発展させることである。この米軍再編計画―日米軍事一体化は、事実上の九条改憲攻撃でもある。二〇一二年は、普天間基地撤去―辺野古新基地建設阻止、高江ヘリパッド着工粉砕、殺人欠陥機オスプレイの配備絶対阻止、与那国・石垣・宮古への自衛隊配備への反対闘争など、重大な攻防が続く。沖縄―「本土」を貫く大衆的実力闘争によって、これらの闘いに勝利していかなくてはならない。本年の5・15は反革命統合四十年である。5・15の沖縄現地―「本土」を貫く沖縄解放闘争に決起していかなくてはならない。海づくり国体の沖縄開催など天皇訪沖を許してはならない。沖縄―「本土」を貫く大衆的実力闘争、反帝国際主義をもって、辺野古新基地建設にむけた公有水面埋め立て申請を粉砕する五月、六月の攻防に勝利しよう。5・15沖縄現地闘争への総決起にむけ、青年学生・先進的活動家は平和行進など左派労働運動の組織化をすすめよう。
 岩国闘争も重大な攻防の真っ只中にある。愛宕山住宅跡地を米軍住宅にしようとする攻撃が激しい。二井山口県知事、福田岩国市長が防衛省との間で合意した愛宕山跡地売却を撤回させなくてはならない。岩国基地強化に反対する一連の裁判闘争を支援しよう。毎月一日・十一日・二十一日の愛宕山住宅跡地を見守る集い(座り込み)に参加しよう。愛宕山住宅開発公社の三月解散のなかで愛宕山跡地を防衛省へ売却する契約・調印を阻止する大衆的な抗議闘争を強めよう。岩国闘争への全国支援や国際支援を強めよう。岩国労働者反戦交流集会実行委による左派労働運動からの岩国闘争支援を拡大しよう。AWC勢力は、今年も秋期に岩国行動を予定する。岩国闘争の前進と岩国行動二〇一二の成功をかちとろう。
 神奈川における米核空母ジョージ・ワシントンの横須賀母港化、座間基地・厚木基地・相模原軍事施設などに反対し、日米軍事一体化をゆるさず、闘おう。
 沖縄、岩国、神奈川の反基地闘争を結合し、アジア人民とともにアジア米軍総撤収を前進させよう。米軍再編攻撃―日米軍事一体化・集団的自衛権行使を粉砕し、改憲攻撃を阻止しよう。釣魚諸島や独島などへの帝国主義的領土拡張主義・排外主義を許さず、国際反戦闘争をたたかおう。日米・米韓の軍事演習に抗議し、中国・共和国への軍事圧力・戦争攻撃に反対しよう。
 第四には、大衆的反帝国際統一戦線=AWCを支援することである。一月二十八、二十九日には、「日米のアジア侵略支配に反対するアジアキャンペーン」(AWC)の国際キャンペーン調整委員会(CCB)が韓国ソウルで開催される。世界恐慌下の反貧困反失業、米欧日の帝国主義侵略戦争反対など、アジア太平洋各地人民の共同闘争計画がつくられる。ソウルCCBは公開され、韓国民衆運動と広く連帯する機会となる。その後、済州島江汀の海軍基地反対闘争現場を訪問し、AWCの国際隊列で朝鮮戦争策動反対・アジア米軍総撤収を闘う。
 AWC日本連の活動としては、三月総会、六月アジア共同行動各地集会、夏合宿、秋期の岩国現地闘争、反原発国際連帯、ISAやILPSへの参加、日韓連帯では済州島江汀海軍基地反対闘争支援、朝鮮戦争阻止、戦後補償運動などがある。新自由主義グローバリゼーション反対の国際共同闘争では、韓米FTA撤回闘争支援、十月IMF世銀総会東京開催への抗議行動、十一月のG20メキシコ現地闘争への派遣、APEC/TPP反対闘争などが課題となるであろう。入国拒否・人権侵害の弾圧に国際的抗議を集中しよう。AWC日本連を支援し、大衆的反帝国際統一戦線の発展をかちとろう。
 第五には、ファシスト排外主義勢力と闘うことである。在特会などファシスト排外主義勢力による在日朝鮮人や被差別大衆の解放運動、さらに労働者人民の諸運動への敵対や差別排外主義襲撃・扇動を許してはならない。橋下―大阪維新の会は大阪都構想・教育基本条例・職員基本条例を強行しようとしているが、これを全国闘争によって断固阻止しなくてはならない。これらの排外主義勢力を広範な共闘によって社会的に粉砕しよう。朝鮮学校無償化実現、戦後補償実現、核兵器廃絶・原発廃炉など、労働者人民運動の大前進をかちとり、在特会たちを政治的に敗北させていこう。若者をめぐる組織化合戦に勝利しよう。
 第六に、反帝闘争の拠点、三里塚闘争を支えることである。四十六年目をむかえる三里塚反対同盟の闘いは、日帝国家権力・成田空港会社を心底から震え上がらせている。北原事務局長を先頭とする農地死守の大義をかかげた実力闘争は、日帝の戦争国家化と農地強奪の攻撃を完全に阻止する闘争拠点を形成している。市東孝雄さん、萩原さんなど「用地内」農民の不屈の営農と闘いは、日々、そうした確信をつくりだしている。三里塚軍事空港粉砕の全人民政治闘争は燃え続けている。市東さんの農地を強奪しようとするあらゆる攻撃を粉砕しよう。裁判闘争で権力・空港会社の不当性を暴露し、市東さんの農地を防衛する大衆的実力闘争の広範な支持を獲得しよう。三月二十五日の三里塚現地全国集会に総決起し、勝利しよう。沖縄解放闘争と三里塚闘争を結合し、安保粉砕を闘おう。援農、現地視察、交流学習会を推進し、三里塚反対同盟への支援を拡大しよう。
 第七に、反弾圧闘争を全党的課題として意識的に取り組むことである。昨年、5・20三里塚弾圧、AWC運動への入国拒否などの攻撃が吹き荒れた。国家権力の不当弾圧への徹底的な抗議と大衆的反撃、拘束時の完黙非転向の闘いは基本中の基本である。米国・NATOなど帝国主義の「対テロ戦争」=侵略戦争政策に基づく「テロリスト」の国際的監視・取締り・弾圧を強化する攻撃が激しい。日帝ブルジョアジーも弾圧を飛躍的に強めている。組織犯罪対策法の適用、不当弾圧が戦闘的労組や左翼団体を襲っている。関生労組弾圧では、労組活動・団体交渉を威力業務妨害・脅迫などとしてでっち上げ、これを理由にして組合員を逮捕・拘束するなど、許しがたい違法弾圧を横行させている。廃案となった「共謀罪」をまたもや新設する策動も浮上している。人民運動の重要なツールとなったインターネット活動を弾圧するネット監視法も制定された。弾圧の重罰化も徐々に進んでいる。革命的警戒心をもって、弾圧対策・反弾圧闘争を意識的に進めよう。
 今年も反戦闘争実・反戦実などによる反帝国際主義派の党派共闘が行われる。南スーダンPKOなど自衛隊派兵、朝鮮戦争策動、IMF世銀総会東京開催、沖縄解放闘争、反原発など、これらの反戦反帝闘争課題を広範かつ戦闘的に闘っていこう。
 被差別大衆の解放運動の各領域においては、次の方針でたたかおう。


  ◆女性解放運動

 第一に、沖縄解放闘争・岩国基地反対闘争のなかで米兵の性暴力犯罪への抗議など「基地と性暴力」の課題・領域が闘われてきた。〇七年の岩国米兵による広島集団レイプ事件への抗議キャンペーンは毎年各地で取り組まれている。これは、日本軍「軍隊慰安婦」になることを強制させられたアジア女性たちの戦後補償実現運動とその支援を引き継ぐ運動である。昨年八月、韓国の憲法裁判所は、元日本軍「軍隊慰安婦」への戦後補償問題について、韓国政府の不作為を批判する判決をだした。「基地と性暴力」の課題の取り組み、戦後補償実現の闘いを推進しよう。
 第二には、均等待遇運動や女性労働者の労組組織化・団結をすすめることである。女性への労働条件の差別、非正規化はさらに強化されている。低賃金・過労・セクハラ・パワハラ・ストレスなどで女性労働者は貧困化と心身の破壊を構造的に強いられている。女性労働者の均等待遇運動、労働相談、労組への団結をつうじて、階級的労働運動の内容を発展させよう。

  ◆部落解放運動

 足利事件をはじめ、布川、志布志、福井、袴田など相次ぐ冤罪事件の再審ならびにその請求にむけた動きが続いている。狭山闘争は正念場である。第三次再審要求の一〇〇万人署名も成功し、昨年提出された。三者協議が進行するなかで、大衆的実力闘争・差別糾弾闘争に依拠し、全証拠開示・再審をかちとっていかねばならない。石川さん無実をかちとる歴史的攻防の二〇一二年である。戦争国家化や排外主義の跋扈する時代に、差別事件が激増している。差別糾弾権を堅持し、部落解放運動の発展をかちとろう。福島の被曝者・避難者への差別を許さず、反差別共同闘争によって被災地支援や反原発の闘いをすすめよう。朝鮮学校無償化実現の闘いに勝利しよう。沖縄・岩国・神奈川の闘いや労働者の闘いと連帯し、反基地反貧困反差別の階級的共同闘争をすすめよう。

  ◆障害者解放運動

 全国の障害者や仲間たちのたたかいによって、二〇一〇年自立支援法を廃止に追いこんだ。しかし医療観察法は、いまだに実体的な保安処分として強化されており、精神障害者への差別医療、隔離収容攻撃が激化している。そうした中、東京においては医療観察法廃止に向けた厚労省への抗議行動や路上生活者支援の運動など、山口においては済州島江汀基地建設反対運動の現地支援に取り組むなど、反戦反差別闘争に邁進している。こうした闘いを発展させ、障害者解放運動の発展をかちとろう。

