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『戦旗』第1290号(2007年9月5日




 10月岩国へ総決起しよう

 沖縄―「本土」貫き米軍再編阻止に起とう

 ホセ・マリア・シソン氏不当逮捕弾劾



 7・29参院選は、日本労働者階級人民の今後のたたかいにおいてあらたな局面を創出した。自公体制の動揺ということのみに限定されない日帝支配層総体の動揺がもたらされている。積もりに積もった新自由主義政策、戦争国家化、国家主義・排外主義の鼓舞と治安弾圧体制強化などなどへの不満が噴出し、このかんの日帝支配層の内外にわたる政治的経済的路線・政策というものを揺るがせている。この局面を革命派ががっちりと捉えつつプロレタリア革命運動の前進に向けてたたかうべきときである。今秋期闘争は、その最初のたたかいである。創出されているあらたな局面に大胆に分け入りつつ、労働者階級の解放ヘ向けたたたかいの方針を打ち出しその実践を通じて主体的および客体的情勢を革命へと方向付けるという点で、重大な試練がわが同盟に託されていることを肝に銘じよう。


●1章 安倍継続の下で激化する支配層の危機を促進しよう

 安倍は参院選の大敗直後に「進めてきた政策や路線の方向は間違っていない。国民からも理解を得られている」と早々と政権に固執する意思をむき出しにした。党および閣僚の人事改造を進めつつ、自身は首相の座にしがみつくということだった。だが、そうして政権を維持してゆくこと自体が日帝支配層内部に深刻な亀裂と路線の分解を拡大し、もって政治危機を拡大していることにこそ焦点をあてて捉える必要がある。新自由主義政策基調や改憲などの政治態度を自民党と同じくする民主党も含め、日本の支配層内部の分解に歯止めが効かない状況があらわれているのである。

 選挙直後には「外交・内政など政策そのものは間違っていない」「改革のスピードを緩めてはならない」などと、安倍の続投を支持した日本経団連・御手洗自身、民主党との政策対話に一軸点を置くなどの態度転換を始めている。与党を構成する公明党は、「安倍首相はだらしない」と、いまや露骨に安倍政権への懸念と不満を表明している。

 安倍は「人心一新」などとまるで他人事のように内閣改造、党役員人事改造に着手した。だが、出来上がった新内閣・党人事になんら「一新」されたものはない。高村、町村、麻生などの派閥の領袖を起用しつつ新自由主義政策と日米同盟深化などの政策をさらに進めるための組閣にして党役員人事であるに過ぎない。政権の動揺と自民党内部の危機は継続する以外ない。折からの米住宅バブル崩壊に端を発する世界的経済危機もまた、安倍政権を直撃している。「いざなぎ越え」の景気拡大という政権浮揚のためのアナウンスもいまや何の効力も持ちえないところに来ている。国内経済政策でのポイントを稼ぐゆとりも条件もすでにない。にもかかわらず安倍がその政権を維持してゆくのは「戦後レジュームからの脱却」という、語の真の意味における反動にして、改憲―戦争国家化へ向けた政治信念の故とも言える。参院選大敗北直前までに安倍が思い描いていたであろう政治日程は、九月安保問題懇話会報告―集団的自衛権行使解禁の解釈換えへと歩をすすめ、他方、一六六国会で強行成立させた改憲手続法に基づいて、憲法審査会の両院での設置と論議開始―改憲への国民的運動形成、これらを通じた「三年後の改憲国会発議」から任期内改憲という政治コースである。そしてまた、今春訪米時の日米首脳会談を受けて、米軍再編の実施と日米同盟のいっそうの強化、そしてそれを背景とした、日米および豪、インドをリンクする対中国包囲網の形成であり、これをもってする「世界とアジアのための日米同盟」路線への舵きりを完成させることである。もちろん、先の国会で継続となった、労働法制の一段の改悪や大増税、国家主義・新自由主義的教育改変の一段の進行などなどの内政上の大悪政もまたもくろんでいたところである。 労働者階級人民は、今次参院選においてこれらへのストップをかけたのである。民主党の政策への期待や支持というよりも、自民公明の与党がおしすすめる国内外にわたる諸政策・路線への批判を今回の投票行動をつうじて行い、その実質的結論をかちとったといえる。議会の内外を貫いて、新自由主義・新保守主義の政策に対決し、グローバリズム戦略と戦争国家化へ突進する支配党・政府・国家権力・財界などなどの支配層を打倒する政党の未形成という主体的条件、そしてまた現在の選挙制度そのものの根底的な問題性のゆえに、このような形で労働者人民は反撃の一端を示しているのだ。こうして切り拓かれたあらたな局面を、政治危機の継続と体制的危機への転化、そして革命情勢を引き寄せるためにいまなにをなすべきか、ということが掛け値なしに問われるのが今秋期から冬期にかけての情勢である。政治過程のすさまじい流動化状況が継続するが、その過程で労働者階級人民の政治的経済的社会的諸要求を基軸にして戦闘的階級的団結を固め拡大してゆくことがあらためて真剣に問われる。まさに、革命党建設と現下の情勢に対応する革命的闘争方針をもってこの情勢に分け入りたたかおうではないか。


