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『戦旗』第1276号(2007年1月20日、第二新年号

 

米帝ブッシュのイラク増派弾劾! 日帝安倍の改憲―朝鮮戦争阻止!

2007年日帝―安倍政権打倒を

民族排外主義扇動と対決せよ

07年春闘に決起しよう

『戦旗』第一二七五号(第一新年号)の組織建設上の総括―方針に続き、今号(第二新年号)では、具体的な闘争基調を、世界情勢、国内情勢(安倍政権批判)、〇六年総括と〇七年方針として提起する。その上で、労働運動方針に関しては、より詳細な内容を次号(『戦旗』第一二七七号)の別論文で提起する。

 

■第一部 世界情勢

グローバリゼーションと米帝の世界支配の破綻、国際階級闘争の前進

 

●1章 絶望的な世界支配めざす米帝―ブッシュを許すな

 

▼@ 米中間選挙に敗北したブッシュ

昨年十一月に行われた米中間選挙では、民主党が圧勝し、上下両院で過半数を占めた。

今回の米中間選挙の結果は、米国人民のブッシュ政権批判が端的に表現されたものであることは間違いない。

中間選挙直前にイラクでフセインの死刑判決を出して「イラク戦争の戦果」を強調したが、米帝足下においてもイラク戦争批判―ブッシュ政権批判が世論の大勢になっていることが、中間選挙結果に端的に示された。ブッシュは選挙後にもイラク戦争の継続を主張した。しかし、今後は、イラク撤退をどういう過程で進めるのかを論議せざるを得なくなる。

新日米軍事同盟―在日米軍再編に影響が及ぶことを恐れる日帝―安倍政権は、日米同盟は不変であるとか、ブッシュ政権が進めてきた世界的な戦力再編は変更がない、との主張を行っている。しかし、ブッシュ批判はイラク戦争に止まるものではなくなるだろう。ブッシュ政権が六年間進めてきた世界規模の「対テロ」戦争ということ自体に批判が進む。そもそも、世界的な戦力再編の根拠となっているのは、世界のいかなる場所での「対テロ」戦争にも対応する戦略と、これに対応した軍隊だった。ブッシュとラムズフェルドは、QDR01、QDR06をもって、この戦略の下、米軍の変革を進めてきた。しかし、中間選挙の敗北に直面したブッシュは、この先導者だったラムズフェルドを更迭せざるを得なくなった。戦力再編全体に影響が及ぶのは必至である。

われわれも、ANSWERをはじめとする米国の反帝勢力も、民主党を支持している訳ではないし、議会で民主党の力が強まったことを楽観することなどはできはしない。しかし、ブッシュ政権が9・11事件を「根拠」にして強行してきたイラク侵略反革命戦争―「対テロ」戦争、単独主義的外交政策、さらには、貧富の差を極限的に拡大してきた新自由主義経済政策に対して、米帝足下でも世論の大勢は批判へと進んでいるということが重要だ。

世界最大の軍事力で世界支配を貫徹できると考えてきたブッシュの野望に陰りがでた今こそ、徹底的に反戦闘争、反基地闘争を推し進める好機だ。イラク戦争反対―自衛隊全面撤退、朝鮮戦争反対、米軍基地撤去をはっきりと掲げて、国際共同闘争を進めよう。米帝―ブッシュ政権の国際的な孤立を見据え、反帝国主義としての批判を強化し、たたかいを進めることである。

 

▼A イラクでの殺りくと失敗

米中間選挙で米国人民がブッシュ政権に突きつけた批判は何だったのか。

第一には、イラク戦争に対する批判である。圧倒的軍事力を投入してフセイン政権を瓦解させたブッシュは〇三年に戦争に勝利したことを宣言した。しかし、その後、イラクに傀儡政権を樹立するのも簡単には進まず、シーア派を軸にした暫定政府をつくらざるをえず、それゆえに、激烈な宗派間対立を引き起こし、内戦としか言いえない状況に至っている。また、〇三年以前には、フセイン政権とアルカイダの間に関係などなかったが、米軍の蛮行と内戦状況が、アルカイダの活動の場を作り出す結果になっている。

十一月二十三日には、バグダッドのシーア派地区サドル・シティーで連続爆弾事件が起き、死者二百人以上、負傷者二百五十人以上という最悪の事態になっている。二十四日、二十五日には、これに対する報復が続き、イラク各地でスンニ派のモスクなどが襲撃され、数十人が殺されている。

同時に、多国籍軍に対する攻撃も増大している。十月には、多国籍軍に対する攻撃が百八十件に達した。米兵の死者は十月の一ヵ月間で百五人になっている。米帝、あるいは米帝の傀儡政権がイラクを支配しているとは言えない状況に至っている。この内戦状況をブッシュは認めないが、内戦であり、同時に、反米抵抗戦争がより激しくなっている。

ブッシュ政権が9・11事件を口実にして着手し拡大してきた「対テロ」戦争の失敗が、だれの目にも明らかになっている。ブッシュの失敗は、イラクに止まるものではない。イラク侵略反革命戦争での米帝の「自衛のための先制攻撃」という「論理」は、イスラエルのパレスチナ侵攻、さらには、レバノン侵攻に恰好の口実となった。「中東和平」どころではない。米軍の存在、展開こそが、中東―中央アジアの戦乱を拡大する根拠となってしまっている。

米帝は、東アジアから中東まで総体を「不安定の弧」と規定して、「対テロ」戦争の標的を拡大してきたが、アフガニスタンもイラクも支配することができない。逆に、インドの核開発―核武装を認め、これに対抗するパキスタンの核武装も既成事実となった。核開発問題で、イランを押さえこもうとしているが、イラクから手を離せない米帝には、イランに戦線を拡大する余力はない。

イランは、シリア、イラクとの関係を強化している。イラン大統領アフマディネジャドは、中東植民地支配を貫徹する戦略を欠いた米帝ブッシュを嘲笑うように、ブッシュ政権がその非を認めるなら、イラクの和平に力を貸そうとまで言っている。

ブッシュ政権が全世界の批判に抗って戦争を継続しているという事態ではなくなっている。米帝は、自ら戦端を開いて拡大した中東戦争を自らの手で終結させることすらできなくなっているというべきだろう。「勝利宣言」も中東植民地支配―OPEC支配も、戦乱の泥沼にまみれている。米軍兵士は、この失敗戦争の中で毎月百人単位で死んでいく。いくら星条旗を並べ立てても、こんな事態を認める人民はいない。ブッシュ批判が中間選挙共和党敗北という形で表れてきたのは、あまりにも当然のことだ。

米国の超党派の「イラク研究グループ」は十二月六日、イラク新戦略を提案した。イラク情勢に関して「深刻で悪化している」とした上で、具体的には「イラク国際支援グループ」の組織化と、米軍戦闘部隊の大部分を〇八年第一、四半期までに撤退させることを提起している。つまり、米軍を撤退させて、外交問題としてイラク問題を解決するために多国間の枠組みを形成するということだ。しかし、この「イラク国際支援グループ」は、イラン、シリア、エジプトと湾岸周辺諸国、国連、EU、日本、ドイツなどで構成すると提起している。「米国はイラン、シリアとの直接交渉」を行なうことを課題として明記している。国連や欧州諸国などからは、米帝のイラク政策変更を期待する発言が相次いだ。

しかし、ブッシュは、新国防長官ゲーツに対して、「陸軍と海兵隊全体を増強する必要がある」として、米軍総体の増員の指示をだした。ラムズフェルドが進めてきた軍の効率的な展開―「質」の向上による「数」の合理化から転換して、「質」も「数」も増強するというものだ。さらに十二月二十日の記者会見では、イラク戦争に関して「われわれは勝利していない」、「今年一年は、敵が成功をおさめた」と認めた上で、さらなる増派を検討していると述べた。しかし、制服組の統合参謀本部は「明確な任務の定義付けなしに増派しても米軍を危険にさらすだけだ」と即座に反対した。年が明けて一月十二日、ブッシュはテレビ演説で米軍二万千人を増派する対イラク新戦略を発表した。

この事態が物語っていることは、ブッシュ政権がイラク戦争を総括できなくなっているということだ。〇三年、全世界の反対を踏みにじってイラク戦争の戦端を開いたブッシュ政権は、圧倒的戦力で戦争を行うべきとするパウエル国務長官の主張を入れず、ラムズフェルド国防長官の主張する「数」の効率化に基づいて、少数の戦力で戦争を計画し、開戦した。緒戦の大規模戦闘で「勝利宣言」をしながら、軍事占領に踏み込んだ後は泥沼化し、内戦状況に至っている。「大量破壊兵器」という戦争の理由は全くのうそであった。中東植民地化とOPEC支配を狙った、米帝の利害丸出しの戦争を続けるブッシュへの批判・不支持は急速に高まっている。

戦争の正当性ということだけではない。「対テロ」戦争の全世界的拡大をめざし、「不安定の弧」総体への軍事的恫喝を画策してきた米帝が、その源泉たる軍事戦略において失敗しているのだ。国際的にも国内的にも追い詰められたブッシュだが、敵視するイランやシリアに頭を下げる気はない。「最高司令官」である大統領ブッシュは増派を決定した。議会での反発だけではなく、軍内部、そして、政権内部でもブッシュ批判・離反をひきおこす。

 

▼B 格差拡大、貧困化を進めたブッシュ政権

第二に、六年間のブッシュ政権の財政・税制政策は大規模減税であるが、その内実は所得税減税や、配当およびキャピタル・ゲイン課税の軽減措置などであり、徹底した金持ち優遇政策である。ブッシュ政権は、金持ち減税を極端に進めながら、9・11事件以降のイラク戦争を含む「対テロ」関連費用に四千億ドル(四十七兆円)を費やしてきた。財政規律は失われ、再び財政赤字が拡大している。

〇五年、米国の年収で上位二割のトップ層の所得は、所得全体の50・4%を独占している。米長者番付上位四百人は全員、年収が十億ドルを超えている。その一方で、米国の連邦最低賃金は時給5・15ドルで、九七年以来九年間据え置かれてきた。米国の独占資本は、この低賃金を根拠に収益を上げ、規模を拡張してきた。大手スーパー・ウォルマートが進出した地域では、その低賃金のために、地域の所得水準が抑えられると言われる。

ブッシュ政権の下で、富裕層=資本家や上層労働者と下層労働者の経済格差は、政策的に拡大されてきたのである。民主党は十一月の中間選挙に向けた経済政策で「九年間据え置かれてきた連邦最低賃金の即時引き上げ」を打ち出していた。

中間選挙での共和党離れは、とくにこれまでは共和党を支持してきた白人のワーキング・プアー(下層労働者)層で大きく起こっていると報じられている。下層労働者の生活破壊を放置し、米国社会総体の経済格差を拡大してきた共和党―ブッシュ政権の経済政策を、もう耐えられないと感じたのは当然のことだった。

この米国経済の深層はどうなっているのか。

イラク戦争で供給不安が拡大した原油に、ヘッジファンドなど世界の資金が集中し、価格を急激に押し上げた。この資金は、次にはタングステンなどの希少金属に流れ、さらにエタノール原料になるサトウキビ、トウモロコシなどの穀物に流入している。ヘッジファンドは、商品であろうと株式であろうと為替であろうと、価格変動を予測してその差額で収益を上げようとするだけだから、どこかに焦点があるのではない。昨年秋からは、このヘッジファンドの資金がニューヨーク株式市場に大規模に動き、株価を押し上げた。持続する低賃金を根拠にした資本の収益増大、ローン社会で貯蓄率がマイナスになっても拡大する消費を「根拠」に米国経済を「好況」と捉えて、世界的な資金の流れができたのだろう。

米国経済は九〇年代後半のITバブルが二〇〇〇年に崩壊を開始した。この景気後退に対応して米連邦準備制度理事会は低金利政策をとり、〇三年には政策金利の誘導目標を1・00%まで下げた。これによって住宅ローンの平均金利も3%まで下がり、住宅ブームが起こった。この住宅ブームが建設業を中心に米国のGDPを押し上げた。

しかし、「住宅ブーム」はこれだけに止まらなかった。景気回復と同時に、住宅価格の上昇が起こった。住宅価格上昇を根拠にした消費拡大がまき起こった。米国では、借金して住宅を購入しても、その評価額が上昇すると、購入時の評価額との差額分だけ担保が増えて借金が可能になる。このホーム・エクイティ・ローン(住宅持ち分ローン)という借金によって、住宅ローンを払い続けているにも関わらず、クレジット・カードの借入れ枠が拡大した。資産が増えたという感覚で、消費が爆発的に拡大した。このような、住宅価格上昇を根拠にした消費ブームが「景気拡大」を支えてきた。