  ◆被爆者解放運動

 3・11福島原発崩壊から放射能汚染と被曝の拡大がつづいている。広島、長崎から福島と、新たな被曝者をつくりだした日帝ブルジョアジーの原発―核武装政策の根本的責任を満腔の怒りで批判する。新たな被曝者への差別抑圧を許してはならない。被爆者・二世・三世の解放運動は、内外の被爆者・二世・三世を認定させ、国家責任を明確にした全面補償をかちとり、核兵器全廃を闘うことであった。上関原発建設阻止をはじめ、全原発の廃炉化を実現する闘いも進めてきた。これに福島など新たな被曝者への命・健康の破壊、差別抑圧を許さない闘いが加わった。昨年の8・6広島のたたかいでこれらの課題を確認した。沖縄解放闘争を担い、かつ岩国基地など侵略戦争拠点への反対闘争を進め、核兵器先制使用を含む米軍再編計画を粉砕しよう。アジアから米軍と核・原発を一掃していこう。反戦反核反原発国際連帯・被爆者解放運動を推進しよう。

  ◆入管闘争

 TPPなど新自由主義攻撃の強化に伴い、「使い捨て」の移住労働者を導入する攻撃が激しくなった。〇九年の改悪入管法で、一〇年から「新しい研修・技能実習制度」が施行された。二〇一二年には改悪入管法が全面的に施行される。入管当局による外国人の一元的管理、日常的な監視と弾圧がはじまる。日帝の入管体制と対決し、外国人労働者管理や差別排外主義政策を徹底的に弾劾し、これを粉砕していこう。朝鮮学校無償化の早期適用を求め、在日朝鮮人・韓国人の闘いと連帯し、闘おう。




  ■第5章―労働運動方針

  貧困化・失業・増税、矛盾の集中跳ね返し階級的労働運動を前進させよう



 貧困が全世界で労働者人民に襲いかかっている。日本でも例外ではない。リーマンショック以降、継続する円高、失業率の高止まりと若者への一層の矛盾の集中、一千兆円を超えるといわれる財政赤字、少子高齢化などさまざまな問題に日本社会は直面している。そのような状況のなかで労働者の賃金は減少しつづけている。非正規雇用率は34・4%にまで上昇した。
 「社会保障と税の一体改革」による消費税増税、あるいはTPP(環太平洋連携協定)参加などによって、労働者人民からのさらなる搾取と収奪がもくろまれている。雇用・労働条件にとどまらず、社会保障・福祉・教育・医療などの基礎的な社会サービスが抜本的に改悪され、労働者人民の生存権が決定的に脅かされようとしている。
 TPPへの参加が日米同盟強化の脈絡のなかで主張されていることも見逃してはならない。日帝ブルジョアジーはアメリカと一体となってTPPを推進し、アメリカと競合しながら自由貿易圏を形成するしかない状況に追い込まれている。野田政権が日米同盟強化を強調し沖縄・辺野古新基地建設を強行しようとしているのも、日米の「自由貿易圏」を防衛するためには日米同盟強化が不可欠だからである。
 労働運動には、このような搾取・収奪の強化、再びの弱肉強食社会への再編策動、戦争国家化という日帝ブルジョアジーの全面的な攻勢に対して、労働者人民の中心部隊としてこれと正面から対決していくことが要求されている。またそのように闘うことが階級的労働運動を力強く前進させていくことでもある。


  ●第1節 新自由主義的「復興」、TPP参加、増税・福祉切り捨てを許すな

 昨年の東日本大震災と原発事故は、危機的状況にあえぐ日本帝国主義をさらに追いつめている。津波で破壊された社会的インフラの再建費、放射能汚染の対策費など多額の資金需要は、世界的な経済危機と巨額の財政赤字に苦しむ日帝ブルジョアジーにとってきわめて深刻な事態を招いている。
 日本経団連は昨年九月に発表した「成長戦略二〇一一」において、この危機的状況の解決のために、「実質2%、名目3%を上回る経済成長の実現」をとなえ、そのために直ちに着手すべきものとして法人実効税率の引き下げ、TPP参加、電力の供給安定と称しての原発推進、消費税増税などをあげた。また、震災直後の昨年四月に発表された経済同友会の「東日本大震災復興に向けて・第二次アピール」では、「復興による新しい日本再生、東北を道州制のモデルにする、規制緩和、特区制度、投資減税、各種企業誘致策などあらゆる手段を講じ、民の力を最大限生かす」「日本が厳しい財政状況に直面していることに鑑み復興計画は財政健全化の道筋の中に描くものとする」などが主張された。
 日帝ブルジョアジーがめざしているのは、被災した人々が元の暮らしを取り戻し、それを基盤にして震災で傷ついた社会関係・人間関係を再建していくということではない。日帝ブルジョアジーは長年にわたって「地方」を切り捨ててきたのであり、大半が「地方」である被災地をまともに復興する意思など毛頭ない。かれらがめざしているのは、「東北州」として福島、宮城、岩手の県境を取っ払い、あらゆる規制を緩和して大資本が野放図に利益を追求できる地域として東北を再編することだけである。
 その結果、規模の小さな漁港は放棄される。漁業特区などによって漁民は大資本に漁業権を奪いとられる。リアス式海岸の入江ごとに何百年にもわたって厳しい自然と向き合いながらコミュニティーを形成し、地域の絆をささえに生活してきた人々は故郷から追い出されるか、大資本支配下の低賃金労働者になることを強要される。
 農民もまたさらなる苦境に追い込められる。福島第一原発事故によって東北三県のみならず、東日本全体におよぶ広範な地域で継続する放射能汚染は、農業に大打撃を与えつづけている。福島などでは、農民の自力での営農再建はまったく不可能な事態となっている。このような農民の苦悩と疲弊を逆手にとって、日帝ブルジョアジーは復興を口実に念願の農地の大規模集約化と農業部門への大資本の参入を一気に進めようしている。TPPへの参加はさらにそれを促進するものとなる。
 震災で職や家を失った労働者に対する雇用確保、生活確保の実行も遅れている。延長された雇用保険の再延長打ち切りを、小宮山厚労相が昨年十一月に表明した結果、本年一月から順次、雇用保険の受給切れが発生する。それにもかかわらず有効な雇用対策は実行されていない。かろうじて再就職した人々も、賃金は下がり非正規雇用になった労働者が多い。このようなとき最低賃金の引き上げは大きな意味があるのに、平均で七円、東北三県では一円しか引き上げられなかった。最低賃金の全国加重平均は七百三十七円であるが、東北三県では、岩手・六百四十五円、福島・六百五十八円、宮城・六百七十五円ときわめて低く抑えられた。
 日帝ブルジョアジーは震災復興という全社会的課題を口実に「税と社会保障の一体改革」、TPP参加をテコとしながら、漁業・農業、社会保障・医療などの分野を大資本の市場へと再編し、労働者人民に対する搾取と収奪を一挙に強化しようとしている。
 ブルジョアジーは、全社会的で長期的な見地から戦略構想を立てているように装っている。しかしそれらは、社会を少数の支配層・富裕層と多数の貧しい下層の労働者・民衆へと分裂させ、貧困と格差をさらに拡大させ、社会をますます荒廃させていくだけのものでしかない。もはやブルジョアジーには社会を語る資格はない。かれらには日本社会を維持していく力もなくなっている。ブルジョアジーの支配が長引けば長引くほど労働者の困窮は深まっていく。


  ●第2節 連合と全労連の現状

 日帝ブルジョアジーによる大攻撃が本格化するなかで労働運動の役割も増大している。労働運動の中心である労働組合はこのような情勢のなかで、賃金・労働条件の改善の闘いだけではなく、社会的な課題に対しても影響力を発揮し、全面的な反撃にうってでなければならない。しかし労働組合の現状はいぜんとして厳しい状況にある。何よりも、もっとも労働組合への組織化が必要とされる中小零細企業労働者や非正規雇用労働者の組織化は大きな進展をみせていない。

  ▼2節―1項 危機を深める連合

 言うまでもなく連合は日本最大の労働組合組織である。一九八九年の結成当初は七百九十八万人を組織していた連合は、二〇〇六年には六百六十五万人にまで組織人員を減少させた。その後、パートタイマー労働者などの組織化により連合の組合員は増加したが、一一年度には前年度から三万六千人減の六百八十四万人となっている。
 連合は大企業の正社員と公務員を中心とする正規雇用労働者の労働組合、企業別組合という性格を脱却できていない。それゆえ民間企業での正社員の減少、公務非常勤労働者の増大のなかで、組織人員は必然的に減少せざるをえない。パートタイマー労働者の組織化などにおいてはUIゼンセン同盟を中心に一定の成果を上げ、連合全体の組織人員の低下に一定の歯止めをかけている。しかしゼンセンの組織活動は企業防衛のための企業と一体となったものであり、非正規雇用労働者の労働条件向上を第一義の目的とするものではない。
 ゼンセンが組織するパート労働者は大半が流通大手などの大企業の労働者である。労働者の大半が働く中小零細企業の労働者・非正規雇用労働者はゼンセンの組織化の対象にはなっていない。ゼンセンがそうした労働者を組織しようとするのは、企業の走狗として、原則的な労働組合をつぶそうとするときだけである。
 震災復興に関して連合は、二〇一一年七月から一二年六月までに実現をめざす政策を記載した「二〇一二年度連合の重点政策」という文書を昨年六月に発表した。そこでは連合は、「震災からの復興・再生に向けて」「働くことを軸とする安心社会」などをかかげている。連合は復興を重要な課題としているようにみえる。各論においても公共インフラの再建、被災者の生活再建、被災労働者の雇用の維持などさまざまな領域で主張を展開している。しかし特区の導入やブルジョアジーによる農漁業の再編・切り捨てについてはまったく触れていない。基本的にはそれらを容認している。
 連合においては、電力総連を中心に電機連合、基幹労連などが原発推進を掲げてきた。電力総連は〇七年から〇九年にかけて民主党への献金やパーティー券購入で九千百万円も支出し、原発推進を民主党に働きかけつづけてきた。原発事故後、あまりの被害の甚大さを前にして連合は、脱原発ではなくしぶしぶ「凍結」を宣言した。しかし東電労組などは原発推進の立場を維持したままである。昨年十一月の大会でようやく連合は「脱原発依存」に方針転換した。だが稼働中の原発についてはその停止を求めず、中長期的には再生可能エネルギーで代替、停止中の原発再稼働についても検討するという立場である。脱原発依存と言ってもブルジョアジーの主張と何ら変わりがない。
 TPPに関しても、連合の中核を占める金属産業の大企業労組が形成するIMF―JC(現在の日本語略称は金属労協)は、大独占の意を受けてTPPへの「早期参加表明」を行なっている。「社会保障と税の一体改革」については連合は、「政権交代後、政府・与党として、はじめて社会保障全体の改革理念と安定財源確保の具体的な方向性を示したことは評価できる」としている。安保・防衛問題については連合は、在日米軍基地基地の整理・縮小、日米地位協定の見直しは主張するが、基本的な立場は安保維持・強化であり、自衛隊容認である。
 連合は日帝ブルジョアジーの基本路線を支持しており、多数の下層労働者の利害を代表することも実現することもできない。連合は典型的な帝国主義の超過利潤のおこぼれにあずかる帝国主義労働運動であり、かれらに日本の労働者階級の生活と未来を託すわけにはいかない。