●2章 職場から団結を拡大・強化する階級的労働運動の課題

 階級的労働運動勢力に課せられた課題は重大である。まさに労働者の怨嗟の的となってきた新自由主義政策への批判が「年金問題」「政治とカネ」「相次ぐ閣僚らの暴言」などを契機に噴出し、与党大敗北をもたらした最大の要因であると参院選過程を総括することが可能である。そのことはなによりも、新自由主義政策・路線への対抗の巨大な導水路が切り開かれたことを意味する。

 九五年経団連労問研(当時)報告における、労働者の三層化とこれに即した労働市場の柔軟化、これに基づく労働条件の悪化と切り下げにつぐ切り下げは、いまや非正規雇用労働者三分の一(女性労働者においては過半数超)という状態を生み出している。折からの経済的低迷とあいまって、ワーキング・プアといわれる労働者層の増大などなどへの怒りが、今次参院選においては安倍政権に向いた。もちろん、民主党にしてからが、新自由主義改革路線という点では自民と大きく変わるところはない。だがとはいえ、先の一六六国会において、労働法制の改悪にストップをかけさせ、最賃引き上げなどの諸策を先行させようというところまで追い込んだのは労働者階級の声とたたかいの産物であり、民主党といえどもこれを吸引することなしに参院選は勝利し得なかったという点を見ておくべきである。まさにこの状況、労働諸政策をめぐる支配層の一致した意思が未形成な状況に階級的労働運動勢力がどんどん分け入り勢力を伸張させてゆくべき時だ。この資本制社会において、社会のあり方についての決定力を有する階級としての労働者階級が、労働および社会のあり方を決定付けてきた新自由主義に総反撃し、よりましな新自由主義の方向を競うのではなく、新自由主義的な考えかたを一掃し労働者階級の団結を軸として新たな社会建設が可能であるということを示すべき時だ。

 この十数年を振り返って、まさに労働分野での諸規制緩和・改革なるものが、実は社会構造やすう勢・風潮のすべてを規定してきたことが見て取れる。ここを突破してゆけるのは実に階級的労働運動を標榜する潮流・勢力のたたかいかたにかかっているといって過言ではない。いま「貧困」という問題、「ワーキング・プア」という存在が社会の注視する大問題となっている。多かれ少なかれ、貧困や低年収の労働者世帯の存在はかつてもあった。だがこれが社会の一大関心事となるには、それだけの理由がある。かつてはそうした存在を、「少数の特別な事例」として扱うことができた。だがいまはそれはできない。「明日はわが身」という形で、労働者人民みずからが注目するような「不安」と「不信」が、政治や社会を見る目として形成されているからだ。そして新自由主義政策を進める限り、国家(政府)はこれを放置し悪化させてゆく以外選択肢はない。まさに政府が現社会の展望を打ち出すことができず、現在の危機をのりこえる未来を示すことができないということが根底にある。裏を返せば、資本制社会のどん詰まりということであり、企業もそしてまた国家もまさに労働者人民をどうやっても満足させられなくなったということである。危機の最深部にがっちりと労働者階級が存在し、そのたたかいが根底的にこの社会そのものを揺るがそうとしている状況なのである。職場に累積する矛盾、街頭に突出してくる怒りを階級的労働運動勢力が吸引しながら団結を固め拡大する絶対の好機である。賃金、労働時間を筆頭とした労働条件をめぐって、処遇の差別や分断そのものをめぐってなどの諸矛盾に徹底してこだわりながらたたかいを継続し、もって団結を拡大強化してゆくことが絶対的に必要な局面である。