しかし、住宅価格上昇と、金利上昇、新築住宅の供給過剰によって、〇六年中盤から住宅の販売、着工ともに悪化している。住宅バブルの崩壊は、この借金を根拠にした景気を急激に冷え込ませることになる。それ以上に、新たな借金の根拠がなくなり、金利上昇とともにローン返済の重圧がのしかかることになる。

現実に、米国では個人破産が急増している。ブッシュ政権の最初の四年間に個人破産申請件数は18%増加した。〇五年の破産申請件数は二百万件を突破している。この借金体質は、米国の経常収支、財政の総体が抱える問題の反映でもある。基軸通貨ドルの特権で経常収支赤字を改善せず、また、膨大な財政赤字は貿易黒字国の中国、日帝などアジア諸国が米国債を買い続けることで支えている。

経済格差を拡大するとともに、住宅バブルの急膨張を進めたブッシュ政権は、この見せかけの景気拡大の瓦解が始まれば、投機資金の急激な逃避、さらには、〇六年から再び拡大し始めた財政赤字ゆえのドル下落に直面せざるをえなくなるだろう。ドルの信用が失墜するときには、米国債を買い支える意欲も急激に失われるだろう。

イラク戦争の失敗と原油の高騰、経済政策の破綻、国際的なドルの信用失墜。本当の危機は、この経済的政治的軍事的失墜の重複によって引き起こされるだろう。

かつて、七〇年代の危機は、米帝の金―ドル兌換停止、石油危機、スタグフレーション、ベトナム戦争敗北と、中心国―米帝が経済的にも軍事的にも失陥を重ねる中で起こった。七四―七五年恐慌に直面した帝国主義各国は首脳会議(サミット)を開催し、G5(G7)を形成して、帝国主義の共通の利害として基軸通貨ドルを防衛してきた。

七〇年代、サミット―G5(G7)の結束は、「ソ連・東欧圏の存在に対する資本主義陣営の防衛」という価値観によっても支えられていた。しかし、現在はどうなのか。このような価値観での「結束」の必然性はない。さらに、欧州連合(EU)は、独自のユーロ通貨圏を形成し、これは、中東欧諸国、地中海をはさんだアフリカ諸国にも拡大してきている。米帝の危機を世界が救済する必然性が大きく減退している。

 

●2章 破綻したブッシュの世界戦略、米帝に対抗する諸国の台頭

米帝の危機は、イラク戦争―占領を米帝が責任をもって解決することが不可能になっている事態に明白なように、単独主義の強硬外交―「対テロ」戦争の失敗に端的に表れている。そして、米国経済は、財政赤字・貿易赤字・家計の赤字を拡大しながらしか維持できなくなっている。この米国の危機と、しかし、この米国経済とつながって成立している世界経済は、いかなる方向に展開していくのか。

米帝の単独行動主義で世界を領導することなど決してできない事態に進んできていることは明白である。欧州連合の米帝への対抗。そしてイラン、ベネズエラをはじめとして、反米の主張と行動は世界規模で拡大している。

 

▼@ 新自由主義グローバリゼーションの進展

米帝をはじめとする帝国主義は、すべてを市場の決定にまかせるべきという新自由主義の主張をもって、民営化を進め、あらゆる規制を撤廃しようとしている。これを一国の内部だけではなく、世界規模で進めようとする攻撃こそ、帝国主義の「グローバリゼーション」である。現在米帝が主導して進める「グローバリゼーション」は、米国基準の新自由主義政策を「世界基準」と言いなして、世界各国・地域の貿易・投資に米帝資本が進出していくものである。

しかし、米帝は盤石な「帝国」として行っているのではない。戦後の資本主義世界を編制してきた中心国としての経済的基盤を喪失してきたがゆえに、危機にかられて、凶暴な戦略を発動している。七四―七五年恐慌以降の世界経済は、本来の意味では基軸通貨とは言い得ないドルを欧州各国帝と日帝が支えることで成り立ってきた。全世界の外貨準備がドルでなされるこの擬制的国際通貨体制の上に、全世界の資金は米帝に集中してきた。米帝は、このドル資金ゆえの金融力と巨大な軍事力発動をもって、大きく世界の政治経済を規定してきた。

七四―七五年恐慌でケインズ主義経済政策が無効と判断された後に、新自由主義の主張は大きく登場してきた。しかし、新自由主義経済政策によって、恐慌を回避したり、不況を早期に脱したりすることができた訳では決してない。新自由主義は、労働者階級まで含めた社会全体の経済運営を考慮した、一定の社会政策をとったりしない。レーガン時代のサプライサイド経済政策に明瞭なように、供給者(=資本)を救済するための減税政策などの財政政策はとるが、労働者、とりわけ貧困層に対する社会保障などの政策を徹底的に削減しようとする。

安倍晋三と中川秀直は、このレーガノミクスが新自由主義政策の先駆けであり、この結果として現在の米経済が「成功」していると信じきっている。法人税減税と社会保障の破壊を進めれば、経済は上向くと主張し、「アベノミクス」などと称している始末だ。レーガン政権の場合には、一方で大軍拡を進めた。この軍備への支出増大が、資本にとっては新たな需要となり、景気を浮揚させる役割をはたした。また、一定の高金利政策をとり、ドルを米国に還流させ続けた。これによって、好景気が続いたように見えたが、米国の経常赤字、財政赤字は急激に増大し、米国は八五年に債務国に転落した。八五年のG5で「ドル高是正」を確認したが、八七年までドルは下落し続け、帝国主義各国の経済に大きな打撃を与えた。二十年以上前にその失策が明確になったレーガンの政策を、しかも時代や条件の違いも考慮せずに無批判に導入する安倍の経済政策は多難である。早晩破綻するか、あるいはすべてのつけを労働者人民に押しつけるかだろう。

新自由主義経済政策が、現在のブッシュ政権にいたるまで一直線にグローバリゼーションの推進として貫かれているのではない。

第一には、固定相場制が維持できなくなりブレトンウッズ体制(IMF・ガット体制)が破綻した資本主義世界経済にあって、国際通貨基金(IMF)と世界銀行がその役割を変質させたことである。米銀行をはじめとする帝国主義の巨大銀行資本の代弁者となって、資本移動の自由を主張し、実際に世界各国に対してその障壁を粉砕する活動に奔走した。財政危機や通貨危機に陥った国々に対して、IMFと世銀が融資と引き替えに強制した財政政策・金融政策の条件(コンディショナリティ)は、帝国主義資本の移動の自由を確保することが目的である。帝国主義がその過剰資本を処理する方途を世界規模で拡張したのだ。

第二には、帝国主義各国の実体経済の拡大、帝国主義間の経済争闘の激化によって、直接投資としての資本輸出が大規模に進んできたことである。貿易摩擦を回避するために迂回輸出を行い、また、貿易相手国に生産拠点そのものを移して雇用を確保しながら市場を拡大する。さらに、自動車産業や電機・電子産業においては、部品・素材産業など関連する企業までフルセットで、アジア諸国などに移転する。現代の資本輸出は戦略的に展開され、移転先の産業構造、経済構造をも改編してきた。アウト・ソーシングと言われる、生産設備を最小限に抑えるような企業経営のあり方も、このような世界規模での生産構造の転換を基盤にして進んできたことなのだ。資本のグローバルな展開は、八〇〜九〇年代、実体経済において大きく進展していたのである。

第三に、政治軍事的な転換である。八九〜九〇年のソ連邦・東欧圏の崩壊、九一年の中東侵略反革命戦争によって、米帝がその圧倒的な軍事力を背景に「新世界秩序」を創出しようとした。「資本主義の勝利」が喧伝され、ロシア、中央アジア、中東欧諸国など、資本にとって新たに進出する市場が拡大した。共和国、ユーゴ内戦など、米帝の介入、軍事的重圧によって、一超大国の軍事力が世界を編成していくように見えた。

このような歴史的背景の上に、金融のグローバリゼーションが進んできた。

確かに、九〇年代後半に情報技術の先進性を根拠にして米国の経済が急拡大したときに、この情報技術を武器にして米国の金融商品が拡張した。しかし、その根源にある事態は、国内に有効な投資先を失った過剰資本、そして、「基軸通貨」であるがゆえに全世界から還流するドル、この投資先、投機先を世界規模で拡張せざるをえないということなのだ。

八〇年代、九〇年代に日帝資本がアジアNIEsやASEAN、中国への直接投資をもって生産拠点を拡大してきたことに顕著なように、帝国主義各国はコストダウン―低賃金を求めて資本輸出を進めてきた。帝国主義資本は、アジア、中南米、中東欧をその再生産構造に従属的に組み込んできた。あるいは、アラブ、アフリカ、中央アジアなどの諸国を資源収奪のために位置づけ開発してきた。帝国主義の直接投資によって、世界規模で工業化が進み、市場経済が拡大し、膨大な労働者階級が生み出された。同時に、貿易、投資の拡大を円滑に進めるために、銀行の国際的な業務が必要になる。世界規模での直接投資の拡大が、短期的に資本が流入流出する基盤をも作り出した。この短期的資本の国際移動の規制撤廃を、IMFは主導してきた。

為替取引が拡大し、また、各国で株式市場が生まれ成長する。実体経済の拡大とともに、短期資金の投資先も拡大する。米帝をはじめとする帝国主義の過剰資本は、直接投資によって直接搾取するだけでなく、より短い期間で変動する市場から収益を上げようとする。世界規模での投機が繰り返され、価格変動を予測して、あるいは、膨大な資金で価格変動幅を増幅して、差額を収益とする。このような大規模な投機ができるように、世界各国の金融上の規制を撤廃させることを、グローバリゼーションと称して、米帝とこれに追随する帝国主義は進めてきた。しかし、これは、基軸通貨ドルゆえに米国に資金が集中する現実の上に、この資金を動かす銀行資本が世界経済総体から利鞘を稼いでいくシステムである。銀行資本やヘッジファンドが、世界規模の投機で収益を上げることができるのは、世界規模での資本主義的生産が拡大し、根底において労働者階級が搾取されているからにほかならない。

 

▼A 米帝に対抗する欧州連合

圧倒的な軍事力を背景にした米帝―ブッシュ政権の一超大国的な戦略の下で、新自由主義政策、そして金融自由化の世界規模での拡大がグローバリゼーションとして進められてきた。しかし、それは成功裏に進んでいるのだろうか。レーニンが『帝国主義論』において規定した「生産の集積、そこから発生する独占、銀行と産業との融合あるいは癒着」という「金融資本の概念の内容」から大きく乖離した現在の銀行資本は、帝国主義の支配的な資本としては、あまりにも危うい。博打のような投機で、世界を支配しうるのか。

しかも、この資金の根拠となっているドルを基軸通貨とする国際通貨体制は、七一年以前のように米帝の経済力によって貫徹されているのではない。帝国主義を軸とするサミット―G7によって維持されているのだ。グローバリゼーションの進展ゆえに、現代帝国主義は地球規模で、市場をめぐって、資源収奪をめぐって、経済争闘を激化させ、政治的枠組みにおいても対立を深めている。基軸通貨ドルの維持は、帝国主義各国がこれを共通の利害として確認し続けていけるかにかかっている。

世界経済をめぐる二十一世紀の新たな要因は、ユーロが登場したことである。

欧州連合(EU)の主要国十一ヵ国は、九九年に共通通貨ユーロを発足させた。〇二年からは、ギリシャを加えた十二ヵ国で、実際の紙幣・硬貨としてのユーロの流通が開始された。独・仏を軸とするEUは、昨秋トルコ加盟問題が交渉凍結になったが、中東欧諸国を含んで二十五ヵ国になっており、さらにルーマニア、ブルガリアなどが加盟することになっている。EUとユーロ加盟国が一致するわけではないが、独・仏を軸にしたEUの経済関係を基盤にしてユーロ通貨圏は拡大してきている。〇六年十二月末の欧州中央銀行の発表によれば、十二月二十二日時点の週あたりの流通額が六千二百八十億ユーロ(=約八千二百三十億ドル)で、同じ週のドルの流通額八千百三十億ドルを上回った。