  ▼2節―2項 全労連の限界

 全労連の組織人員も減少している。厚生労働省が昨年十二月に発表した「二〇一一年度労働組合基礎調査結果の概況(六月三十日現在)」によれば、全労連の加盟人員は八十六万人(前年比八千人減)となっている。ただし全労連はこの調査結果は、年金者組合(十万三千人)、オブ加盟組合(九千人)、ローカルユニオンなど地域組織直加盟組合員(八万六千人)を加えておらず、それらを入れれば加盟人員は百十六万人になるとしている。
 全労連が発表するところによれば、全労連の組合員数の減は一万六千人である。その内訳は自治労六千人、全教五千人、国公労連三千人と公務員関係労組が多数を占めている。全労連自身も認めていることであるが、加盟労組の中心である官公労部門での定数削減と非正規への置き換えのなかで、増大する公務非常勤労働者を有効に組織できていないことがここには見てとれる。全労連もまた連合と同様、正規雇用労働者中心の組合という限界を抱えていると言える。
 このようななかで全労連は現在、構造改革型復興と対決し「安定、良質な雇用と社会保障拡充による安心社会」をめざす「四つの挑戦」なるものを方針化している。その内容は、第一に、労働者の状態を直視し可視化すること、第二に、非正規労働者の状況改善を中心課題とすること、第三に、働いて人間らしい生活が保障される社会の確立、第四に、総対話と共同、全労連の強化・拡大というものである。
 全労連のこのような方針は、日帝ブルジョアジーの復興を口実にした新自由主義の大攻勢が開始されようとしていることを考えるとき、一定の評価をなしうるものある。それらは、正規雇用労働者の組合という全労連の主体的限界を乗り越えようとする方針であるとも言える。
 だがここには二つの大きな問題がある。第一の問題は、日本の労働者の大多数を占めるにもかかわらずその組織率はわずか1・1%という中小零細企業労働者、同じく組織率が4・4%にすぎない非正規雇用労働者の組織化の困難を突破する具体戦術が明らかにされていないということである。これまで地域ユニオンなどが直面してきた「賽の河原の石積み」「回転ドア」とも表現されてきた組合員がなかなか定着しないという問題、中小・零細では企業倒産が多く倒産を契機に組合員が脱退していくという問題など、こういう現実の問題に対して具体的な回答がなければ、全労連といえども中小・非正規の労働者の組織化に成功することはできない。
 第二の問題は、歴史的には「福祉国家」は帝国主義戦争と親和的であり、福祉国家防衛のために労働者が戦争に動員されていったという厳然たる事実があるが、全労連の四つ挑戦のなかには帝国主義(戦争)と全面的に対決するという視点がまったく欠如しているということである。国際的な労働者の闘いとの結合、滞日外国人労働者の権利擁護、アジアの労働運動との継続的な交流の組織化などによって、組合員の「素朴な排外主義」と向き合いながら、組合員と日常的で粘り強い議論を労働組合運動のなかで行なっていくことが必要である。
 だがもとよりこれらの課題は全労連のみならず、原則的で階級的な労働運動をめざすわれわれにこそもっとも鋭く問われている課題でもある。


  ●第3節 階級的労働運動前進に向けた当面する闘い

 帝国主義のもとで搾取と収奪が進行し社会が荒廃すれば労働者階級は生存をかけて決起すると考えるのは、あまりにも楽天的な考えであると言わねばならない。
 日帝ブルジョアジーは労働者人民を、「貧困マジョリティー」(内橋克人)に追い込みながら、昨年の大阪市長選でも顕著であった「公務員バッシング」に典型なように次から次へと「うっぷん晴らし政治」で、抵抗する者をたたきつぶし、労働者階級の抵抗する力をそぎ落とそうとしている。貧困による社会の荒廃のなかで現在生み出されているのは「愚民化政策」と「衆愚政治」の悪循環であり、「引き下げデモクラシー」と排外主義である。その結果、労働者階級と被抑圧人民は精神的・肉体的に疲弊させられるばかりでなく、さまざまな社会的知識や経験を奪い取られ、無力な個人へと解体させられていく。
 このような日帝ブルジョアジーの攻撃に対し、悲惨な事態を少しでも抑止して状況を改善し、反撃を準備していくことができるのは労働者階級の団結であり、労働者階級を中心とする被抑圧人民の闘いだけである。精神的・肉体的に疲弊させられ本来の階級的な力を発揮できない労働者階級人民の闘う隊列を再度、根本から強化していくことが求められている。それは権力奪取、社会主義革命、社会主義社会の建設をになうことのできる労働者階級の団結と能力の獲得として展望されなければならない。労働者階級人民の闘う隊列を強化するとは、日本帝国主義を打倒し社会主義革命を準備できる階級の形成を進めていくということである。

  ▼3節―1項 震災復興支援を全力で闘い抜こう

 日帝ブルジョアジーの震災復興計画は火事場泥棒的で、農漁業切り捨て・棄民化にほかならない。原発被害は深刻であり、困窮・困難に耐えながらも故郷にとどまる自由すら多くの人々から奪い取った。労働運動がなすべきは、被災した人々の希望の実現のために全力を尽くすことである。以下の四点が重要である。
 第一に、震災被害を風化させないために、震災・被害について関心を持ちつづける組合員を一人でも多く獲得していくことである。
 労働組合は可能な限りボランティアを派遣し、一人でも多くの組合員に被災地を経験させ、被災した人々を支援する闘いを拡大していかなければならない。また被災地から人を招いて学習会や報告会などを継続して組織していかなければならない。あらゆる手段を駆使して、被災地の現状を考えつづけ被災者に連帯しつづける組合員を育成していかなければならない。これが基本中の基本である。
 第二に、放射能被害にさらされている人々を支援し、これらの人々と団結していくことである。
 警戒区域、計画的避難区域に居住する人々は帰宅のめどすらつかない。仮に帰宅が実現しても長期にわたって継続する放射能被害については、どのような問題がどのように発生するのか、どのような対策が可能なのかは明らかでない。政府の基準など信用できるものではない。同様のことは農業・漁業についても言える。それは福島を中心とする東北三県だけの問題ではなく、首都圏を含めて広範囲に広がる問題である。このような状況のなかで他地域に避難する人々も存在する。健康と命が脅かされているのであり、避難するのは当然のことである。しかしそれでも多くの人々は避難することができない。とりわけ下層労働者はそうである。かれらは生きていかねばならず、そのためには労働をしなければならず、今後、長期にわたって被曝することは避けられない。かれらの子供たちもそうである。労働運動はこうした問題を主体的にとらえ、社会の問題として解決していくことを独占資本と政府に要求しつづけなければならない。
 第三に、日帝ブルジョアジーの構造改革型復興と徹底して闘いぬくことである。
 被災した人々にとってこれに対する闘いはきわめて厳しい。ブルジョアジーの構造改革型復興を承認しなければ容赦なく切り捨てられるからだ。全国で闘う労働運動が自らの課題として構造改革型・新自由主義的復興と闘いつづけることで、被災した人々と連帯していく必要がある。
 第四に、反原発闘争を徹底して推進するとともに、政府・東電にあらゆる被害の全面補償を要求していかなければならない。
 日帝ブルジョアジーはいまなお原発推進政策を放棄していない。それどころか停止中の原発の早期再開をさまざまな形でもくろんでいる。原発輸出も断念していない。労働運動のなかでも、原発再稼動の阻止、すべての原発の即時停止・廃炉を要求する闘いを進めていかなければならない。同時に被曝労働に対する監視を強め被曝労働を根絶するとともに、原発作業に従事する労働者の安全を守る闘いを進めていく必要がある。