●3章 テロ特措法延長・改憲阻止、安倍政権打倒への総決起を

 階級的労働運動勢力の拡大と団結の打ち固めとともに、今秋期安倍政権打倒へ向け政治活動と政治闘争を激烈に展開してゆくべきときである。安倍政権打倒のスローガンは全人民共通のものへと拡大している。その最先頭で革命勢力と戦闘的労働者・学生・人民が奮闘し、そのスローガンを現実のものと化しながら、民主党を含め日帝支配層の打倒への総決起・連続的決起をがっちりと貫徹すべき時だ。

 改憲攻撃を押し返し、改憲論議そのものの完全停止をたたかい取るという方針をもってたたかいを進めよう。

 憲法九条を破壊し、もって日本をして戦争のできる国家へと化してゆくことは、いまや財界・政界を問わず巨大な支配層総体の意思と化している。米帝もまたこれを強力に要求している。この攻撃が参院選の大敗北という事態で自動的に停止することはない。だが、憲法九条改悪と憲法改定手続き条項(九六条)そのものの改定を当面の改憲課題とする日本経団連など財界の改憲提言とは別に、自民党はその固有の国家・社会観や綱領のゆえに、一昨年自民党新憲法案を発表し現在に至っている。これ自体自民結党五十年のために急あつらえされたものという性格は否めないが、まさにこれが現政権党の最大の綱領的基軸であることは間違いない。だがしかしここには近代以降の立憲主義というものをも否定するような憲法観や、「公共の福祉」を「公益」へとすりかえる点に容易に見て取れる国家主義・権威主義、あるいはそもそも平等や人権原理の後退などが一連の改憲論議の中ではしなくも露呈している。確かに、改憲手続法(国民投票法)は強行成立させられたが、これに基づいて臨時国会で設置された憲法審査会は放置状態のまま二度目の国会を迎えることになる。そもそも圧倒的な国民が拙速審議を批判し、世論および識者のほとんどがその内容に疑義と批判を呈したにもかかわらず多数の暴力で強行成立した法律であるからには、まさに法そのものの廃止こそふさわしい。政治権力の濫用による個々人の人権・自由・社会的諸権利侵害を厳しく禁じるための憲法の意味と位置という常識から逸脱し、国家が国民を縛るものとしての憲法という非常識で危険な憲法観を持つ安倍を筆頭とするような自民党などの輩にそもそも改憲などを語らせてはならない。

 憲法九条改悪阻止を基軸としつつ、現在巻き起こっている改憲阻止の運動は、立憲主義というものの再確認、市民個々人の基本的人権や自由に対する国家の保障責任の再確認などという回路を経ながら、全人民的に日本国憲法の位置や意味を再照射しつつ、現実の日本の政治社会のあり方への批判とあらたな国家・社会を創造してゆく視点と意思を形成するベースを培うものへと発展しつつある。このような点に着目して、われわれは明文改憲を通じて日帝の戦争国家化を完成させようという九条改悪阻止のたたかいはもとより、広範な改憲阻止の声と運動にさらに分け入りながら、現在の自民などが呼号する改憲論議の停止・改憲手続き法の廃止をダイレクトに要求してたたかうのでなくてはならない。そして現憲法が規定している生存権や団結権などの諸内容の現実化を要求しつつ、それを労働者階級の政治権力奪取を通じた根本的社会変革=革命への糧としてゆくようにたたかいを進めなくてはならない。まさに帝国主義的グローバリズムが世界を覆い、新自由主義的諸策が労働者人民の生活に多大な影響を及ぼしている現在、現憲法が規定しているとりわけ社会権的基本的人権の諸条項はただちに実際に政府によって実現させなくてはならないものなのだ。