だからといって、ユーロがドルに即座にとって代わるものではない。世界市場の基軸通貨はドルであり、国際的な決済に最も多く使用される通貨はドルである。

しかし、二一世紀の現在、ユーロ加盟諸国では共通通貨が採用され、通貨を管理しているのは各国中央銀行ではなく、欧州中央銀行である。この共通通貨圏内では、貿易・投資にユーロが使用される。別の国際通貨が介入する必要はなく、為替変動にさらされることがない。

地球規模で拡大する資本の競争の中で、EUもまた、新自由主義政策にさらされ、労働者階級の権利が奪われてきている。また、EUは、ヨーロッパという枠組みでの排外主義をも生み出してきてはいる。それでもEUは「社会的な資本主義」を掲げてはおり、労働者の権利を認めることがEU加盟の条件になっている。それは、フランス、イタリア、ドイツをはじめとするヨーロッパの労働者階級の歴史的たたかいによって、ブルジョアジーに認めさせてきた権利である。ヨーロッパの労働者階級は、米帝や日帝のような労働運動そのものを解体する無制限な規制撤廃攻撃を阻止してたたかってきている。

七四―七五年恐慌、八五年プラザ合意のような事態においては、帝国主義間で危機感が共有されていた。ユーロはドルと無関係に存在しているわけではないが、ユーロ圏内での貿易・投資はドルが介在せずに成立している。ドル暴落のような通貨危機がおこっても、ユーロ圏内の経済活動は大きな影響を受けない。独帝・仏帝は、ドルの危機に対しては七〇年代、八〇年代とは異なった対応をとるだろう。

経済基盤において一定の距離をおく欧州、とりわけ独・仏は、イラク戦争においてブッシュ政権と不一致であった。独帝・仏帝が反戦勢力だというのではない。独帝、仏帝は、歴史的に中東諸国・アフリカ諸国を植民地にしてきたがゆえに、中東を欧州の権益圏と捉えている。中東植民地支配に関して米帝とは異なる立場であるがゆえに、米帝が中東全域を軍事力のみで支配しようとする拙劣な戦略に、独・仏は反対したのだ。

 

▼B ベネズエラをはじめ反米諸国の登場と結合

世界貿易機構(WTO)の下で、新たな貿易・投資の自由化のための多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は〇六年七月の交渉で決裂し、昨年末までの合意は破綻した。市場を万能と捉える新自由主義経済政策を地球の隅々まで進めようとする帝国主義の主張は、一見一致しているように見えながら、帝国主義各国はそれぞれ農業をはじめとした国内産業の利害をもち、全面的な自由化など進められるわけではない。さらに、今進められようとするドーハ・ラウンドでは、労働法制や環境問題など各国国内法を「貿易・投資の自由」の名の下に押し潰していこうとする大国の意図がはっきりと表れている。規制撤廃とは、労働者・農民の権利を奪い、文化も健康も環境も破壊するものであることが、全人民の前に明らかになってきている。

米帝をはじめとする帝国主義各国は、WTOドーハ・ラウンドには短期間での展望がないことを見定めながら、むしろ、独自の利害を貫くために自由貿易協定(FTA)など二国間協定や地域的協定を進めている。国際機関としてWTOは存在し、貿易・投資問題での紛争を処理する役割は担っているものの、新たな貿易・投資の枠組みはグローバルにではなく、地域的に進んでいるのが事実なのだ。地域間の協定という点では、EUが最も先駆的ではあるが、拡大にともなって統合の困難も表れてきている。

米帝は、北米自由貿易協定(NAFTA)を南北アメリカ全域に拡大する米州自由貿易地域(FTAA)を構想してきた。しかし、これは米帝の新たな植民地化攻撃であり、国内法を乗り越えて米帝資本が流入し、労働者を直接搾取し、資源を略奪することは目に見えている。すでに八〇年代から、IMFと世界銀行が債務問題で中南米諸国にかけた融資条件(コンディショナリティー)が、緊縮財政、国内産業保護の撤廃、外資への全面自由化として強行されてきた。これは、米銀行資本の債権を保護するものであり、同時に、コンディショナイリティーをかけられた諸国では、公共料金の値上げなどをもって労働者人民の生活を破壊した。これこそが新自由主義だということを、中南米諸国人民ははっきりと記憶しているのだ。

ベネズエラのチャベス政権がFTAAに明確に反対の立場をとった。米帝の重圧を打ち破って、キューバと結び、米帝の植民地化攻撃への対決の姿勢を鮮明にした。ベネズエラは産油国であり、チャベスは石油輸出国機構(OPEC)の中にあっても、米帝の利害に対抗する立場をとってきた。さらに、昨年二月にはボリビアで、反グローバリズムを掲げた先住民出身のモラレス大統領が登場した。モラレス政権は、ベネズエラ、キューバとの関係強化を進めている。

昨年十月、ブラジルではルラ大統領が再選を果たし、米帝と一定の距離をとる中道左派政権が存続している。ルラ大統領は選挙戦において、FTAA反対の立場を貫き、労働者・農民、貧困層からの圧倒的な支持を得た。十一月には、ニカラグアでサンディニスタ民族解放戦線のオルテガが大統領選挙に勝利した。米帝の軍事的、経済的、政治的重圧の下で右派政権となっていたが、新自由主義との対決―貧困の克服を主張したサンディニスタが九〇年以来、改めて政権についた。十二月には、ベネズエラでチャベス大統領が大差で三選を決めた。エクアドルの新大統領コレアも米帝批判を強めている。

 キューバの確固たる存在と、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグア、エクアドルなど反米左派政権が誕生し、復活し、結合していく状況が生まれてきている。米帝が欧州や、アジアにおける中国、日本の動きに対抗し、南北アメリカ全体を独自の権益圏として固めていこうとする野望が、その足元から食い破られてきている。

 

●3章 東アジアを巡る情勢

 

▼@ 新たな朝鮮戦争を狙う新日米同盟

日米帝は昨年十二月、新たな朝鮮戦争を想定した詳細な共同作戦計画づくりを開始した。日米政府は〇二年に、朝鮮戦争を想定した共同作戦の「概念計画」に署名している。九七年の新ガイドライン、そして、昨年合意した新日米軍事同盟を根拠にして、朝鮮民主主義人民共和国に対する戦争を想定し、これに対する米軍と自衛隊の共同作戦を具体的に準備するということだ。「〇七年秋」の完成をめざすとしている。

新ガイドラインは、「日本に対する武力攻撃」と「周辺事態」という二つの事態を別々のことのように扱って共同文書を作成していた。したがって、「武力攻撃」に対しては「共同作戦計画」、「周辺事態」に対しては「相互協力計画」と、作戦計画も別の項になっている。しかし、戦争は地域的な軍事衝突として勃発して、より大きく拡大することを想定せざるを得ない。全世界に軍事基地を分散する米軍の場合、世界のどこかで戦争を起こせば、世界中の米軍基地が反撃の対象になる。日米の制服組の論議は、「周辺事態」と「武力攻撃」が同時、あるいは相次いで発生することを想定している。共同作戦計画と相互協力計画を一体化させて、戦争作戦を組み立てようというのだ。自衛隊の軍事行動は、米軍の後方支援も、防衛作戦も、一つの戦争の中に組み込まれてしまうことになる。集団的自衛権行使の制約を、共和国の核実験・ミサイル発射実験を理由にして簡単に乗り越えてしまおうとしているのだ。

日米軍事同盟再編の「中間報告」において「(日本が米軍に対して)事態の進展に応じて切れ目のない支援を提供する」とした文言が重要な意味をもっていたのであり、これが今回の戦争計画策定の中で具体化されるということだ。

日帝―安倍政権と米帝―ブッシュ政権は、アジアでの主導権を軍事的危機を作り出すことで握り直そうとしている。共和国の解体を狙い、同時に、韓国で前進する反米闘争を圧殺しようと狙うものである。帝国主義の利害のために、南北朝鮮人民が希求する自主平和統一を軍靴で踏みにじることを、絶対に阻止しなければならない。安倍政権が実質的に憲法を乗り越えようとする朝鮮戦争共同作戦計画を粉砕しよう。

 

▼A 中国の台頭と日帝の孤立

しかし、朝鮮半島情勢を大きな要素とした東アジア情勢は、日帝・米帝の意図だけで展開しているのではない。

昨年十二月十八日に六ヶ国協議が再開された。日帝―安倍政権は十二月十日から十六日、この六ヶ国協議再開を目前にして「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」なる排外主義イベントを政府主導で開催した。拉致問題、ミサイル発射、核実験を大々的に煽りたて、さらなる制裁を主張し、さらには、朝鮮総聯関係者に対して「犯罪」をでっちあげ、家宅捜査強行などの弾圧を繰り返した。六ヶ国協議そのものの破壊と、国内での排外主義煽動を狙ったのだ。

六ヶ国協議再開は、中国の政治的主導でなされている。日帝―安倍は、政権維持の切り札として共和国敵視を強めているが、国際的には東アジアの政治的主導権をとることなどできない。東アジアという地域的枠においても、敵対的で、かつ、軍事超大国―米帝との結合のみを追求する国としか見られないのは当然である。小泉が靖国参拝強行で破壊してきたアジア外交を修復することなど到底できない。

これは軍事的な問題だけではない。ドーハ・ラウンド破綻の状況の下で、帝国主義各国や中国が二国間および地域レベルのFTAを進める情勢の中で、日帝―安倍政権はBRICsとの関係を重視するなどを言いながら、決して東アジア、アジアでの政治的枠組みづくりの主導権を握れてはいない。中国は、ASEAN諸国に対して、中国―ASEANのFTA締結を働きかけ、具体化してきている。また、中国は韓国との関係、インドとの関係も強化してきている。東アジアサミット(ASEAN+3)の枠組みも、米帝との関係を重視する日帝が主導しているとは言い得ない。

このような中国主導でアジア経済圏が進むことを脅威と見る米帝は、APECにおいてAPEC域内での自由貿易圏(FTAAP)を提起して対抗している。しかし、太平洋諸国といっても、中南米諸国を統合することができない米帝に、APEC総体をまとめていくことは困難である。

中国は東アジアの枠組みにおける主動的立場をとるとともに、ロシアや中央アジア諸国に対する関係を強化してきた。ソ連邦の崩壊、アフガニスタン内戦を大きな要因として中央アジアでの民族解放闘争、ロシア・中国などからの分離独立運動が勃興することに対処する目的をもって、九六年にロシア、中国、カザフスタン、キルギス、タジキスタンの五ヵ国が上海に集まって首脳会議を開催した。これは「上海ファイブ」と呼ばれていたが、二〇〇〇年にはウズベキスタンが加わり、〇一年の会合で「上海協力機構」として発足した。政治、経済などの協力関係強化を掲げるが、最大の目標は「国際テロ、イスラム原理主義、分離主義」との闘争においている。

中国、ロシアが少数民族の解放闘争を封じ込めようとする意図をあからさまにして成立した上海協力機構だったが、アフガニスタン、イラク両戦争を通して強化される米帝の軍事プレゼンスへの対抗が大きく意識されてきている。中央アジア諸国への米軍駐留に反対を明確にしている。さらに、昨年の上海協力機構の会議には、イランのアフマディネジャド大統領が参加している。オブザーバーではあるが、反米の急先鋒が参加しているということ自体が重要なメッセージとなった。

 

▼B 米帝の東アジア政策との対立

日帝―安倍は小泉政権を引き継いだが、アジア政策に関して負の遺産を抱え込まざるを得なかった。

日帝資本―財界は欧州連合の進展を眺めつつ、アジアにおける独自の権益圏を構想しようと何度も試みてきた。もし、日帝がEUに伍して東アジア共同体を形成しようとするならば、独帝が仏帝との間で行ったように、戦争責任を総括して中国との関係を深める以外にはない。しかし、小泉政権に明確に表れたように、日帝は独帝のような選択をしてこなかった。日米同盟を徹底的に重視し、天皇問題で強権的に踏み出し、この立場を貫きながら、アジア諸国・地域を専制的に統合していこうとしている。それ以外に、方途を見いだすことができない。日米同盟強化と改憲をもって強権的な国家としてアジア諸国に対することでアジア政策を進めようとしている。米帝との関係を重視する小泉―安倍は、独自権益圏構築としての「ASEAN+3」の選択すら及び腰になっている。