  ▼3節―2項 下層労働者を労働組合へ組織せよ

 階級的労働運動を本格的に建設していくためには、中小・零細企業労働者、非正規雇用労働者、滞日外国人労働者などの下層労働者を労働組合に組織し、かれらに依拠した労働運動を推進していくことが必要である。
 下層労働者の組織化は困難をきわめる。今日では職場の仲間と相談して労働組合を自力で立ち上げることはきわめて困難である。活動家が企業に就職して労働組合を立ち上げることも少なくなっている。連合や全労連と異なり、全国産別は別にして左派労働運動において主力を占める地域ユニオンの場合、下層労働者の組織化の活動は大半が労働相談から始まる。労働相談主導型のユニオンは個別労働相談の個別対応に力量の多くを割かざるをえなくなり、分会建設などの労組組織建設に力量が回せないという困難を抱えている。こうしたことから、ボランティアを中心とする労働相談センターを立ち上げ、ユニオンの活動は組織化活動を中心にするなど、さまざまな創意工夫が行なわれ、数少ない人材を有効活用して一定の成果を上げている事例もある。
 また滞日外国人語学教師やトラック、タクシーなどの交通・運輸労働者など、職種に焦点を当てて組織化をめざしているケースもある。職種に焦点を絞った組織化は他の方法に比較して労働者を組織化しやすく、職場では少数派でもユニオンに同業の仲間が存在していれば、組合員をユニオンに定着させやすいという利点もある。そして一定の規模と経営者団体との交渉力があれば産別的な組織化も可能になる。
 しかし労働者の組織化に一時的に成功したとしても、労働者を労働組合組織に定着させていくには大きな困難がある。組合員となった労働者をユニオンに定着させ、職場における仲間づくりをになわせるためには、賃金・労働条件改善の闘いに勝利することが鍵となる。労働組合から要求を提出し使用者と交渉して賃金を上げさせた、労働条件を改善させた、という体験・経験が労働者にとって労働組合の存在意義を自覚する大きな契機となるからだ。
 賃金闘争では最低賃金闘争が大きな意味をもち始めている。それは労働者の賃金が下がりつづけていること、貧困の拡大のなかで最低賃金が注目を集め、その額も一定引き上げられたことによる。地場のトラック運転手や二次・三次下請けの長距離運転手、中小のIT関係で働く労働者は、正社員であっても時給が最低賃金レベルに設定されていることが多い。非正規労働者ではビルメン、コンビニ、飲食業関係に最賃から十円~二十円ほど高いという事例が多い。沖縄では多くの非正規雇用労働者の時給は最低賃金レベルである。九州、東北など時給の低い地域では、最低賃金プラス数十円に賃金の水準が張り付いている非正規雇用労働者が増えている。
 二〇一〇年の政労使による「雇用戦略対話」では、「成長率が名目3%、実質2%を前提に二〇年度までに全国平均千円、できる限り早期に全国最低八百円をめざす」とされている。もし仮に時給八百円が実現されれば前記の人々を中心にして賃金が引き上げられることになる。
 最低賃金引き上げ闘争は、確実に低賃金労働者の賃金闘争の武器になる。この闘いは個別使用者に対する闘いではなく、最初から政府に対する闘いである。賃金引き上げ闘争が最初から政府に対する全国闘争になりうるのだ。きわめて有効に階級意識を強化することができるうるのだ。最低賃金はこれまであまりに低額すぎてそれ担う主体が不在であったが、ようやく闘争主体が登場しつつある。
 都道府県別に決められている現行の最低賃金制ではなく全国一律最賃制を求める闘いは、最賃闘争の全国闘争としての性格をさらに強化することができる。全国一律最賃制を要求して闘えば、被災地における賃金切り下げ圧力に対しても全国の労働者が団結して闘うことができる。労働者階級の全国的団結を固め社会的影響力を高めるうえで、最低賃金大幅引き上げ、全国一律最賃制度実現の持つ意義は大きい。
 公契約条例制定運動などにより、公契約(公共工事・委託契約など)で働く労働者の賃金水準を維持していくことも大切である。公契約のもとで働く労働者は一千万人を超え、その財政規模は十五兆円から二十五兆円に達するといわれている。公契約条例制定運動などは、地域の賃金相場に大きな影響を与えることができる。
 中小零細企業で働く労働者の賃金・労働条件の改善はまず、使用者との原則的な闘いとして実現されなければならないが、大資本による日常的な原価切り下げ圧力がある限りそれだけでは限界がある。政策制度闘争と結合し、社会的な枠組みで一定水準を維持しなければ賃金の引き上げは困難である。
 均等待遇もまた賃金・労働条件改善にとっては重要な課題である。「賃金構造基本統計調査二〇一〇年」(厚生労働省)や「短時間労働者実態調査二〇一〇年」(労働政策研究・研修機構)などによれば、フルタイムで働く男性正社員の一時間あたりの所定内賃金を百とするとパート労働者はその五割程度でしかない。正社員と同じ職務で働くパート労働者のいる事業所では、パート労働者の賃金が正社員の八割未満のケースが44・3%を占めている。このような事業所では、パート労働者の賃金が低い理由を「労働者が納得しているから」と述べている。労働者が納得しているわけがない。有期雇用ゆえに雇止めされる恐怖から、沈黙を無理やり押し付けられているにすぎない。「同一価値労働同一賃金」要求などの闘いをはじめあらゆる形で均等待遇を要求していく必要がある。
 下層労働者の労働組合への組織化、その定着のために賃金・労働条件の改善の闘いは不可欠である。どんなに困難でもこのことに目をそむけるならばユニオン、地域合同労組への組織化と労働者の定着は前進しない。創意工夫し、あらゆる闘いに積極果敢に取り組んでいく必要がある。貧困の拡大と原則的に闘う労働組合・活動家の長年の苦闘によって、まだ十分ではないが闘いの経験は蓄積されつつある。「賽の河原の石積み」も次の飛躍に向けた苦闘として総括できるよう奮闘しなければならない。

  ▼3節―3項 政策制度闘争・政治闘争・国際連帯、労働運動の全国センター建設

 労働者の生活と労働条件を守るためには、個別の労働条件改善や賃金引き上げの闘いだけでは決定的に不十分である。少々賃金が上がっても、増税になったり、社会保険料・医療費・教育費、その他もろもろの社会サービスを受けるにための負担が増えれば、賃上げ分など一挙に消し飛んでしまう。
 また派遣法改正などによって、労働者が不断に短期雇用に追いやられ、使用者責任も認められないような事態が法律化されれば労働者の賃金は下がりつづける。有期雇用法制のように入り口規制が見送られれば、有期雇用はますます拡大することになる。労働者の生活と労働条件の改善のためには政策制度をめぐる闘いは不可欠であり、それは日常的な賃金・労働条件改善の闘いと結合して推進されなければならない。
 国際連帯の闘い、侵略戦争反対の闘いなどもまた賃金・労働条件改善の経済闘争と固く結合して推進されなければならない。アジアの低賃金労働者に職が奪われると錯覚させられ、排外主義にからめとられるのか、あるいは闘いのなかで共通の敵、帝国主義と闘うという反帝反グローバリゼーションの立場に立つのかは決定的な違いである。労働者にとっては反帝反グローバリゼーションの闘いは、職場における自らの賃金・労働条件改善の問題と結合して理解されないと本物にはならない。
 またこれらの闘いはどれほど小規模でも社会的・全国的でなければならない。一労組の力では決して取り組めるものではない。それは前述した最低賃金闘争、公契約条例制定の闘い、均等待遇実現の闘いについても同様である。これらが全国的闘争・社会的闘争となるためには地域おける労働組合の共闘や、市民運動・住民運動などが参加する地域的共闘が必要である。そしてまた真に全国闘争化していくためには、労働運動の全国センターが必要である。労働運動の全国センターが呼びかけなければ、全国闘争に多くの労働組合・労働者を参加させていくことはできない。
 だが、労働運動の全国センターの重要性はそれだけではない。経済闘争を含む全国の闘いの経験を参加労組に伝える、政府・資本家のさまざまな攻撃に対しそれを分析して闘いの方向を指し示すなど多々ある。さらに重要なことは、労働者が社会的勢力として登場し、労働者階級としての自覚を強め、「新しい社会」の創造に向けて階級としての社会的・政治的経験を蓄積していくために、労働運動の全国センターは必要不可欠であるということである。
 労働組合の組織率が下げ止まらないなかで、このような全国センターの維持には膨大な労力が必要とされる。しかし階級的労働運動をめざす限り、労働運動の全国センター建設の努力をどのような困難があろうとも行ないつづける必要がある。
 さらにまた、労働運動の全国センターに収れんしなくとも、反戦闘争やさまざまな課題に関する労働組合・労働運動活動家の全国的共闘やネットワークが形成されることにも大きな意義がある。

  ▼3節―4項 広範な労働運動活動家の建設

 階級的労働運動の前進を実現しようとするならば、階級意識と固い決意を有する活動家を広範に建設しなければならない。
 このことが進まなければ、職場で経済闘争を闘うことも困難になる。中小零細企業での運動では、闘って賃金労働条件が上がれば企業の競争力が弱まり、結果として労働条件の引き下げになるというリスクが常に付きまとう。そのよう状況であっても原則的に賃金闘争を闘うべきである。さらには、労働者はなぜ資本と闘わなければならないのかを「賃労働と資本」の関係から説明し、労働者に納得させなければ賃金闘争といえども開始できない。これらを牽引できるのは断固たる活動家だけである。
 また労働者が国際連帯や政治闘争などの重要性を理解し闘いに決起するには、労働運動活動家の存在が必要不可欠である。労働者を支援・援助する活動家は、日常的に賃金・労働条件改善をともに闘い、その信頼関係を基礎に、闘いの総括として国際連帯や政治闘争の重要性を労働者に意識化させることができる。
 さらに労働者階級の階級闘争の経験を蓄積し、「新たな社会」に向かって労働者を組織していくためには、労働運動活動家の存在は絶対に不可欠である。
 多くの労働者は現在の社会のあり方に大きな疑問を持っている。現在の社会では、大多数の人々が貧困に追いやられ、生存を脅かされているのに、こうした事態がいっこうに改善されないのはなぜなのか。多数の貧困に苦しむ人々が生活物資を必要としているのに、生産においては常に大資本の利潤確保が優先されるのはなぜなのか。その他その他……。階級な立場をもつ労働運動活動家は、資本主義的生産のもつ本質的矛盾や労働者階級の歴史的役割について、闘いのなかで、また闘いの経験を通して労働者に原則的見地を示し、あれやこれやの政策の改良では本質的に事態は解決しないこと、決定的なことは帝国主義・資本主義の打倒と社会主義の建設であることを労働者に理解させていかねばならない。労働運動活動家は、労働者が「本能的に」もっている正義、平等、団結の意識を尊重し、それらの意識を基礎にして、現在の社会に代わるどのような社会を構想すべきかなどの議論を通じて、労働者の社会的・政治的意識を高め上げていかなければならない。労働運動活動家こそが労働者の階級的本性を発露させ、社会主義に対する確信と、それを実現するにふさわしい労働者の社会的・政治的能力の形成を促進していくことができる。
 革命的労働者党が、階級的労働運動を前進させていくうえではたすべき重要な役割は、何よりもこのような労働運動活動家を大量に輩出しつづけていく点にこそある。それは革命的労働者党のもっとも重要な任務のひとつである。