 テロ対策特措法再延長問題が次期臨時国会の最大の課題となる。まさに、憲法九条改悪と直結する問題であり、さらには日米同盟深化路線を粉砕するたたかいをめぐる問題である。当然ながら、現憲法九条を「あるがまま」に維持せよという数多くの労働者とともに、与党改定案および民主党の対案にも反対しつつ、同法再延長阻止のたたかいを断固として推進しよう。あわせて安保懇によって「集団的自衛権行使解禁へ向け政府解釈を変更すべし」との報告がなされることとなる。この安保懇自体も参院選自民大敗北を受けて、もはや意味をなさないといわれているが、しかしこのようなものが時の首相の私的諮問機関から提出されること自体が問題なのである。一貫して政府の下で維持されてきた憲法九条解釈のギリギリの線をも打ち壊し、明文改憲の道を通らなくても日米共同軍事行動を可能とするこの報告を断固粉砕しなくてはならない。


●4章 日米同盟深化路線の動揺をさらに激化させ政権打倒へ

 そして、安倍政権を打倒する上で、この点にこそ最大の力点をもって今秋たたかうべきだという点から述べておくが、日米同盟深化という小泉以降急速に進められてきた日帝の安保および外交路線の完全なる破綻をかちとらなくてはならない。

 そもそも今春の日米首脳会談、「2プラス2」とは何であったか。それは、つまるところ、米帝にとっては在日(在沖)米軍再編問題は過去の問題であり、あとは日本政府が地元の抵抗を押しつぶして進行させる以外にないという態度を明らかにし、むしろ日米間にまたがる安保をめぐる問題は次の点にあるとした点である。具体的には、米本土の防衛に対して日本がどのような態勢をとるのか、とりうるのかという点、あるいはまたアジア太平洋地域における日米共同軍事行動を具体化させてゆく計画の練り上げなどを俎上に上げたということである。つまり、対ミサイルを含め、米本土防衛ということに対して日本がどのようなかかわりを行いうるのかという点がもはや問題とされるに至り、またいっそうの自衛隊の海外派兵・日米一体となった軍事力行使へ向けた計画を練り上げてゆこうというのである。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結などを盛り込んだ今春「2プラス2」における共同発表文書『同盟の変革:日米の安全保障及び防衛協力の進展』などを通じて、このような米側の日米軍事協力体制づくりへの要求は急である。かたや日帝は、一向に進捗しない米軍再編計画であるにもかかわらず、駆け込み的な訓練移転実施、沖縄辺野古での事前調査開始などを「手土産」として訪米するしかなかった。米軍再編計画について日本側が報告を上げ米側がこれをチェックするという構図に終始した。ここにまずもっての矛盾点がある。米帝・米軍は、日本政府の各地元との矛盾や緊張的関係についてはもはや「われ関せず」という態度に終始している。相次ぐ米軍基地内外での事故や、事件を引き起こしつつ、はかばかしく進行するはずもない米軍再編計画の実行へむけ日本政府の尻たたきに躍起というような状況だ。

 小池もまた、「手土産」として、辺野古崎新基地建設のためのアセス方法書を強引に沖縄に提出して訪米した。だがそこでのライスとの会談で、まさに日帝にとっては戦慄すべき提言が行われている。「インド、豪との関係強化を主張することは中国を刺激することになりかねない」という露骨な制動発言である。これには、さらに伏線があった。この五月、日本政府はここぞとばかりに日米基軸プラス豪・印の安保戦略対話を開始した。「主張する外交」「アジアと日本のための日米同盟」を具体化したものだと安倍や麻生は自画自賛して見せたのだが、その実、豪・印ともこの会合には乗り気ではなく、及び腰の参加であったことが事後暴露されている。

 朝鮮半島とりわけ対朝鮮民主主義人民共和国方針の完全な破綻の現実ということもある。進捗する六カ国協議自身、かたや米帝の、かたや金正日のそれぞれの政権の思惑がらみでしか進行しないことは明白であるにしても、その両者の利害は調整可能なものとなっている。米朝関係の進展なくしては、この会議は進展しないことは明白だがそれが継続している。ところが日本政府だけがこの情勢に完全に乗り遅れている。にもかかわらず安倍は振り上げたままの「拉致問題の解決なくして日朝正常化無し」「圧力に次ぐ圧力」などのスローガンをおろすことができない。それは安倍の支持基盤をも自ら掘り崩すことへと直結するからだ。