米帝は、アジアに対して、各国との二国間同盟を軸にして外交政策を貫徹してきた。中国に対しても関与し、WTOの枠組みに引きずり込んできた。日帝、韓国、フィリピンなどに対して、別個の外交政策―同盟関係を維持してきた。米帝のアジアに対する外交戦略は、地域の結合を崩し、米帝との関係強化を進める攻撃的な性格をもっている。APECは、それ独自の地域的枠組みというよりも、「ASEAN+3」の東アジアの枠組みの固定化を阻止するものだ。「不安定の弧」は、アジアにおける反米諸国を打ち砕く戦略の端的な表現だ。

東アジアについてみれば、根底的には、日中同盟ということを一つの可能性と捉えた上で、明確にこれは阻止しようとする戦略である。〇四年「共通戦略目標」の対中国項目は、直接的に中国への軍事的対抗を明確にすることであり、同時に、日中関係に楔を打ち込む米帝の意図を反映している。

ブッシュ政権一期において国務副長官だったアーミテージは昨年十二月六日に行った講演で、米国の新たなアジア政策の指針「アーミテージ・リポート2」を本年一月下旬に発表することを明らかにした。中国、インドが台頭するアジア地域における米帝の戦略を論じるものであり、日米間の防衛協力強化に関して別文書を提起するとしている。現ブッシュ政権内部にはいないとはいえ、イラク戦争での自衛隊派兵を強烈に迫ったアーミテージの対アジア政策、対日政策は、改めて米帝のアジア戦略に影響を与えるだろう。

日帝資本は、他帝との争闘戦激化に身構え、アジア権益確保に進もうと意図している。しかし、他方で、戦争と改憲への道を米帝との同盟強化から開こうとしている。敗戦帝国主義―日帝がアジア支配に踏み出そうとするがゆえの限界とジレンマ、しかし、日帝ブルジョアジーの意志を体現する安倍は、強権的にこの矛盾を突破しようとしている。年頭に発表された御手洗ビジョンは、この強権的突破をはっきりと意図するものである。朝鮮戦争を渇望し、戦争のできる帝国主義として東アジアでの覇権を握ろうとする安倍政権を絶対に打倒しなければならない。

 

●4章 全世界で巻き起こる労働者階級人民の新たな決起

イラク戦争に失敗し、擬制的基軸通貨ドルの没落が改めて鮮明になろうとしている。かつて、七〇年代前半、ドルの金兌換停止、石油危機、ベトナム戦争での敗北の中で、七四―七五年恐慌に陥った時代を思い起させるような帝国主義の歴史的危機が迫っている。しかし、一超大国としてふるまってきた米帝は、この危機を政治的軍事的に乗り越えようとするだろう。戦乱の中に、階級闘争が壊滅されてしまうのか。

否、われわれは、かつてと大きく違う新たな時代の展望をつかんでいる。韓国、フィリピン、台湾をはじめとする反帝勢力との結合であり、共同闘争の中でこの結合はより強まっている。米帝足下の反帝勢力との結合も、さらに大きな力となるだろう。

韓国、フィリピンをはじめとしてアジアの労働者階級が階級的労働運動を大きく発展させてきている。韓国労働運動を最前衛でたたかう民主労総は、整理解雇合法化に反対し、非正規職労働者の労働三権保障を掲げ、韓米FTAに反対して、昨年十一月二十二日からゼネスト闘争に入った。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は、この壮大な決起を弾圧し、民主労総指導部の大量逮捕を強行してきた。しかし、新自由主義と真正面から対決する韓国労働者階級の決起を押し止めることはできない。たたかいは続いている。一月、新たな指導部を選出して、さらなる闘争に踏み出すことは間違いない。そして、民主労総、民主労働党は、本年の大統領選挙に向けて、階級的な候補を立ててたたかう準備に入っている。また、平澤農民を先頭にして、労働者・学生が実力決起して、米軍基地拡張を阻止し続けている。

フィリピンでは、アロヨ政権の反革命弾圧―政治的殺人攻撃と対決し、アロヨ政権を打倒するたたかいが断固たたかいぬかれてきている。実質的に非常事態宣言―戒厳令体制を継続するアロヨに対する闘争が前進している。また、米軍駐留協定(VFA)の下で、米海兵隊によるレイプ事件が引き起こされた。これに対する弾劾闘争、裁判闘争の中から、反米闘争がたたかいぬかれてきている。

帝国主義足下においても、戦争と新自由主義に反対する労働者階級人民の闘争が発展している。フランスにおいては、〇五年秋から〇六年春にかけて全土でたたかわれてきた「初期雇用契約法(CPE)」撤回闘争が、百万人規模の大デモをもって勝利した。このフランス労働者の決起をはじめとして、イギリス、ドイツでも、労働者階級がストライキ闘争に立ち上がっている。

米帝足下でも、移民規制法案に反対して、ヒスパニック系移民労働者の百万人規模のデモがたたかいとられている。新自由主義と「対テロ」―排外主義を鮮明にした攻撃に対する断固としたたたかいだ。

全世界で労働者階級人民の新たな決起が生まれてきている。このたたかいは、帝国主義の侵略反革命戦争と新自由主義グローバリゼーションこそが、打ち破るべき敵であることをはっきりと捉えている。〇七年年頭、日本の労働者階級に問われていることは、全世界の労働者階級人民と結び、激動の世界情勢に主体的に立ち向かうことだ。

 

■第二部 国内情勢

共和国敵視と排外主義煽る安倍政権と全面対決せよ

 

●はじめに

安倍新政権が発足して数ヶ月がたった。安倍は、先の国会で教育基本法改悪を強行した。徹底して弾劾する。安倍は、続いて憲法改悪の実現にむけて国民投票法の制定に執念を燃やしている。それだけではない。この安倍政権が、その本質において極めて危険なのは、ある意味で、「共和国」敵視と排外主義政策を生命線とする政権でもあるからだ。安倍は、政治家としては、拉致問題をめぐる「共和国」敵視政策と強硬論の先頭にたつことで、「国民的」な人気を獲得してきた政治家である。安倍は、靖国参拝問題をめぐる韓国、中国との外交的ないきづまり、あるいは、「格差社会」への不満の高まりなど、小泉政権下で激化した諸矛盾を取り繕うために、自らの政治信条を隠す曖昧な態度を繰り返し危機を先送りにしている。安倍は、当面は、四月統一地方選、七月参議院選挙に規定されて、多くの点で曖昧な態度をとり続けるであろう。すでに、郵政造反組の復党や、道路特定財源の一般財源化問題などでも、安倍は、自民党内部の利害調整を重視する姿勢を明確にしている。その政治手法は小泉とは対照的である。だが、いずれにしても、安倍政権は、戦争準備と新自由主義政策を推進した小泉政権を継承し、それをより押し進める政権であることに相違はない。加えて、対外的な危機を煽動することで延命しようとする政治的衝動に不断に突き動かされるという性格を濃厚に有した政権なのである。

 

●1章 戦争国家化と新自由主義政策推し進める安部政権

安倍政権の特徴は、まず第一に、小泉政権の戦争と新自由主義政策を継承し、それをより推進する政権であるということにある。だが、同時に、安倍政権は、小泉政権がもたらした諸矛盾の深化を取り繕うために、詭弁とびほう策を繰り出すことで汲々とせざるを得ない政権であるということだ。

五年に及んだ小泉政権は、何よりもまず、そのあからさまな新自由主義政策によって特徴づけられる政権であった。では、小泉がもたらしたものとは何であったか。それは第一に、戦争国家化にむけた大きな転換であった。二〇〇一年9・11事件を機に、米帝は攻勢的な戦争政策に突入した。アフガニスタン、イラクへと続いた侵略戦争の発動は、引き続き、イラン、「共和国」を対象にその危険性が存在している。日米同盟を機軸とする小泉政権の下で、こうした米帝の戦争政策に結合した諸政策が一挙に進んだ。その最大の中心は、新日米安保と言うべき日米安保の性格の転換であった。イラク派兵を通して、また、「共和国」への戦争を想定する周辺事態法などの制定を通して進められてきた安保の変質は、米軍再編によって決定付けられ、かつ、新たな段階の軍事同盟へと突入した。それは、司令部の統合による日米軍事同盟の一体化、米軍基地の再編強化と自衛隊の結合強化、そして、世界中に展開する軍事同盟への変貌であった。第二に、小泉の靖国参拝によって韓国、中国との外交的軋轢が決定的になったことにあった。靖国参拝をめぐる小泉の態度は、韓国、中国との首脳会談さえ開けなくなる事態を常態化させるまでに到った。全米自由貿易地域、EUなどの勢力圏形成を内包しながら進む帝国主義グローバリゼーションの下で、ASEAN+日中韓の東アジア経済圏の形成に比重を置く一部ブルジョアジーからも小泉批判が噴出するまでに到った。第三に、新自由主義政策の結果、いわゆる「格差社会」を激化させた。小泉政権の下で、貧富の差の拡大が大幅に進行し、「新たな貧困層」が生み出されてきた。政府は、少子高齢化や単身世帯の増加などを理由に格差社会はみせかけであると否定してきた。だが、いまや三人に一人となった非正規雇用労働者の増大、社会保障制度の解体など、こうした「新たな貧困層」の再生産構造がうみだされ、いわゆる「格差社会」の到来は決定的となったのである。

安倍は、こうした戦争と新自由主義政策という小泉路線を継承しつつ、それをより全面的に推進することを使命としている。

戦争国家化と新自由主義路線は、日帝ブルジョアジーの主路線である。それは、小泉政権の下で本格的に開始された。日帝は、九〇年代に入るや長期の不況に突入した。多国籍企業化を背景に、全世界で進行する帝国主義グローバリゼーションと新自由主義が押し進められる中で、日帝は他帝国主義に大きく立ち後れた。ここからの脱却を、小泉は、全面的な新自由主義政策を導入し、「構造改革」「規制緩和」を押し進めることで突破しようとしてきた。安倍は、これを、更に、押し進めていこうとしている。同時に、日帝は、統治形態の転換をも押し進めてきた。小泉は、イラク派兵や周辺事態法などの戦時立法化を通して戦争国家化への転換をなし崩し的に押し進めてきた。安倍は、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げ、教育基本法と憲法の両改悪を柱にこれを更に推し進めていこうとしている。それは、戦後民主主義を否定し、戦争国家へとより全面的な転換を果たしていくことを目的とするものだ。郷土や国、そして天皇を愛する日本固有の美しい国などと言う、民族主義、国家主義、天皇制を柱とした新たな戦争国家化が安倍の狙いなのだ。また、安倍政権は、小泉政権下であらわになった新自由主義政策などがもたらしつつある諸矛盾の深化をもはや放置しえず、ここから噴出する批判に欺瞞的で一時的なびほう策を繰り出しつづけねばやっていけない。安倍は、就任早々、まず、韓国と中国を訪問し、首脳会談を再開させた。それは、小泉による靖国参拝によって中断した日中、日韓両首脳会談をともかく再開することそれ自身を目的としたものであり、問題を先送りするものであった。安倍は、自らの靖国参拝は一切不問にし明らかにしないことで首脳会談の成立という体裁を取り繕った。しかし、安倍は、そもそも首相の靖国参拝の強行論者である。隠れて参拝すればすむというのが安倍の態度であり、こうした狡猾な態度で問題を先送りにしただけなのである。また、安倍が言う、「再チャレンジ支援」なども、「格差社会」、すなわち、貧富の格差が構造的に固定化しつつあることに対して、「負け組」も再チャレンジすることができるとなどと、ささやかな幻想をあたえることで人民の不満をなだめようとすることにしか過ぎない。いや、それどろか、労働者階級・人民は、「再チャレンジ」などと果てしない弱肉強食の競争に果てしなくたたき込まれていくのだ。こうすることで、逆に、貧富の差の構造的な固定をより定着させていくことを狙っているのだ。

 

●2章 朝鮮侵略反革命戦争に突き進む安倍政権許すな

安倍政権の特徴の第二は、「共和国」への戦争策動を不断に強めることを、一つの生命線とする政権であるということだ。朝鮮侵略戦争策動と排外主義煽動を強める安倍政権と断固として対決しよう。これと連動して進められていく米軍再編―新日米軍事同盟を粉砕しよう。「米軍再編促進法」を粉砕し、沖縄、岩国、神奈川などを貫く反戦・反基地闘争を総力で押し進めよう。