  ■第6章―青年運動方針

  新自由主義、差別排外主義攻撃を青年労働者の力と団結で打ち砕け


  ●1節 青年労働者は階級闘争と革命運動の主体へ

 さまざまな領域において、若者のたたかいが確実に増大している。東日本大震災と福島第一原発事故を受けて、全国で若者による被災地へのボランティア活動などが活発化し、主要都市においては反原発闘争への若者の立ち上がりが拡大してきた。いくつかの都市では、それらは反原発闘争内部における一つの推進翼となってきたとさえ言える。そして、なによりも、すでに、二〇〇〇年代に入って以降、若者世代を明確に対象とした、若者自身による労働運動の形成も始まってきた。こうした広義の意味での若者の社会活動への参加が増大し始めていることは、今日の階級闘争のなかで積極的に評価すべき最も重要な特徴の一つである。だが、一方で、いまだ若者の圧倒的多数は、たたかいに立ち上がることなく、また、たたかいに立ち上がるすべをもたず、資本主義社会の矛盾のただなかで、生活苦と労働苦を強制させられ、自己の生活と将来にまったく展望をもてない状態のなかで呻吟し続けている。こうした状態を拡大させているのは、一方では、階級闘争と革命運動の側の立ち後れの結果でもある。今日の若者、青年労働者は、世代として今日の資本主義の新たな矛盾を集中させられてきた、そして、今後も、強制される世代である。それ故に、今日の若者、青年労働者を階級闘争と革命運動の主体に登場させていくことの重要性は、ますます増大している。そして、それは、共産主義勢力にとって、階級闘争と革命運動の前進という利益のために、共同の努力が要請されている課題である。だから、われわれは、階級闘争と革命運動の前進のためにこそ、自ら、若者、青年労働者の組織化のために奮闘するとともに、すべてのたたかう仲間にこうした共同の努力をともに進めることを呼びかけてきた。二〇一二年を通して、われわれは、こうした共同の努力をより一層押し進める決意である。

  ●2節 今日の青年が置かれている現状とその可能性

  若者、青年労働者のおかれている現状は、新自由主義によって進められてきた今日の資本主義による階級矛盾の若者、青年層における現れである。若者・青年労働者は、その矛盾が最も集中する世代となっている。
 小泉によって本格的に推進されてきた新自由主義は、階級矛盾を劇的に激化させた。その核心は、雇用形態の大きな転換が押し進められたことにあった。正規雇用労働者は、非正規雇用労働者に置き換えられ、労働者の四割が非正規雇用となった。年収二百万円に満たない働く貧困層が膨大に生み出され構造化された。同時に、社会保障制度が解体させられ、福祉も資本の利潤追求の草刈り場となってきた。労働者階級内部においても、上層と下層への分裂が大きく拡大し、かつ構造化されつつある。若者、青年層やシングルマザーなどに対して、それらはより過酷な形で現れた。特に、若者、青年層における過酷な状況は、資本家階級(日経連)が九五年に打ち出した、「新時代の日本的経営」での長期蓄積能力活用型、高度専門能力活用型、雇用柔軟型という方向にそって生み出されたものであった。その結果、多くの若者が、第三の雇用柔軟型に適応する労働力商品としてのみ形成させられることとなった。年功序列賃金、終身雇用制、こうした日本型雇用制度は解体した。今日の若者には、正規一括採用も、社内技能訓練も、長期雇用も、年功序列賃金も、すべてがなくなっている。何の保障もない、派遣などの使い捨て雇用のなかで生き抜いていかなければならない。正規雇用から非正規への置き換えが激烈に進行した。一九九四年段階で五百七十七万人であった十五歳から二十四歳までの男女の正規雇用は、二〇〇五年には、二百六十八万人へと三百九万人も激減した。この期間での全年齢計での正規雇用労働者の減少は四百七十二万人であった。従って、実に、そのうちの三分の二が若年層での減少であったのである。以降も、この構造は強まり、例えば、高卒女子における非正規・失業を含む無業の比率は63%、高卒男子でも45%にのぼっった(二〇〇八年三月)。いまや、若者は、ワーキングプアとして生き抜いていくことを強制される時代に完全に突入してきたのである。
 しかも、貧困は、世代を継いで固定化されようとしている。そもそも、親の世代が貧困であれば、子も充分な教育を受ける権利や環境を奪われ、義務教育以上の教育をまともに受けることができない。また、高校を卒業しても正規雇用の道は狭く、さらに、大学を卒業してさえ、待ち受けるのは非正規雇用の道である。学力はもはや経済的条件によって決定される。経済的条件を有した一部を除けば、多くは、労働者階級の相対的下層へと代を継いで固定化される。若者の多くは、もはや、非正規雇用が常態化しており、よしんば、正規雇用であっても、若年層における離職率の高さは、正規雇用が一時的なものであり、実質的な雇用の不安定さを意味している。終身雇用、年功序列賃金、こうしたことが最後的に解体され、非正規雇用が常態化されたなかで、今日の若者にとっては、もはや、正規、非正規、失業の境界線はあってなくの如くである。それでも、若者に「夢は正規職」と言わせる過酷な現実が若者を襲っている。若い女性のなかには、就職難と不安定雇用のなかで専業主婦志向が強まっている。若者を襲う、こうした不安定で将来展望のない現状は、結婚することもままならないというような若者さえ増加させている。そして、なによりも、こうした状態のなかで、若者自身が、「自分には能力もなく、すべては自分がいたらないせいだ」というふうに思いこまされ、自分への誇りをもてず、自信を失い、自尊心をずたずたにされていく。そして、社会のなかで自分は必要とされていないのでないかと思い、あらゆる意味で自己の「居場所」がないと感ずる若者も増えている。そして、こうしたすべてが、新自由主義イデオロギーである「自己責任」論によって正当化されているのである。
 だが、一方で、こうした若者が直面させられる過酷な現実は、実は、自分のせいではなく、そもそも政治や社会にこそ問題があるのではないかと自覚する若者も明らかに増大している。こうした若者を組織していくこと、こうした若者を社会変革をめざす主体へと押し上げていくことが必要なのである。
 九〇年代の長期不況と、二〇〇〇年代に入って本格的に全面化した新自由主義のもとで育った今日の若者、青年労働者は、かつて高度経済成長時代に典型的であった「がんばって働けば明日の生活はもっとよくなる」という時代の気運をもった、かつての若者世代の意識とはまったく無縁なところにいる。今日の若者は、どんなにがんばっても明日の生活がよくなる保障はなく、将来への希望を失わざるをえない世代としての意識を持っている。こうした世代としての意識の相違は極めて重要な問題を潜在させている。それは、今日の若者世代の多くが、現在の資本主義社会のなかで安定した労働と安定した生活という明日への展望をもてないということ、それ故に、現資本主義社会そのものに幻想を抱きにくく、資本主義社会と決別し、これに代わる社会を希求する潜在的可能性を秘めた世代だということにある。だが、一方で、それらは自然成長するわけではない。こうした若者を、プロレタリア階級闘争の主体へ組織すること、押し上げていくこと、それなくしては、逆に、こうした現実を右から突破しようとするファシズム運動の一基盤へと容易に転化する。現に、在日特権を許さない市民の会など、すざまじい差別排外主義突撃隊とでも言うべき運動へと組織される若者もすでに存在するのである。今日の資本主義のもとで、生活苦・労働苦にさらされ、失業・半失業状態を常態的に強制される若者、青年労働者を、プロレタリア階級闘争と共産主義運動・革命運動の側が組織するのか、それとも、差別排外主義運動へと組織されるのか、こうしたことが本格的に問われる一時代が到来してくるのである。

  ●3節 青年労働者こそ反資本主義、反帝国際主義闘争の先頭に!