 こうして、安倍政権の呼号する「主張する外交」「世界とアジアのための日米同盟」、なかんずく日米同盟深化一辺倒路線というものが崩壊しつつあるのである。先のインドなどへの訪問においてもそれはしかり。「二つの海の交わり」なる仰々しいタイトルのインド国会演説は、そのあまりの日米同盟深化路線自己礼賛とそれを背景にした大国主義的言い回し、そして何よりも「拡大アジア」なる概念を打ち出しての対中包囲網建設という意図が露骨でインドの国会議員は引きまくりであったと伝わっている。安倍政権は外交でポイントを稼ぐことももはやできない。


●5章 米軍再編との闘いは正念場、また政権打倒への最短の道

 こうして、小泉―安倍と継続した「日米同盟深化路線」は動揺の局面を迎えている。そこに、米軍再編粉砕のたたかいを炸裂させるのだ。

 この秋、米軍再編計画は米軍再編特措法の施行(八月二十九日)および来年度予算案編成の過程と決算時期をむかえる中で、一つの正念場を迎える。

 神奈川においては原子力空母ジョージ・ワシントンの母港化へ向け、海底浚渫工事が強行されている。そしてまた、キャンプ座間への「第一軍団(前方)・在日米陸軍司令部」新設・移駐に向けてその準備チームが新設された。これに対するたたかいは、行政訴訟や大衆的抗議行動の続発などとして継続している。あるいはまた、第四次厚木爆音訴訟も巨大な規模で組織されつつあるところだ。蒲谷横須賀市長はすでに原子力空母母港化を容認してはいるが、キャンプ座間への新司令部設置に対して、相模原、座間各市長は、基地恒久化反対を掲げて今に至るも「非容認」の立場である。

 沖縄においては、辺野古崎新基地建設のための「環境現況調査」強行に引き続き「環境アセス方法書」の強引な公告・縦覧手続き開始ということがなされている。これにたいしては、すでに辺野古崎新基地建設に基本的なところでは合意している沖縄県当局、名護市当局も抗議の声をあげざるを得ない。こうした容認派をもしゃにむに追い込んでゆく手法をとるしかないのだ。だがしかし、知事・仲井眞、名護市長・島袋らの抗議表明ということをはるかに越えて、辺野古崎新基地建設阻止のたたかいは根底的なところで継続している。すなわち「新基地を作らせない」という一点で連日の海上・海中での阻止行動がたたかわれているのだ。高江のヘリパッド新設反対のたたかいも実力攻防局面にただちに突入している。ここでもまた住民を中心として、連日連夜にわたり工事阻止のたたかいが展開されている。キャンプ・ハンセンの陸自訓練使用と米陸軍射撃訓練所新設という計画が同時期に示されたことに対して、金武町住民はただちに反対の声を上げ絶対阻止のたたかいへと突入している。まさに、こうした米軍再編計画反対のたたかいは拡大的に継続しているし、このたたかいが、この春の高校日本史教科書検定における「沖縄戦時住民強制集団死」記述削除に対する全沖縄的な抗議・糾弾の嵐の中で開催される九・二九県民大会と相乗しながらいっそう発展してゆくことは明らかだ。参院比例区においてわれわれも支持し応援した山内氏、そして参院議席を奪い返した糸数氏らもこうしたたたかいの先頭にたっている。 米軍機「訓練移転」も回数を重ねるごとに、沖縄をはじめとした嘉手納、三沢、岩国米軍基地所在地の「負担軽減」など真っ赤なうそであり、「相互運用性向上」のためにこそあるという本質が明白になっている。訓練の移転先である空自各基地所在地での反対運動は絶えることがない。築城において、小松において、三沢において、そして新田原などなどにおいて反対運動はがっちりと継続している。