安倍は、そもそも拉致問題をめぐる対「共和国」強硬派をもって、国民的人気を得てきた政治家である。安倍は、官房長官に拉致問題担当を兼任させ、また、拉致問題専門の首相補佐官を置いた。そして、自ら拉致問題の対策本部長とするなみなみならぬ布陣をひいたのである。政権発足後、すぐさま発生した「共和国」の核実験に対する対応は、安倍政権の本性を明確に示した。安倍は、「共和国」による「ミサイル発射訓練、拉致問題、核実験」を理由とした独自の制裁措置をすぐさま強行した。同時に、米帝とともに、国連憲章第七条に基づく制裁決議の先頭に立った。そして、「共和国」船舶の公海上での臨検強行にむけて、周辺事態法の適用だとか、新法の制定だとか、一挙に、戦争準備を加速させた。連動して、安倍の盟友である中川自民党政調会長と麻生外相は、核保有議論をぶち上げたのである。ミサイル実験に対抗して、発射基地をたたけという先制攻撃論が国会の場で当たり前のごとく論議される状況なのだ。ブッシュの先制攻撃論と全く同様なのだ。同時に、総連に対する治安弾圧攻撃を強めている。安倍政権は、対「共和国」をめぐってはその強硬路線を明確にしている。靖国参拝問題や歴史認識問題をめぐって自己の政治信条を覆い隠した曖昧な態度とは対照的である。それは、この政権が、新自由主義政策の下で、より深まる階級矛盾とそれ故の不満の激化を、不断に「共和国」への排外主義煽動の組織化と軍事攻撃も辞さずという戦争策動へと転化することを、政権延命の一つの条件としているからと言っても過言ではない。従って、この意味で、安倍政権は極めて危険である。その背景にあるのは、日帝の強さの現れではなく、むしろ、弱さの現れに他ならない。安倍は、それを凝縮して表現する政権なのである。

こうした安倍政権の「共和国」への戦争策動は、小泉政権下で推進されてきた米軍再編―新日米軍事同盟と一体である。安倍は、これを更に押し進め、沖縄や岩国や神奈川など各地で、反対闘争を弾圧しながら米軍基地の大強化を進めようとしている。こうして、司令部機能の一体化と米軍基地機能の再編強化、日米両軍の結合の飛躍的推進をもって、米帝とともに世界中に展開する軍事同盟へと変貌させようというのだ。東アジアにおいて、それは、明白に、朝鮮半島に対応し、台湾海峡に対応したものである。沖縄や岩国は、これらの最前線出撃拠点へと打ち固められていこうとしている。そして、沖縄で、岩国で、米軍新基地建設や米軍基地機能の強化に明確に拒否を示した地域住民の意向を徹底して無視し、いや、それどころか、力でねじ伏せて、基地をかかえる住民に一切の犠牲を集中し、強引に米軍再編を進めようというのが安倍政権なのだ。米軍再編を進める安倍政権と総対決し、沖縄、岩国、神奈川をはじめ各地で反戦・反基地闘争を強めよう。安倍政権は、「米軍再編促進法」の今春国会上程を狙っている。断じて許すな。

安倍政権の下で、「共和国」に対する戦争策動と、「共和国」への排外主義煽動が、一層高まることは必至である。安倍自身が、右翼排外主義集団「救う会」や「拉致議連」と一体であることを隠していない。安倍は、拉致被害者の新たな認定を進めている。安倍政権は、制裁の際限なきエスカレートと排外主義煽動の激化、そして、その延長に対「共和国」軍事行動への突入というシナリオの可能性を、最も現実的な選択肢として内包していく政権として存在している。すでに、日米両帝国主義は、今秋完成をめどに、朝鮮有事をめぐる日米共同作戦の立案に着手しているのだ。安倍政権によって、激化する朝鮮侵略戦争策動と対決する朝鮮反戦、反基地闘争を爆発させよう。

 

●3章 教育基法改悪から改憲めざす安倍政権

安倍政権の特徴の第三は、こうした「共和国」への戦争策動と連動しつつ、教育基本法を改悪し、続いて、憲法改悪を直接の政治日程に登らせることを目標とした政権だということにある。安倍政権による教育基本法改悪を弾劾し、改憲攻撃―国民投票法制定策動を粉砕しよう。

小泉政権下で、教育基本法改悪、憲法改悪にむけた国民投票法案は、すべて継続審議として、安倍政権下の国会へと引き継がれた。安倍は、まず、教育基本法の改悪を強行した。同時に、防衛省設置法を強行成立させた。また、これに伴う自衛隊法改悪で海外派兵を自衛隊の本来任務へと押し上げたのだ。続いて安倍は、五年を目処に憲法改悪を実現することを公言し、次期国会での国民投票法制定を狙っている。言うまでもなく、教育基本法改悪は、戦後民主主義教育を真っ向から否定し、国家に忠誠をつくす教育を狙うことを根幹的な目標とするものである。こうした攻撃は、新自由主義政策と結合している。教育現場への徹底した競争原理の導入、これらを、愛国心教育を要とした思想強制の体系の下へと組み込んでいこうというのだ。教育基本法改悪を受けて、今後進められていこうとしている関連法などの改悪や教育現場への攻撃を許してはならない。また、安倍は、教育再生会議を発足させ、教員免許の更新制や教育バウチャー制度などを通して、教育労働者を完全に管理統制し、また、競争原理に対応したものへと現行教育制度を全面的に転換させていこうと画策している。安倍は、九月大学入学制度などを主張し、高卒後、半年間ボランティア活動に強制的に従事させることなどを青少年教育の目玉政策として主張してきた。ボランティア活動は自主的に行うが故にボランティアなのであるが、こういう、徴兵制と見間違うような国家による強制という安倍の発想が、教育再生会議で検討されていくのである。

同時に、安倍は、国民投票法の制定から憲法改悪へと突き進んでいくことを目指している。五年をめどに憲法改悪を実現するという安倍の目標は、とにかく憲法改悪を直接の政治日程にのせようとする決意以上のものではない。しかし、憲法改悪に向けた熱望は、もはや、日帝ブルジョアジーの総体の意思でもある。安倍自身は、現憲法が占領下で押しつけられたものであり、日本「国民」が自らの手で新たな憲法を制定することが必要だと力説している。こうした憲法改悪の要は、九条の改悪と憲法の性格そのものの転換にある。

すなわち、九条改悪を通した自衛隊の全面的な軍事出動体制の確立であり、また、人民が国家の規範を規定する現憲法の性格を、国家が人民の規範を規定するものへと百八十度転換させることにある。従って、事の本質は、憲法改悪ではなく現憲法の廃棄と新憲法制定である。安倍自身は、かつての日帝の侵略戦争を自衛のための戦争であったと正当化し、アジアからの戦争犯罪告発、戦後補償要求に一貫して敵対してきた。特に、日本軍性奴隷制問題については、盟友である現中川政調会長とともに「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」を結成し、自由主義史観派・「新しい歴史教科書を作る会」とともに中学歴史教科書から「慰安婦」記述を削除させてきた人物である。また、女性国際戦犯法廷を取材したNHKの番組、「戦争をどう裁くか―問われる戦時性暴力」を放送直前に圧力をかけ改竄(かいざん)させた張本人なのだ。安倍は、「自虐史観」攻撃の先頭に立ってきた人物である。首相の靖国参拝の積極的賛美者であることは言うに及ばず、A級戦犯も国内法においては戦犯ではないなどと公言する人物である。「美しい国」なる安倍のキャッチフレーズも、その中身たるや、郷土や家族を愛することが国家を愛することであり、他国に対しても国益を遠慮なく主張する国が美しい国だなどと信じているのだ。こうした歴史観をもつ安倍だからこそ、拉致問題をめぐって愛国心を煽り立て、「共和国」への排外主義煽動と戦争策動と結合させながら、憲法改悪策動に一層拍車をかけていこうとしているのである。同時に、それは、労働者階級・人民に対する治安弾圧の強化と一体である。共謀罪新設など、小泉政権から引き継いだ弾圧立法を安倍は実現しようとしているのだ。

 

●4章 「格差社会」を一層拡大し固定化する安倍政権

安倍政権の第四の特徴は、「格差社会」を固定化し、それを一層、拡大していく政権だということにある。

新自由主義政策を推進してきた小泉政権は、いわゆる「格差社会」という貧富の差の拡大を構造化させてきた。新たな「貧困層」と呼ばれる労働者階級の相対的下層が構造的に生み出されてきた。小泉は、格差もいいではないかなどと開き直った。しかし、こうした現実に根拠をもって社会的矛盾が激化していこうとしている。安倍は、こうした現実を、「再チャレンジが可能な社会」を創り出すなどと、何かしらの幻想を与えることで誤魔化そうとしている。こうすることで、こうした現実をより構造的に固定化していこうとしているのだ。安倍は、またそうすることでしか延命できない政権でもある。だが、生み出されてきた格差社会という現実は、もはや一過性の現象ではない。この矛盾は今日のブルジョアジーには解決しえない矛盾なのだ。

九〇年代を貫いて、日帝は長期の帝国主義的不況にたたき込まれた。帝国主義グローバリゼーションと新自由主義の嵐が、全世界を席巻する中で、日帝はあきらかに立ち後れた。帝国主義グローバリゼーションは、全米自由貿易地域、EUなどの勢力圏化を内包しながら押し進められてきた。こうした中で、日帝は、ASEAN+3(日、中、韓)を核とする東アジア経済圏を形成する衝動につきうごかされつつ、その主導権を握ることもできずにきた。日帝は、長期不況からの脱却を、労働者階級にすべての犠牲を転化しつつ、金融資本の全面的な防衛と再編成を要に進めてきた。同時にそれは、雇用形態の全面的な転換、社会保障制度の解体、あらゆる領域を資本の利潤追求の場へとたたきこむことであった。小泉政権の下で進められた新自由主義政策とはこういうことだった。その結果、労働者階級の相対的下層の構造的出現、その「階層的固定化」が生み出されてきたのだ。安倍は、こうした方向をより全面化していこうというのだ。長期不況からの脱却とは、こうした「新たな貧困層」の形成を前提とし、かつ、条件とするものだったのである。安倍の成長重視戦略も、この延長にある。それは、広範に形成された相対的下層労働者の無権利状態、生活苦を前提として初めて存在するものなのである。現に、安倍は、大企業優先の減税を押し進め、一方で、労働者階級に一切の犠牲を集中する政策をより徹底化していこうとしているのだ。安倍政権は、非正規雇用労働者の増大と正規雇用労働者の長時間・過密労働を更に促進しつつ、八時間労働制の空洞化をはじめとする労働法制の改悪を狙っている。一方で、たたかう労働運動への弾圧を強め、労働三権そのものを実質的に剥奪し、労働者にいっそう過酷な労働と無権利を強制していこうとしている。また、人口減少社会の到来、「団塊世代」の大量退職に備えて、最下層の労働者の一部となる外国人労働者の導入を拡大していこうとしている。さらに、社会保障の分野でも、年金制度の改悪、介護保険の本人負担増、高齢者の医療費負担増、障害者自立支援法の施行などを推進し、参院選後は、消費税増税などの税制改悪も強行していこうとしている。高齢者、障害者などにとっては、生存すら脅かされる事態がさらに深刻化していくことは明らかである。安倍政権の下で、「格差社会」が拡大され、さらに固定化されていくことは不可避である。

「格差社会」、「新たな貧困層」の形成に根拠をもった労働者人民による不満の増大は不可避である。それは、「再チャレンジ支援策」などという小出しの処方箋によって解消できるものではない。新自由主義の下で生み出されてきた新たな階級社会の赤裸々な現実こそ「格差社会」の意味するものに他ならない。そうだからこそ、安倍は、こうした現実に根拠をもって発生する社会的不満をなだめつつ、逆に、その固定化を推進していかざるをえない。生み出されてきた「格差社会」という現実は、階級的矛盾の深化、激化ということだ。

 他方、こうした現実は、階級闘争の新たな条件の形成をも意味する。それは、形成されつつある「新たな貧困層」、すなわち増大し構造化されつつある相対的下層労働者に立脚した階級闘争の新たな再建が切望される一時代が到来しているということにある。「格差社会」という階級矛盾の激化そのものが今日のブルジョアジーによる新自由主義政策によって生み出され、かつ、ブルジョアジー総体にとってのアキレス腱となりつつあるのだ。そうだからこそ、こうした人民の不満を二大保守政党の下に糾合し、その基本路線において同一で政権交代可能な二大保守政党制の確立をブルジョアジーは切望し続けているのだ。増大し構造化されつつある相対的下層労働者の生活と諸権利のためにたたかい、二大保守政党制の下に収斂されることのない新たな階級闘争の前進こそ課題なのである。