  こうした若者、特に青年労働者を階級闘争と革命運動の主体へと世代として登場させていかねばならない。そのためには、まず第一に、今日の若者、青年労働者をその基礎から組織するという組織化路線がまず明確にされねばならない。それは、今日の若者、青年労働者がおかれている現状に深く立脚するものとして若者、青年労働者の立ち上がりと組織化を行っていく必要があるということにある。そもそも、今日の若者を襲っている生活苦の最も大きな要因は、若者をめぐっても雇用形態が激変してきたことにある。労働者階級総体にかけられた攻撃の最も凝縮した現れの一つが、若者世代を襲ったそれであった。もはや、若年労働者の二人に一人は非正規雇用であり、失業・半失業状態が蔓延する状態が若者のなかでは常態化している。こうしたなかで、二〇〇〇年代に入ってからは、すでに若者という同世代を明確に意識した労働運動(若者を対象とした独自のユニオン運動)もいくつかの都市で若者自身の力で形成されてきた。こうした努力を含め、今日の若者を、労働運動の主体へと形成していくことは最も重要なたたかいであると言える。だから、こうした努力は、既成労働運動内部においても、より意識的に推進されていかねばならない第一級の課題である。既成労働運動自身が、若者の組織化を重要な領域として、特別の注意を払う必要がある。同時に、労働組合内における青年部活動を強化するなど、青年の組織化、青年自身を主人公とする運動が労働運動内部において特別に重要視される必要がある。若者自身による独自の労働組合(運動)形成、あるいは、既成の労働組合(運動)内における青年の独自性の重視、双方向からの努力が必要である。青年労働者組織化のあらゆる努力が追求されねばならない。新自由主義のもとで、企業による福利厚生は崩壊し、社会保障制度も解体させられ、福祉領域さえも、資本の新たな資本投下と利潤追求の草刈り場となってきた。そして、こうした領域では、資本参入による労働力需要に対応して、若年労働力が比較的多く吸引されている。少子高齢化のなかでこうした傾向は一層増大する。だが、当然にも、ここでも多くの若者が、まったくの不安定雇用のまま使い捨て労働を強制されている。こうした業種における産別的組織化も追求されねばならない。また、多くの若者が、失業・半失業状態を強制されつつ、さまざまな派遣労働を渡り歩きながら食いつないでいかざるをえないという状態を強制されている。地域ユニオンの一翼で、こうした若者を組織し、若者の「居場所」作りを意識的に進めていくことが必要である。
 さらに、こうした、若者、青年労働者の労働運動への組織化を中軸にすえながら、ここに収斂されないさまざまな若者、青年労働者の立ち上がりとその団結形態をあらゆる領域で促進していくことである。
 第二に、若者、青年労働者の組織化を、政治的には、反資本主義運動、反貧困運動として組織していくことである。貧困問題は階級問題である。今日の若者、青年層が直面する失業、半失業、生活苦、労働苦、貧困、こうしたすべてが、まさに階級問題なのであることがますます現実によって明らかになりつつある。かつて、バブル時代を頂点に、階級や階級闘争という言葉さえ死語となったかに語られた一時代があった。だが、今日では、階級ということが実生活の実感をもって語られることが可能な時代となった。だから、今日の若者が直面する生活苦の原因、貧困の原因が、資本主義にあることを真正面から問題にし、その最初から反資本主義運動として若者、青年労働者の運動を作り上げていくべきなのである。現に、今日の若者の運動の内部には、反資本主義運動・反貧困運動としての質を有した傾向が常に存在している。こうした傾向を徹底して助長しなければならない。生活苦、労働苦を強制させられる自分たちの現実への批判、他者を蹴落とすことを前提とする競争への反発、拝金主義への嫌悪、一方では、こうした価値観も若者のなかに現実に根拠をもって再生産されている。反原発闘争においても、放射能で命と暮らしを破壊してまで金もうけを続けようとする電力会社への批判など、利潤追求に従属した生き方そのものを感性的に拒否する若者が増大している。これらは、すべて今日の資本主義そのものへの批判という契機を内包している。また、若者、青年労働者の運動を反資本主義運動として組織するということは、一方で、不断に現状からの活路を資本主義の打倒という抜本的変革ではなく、資本主義の改良へと収斂させようとする傾向とたたかわなければならないということである。あらゆる装いをもって登場する「福祉国家」論、共産党のような、よりましなあるべき資本主義論などである。言うまでもなく、こうした傾向は、資本主義の根本的変革ではなく、あくまでその手直しを問題にしているのであり、資本主義の根本的変革を求める革命的な階級形成を解体させるのである。資本主義そのものに反対する、若者のラディカルで大胆なたたかいを作り出そう。階級闘争は、きれいな文章をかくこととは違う。階級自身の実力による自己解放闘争である。教育から排除され、生活苦、労働苦を強制される今日の若者こそ、その先頭にたとう。
 第三に、若者、青年労働者自身が、政治闘争の先頭にたつこと、また、プロレタリア国際主義を貫くことの重要性についてである。
 われわれは、今日の若者、青年労働者をその基礎から組織するという組織化路線を明確にした上で、若者、青年労働者が、労働者階級の政治闘争の先頭にたち、若者、青年労働者自身による政治サークル、政治組織を形成することを決定的に重視する。資本家階級、その利益を代弁する日本帝国主義に対する政治闘争ぬきに、若者、青年労働者の革命化は果たせない。このかんの反原発闘争においても、若者の決起が、主要都市において大きな役割を果たしている。若者の反原発闘争の内部に見られる一つの特徴は、放射能への恐怖と原発の全廃を求めるたたかいが、自らの生存権をめぐるたたかいとしてとらえられていることにある。それは、今日の若者が強制されている現実に対抗する反貧困運動とも通底し、かつ連動している。また、若者の反原発闘争は、電力独占資本に対する直接行動などもその特徴としており、電力独占資本に対するたたかい、反資本主義運動としての性格を濃厚に有している。今日の反原発の全人民政治闘争は、その内部にさまざまな階級的、政治的傾向を内包している。そして、いま、反原発の全人民政治闘争は、その反政府闘争としての発展、反資本主義反帝国主義闘争としての発展が問われつつある。こうしたなかで、電力独占資本とこれを擁護する野田政権に対する大衆的な政治闘争を発展させていくために、若者のたたかいはその大きな推進力とならねばならない。この間の反原発闘争の内部で、それを反政府闘争へと戦闘的に発展させることができるのは、まさに若者のたたかいであることもまた明確になりつつある。反原発、反基地、反安保、こうした政治闘争を、労働者階級の先頭でたたかう若者、青年労働者の政治決起をこそ作り出していく、そのための政治サークル、政治組織をあらゆる地域、職場、街頭に組織しよう。若者による労働運動の前進、また、反差別運動など広範な社会運動を内包した労働運動の形成の前進、これらを基礎とする、若者、青年労働者の政治サークル、政治組織、政治戦線を広範に生み出していこう。
 同時に、若者、青年労働者の政治決起は、全世界の反資本主義運動と連動するたたかいとして前進させることがとても重要である。ニューヨークで、「ウォール街を占拠せよ!」と開始された若者を中心とした運動は、またたくまに全米各地、世界各国地域の若者に波及した。「われわれは、99%だ」というスローガンは、またたくまに各国共通のスローガンとなった。それだけ、各国で貧富の格差が拡大している同一の背景があるからである。だから、各国における今日の若者の反資本主義・反貧困運動は、国際的なたたかいの一環である。帝国主義的グローバリゼーションのもとで、各国のたたかいは、その同時性、連動性をますます強めている。全世界の若者、青年労働者が強制されている失業・半失業、不安定雇用という共通性に立脚して、国境を越えた連帯や同時行動を特徴とするたたたかいを作り出していかねばならない。ブンドは、常にプロレタリア国際主義の旗を高く掲げ続けてきた。ブンドは、国際的な労働者階級の結合こそを何よりも重要視してたたかってきた党派性を有している。若者こそが、こうしたブンドのたたかいを我がものとし、今日のたたかいの同時性、連動性を体現したたたかいを新たに作り出していくべきなのである。また、一方で、差別・排外主義扇動とたたかわねばならない。ヨーロッパ諸国では、今日の資本主義が招いた貧富の格差に反対するたたかいの対極に、激しい移民排斥運動も台頭している。日本においても、在特会のような差別・排外主義運動が活発化している。こうした勢力との闘争も反資本主義運動にとって欠くことのできない課題である。若者こそ、こうしたたたかいの先頭にたとう。
 第四に、若者こそが、資本主義社会を変革し、新たな社会を作り上げていく主体となっていくことにある。反資本主義運動は、それにかわる新たな社会をどのようなものとして展望していくのかということと直結する。すでにふれたように、それは、さまざまな「福祉国家」論や「よりましなあるべき資本主義」論ではなく、資本主義の打倒と労働者階級の社会である共産主義社会の新たな創造である。現代の貧困も、若者の苦悩も、その根源は、この資本主義社会にある。階級社会にある。それ故に、階級を廃絶する共産主義こそ、人民の希望として現代に復権されねばならない。二十世紀を通して、スターリン主義は破産した。その歴史的教訓の上に、新たな共産主義が展望されねばならない。それは、資本主義に対する仮借なき闘争のなかから、真に実践的に新たに生み出される。労働者階級こそが、いかなる社会をつくっていくか、真の決定権をもっている。労働者階級こそが歴史を作る。若者、青年労働者こそが、その先頭に立とう。

  ●4節 青年労働者組織化のために共に奮闘しよう

  今日の資本主義のもとで呻吟する若者、青年労働者を階級闘争と革命運動の主体へと組織し、押し上げていくために、左翼勢力はともに奮闘しなければならない。レーニンはかつて「われわれは青年の党である」と言ったことがある。それは、ただ青年層に依拠するという実態的な意味ではなく、その精神において、常に、青年のラディカルな面を糾合することのできる大胆な革命の党であることを主張したものであった。今日においても、それは同様である。資本主義社会に対する若者の荒々しい革命的憎悪を慰撫し解体する分別くさい説教や、経験主義、形式主義、つまらぬ権威主義などとは、まったく無縁であらねばならないということである。われわれも、今日の若者を組織し革命の主体へと押し上げていくために、こうした精神を貫いていくであろう。過酷な階級支配と、生活苦、労働苦のなかで呻吟する、今日の若者、青年労働者の革命化に、二〇一二年を通して、われわれは一層奮闘するであろう。ともに、たたかうことを訴える。




  ■第7章―学生運動方針

  青年学生の世界同時決起と連帯し資本主義世界体制を打ち倒そう!