●6章 秋から冬、岩国基地大強化問題は決定的局面を迎える

 そして岩国においては、決定的な局面を今秋から冬に向けて迎える。昨三月住民投票の勝利を決定的な要因として、岩国市長・井原氏は基地大強化計画に対して反対・非容認の態度を現在に至るも維持している。このかん、最大規模の圧力が政府やこれと同一化する山口県当局、あるいは地元商工会議所などの財界などからかけられているが、これに対してもあくまで非容認の態度を貫いているところだ。もちろんこの根底には、「これまで以上の基地強化は絶対に認められない」という、揺らぐことのない民意がある。これが、住民投票以後、市長選、市議選、県議選といっかんして基地強化反対の意思表明としてあらわれてきた。この構造が維持されたまま今秋過程へと突入するのである。 対決点、焦点は第一に、六月市議会において二転三転した新市庁舎建設費用問題の再燃である。政府による約束破りの新市庁舎建設補助金カット問題を受けて、井原市長は三月市議会において「合併特例債」を財源にあてることを提案し、これを議会内の容認派が否決。予算案そのものが否決され市は三カ月期限の暫定予算を組んで対応。その後の六月議会において同様の予算案を提案し再否決。二度にわたり市の予算案が否決されるという異例の事態を受けて、財源を「国庫補助金」と名目換えして臨時議会でようやく可決という事態となったという経緯がある。「国庫補助金」名目で容認勢力が賛成したのは、当然にも井原市長を非容認姿勢から容認姿勢へと転換させる、という意図が込められている。政府は、補助金交付は、従来約束していたSACO予算としてでなく米軍再編の見返り交付事業として計上しなおしたから井原市長が基地強化計画に賛成しない限り交付できないという立場であり、市議会内容認勢力がそのお先棒を担いで井原市長を攻撃しているという構図だ。だが、「筋違いの話」で「約束破り」と井原市長は主張し、基地大強化について未だに地元に納得のゆく説明をしていないのは政府のほうだと、非容認の態度を変えることはない。ここに、九月市議会を経て、決算議会としての十二月議会へと至る過程ですさまじい重圧があらたに市長および岩国市民にかけられてくることは必至である。

 第二に、民空化問題というものもある。基地滑走路の沖合「移設」とあわせて、かつて民間空港でもあった岩国空港を再開しようという計画が地元の財界などの音頭で進められてきた。山口県や岩国市もまたその促進を行ってきた。しかしこの民空化という問題も、厚木艦載機部隊移駐などの基地大強化策の見返りとして位置づけを変えた。民空化のために必要な工事が沖合拡張工事が進行する中で必要とされるが、政府は、井原市長が非容認である限りは予算をつけないと突っぱねている。まさに岩国市・井原市長の非容認姿勢こそが問題であるという形での攻撃がこの点をめぐっても激烈化している。山口県当局が井原氏攻撃の先頭にたっている。だが、百四十機もの米軍機がひしめき、極東最大の米航空兵力の出撃基地と化す岩国基地大強化計画のどこに東京往復一日四便の民間機を飛ばす隙間があるのか、そもそも採算がとれる空路であるのか、また、民間空港施設の費用を継続的にまかなうことができるのかなど、民空化の前提が大変化しているという事情がある。大半の岩国市民は民空化不要との意見という調査結果もあるところだ。「反井原」のためにする県当局の振る舞いなのである。