 

●5章 安倍政権に対する各党の反動的態度

では、安倍政権に対する各党の態度はどうか。民主党は、その基本路線において自民党ともはやなんら変わることがない。民主党も、小泉政権の下で生み出されてきた「格差社会」の現実を批判し、また、そのアジア外交を批判する。民主党は、安倍政権に対する最大の批判点として、これらを掲げた。「格差社会」批判においては社民的態度にすりよりながら、人民の不満を自己のもとに惹きつけようとしている。アジア外交をめぐる民主党の態度は、首相の靖国参拝が中韓両国との軋轢を生んでいるが故に、日帝がアジアの新たな盟主として新たな地位を確立し得ないあせりから批判するにすぎないのである。それどころか、教育基本法をめぐっては、自民党案よりもより明確に「愛国心」を押し出しだしたのである。また、憲法改悪をめぐっても、九条改悪を要とする日帝の軍事出動の全面化を目指す点において何ら代わりはない。この党は、その内部における雑炊性もさることながら、その役割は、増大する人民の不満を基本路線において異なることのない、自民党とは異なるもう一つのブルジョア保守党のもとに収斂させることにある。

日本共産党はどうか。日本共産党は、党的にはスターリン主義党としての本質を保持したまま、社会民主主義路線への純化を一層強めている。日本共産党は、安倍政権を、本質的には好戦的なタカ派政権として批判する。だが日本共産党は、その排外主義的本性を全面開花させながら安倍政権を「批判」しているのだ。対「共和国」政策がその象徴である。日本共産党は、拉致問題を最初に国会で問題にしたのは日本共産党であることを自慢し、「共和国」に対する排外主義煽動の先頭にたつのである。

「共和国」による核実験に対しても、国会での制裁決議に率先して同調しているのだ。また、中国共産党との歴史的和解を経てその蜜月関係を誇示する日本共産党は、日帝のアジア勢力圏化を後押しすることに自己の役割を見いだしている。一方、日本共産党の格差社会批判は、ルールなき資本主義批判からするものである。日本共産党が対置するのは、資本主義社会の根本的変革を欠いた、革命なき社民的政策の羅列である。この党が果たす役割は、自民党や民主党などの両ブルジョア保守党に対して、増大する社会的不満の一部を自らの下に糾合することで、資本主義の打倒ではなく改良の下へと永遠に労働者階級をつなぎ止めることにある。

 

●6章 安倍政権を打倒せよ★

安倍政権は、新自由主義政策を一層推進し、教育基本法改悪の強行に続いて次期国会で国民投票法の制定を狙っている。改憲攻撃を新たな段階に押し上げようというのだ。また、これと結合して、米軍再編―新日米安保の強化を推進し、「米軍再編促進法」の春季国会上程を狙っている。「共和国」への敵視政策と排外主義煽動を激化させながら、朝鮮総連への弾圧を押し進め、朝鮮侵略戦争策動を激化させていこうとしている。労働者人民を排外主義・国家主義のもとに組織しながら、戦争国家化への全面的転換を進めていこうとしている。しかし、新自由主義政策の推進は、労働者階級・人民に貧困と無権利を強制し、階級矛盾を深めていかざるをえない。労働者階級・人民の怒りはますます強まっていきつつある。「格差社会」の到来への批判の高まりは、小泉政権下で多くの労働者人民を捉えた「構造改革」の幻想が破綻したことを示している。小泉は、自民党内外の「抵抗勢力」とのたたかいを演じることで、多数の労働者人民をひきつけた。だが、安倍は、もはやそうすることはできない。だがらこそ、安倍は、「共和国」への脅威を煽りながら、差別・排外主義と国家主義のもとに、労働者人民を惹きつけていくことに重心を置こうとしている。そして、本格的な侵略反革命戦争を発動しうる帝国主義へと飛躍していく道に、労働者人民をひきずりこんでいこうとしている。それを改憲で果たそうとしているのだ。安倍政権と総対決し、プロレタリア階級闘争の前進を押し進めよう。労働者階級、被差別大衆、被抑圧人民の自己解放闘争に立脚し、日帝の打倒を目指す革命的階級への形成を押し進めよう。

 

■第3部

〇六年の総括と〇七年の方針

 

●はじめに

戦争・改憲を推進する安倍政権が登場した。その盟友である米帝・ブッシュ政権は、イラクをはじめ世界各地の激しい反米闘争や国際反戦闘争を浴びて、歴史的な後退を露にした。ソ連・東欧の「社会主義崩壊」以降、労働者人民の反戦・反グローバリゼーションの抵抗闘争が高揚してきた。歴史は今、米欧日帝国主義の諸列強が戦争・搾取抑圧・貧困化を強め、ロシア・中国・ブラジル・インドなど新たな資本主義大国の台頭など、多極化するグローバル世界の内外で、さまざまな人民の抵抗闘争が激烈化する時代となった。プロレタリア階級闘争の再構築が国際的規模で求められている。インターナショナルの原則にたって、帝国主義打倒―プロレタリア革命を準備する総路線―綱領が抵抗闘争の組織化と結合し、労働者人民運動の深部に根付いていかなくてはならない。日米帝との攻防は、日本共産党や社会民主主義諸派、そして宗派主義との党派闘争でもある。一国主義・排外主義の横行、反帝国際主義・社会主義の放棄と労働者大衆の階級形成のネグレクトや大衆的実力闘争の否定など、あらゆる日和見主義とたたかい、わが共産主義者同盟(統一委員会)は新たな階級闘争構造の建設という任務に応えていかねばならない。

今日、米軍再編―改憲、朝鮮戦争攻撃―排外主義の全面化、「構造改革」―新自由主義グローバリゼーションによる階級抑圧と搾取・貧困化の強化、これらの階級矛盾が二極化・格差社会として激化している。わが同盟は、新たな階級闘争構造の建設―戦略的拠点化を総力で実現している。それはAWCによる十一月岩国国際集会の成功に端的に示された。そして階級的労働運動や戦闘的学生運動という、階級闘争構造の基礎となる大衆運動を職場・地域・学園にしっかりと根を張って組織してきた。さらに、反戦反帝の人民闘争拠点である沖縄闘争、三里塚闘争の攻防をたたかった。また、部落解放運動、障害者解放運動、被爆者解放運動、女性解放運動など、被差別大衆の解放闘争の前進をかち取ってきた。

共産同(統一委)は、ここに〇六年闘争を概観し、日帝・安倍政権打倒の〇七年階級闘争の任務を提起する。

なお、階級的労働運動に関しては、別途の論文で独立して扱われるために、ここでは〇七年階級闘争の任務の領域で簡潔に扱った。また、学生運動、被差別大衆の運動もいくつかは、〇七年の方針の領域で報告する。

 

●1章 06年の闘いの総括

 

▼@11月岩国国際行動とAWC運動

昨年、「アジアから米軍基地の総撤収を求める十一月岩国国際集会」に沖縄や全国、海外から約二百五十名が結集し、われわれはその成功を支えきった。この勝利的地平は、米軍再編と新たな朝鮮戦争の危機を阻止するために、全国各地の反基地反戦闘争とアジア太平洋地域の人民運動を結合したことであった。しかも、臨時国会における教育基本法改悪・防衛庁の「省」昇格法案・共謀罪新設などの改憲攻撃と真っ向からたたかう教育労働者や左派労働運動、学生運動、女性運動、反戦闘争実諸団体などが、安倍の足元から総決起したのだ。〇六年の総括は、冒頭、このたたかいの報告から始める。

十一月岩国国際行動の意義は、第一に、米軍再編の焦点化する岩国現地において、沖縄、神奈川の反基地闘争と結合し、全国的な反撃を開始していったことであった。岩国反基地闘争の田村市議や大川氏などが「米軍再編反対」の第三分科会、国際連帯集会、抗議デモの中心でたたかいの前進をアピールした。沖縄からは名護・辺野古の新基地建設に反対する活動家や、神奈川からは県央共闘、そして一坪反戦地主会関東ブロックからの代表たちが参加し、米軍再編攻撃に総反撃する歴史的な一歩を組織した。 第二には、アジア太平洋の反戦反基地をたたかう大衆団体が結集し、反帝国際主義の大衆的なたたかいを組織した。韓国からは民主労総副委員長・AWC韓国委代表、そして平澤米軍基地拡張阻止闘争の中心団体・ピョントンサの女性活動家、フィリピン・バヤン、台湾・労働人権協会、インドネシア・文化活動家ネットワーク(JKB)、そしてアメリカからはANSWER連合の代表など、海外ゲストたちが各国で厳しい弾圧を受け、多忙なたたかいのなかで参加した。彼ら彼女らは米軍基地撤去や女性への米軍犯罪阻止、反戦反核のたたかいの課題について、分科会と国際集会でアピールし討議し合った。

第三には、階級的労働運動、教育労働者、女性運動、学生運動、市民運動、学者知識人など、安倍政権の米軍再編―改憲攻撃と総対決する全人民の総決起を実現した。国会前での座り込みをもって教基法改悪阻止をたたかう教育労働者や、全国一般全国協傘下の諸労組、全日建連帯労組・関生支部、全港湾大阪支部など左派労働運動が参加した。第一分科会「基地と女性」には、女性活動家たちが多く結集し成功した。第二分科会「東アジアの危機と平和の創造」では、米日帝国主義の戦争・基地攻撃と総対決する情勢論・運動論が深く論議された。

第四には、「日米の侵略・支配に反対するアジアキャンペーン」(AWC)の国際幹事会(CCB)を開催し、アジア太平洋地域の反帝国際統一戦線の前進を組織したことである。十一月二十七日に山口市でAWC国際幹事会(CCB)が開催され、AWCの海外参加者、アメリカANSWER連合とともに、各国報告の討議が行なわれ、今後の共同闘争と相互支援の決議がかち取られた。

十一月の岩国国際集会後、各地で、国会前で、また国境を越え、われわれは日帝への総抵抗戦をたたかった。教基法改悪阻止闘争では連日、国会前の数千規模の闘争の一翼を牽引した。十一月末からは、平澤米軍基地拡張阻止をたたかう韓国民主労働党ゲストとの交流連帯が京都、神戸、大阪、神奈川、東京で組織された。そしてフィリピン・セブ島の東アジアサミット開催に反対するバヤンなどのフィリピン反帝民族解放闘争に連帯し、米日帝の対テロ戦争反対や米軍基地撤去の国際会議・抗議行動に代表を派遣した。

アジア共同行動(AWC)日本連は、〇六年、全国―各地の事務局体制を整え、労働運動、学生運動、地域運動、そして女性運動や部落解放運動、被爆者解放運動など反差別運動と連帯・共闘をつよめ、基盤を強化した。韓国ゲストを招請した六月アジア共同行動各地集会、6・15世界経済フォーラム東アジア会議東京開催に対する抗議行動、8・6広島青空集会へ参加、八月下旬には全国活動家交流と秋季岩国国際闘争を準備するために全国反戦合宿を組織した。米軍再編―改憲攻撃とアジア規模で反対運動を進める「憲法九条改悪を許さない! アジア・メッセージプロジェクト」運動が三月総会から始まった。一昨年の釜山APEC―香港WTOに反対する反帝国際共同行動の成果を受け、〇六年も国際連帯行動が各地で活発に組織された。平澤反米軍基地闘争に連帯する韓国大使館・領事館や米政府機関への抗議行動。フィリピン革命運動勢力やバヤン・KMU・LFS・ガブリエラなどへの暗殺攻撃に抗議するフィリピン大使館・領事館への行動や「政治的殺害を止める」署名運動。イスラエル軍のパレスチナ・レバノン侵攻・虐殺に抗議するイスラエル大使館抗議行動。米兵によるフィリピン女性レイプ事件抗議や米軍のイラクや韓国・沖縄―日本などアジアからの総撤収を求める米大使館・領事館抗議行動。これらをたたかった。現地闘争では、平澤米軍拡張阻止の韓国現地闘争、教育労働者など八月訪韓団、十一月韓国労働者大会参加を組織した。フィリピン連帯ではKMU・ISAへ参加し、学生運動が夏派遣を継続し、十二月セブ国際会議へは代表を派遣した。九月、AWC韓国委の訪日団を京都、長野、岩国、山口・九州で受け入れ交流展開した。米日の戦争重圧と共和国のミサイル連射・核実験によって核戦争危機が緊迫化する状況に反対し、核絶対廃絶を求めるとともに、米軍再編に抗議し、米日帝の新たな朝鮮戦争に反対する各種の声明・抗議行動を組織していった。AWC運動と日本連のたたかいは、労働運動・被抑圧人民・被差別大衆・学生運動・女性運動などを結集し、東アジアにおける反帝国際統一戦線として大きな役割と位置を果たしている。