  ●1 原発推進勢力の責任を徹底追及し、すべての原発を廃炉へ


 二〇一一年三月十一日、東北地方を襲ったマグニチュード9という巨大地震と大津波は、一万五千人を超える人々の命を奪い、今だ三千五百人を超す方々が行方不明のままである。そして、東京電力は福島第一原発で史上最悪のレベル7の原発事故を引き起こし、今なお東北地方を中心に日本全土に放射能による甚大な被害を与え続けている。福島では、子供たちの甲状腺への被曝が45%を超え、多くの原発労働者が日々被曝しながら、命がけの作業を続けている。そして、大気・土壌・海洋を襲った放射能汚染により、今なお米、野菜、お茶、魚などあらゆる食物から高い放射能が検出され、全国の人々を内部被曝の危険へと叩き込んでいるのだ。
 こうした現実を目の当たりにして私たちは、学生団体「あすじゃ」の闘う全国の仲間たちと八回にわたって東北の被災現地を訪れ、微力ながら復旧作業の手伝いを行うとともに反原発、原発解体にむけた闘いを続けてきた。このような闘いを通して私たちは、戦後原子力政策を推進してきた自民党、経済産業省、電力会社を中心としたあらゆる原発推進勢力を徹底して弾劾し、最後の最後まで責任を追及する闘いを被災住民と連帯して闘いぬくことが極めて重要であることを確信してきた。
 これまで、自民党は、電力会社から多額の金をもらい、立地自治体に補助金を出す制度を整え、経済産業省は電力会社に金を出させて公益法人を作って天下りしている。東芝、日立など原発メーカーだけでなく、建設業界など産業界も原発建設を強力に推進してきた。また、電力会社は大学に研究費を出して都合の良いことしか言わない御用学者を作りだし、多額の広告費をもらうマスコミは「安全神話」作りに加担し、原発建設を積極的に後押ししてきたのだ。そして、裁判所は「安全性に問題はない」として住民訴訟をことごとく退け、原発推進を法的に容認してきたのだ。こうした政・官・産・学・メディア・裁判所が一体となって「安全神話」を作りあげ、日本を世界でも有数の原発大国におし上げ、今回の未曾有の原発事故を招いたのだ。
 震災直後から「がんばろう日本」のかけ声のもとで、復旧・復興へと世論を誘導しながら、こうした原発推進勢力の責任がまったく明確にされず、誰も責任を取らない、処罰されないという絶対に許すことのできない事態が続いている。それどころか震災、原発事故で多くの人々が生命、生活を奪われ、日々放射能汚染の恐怖に叩き込まれている中でさえ、東電は責任回避のために「想定外」を連発し、政府、官僚、御用学者たちは何の根拠もなく「直ちに放射能汚染による影響はない」と無責任極まりない発言を今もって繰り返している。電力会社、自民党、官僚、御用学者、マスコミなどあらゆる原発推進勢力を許すことはできないし、決して許してはならないのだ。徹底した責任の追及が必要なのだ。
 全国で巻き起こる原発の全停止・すべてを廃炉にせよという人民の要求に対して、「卒原発」や「減原発」など反原発運動の分裂と混乱だけを狙ったような原発推進勢力と一体となった部分による敵対もあからさまになってきている。そうした中で民主党・野田政権は福島第一原発事故の収束のメドも付かず、放射能汚染の拡大が続く中でも原発の再稼動を狙っているのだ。
 日本では、これまで米帝による広島・長崎への原爆投下によって多くの人々が殺され、生き残った人々も被爆の後遺症に今なお苦しみ続けている。ビキニ環礁での水爆実験(核実験)では漁民たちが被曝させられた。そして、今回の福島第一原発だけでなく全国の原発ではこれまでも度重なる事故が起き、その度に人々は被曝の危険にさせられてきたのだ。核の「平和利用」などというのはまったくのまやかしであり、絶対にあり得ないのだ。そして、原発を動かすことそれだけで原発労働者は日々被曝し、こうした被曝の犠牲と引き換えに原発は稼動し続けている。
 われわれは、今こそ「原発がなければ本当に生活ができないのか」と真剣に問い直さなければならない。核と人類は絶対に共存できないのであり、全世界で反原発を闘う人々や被爆者とともにすべての原発を廃炉へと追い込まなければならないのだ。


  ●2節 全世界で若者が街頭を埋め尽くした二〇一一年

 昨年は、中東における反独裁・民主化闘争、「ウォール街を占拠せよ」運動、欧州金融危機に対するデモ・ストライキなどすべてにおいて、青年労働者や学生など若者が主体となり運動を爆発させたきわめて画期的な年となった。
 その契機となったのが、二〇一〇年十二月十八日、チュニジアにおける失業青年の焼身決起だ。30%に及ぶ青年層の失業を背景に、腐敗した独裁政権への民衆の怒りが爆発し、ベンアリー政権を打ち倒した。さらにこの革命は中東諸国に波及し、エジプト、リビア、イエメンで独裁政権が打ち倒された。「アラブの春」は今もなお進行中だ。
 昨年二月エジプトでは、タハリール広場を中心に集まった数十万の民衆デモがムバラクを退陣に追い込んだ。しかしムバラクが打倒された後も軍最高評議会による支配が続いている。軍に妥協的なムスリム同胞団など野党勢力と一線を画し、青年たちはたたかいを継続した。十一月には治安部隊が殺人弾圧を繰り返しており、予断を許さない。シリアでも弾圧に抗してたたかいが続き、親米のサウジアラビアにおいても反王室闘争の兆しが見られる。
 アメリカの「ウォール街を占拠せよ」運動は、この中東革命の刺激をうけてはじまった。「私たちは99%」を合言葉に、ニューヨーク州ウォール街の実力占拠をめざす青年活動家たちが九月に呼びかけを開始し、十七日にウォール街の一角、ズコッテイ公園を占拠。当初二百人で開始したこの運動は、次第に広範な支持を獲得し、教員・公務員・運輸関係の労働組合や著名人も加わった。運動の拡大とともに警察権力が弾圧を強め、十月一日にはアメリカの社会運動でも史上最高といわれる七百人の逮捕者を出した。同月半ばには「清掃」を口実に公園からの排除策動がはじまった。だが弾圧につぶされることなく占拠運動は継続、十月十五日には全世界に波及した。全世界九十一カ国で国際連帯行動がたたかわれたのだ。
 この運動の背景には、リーマンショック以後のすさまじい失業と貧困の激化がある。アメリカでは失業率は9・1%と高止まりし、どんなに仕事を探しても見つからない。食料やガソリンなどの生活必需品の値上がりも深刻だ。「ミドルクラス」が没落し貧困層となった。その一方で、ウォール街など大企業のトップは数百万ドルの報酬を得ているのだ。
 やや乱暴に言えば、中東諸国でもアメリカでも、若者が抱える怒りは本質的に同じものだ。占拠運動の参加者は訴えている。「金融街など人口のわずか1%の人たちが世界を仕切っていて、99%の人々が苦しんでいるのはおかしい」「すべてがおカネで決まり、強欲と不正直が幅をきかせる」「父親が家を失い、自殺した。今の経済の仕組みを変えたい」「なぜ、ここに来るか? すごく現実的なことでは、学資ローンの負債に苦しんでいるから。だけど、それだけじゃないんだ。人を階層でしばらない社会を目にしたい」(『世界』二〇一一年十二月号「現地からの報告」など)。もちろん中東とアメリカでは生活水準に違いがあるし、政治権力も軍部(一族)支配とブルジョワ独裁という違いがある。しかし共通しているのは貧困と不公正への腹の底からの怒りなのだ。
 特徴的なことは、公園という公共空間を占拠し、カネや権力の管理から解放することによって、貧困や不公正に対する怒りを目に見える形で表現したことである。資本主義と対峙する自治空間として、世界の社会運動に巨大なインパクトを与えた。これは、パリ・コミューン、ロシア革命のソヴェトにも連なる、コミューンの萌芽形態ともいうことができる。
 占拠運動で唱えられた「わたしたちは99%」というスローガンの意味は、「1%の人々の貪欲と腐敗を許してきた私たちだが、もう我慢はしない。肌の色やジェンダーや政治的信条は異なるかもしれないが、わたしたちは皆が共有していることがある。それは、1%をもう許さない99%だ」ということだ。このスローガンの鮮明さとともに、全員参加の「総会」によって闘争方針を決めるという直接民主主義的な運営スタイルであることも、広範な共感を生み出した理由のひとつであろう。占拠運動そのものが今後どう進展するかにかかわらず、貧困・格差への怒りを可視化し、国際化した意義は不滅のものがある。
 一方、韓国でも李明博・ハンナラ党政権下で米韓FTA反対闘争が燃え上がっている。韓国民衆は「FTAは韓国経済を破滅させる」「アメリカによる植民地化だ」と訴え、民主労働党など野党や、韓米FTA阻止汎国民運動本部などに結集する市民団体が大闘争を展開している。十月には国会突入闘争、十一月にはソウル市光化門広場で二万人集会が開かれた。十一月二十九日に李明博は協定を批准したが、その無効化に向けて闘争はさらに継続している。デモの先頭では学生たちが戦闘警察の放水を浴びながら民衆の先鋒隊として闘い続けている。
 まさに貧困と失業に抗する青年学生のたたかいが各国で地鳴りを上げながら始まり、しかもそれが世界同時的に進行するという新たな情勢が到来したのが二〇一一年の特徴だ。