 そして第三に、愛宕山開発跡地問題がある。開発事業を中止しても赤字だが、開発を続ければさらに大赤字が見込まれるという理由で、愛宕山開発事業は、基地沖合拡張工事用の土砂を採掘し終えた段階で中止に至った。その跡地をどのように処理するかということに関して、この八月山口県と岩国市との間で国への転売を合意するというところまで話は進んだ。一方で国(政府)は、この跡地を基地の大強化にともなう米軍用住宅の有力候補として取得するということを隠そうともしていない。つまり、県による政府への米兵住宅用地としての転売ということが極めて濃厚となっているのだ。これに岩国市側が応じざるを得なかった背景には、「基地大強化計画に反対であり当然米軍用住宅建設などありえないし、あってはならない」という姿勢・態度を今後も岩国市がつらぬくならば県は跡地を出資比率に応じて分割(県が二、市が一の割合)し、県の取り分はさっさと国に転売する(米軍用地として国はそれを取得する)という究極的恫喝が行われた点を見ておく必要がある。今後一連の法的手続きを経ながら米軍用地としての跡地の転売という問題もどんどん白日の下にさらされてゆくことになる。騒音・事故などの基地被害の軽減のためならばと里山を掘り崩し、新住宅地作りを合意した愛宕山地域住民の犠牲と願いは、こうして完全に裏切られてゆこうとしている。当然にもこれに対する怒りは充満している。県や政府がどのような言辞を弄してもその怒りが収まることはない。住民を二重三重の大ペテンにかけた山口県当局や前市長らの責任は重大である。その上にとらえておかなくてはならないことがある。米軍用住宅として県が国に転売することとは、まごうかたなき米軍新基地を県がまさに「誘致」するに等しいということだ。「移転」とか「移設」とかの理屈をつけることもできない正真正銘の広大な新基地づくりである。万一にでもこんなことが実現するならば、これに続けとばかりに他にも新基地がどんどん作られることになる。全労働者民衆が絶対に許してはならない問題がこの愛宕山開発跡地の米軍住宅転用問題なのだ。この点も、この九月過程から県議会、市議会で具体的な論議が開始されることになる。朝鮮半島での戦争に備え、対中国―アジア地域での戦争に備えた岩国基地大強化計画は、このような問題を噴出させながら進められようとしているのだ。


●7章 各地、アジアの闘いを結び、10・28岩国へ総決起しよう

 見てきたように、神奈川、沖縄と同時に、岩国においてもこの秋は米軍再編計画をめぐって最重要な局面を迎える。

 いうまでもないが基地問題とは、まさにそこに基地があり、住民が存在する限り終わりのないたたかいである。その認識をベースとしつつ、現在の米軍再編計画をめぐる問題は、まさに日米同盟深化路線の具体的あらわれであり、そこに安保・外交の基軸を置く現政権との決定的な対決点でもあることを明確にしてたたかうべき最重要課題だということを確認しなくてはならない。われわれは沖縄、神奈川、岩国、築城など関与しうる地域における米軍再編計画反対のたたかいを、各地において推進してきているが、このたたかいを継続しつつ、アジア共同行動日本連が呼びかける10・28岩国闘争に断固として呼応し総力でこのたたかいを取り組むことを決意している。同時にこのたたかいは、昨秋の岩国国際集会に引き続き、アジア太平洋各地からの参加も得た、まさに国際的連帯闘争としてもたたかわれる。メインスローガンは「アジア米軍総撤収」、「日米軍事同盟粉砕」だ。沖縄―「本土」各地のたたかいを結び、アジア太平洋地域のたたかいを結びながら岩国基地大強化絶対反対・阻止のたたかいを打ち抜くことの意義はこの上ない。そして何よりも、こうしたたたかいをもって、政府・県・地元容認勢力の大重圧にさらされている岩国市民を限りなく激励し、階級的労働運動勢力を先頭に、ともにたたかう民衆が確固として存在していることを示しぬくことが決定的ともいえる重要性を持っている。

 昨秋の岩国集会の地平の上に、10・28岩国国際集会へ向けて、労働者、学生などの独自の企画・計画も準備されている。10・28岩国闘争をメインとしながら、そこへ向けて諸階層のそれぞれの課題を掲げて岩国で集うことの意義は多大である。そうしたそれぞれの自立的な取り組みへの最大限の協力も惜しまず、今秋岩国闘争の大成功をかちとることが決定的に重要である。

 参院選において示された、労働者階級人民の新自由主義経済・社会政策と新保守主義政治路線への断固たる拒否という点を今秋期いっそう促進させ、支配層内部に生起した分解と動揺をさらにおしすすめてゆくべきこと、階級的労働運動勢力のいっそうの伸長を新自由主義的社会改変とのたたかいの中でおしすすめながら、労働者階級の政治的任務・課題というものを改憲阻止、米軍再編計画粉砕、これらを根底から規定する日米同盟深化路線粉砕へと絞り込んで今秋期闘争を断固たたかおう。

 

 

 

 

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