 

▼A米軍再編と闘い抜いた沖縄闘争

〇六年、沖縄闘争は、反基地闘争の勝利的前進のなかで、十一月知事選では、普天間代替基地の国外移設を主張する糸数候補が残念ながら惜敗した。それは米軍再編―戦争・改憲攻撃との最先端の攻防に位置する沖縄闘争の重要性をあらためて明らかにしている。この間、辺野古沖の新基地建設計画については、現地の座り込みや海上阻止行動など命がけの実力闘争を軸にして、沖縄―「本土」を貫く物心両面での支援闘争や、韓国反米軍基地闘争などの国際連帯運動によって、日米両政府を断念させた。だが、米軍再編と新日米同盟は、沖縄基地の再編強化そのものである。基地負担の軽減など、真っ赤なうそなのだ。新たな辺野古崎のV字型新基地建設計画、沖縄北部への基地機能の集中化、嘉手納米空軍基地などの米軍と自衛隊の一体的使用、米海兵隊司令部要員八千名のグアム移転と米海兵隊戦闘部隊一万六千規模の残留、金武町の新たな都市型戦闘訓練施設の強行使用、沖縄市・嘉手納弾薬庫の一部返還予定地を自衛隊射撃場にする計画、弾道ミサイルPAC3の嘉手納基地配備。これらは沖縄基地そのものを強化し、「本土」・グアム・韓国・フィリピンの米軍前方展開と固くリンクし、共和国・中国などアジアへ戦争攻撃力を格段と強めるものなのだ。

強まる差別軍事支配に沖縄人民のたたかいが繰り広げられた。辺野古崎新基地建設にむけたキャンプシュワブ内の遺跡調査が防衛施設庁の管理と主導によって強行されることに、座り込みなど実力阻止闘争が昨秋から行われた。そのなかで平良夏芽さんが国家権力によって暴力的な弾圧を受け、逮捕された。また、さる十月のPAC3嘉手納配備に四日間の実力阻止闘争が行われた。沖縄市長選の反基地派・東門美津子さんの勝利、そして11・19沖縄知事選では普天間代替基地の国外移転を訴える糸数候補が三万七千三百十八票の差で、県内移設・経済振興をかかげ沖縄財界を代表し自公が推薦する仲井真に惜敗した。仲井真の勝利は、十数万票にものぼる企業ぐるみ総動員の期日前投票作戦、中央政府とつながった企業誘致や巨額な基地「振興策」を公約し、7・8%の高失業率改善の期待感が流れた。仲井真は、焦点の基地問題ではV字型滑走路案に反対し、「現行案に賛同できない、地元の意見を聞きながら解決を図る」という曖昧な態度に終始した。糸数氏の「新基地は造らせない」という断固たる主張には多くの支持が寄せられ、仲井真の基地政策が容認されたのでは絶対にない。

われわれは、五月沖縄現地闘争を組織し、沖縄―「本土」を貫くたたかいを組織した。「本土」においては、一坪反戦地主会関東ブロックの呼びかける辺野古実や、反戦闘争実の諸団体とともに、岩国や神奈川の反基地闘争と結合を組織し、沖縄闘争の前進を担っていった。仲井真県政の登場によって、辺野古崎新基地建設が強まっている。安倍政権は買収「振興策」を「出来高払い」方式で打ち出し、沖縄基地強化を強権的にすすめようとしている。これらを許してはならない。日米帝の差別軍事支配とたたかう沖縄解放闘争は連綿と続いている。これらの実力闘争を支え、かつ岩国、神奈川などの米軍再編阻止の全国闘争と相互支援を強め、AWC運動による韓国・フィリピン・アメリカなど反基地国際共同闘争を進めよう。

 

▼B北延伸攻撃―農地強奪と闘い抜いた三里塚闘争

日本人民の戦闘的な反帝闘争拠点である三里塚闘争は昨年四十年目に突入した。政府・公団・空港会社による農地強奪―生存権破壊と、三里塚軍事空港建設の攻撃が続いている。自衛隊イラク派兵に、三里塚空港は出兵と帰還の拠点となった。だが、反対同盟農民と三里塚支援勢力は、農地強奪を実力阻止し、侵略反革命軍事空港粉砕のたたかいを堅持してきた。農民と支援の労働者・学生が自らの体を張って、国家権力との攻防を繰り広げてきた四十年。絶えず、日帝・国家権力との先端攻防を担い、農民運動と労働者人民の生活破壊阻止・反戦闘争の砦となり、三里塚闘争は反帝闘争拠点として前進してきた。

〇五年夏、成田空港会社は、東峰・天神峰の反対同盟農民に対して、農地強奪・たたき出しの新たな攻撃を強め、暫定滑走路の北延伸―新誘導路建設を決定した。反対同盟は、これを絶対に阻止する現地攻防をたたかい抜いてきている。昨年一月二十八日には、八五年10・20戦闘以来二十一年ぶりに三里塚第一公園での集会が開催され、陸自東部方面隊のイラク出兵に反対する現地闘争が行われた。反対同盟のたたかいは、天神峰現闘本部裁判においても空港会社を追い詰めている。昨年は、四十周年の節目として、より攻勢的な全国各地の集会を打ち出した。6・25には「三里塚闘争40年 歴史と現在(いま)を語る東京集会」が開催され、多くの参加者を集めた。七月には、「暫定滑走路『北延伸』着工阻止、憲法改悪絶対反対 七・二全国総決起集会」がたたかわれた。

暫定滑走路の北延伸工事は、反対同盟農民へのたたき出し攻撃である。天神峰の市東孝雄さんに対しては農地法を悪用した農地強奪攻撃をかけてきた。昨年七月には成田市農業委員会が耕作解除申請に許可相当の判断を出した。さらに、九月には、県農業会議と県知事堂本が許可決定を出した。これをたてに空港会社は市東さんに対して、「明け渡し訴訟」を起こしている。市東さんに対する農地強奪攻撃を絶対に粉砕しよう。

北延伸工事の計画・着工が九月に行われたが、10・8三里塚全国総決起集会を頂点にして、たたかいが推進されている。国交省・空港会社による攻撃を跳ね返し、農地死守―実力闘争の旗をかかげ、米軍再編―新日米軍事同盟の攻撃によってますます強まる成田空港の侵略反革命軍事空港化を阻止しよう。反戦反帝の人民闘争拠点、三里塚闘争の前進をすすめよう。

 

▼C反戦反帝闘争を軸にした政治共闘の前進

反戦反帝の政治共闘として、首都圏の反戦闘争実、関西の反戦実の街頭闘争が昨年も連続して行われた。米軍再編―朝鮮戦争に反対し排外主義攻撃を粉砕する闘争や、沖縄闘争を中心にして、二月、集会デモ、四月、集会デモ、5・15沖縄闘争の現地共闘、6・24小泉訪米阻止―日米首脳会談反対の集会デモ、10・7朝鮮戦争反対の講演集会・デモ、10・12内閣府申し入れ、十二月朝鮮反戦の集会デモなどが取り組まれた。この反戦闘争実のたたかいは、沖縄、岩国、神奈川の反基地闘争の結合を促進し、十一月岩国国際行動成功の支柱となった。より積極的には、民族排外主義粉砕、朝鮮反戦闘争の推進という反帝国際連帯派としての役割をにない、影響力を発揮していった。

また国民保護法制―戦争動員体制に対する反対闘争が荒川・墨田・山谷などの地区で展開された。9・1首都圏防災訓練は自衛隊と米軍が参加する有事―戦争動員として強行されたが、首都圏の反戦反基地活動家を多く組織し、現地反対闘争が果敢に行われた。さらに関東大震災時の朝鮮人虐殺を再び繰りかえさないよう、滞日外国人への差別・弾圧―入管体制粉砕のたたかいを対行政闘争などで進めた。

 

●2章 〇七年の階級闘争の方針

安倍は、昨年を「美しい国」なる自らの改憲路線の基礎を築いたと総括し、今年、改憲・戦争国家化へ一直線に進むと決意表明した。この極右ファシスト・安倍を打倒する全人民政治闘争を組織していかねばならない。安倍政権の基盤は弱い。「構造改革」のもとで犠牲と貧困化が集中する労働者階級に深く依拠し、革命的労働者党としての責任において、日帝―安倍政権を追い詰めていこうではないか。〇七年の階級闘争の主要な方針を提起する。

@その第一は、日帝安倍政権による格差社会・二極化の激烈な攻撃と対決し、労働者人民の憤激を組織し、階級的労働運動を拡大強化することである。

安倍政権は、五年半の小泉「改革」による二極化、貧富格差拡大という階級矛盾の爆発を抱えている。それをよく知っているからこそ、「再チャレンジ計画」なるデマゴギーを喧伝し、治安弾圧強化、歴史的な労働法制の改悪をすすめようとしている。

階級矛盾と格差拡大は、いたるところに現出している。巨大独占資本と貧困化する労働者民衆の階級対立は言うまでもない。東京・名古屋・大阪など大都市圏に資本が集中する一方で、シャッター通り・過疎・高齢化など地方の空洞化は激しい。労働者階級においても、大企業の正規労働者の一部上層と、中小零細やパート・契約・派遣・日雇など多くの労働者下層が形成され、重層的に階層分化している。これらは新自由主義グローバリゼーションの攻撃によって進行した。多国籍企業・銀行の過剰資本は、高利潤の獲得競争に邁進している。生産資本ではIT導入によってリストラ合理化・低賃金化・長時間労働化を加速し、金融資本においては、株・債券や通貨・原油などに膨大な投機的資本が流動し巨額の利ざや稼ぎのカジノゲームに明け暮れている。

日帝の新自由主義的構造改革は、労働者民衆にきわめて激烈な犠牲と矛盾を転化するものであった。日本経済は、一九九〇年のバブル崩壊から、過剰資本による恐慌事態に陥った。労働者民衆に犠牲を転化し、莫大な国家資本を投入し、千兆円を超える財政赤字を積み上げ、危機を先送りした。現在、「戦後最長の好景気」が言われている。トヨタの利益が二兆円を超えるなど、大企業は空前の利益を謳歌している。この十五年もの間、巨額な国家資本―「公的資金」を金融資本・公共事業などへ投下し、あらゆる産業領域で買収・合併などの大再編がすすめられてきた。この独占資本の集中化のなかで、労働者階級にはドラスチックなリストラ・雇用破壊・権利剥奪・長時間労働・低賃金化・失業・貧困化が全面化している。非正規雇用労働者は全労働者の三分の一を越え、「ワーキングプアー」とよばれる働けど働けど生活に困窮する貧困労働者層は一〇〇〇万世帯にのぼり構造化している。失業率は、景気が回復したと言われる現在でも4%、二十五歳までの若年層では8〜9%と高い状態のままなのだ。これは日本だけでなく世界的規模で進む労働者階級への巨大独占資本の攻撃の帰結である。 日帝ブルジョアジーは、労働者が団結して資本とたたかう武器となってきた労働法制を全面的に改悪しようとしている。八時間労働制を解体する「ホワイトカラーエグゼンプション」や労働組合の空洞化、解雇自由化をねらう労働契約法の新設であり、労基法の改悪攻撃に踏み出してきた。

労働者の生活苦・権利抑圧などに対する階級的な憤激が深く広く蓄積している。全労協など左派労働運動は国鉄闘争をはじめとする労働争議や、正規―非正規を貫く労働者の権利と生活を守る闘争を組織し、改憲阻止・反戦平和・国際連帯をたたかっている。われわれは、革命的労働者党として、この日本労働者階級の歴史的流動と抵抗のたたかいに深く依拠し、その階級的団結の組織化と前進に全力をあげる。階級的労働運動を拡大強化する総力戦の時である。