  ●3節 日本でも反原発闘争を青年・学生が牽引

 日本においても若者が街頭行動に大規模に立ち上がっている。
 3・11後、福島第一原発事故への怒りと不安が沸騰し、四月十日の「素人の乱」呼びかけの高円寺デモを皮切りに数万人規模のデモが生み出され、デモは以後毎月、参加者を増やしながら拡大していった。これと並行して、原発推進勢力を徹底追及する、東電本社に対する直接抗議行動(座り込み)もとりくまれてきた。九月十一日には新宿デモと同時に、経産省包囲行動が千人以上の結集でとりくまれた。同日、上関原発阻止を担ってきた若者たちを中心に、経産省前でハンストが開始された。その横では「九条改憲阻止の会」などが反原発テントを設置し、以後今日に至るまで警察・右翼一体となった襲撃をはねかえしながら、反原発運動の最前線拠点として維持している。
 そして九月十九日、東京・明治公園での「さようなら原発集会」には六万人が結集し、反原発の全人民政治闘争が爆発した。
 参加者への面接調査によれば、デモへの初参加者は6・11デモ(二万人参加)で48%、9・11デモ(一万一千人)で35%を占めており、さらにその半分は三十代以下だという(『朝日新聞』十月十八日夕刊記事より)。この流れは関西、九州など各地の原発再稼動阻止のたたかいと結合して、さらに発展しようとしている。
 この一連のたたかいの先頭には、従来より地道に反原発運動に取り組んできた諸団体とならんで、あらたに戦列に加わった一群の若者たちがいる。さらにその核心には、イラク・アフガニスタン反戦運動を粘り強く推進するとともに、格差社会への怒りから非正規労働運動を担ってきた「ロスジェネ世代」の青年活動家たちが存在している。3・11以後、菅首相(当時)が欺瞞的な「脱原発依存」を口にし始めても、それに惑わされることなく反原発闘争が高揚した背景には、そうした青年活動家たちの奮闘も確実にあるのだ。
 警察権力の反原発闘争への弾圧はこうした青年たちに集中した。とりわけ象徴的なのは9・11原発やめろデモに対する「公妨」デッチ上げの十二人逮捕であろう。しかし弾圧によって反原発運動は萎縮するどころか、さらに参加者は倍加した。
 野田政権は、経団連などブルジョアジーの意をくんで、原発輸出の開始のみならず、各地の原発の再稼動を公言している。反原発闘争へ学生の決起を促し続けよう。
 他方で野田政権は、被災民衆を切り捨てた「復興」、大衆増税政策を推進し、社会をますます競争と荒廃に叩き込むTPP交渉に乗り出してもいる。学生にとっては、高止まりする学費、厳しい就職難が野田政権のもとでさらに深刻化しようとしているのだ。
 そもそも学費高騰は、新自由主義政策を推進する国々、とりわけアメリカ、韓国、そして日本において顕著な現象だ。アメリカの学費は、州立、私立で大きな開きがあるが、学費の高さは世界最高水準だ。リーマンショック以後、州財政の悪化を理由に、大学援助金が削減されてきた。たとえば州立のカリフォルニア大学でも三割にもおよぶ授業料値上げが強行され、今年から年間授業料が一万ドルを越えるという。ウォール街占拠運動参加者の発言にもあるように「学資ローン」地獄にあえぐ学生が急増している。また韓国はアメリカに次いで学費が高く、多くの学生はアルバイトに追われている。危険な高額短期バイトが社会問題化し、借金に追われ自殺する学生も少なくない。こうしたなかで昨年六月には韓国大学生連合(韓大連)が中心となり、学費半減を要求するキャンドル集会が二万人以上の結集で闘われている。
 日本の学費も国公立を問わず高い。アメリカ、韓国並みの水準だ。そのため、三分の一を越える学生が奨学金を利用している。その内訳は第一種(無利子)では約三十五万人、第二種(有利子)だと約八十三万五千人だ。奨学金を返済するためにも給与の安定した会社に就職することが求められ、こうしてますます熾烈な「就活競争」に拍車がかかることとなる。
 だが、日本の学生も立ち上がりつつある。十一月、新宿で「就活をぶっこわせ」と就職活動そのものを批判する学生たちのデモが登場した。
 そもそも学生の就職率は長期不況で厳しかったのが、「円高」と3・11の直撃でより深刻になり、学生に対するプレッシャーは相当過酷なものとなっている。入学してすぐ「就活」が意識され、資格や英語検定の取得などスキルアップを求められる。大学自体が就職予備校と化し、大学当局は就職率を上げるために学生にハッパをかけまくっている。だから学生が自然発生的に立ち上がり、「就活をぶっこわせ」「勉強させろ」「新卒一括採用反対」等と街頭に出て訴えるのはまったく当然だ。
 反原発デモにせよ「就活ぶっこわせ」デモにせよ、いまだその規模は中東や欧米にくらべ萌芽的ではある。しかし六〇年代以後、停滞した日本の青年・学生運動の歴史を越えて、昨年大きく公然化してきたことは事実だ。われわれはこうした青年学生の自然発生的な決起をつよく支持しともにたたかうし、その反資本主義的な方向への発展と、反戦闘争との結合を訴えていきたい。
 他方で、若者の街頭登場という点からみれば、排外主義的傾向もまた表出した一年であったことも見逃せない。「在日特権を許さない市民の会」など極右排外主義勢力は、昨年も8・15靖国で千人以上の若者を動員し、反靖国デモに罵声を浴びせた。8・6広島では平和公園に集い反戦反核を訴える人々に対し、「日本も核武装を」「原発を守れ」と叫び、襲撃的デモをしかけてきた。
 桜井誠などファシスト分子に煽動された若者たちの多くは、新自由主義によって生活を破壊され将来の展望を奪われ、その怒りや不安を在日や滞日外国人、被差別大衆に向けることで「自己解放」を錯覚している。かれらのその排外主義的な憎悪感情は、昨年七月にノルウェーで七十七人を殺害した極右分子の心情と極めて近い。
 深刻なのは、中国や韓国の経済成長や文化流入を脅威と受け止める「反中・反韓」感情をもつ青年層が、ネット社会を飛び越えて街頭に登場し始めていることだ。その典型例は昨年八月に発生した「フジテレビ抗議デモ」や「韓流に偏向するフジテレビ糾弾」等であり、数千人が港区お台場でデモをおこなっている。さらに付け加えるならば、十一月大阪府知事・市長選で、橋下ひきいる「大阪維新の会」ダブル当選という事態にも、教育の国家主義的統制を強め、「既得権益とたたかう」という橋下のファシスト的手法にとりこまれる青年が少なくないことが示されている。
 若者たちの巨万の反原発闘争、就活や学費値上げに対する怒りの決起が開始される一方で、不安や怒りを排外主義に転化して組織する極右勢力に警戒しよう。やつらに若者を組織させてはならないのだ。このときウォール街占拠運動の「わたしたちは99%」というスローガンは大きなヒントになる。在日や滞日外国人、被差別大衆との連帯を強め、極右勢力を社会的に包囲・解体しよう。このたたかいを学生戦線の課題としてしっかり位置づけよう。


  ●4節 反原発・反基地・反貧困を資本主義打倒の闘いへ

 3・11で明らかになったことは、基地も原発も成田空港も「国策」として住民に暴力的に押し付ける日本のあり方そのものが変革されない限り、根本的な解決はないということだ。一握りの独占資本、官僚、政治家という1%が支配する社会のあり方を変えなければならない。TPP交渉に乗り出し、一握りの多国籍企業の利益を守るため、大多数の民衆の命と生活を犠牲にしようとする野田政権を打倒しないかぎり、青年・学生の未来はない。
 以下、たたかいの方針をすべての学生に提起したい。
 第一には、反原発闘争をこれまで以上に高揚させることだ。野田政権のもと、経産省は原発の再稼動を狙っている。十二月十七日、野田は「冷温停止状態」「事故は収束」と宣言した。冗談ではない。溶融した核燃料の所在もわからず、いぜんとして放射性物質が放出されている。避難者をはじめ怒りの声が沸騰しているのは当然だ。いまこそ全原発の廃炉を訴えよう。政府・東電・御用学者たちの犯罪を暴き出し、その責任を徹底的に追及しよう。福島をはじめ被災住民への補償をしっかり取らせよう。子どもへの年間20ミリシーベルトの容認を撤回させ、被曝を止めさせなければならない。さらに、アジア・世界の反原発運動と連帯し、ベトナムなどへの原発輸出を阻止しよう。今春、各キャンパスで反原発をすべての学生に呼びかけ、原発再稼動阻止の全国運動を展開しよう。
 第二に、日米同盟の強化・米軍再編と真っ向から対決する沖縄、岩国の住民を支援し、ともにたたかうことだ。
 沖縄防衛局長・田中は「(女性を)犯すときに、『これから犯しますよ』と言うか」等と暴言を吐き、更迭された。しかしこれは田中個人の問題ではない。政府の本音だ。辺野古に新基地を建設し、高江にヘリパッドを設置し、与那国に自衛隊を配備することを沖縄民衆は認めていない。拒否し続けている。それを暴力的にやろうとしているのだから、まさにレイプそのものだ。「本土」のわれわれは決して共犯者になるべきではない。沖縄民衆の怒りに結合し、辺野古・高江への派遣や「復帰四十年」5・15現地闘争をたたかい、沖縄解放闘争に連帯しよう。
 昨年十一月の岩国行動は、愛宕山米軍住宅建設阻止や裁判闘争を粘り強くたたかう岩国市民や、韓国反基地運動、フィリピンVFA反対運動など国際反戦闘争と結びついて成功した。この成果をひきつぎ、今年も岩国基地の強大化、米軍住宅建設とたたかう岩国市民を支援しよう。
 第三に、農地強奪・TPP阻止をたたかう三里塚農民に連帯しよう。昨年五月、権力は反対同盟をはじめとして支援の仲間を大量逮捕し、八月には現闘本部を破壊するという暴挙をはたらいた。そしていま市東さんの農地を、デタラメな裁判でもって奪い取ろうとしている。断固阻止しなければならない。現地行動隊を先頭に、不屈にたたかう反対同盟農民の闘魂にこたえよう。援農を組織し、現地集会に全国からかけつけよう。
 第四に、以上のようなたたかいを推進する学生団体「あすじゃ」への結集をすべての学生に呼びかけたい。六〇年代のベトナム反戦運動を超える規模で、全世界で若者が決起した。長く停滞した日本の青年・学生運動も復活しつつある。反原発・反基地闘争を住民と連帯してたたかい、フィリピン・韓国などアジアの学生に連帯する反帝・国際主義の学生団体「あすじゃ」を今年、さらに発展させよう。
 そして最後に訴えたいことは、原発・基地を押し付け、格差・貧困を生み出す資本主義そのものを打倒する闘いに立ち上がっていくことである。世界恐慌は今年、より深刻化するだろう。欧州をはじめ各国政府は、暴走する金融グローバリゼーションをコントロールできない。しかし、資本主義は自動的には崩壊しない。ひたすら増税や失業を民衆に押し付け、市場と資源を争奪するために軍拡と戦争を繰り広げていく。こうした破局的で絶望的な世界に終止符を打つ道は、ただ労働者民衆が一握りの資本家階級を打倒し、全世界で生産手段を社会化していくこと以外にはない。学生がその壮大なたたかいの一翼を担いうることは歴史が証明している。
 全国の学生のみなさん、われわれ共産主義青年同盟(学生班協議会)に結集し、すべての民衆の解放を自己の解放と結びつけ、資本主義の世界史的打倒をめざしてたたかおう。



 

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