〇七年、生活苦、権利破壊が集中する労働者の階級的憤激を徹底的に組織しようではないか。階級的労働運動勢力の総決起をかちとり、労働契約法制の新設・労基法改悪を阻止し、安倍政権を打倒しようではないか。

A第二の闘争任務は、米軍再編―改憲攻撃や排外主義―朝鮮戦争攻撃を阻止する全人民政治闘争を組織し、AWCの反帝・国際連帯運動と結合することである。

「戦後レジームからの脱却」と改憲の実現を、安倍は公約した。この米軍再編―改憲・戦争国家化のために、安倍は共和国の「拉致問題」・「ミサイル・核」の脅威を利用している。日本人民内部の歴史的な朝鮮人差別意識を煽り、共和国への経済制裁・戦争圧力を強め、朝鮮総連へのデッチ上げ捜査・逮捕を行ない、在日朝鮮人民への脅迫・襲撃を激化させている。現憲法施行六十周年の節目に、改憲の手続き法案―国民投票法案の制定を狙っている。改悪教基法下でのさらなる愛国心教育の実施・学校教育法改悪や教育労働者の免許更新制度など反動教育関連諸法案、さらに米軍再編関連法案、自衛隊「恒久派兵」法案など一連の戦争諸法案、歴史的な労働法制改悪法案など、反動立法は目白押しである。また法人税減税―消費税大増税なども画策されている。

国会は、自公与党が衆院の絶対過半数を占め、第二保守党の民主党がこれを補完するという総保守翼賛状態にある。いまこそ、国会内外や街頭、職場・地域―全国において、労働者階級・人民の怒りの全人民的政治闘争を組織していくことが求められている。わが同盟は、生活破壊・貧困化に呻吟する労働者階級・人民の抵抗闘争と、戦争―改憲攻撃阻止の全人民的政治闘争を固く結合してたたかうものである。この攻防戦をたたかい、新たな階級闘争構造の一大飛躍をかち取っていかねばならない。

この全人民政治闘争において、次の三つの重要な闘争への決起をよびかける。その一点目は、十一月岩国国際集会の勝利的成果である沖縄・岩国・神奈川の反米軍基地闘争の全国的結合、ならびに米軍再編の現地実力攻防とその支援を全力で組織することにある。二点目には、AWC運動の韓国・フィリピン・台湾・インドネシア・アメリカなど各地人民運動と連帯した反戦反基地国際共同闘争の推進である。三点目には、排外主義―朝鮮戦争攻撃と真正面からたたかうことである。朝鮮半島の南北民衆による自主的平和統一支持、在日朝鮮人民の支援、労働者国際連帯―排外主義粉砕、自国帝国主義打倒の朝鮮反戦運動論に立ちきってたたかうことである。これらの重要な闘争内容をになう、反戦闘争実、反戦実の政治共闘は大きな推進力となっている。反戦反帝国際連帯の同志たちと固いスクラムを組み、たたかっていこう。 そして全人民的政治闘争の組織化を強め、AWC運動と結合し、「憲法九条改悪を許さない!アジア・メッセージプロジェクト」運動を広範に組織しよう。

B第三の闘争任務は、反戦反基地や、WTO/FTA(EPA)/APECなど新自由主義グローバリゼーションに反対する国際共同闘争・国際支援闘争をAWCによって進めることである。 昨年のAWC国際幹事会(CCB)山口開催で、次のような国際共同闘争や相互支援が決議された。三月十七日、米国・ANSWER連合の呼びかけのもと、米軍・自衛隊など全占領軍のイラクからの即時撤退要求を要求するたたかいの組織化である。韓国の平澤米軍基地反対闘争では、テチュ里のローソク集会九百日目の2・17、千日目の5・28などに、支援闘争が準備されている。フィリピンでは、沖縄米海兵隊五千名の常駐化のもとで、フィリピン共産党・新人民軍などへの国軍の全面戦争攻撃が激化し、「政治的殺害」(Political Killi ngs)とよばれる議会政党・労働運動・農民運動・学生運動・女性運動の活動家・キリスト者など約八百名が暗殺されている。この米軍再侵攻と人民運動活動家への暗殺・殺人弾圧に反対する国際支援や、フィリピンKMUの五月国際連帯行動(ISA)が呼びかけられている。台湾では、米国からの約百八十五億ドル(約二兆千八百三十億円)の武器購入予算が編成され、米日の中国への政治的軍事的な監視と圧力が強まり、台湾労働人権協会はこれに反対する全人民闘争を強めている。これらへの連帯闘争をすすめよう。

さらに日帝のFTA・EPA(経済提携協定)によるアジア経済支配に反対するたたかいも重要である。安倍は中韓への歴訪・首脳会談を再開し、APECや東アジアサミットなどで、韓国、フィリピン、インドネシアなど東アジア諸国とのFTA・EPAへの締結を急いでいる。日、米、中のアジア経済支配の主導権争いは激しくなった。日帝のFTA・EPAは、アジアへ権益を拡大する経済協定であるが、韓国やフィリピンなど現地の戦闘的な労働者人民運動の弾圧と弱体化を現地政府に強要する弾圧条項を含んだ攻撃でもある。しかも、日比EPAで暴露されたように日本の「産廃」をフィリピンに「輸出」することも目論まれている。韓国・フィリピンの労働者人民運動と連帯し、日帝のFTAに反対し、反WTO・反FTAの国際連帯運動を進めよう。

アジア各地の労働者人民運動・活動家への重弾圧が強まっている。韓国労働者民主運動は、韓米FTA阻止闘争や非正規職三法反対闘争・労使正常化ロードマップ粉砕闘争をはげしくたたかい、このなかで韓国民主労総主席副委員長・AWC韓国委員会代表のホヨング氏などが韓国ブルジョアジー・権力によって不当逮捕・拘束攻撃を受けている。フィリピンでは、昨年二月、アロヨ政権の国家非常事態宣言が下され、元KMU議長であり、AWC共同代表、アナク・パウィス党のクリスピン・ベルトラン国会議員が反乱罪容疑で逮捕され、拘束は今日も続いている。アジア各地の労働者民衆運動・活動家への弾圧・逮捕拘束に抗議し、即時釈放を求めていかねばならない。これらの反弾圧―国際救援運動を進めよう。

C沖縄闘争・三里塚闘争の前進―反帝闘争拠点の強化を組織しよう。

沖縄においては、普天間基地即時返還―辺野古沖新基地阻止のたたかいが煮詰ってきた。辺野古沖計画を断念させた体を張った命がけの現地実力攻防、これへの辺野古実・反戦実など全国的な支援闘争、また防衛省など中央省庁への抗議行動を構築していかなくてはならない。沖縄の自立・解放のたたかいは、沖縄島ぐるみ闘争と結合した現地実力闘争による基地撤去―安保破棄を中心とした日米帝の差別軍事支配とのたたかいである。それは、アジアからの米軍基地撤去―反日米帝・国際主義の最前線の拠点的たたかいでもある。われわれは、〇七年、沖縄闘争の前進にむけ、次のようなたたかいを進める。その第一は、米軍再編によるアジア侵略戦争出撃のための沖縄基地強化を暴露し、「負担軽減」のデマゴギーを粉砕し、普天間基地即時返還―辺野古崎新基地建設阻止の現地実力闘争への支援を総力で広範に組織することである。第二には、この沖縄闘争と「本土」の岩国・神奈川など各地の米軍再編反対闘争や反戦平和闘争を結合し、広範な反戦反基地闘争を沖縄―「本土」をつらぬいて強めることである。第三には、沖縄闘争とAWC運動を結合し、アジア規模で米軍基地撤去闘争を推進することである。〇七年、反帝闘争の巨大な拠点である沖縄闘争の前進を総力で進めよう。 〇七年の三里塚闘争の前進にむけ、以下の点を提起する。米軍再編―新日米軍事同盟のもとで、港湾・飛行場などが有事―軍事優先で使用される。国民保護法―国民保護計画によって「指定公共機関」に成田空港も編成されている。まさに、侵略反革命軍事空港としての三里塚空港建設攻撃の本質は明らかである。農地死守―実力闘争によって、政府・空港会社を追い詰め、生活破壊阻止―反戦反帝の闘争拠点をいっそう打ち固めていかねばならない。 そのために、第一に、反対同盟農民の生活とたたかいを支援し、市東さんへの耕作権強奪をはじめとする「用地内」たたき出し攻撃を阻止することである。同時に、天神峰現闘本部裁判に勝利することである。第二には、暫定滑走路の「北延伸」攻撃を阻止することである。昨年九月の国交省による「飛行場変更申請許可」により、三百二十メートルの北延伸とジャンボ機離着陸が狙われている。そのために東峰・天神峰の生活破壊が激化し、「東峰の森」伐採やクリーンパーク違法転用が強行されようとしている。これを阻止する現地闘争をすすめよう。第三には、三里塚闘争と反基地闘争との結合を強め、反戦反帝の人民闘争拠点を前進させようではないか。成田空港を日米帝の戦争出撃拠点にしてはならない。米軍再編―新日米軍事同盟を粉砕する、沖縄・岩国・神奈川、そしてアジアの反基地共同闘争の一環として三里塚闘争をたたかっていこう。

D被差別大衆の解放闘争、引き続く教育基本法改悪反対闘争、学生運動。

 

◆女性解放運動

女性解放闘争の情勢は、大きな攻防局面を創りだしつつある。ひとつは九〇年代に切り開いてきた日本軍隊性奴隷制度とのたたかいが、「戦争と性暴力」の問題として、現下の米軍再編に対する女性のたたかいに受け継がれ、反戦反基地闘争の大きな原動力になりつつあることである。「戦争と性暴力」は旧日本軍によるアジア女性の蹂躙だけでなく、コソボで、イラクで、そして米軍基地周辺で現在も起き続けている。昨年の横須賀事件のように日本女性も例外ではない。韓国でフィリピンで沖縄で、米軍の性暴力に対して、女性たちが立ち上がっている。闇に葬られた膨大な被害女性と連帯して女性たちはたたかい始めた。十一月岩国集会では、「基地と女性」分科会参加の女性たちは、米兵に殺害された八人の岩国の女性を悼んで岩国基地へ抗議のデモをした。

ふたつは、女性労働者の新たなたたかいが始まっていることだ。階級格差がひろまり、労働者階級の中に「貧困」層が増加し、女性はこの階級の最底辺で、家庭と子どもをそして親の介護までを支えている。女性たちは、自分たちの不当な境遇が偶然の運命や能力の問題ではないことを良く知っている。「家庭責任」を負わされる女性は最初から「二流」の労働者として非正規雇用が当たり前とされているのだ。労働現場では女性差別に満ちた資本の暴力がはっきりと現れる。自立できない低賃金、それでも働かねばならない家計を背負っている女性労働者が、反撃に立ち上がりつつある。女性の労働組合が全国に広がっている。解雇撤回のたたかいや均等待遇運動の中心が女性労働者である。非正規雇用に押しやられてくる男性や青年労働者の利害をも代表してたたかっているのだ。

階級を超えた融和的な「女性像」が成立しなくなっている。剥き出しの階級の一員として、いやおうなく階級の奥底から社会に向っているのが労働者階級の女性だ。この呻吟し、流動化している女性労働者に依拠し、安倍政権と対決し、アジア女性と連帯できる女性解放運動の大前進を実現しよう。

 

◆部落解放運動

部落解放運動は、小泉―安倍政権による戦争と新自由主義グローバリゼーションの全社会的な攻撃のなかで、強まる差別排外主義―生活破壊―運動・組織の敵視・破壊攻撃と対決し、部落解放―全人民解放をたたかいつづけている。狭山闘争においては、〇五年3・16、最高裁が第二次特別抗告を棄却した。十九年に渡る第二次再審請求で弁護団は、十九通の筆跡鑑定書をはじめ、多くの鑑定書を提出し、事実調べを要求してきた。最高裁は事実調べを行おうとせず、一方的に棄却した。この暴挙を糾弾し、石川さんを先頭にして、第三次再審勝利にむけ、たたかいは不退転で進められ、再審請求の百万人署名運動も開始された。昨年、5・12墨田集会、5・23日比谷野音集会、10・31日本教育会館集会に全狭連は決起し、たたかう部落民とともにたたかった。現在、五年前の「同和対策特措法」の失効、差別事件の激化のなかで、大阪、京都などで、部落解放同盟とその運動への誹謗中傷・差別・組織弾圧が行政・国家権力・マスコミの一体化した攻撃となって全面化している。つよまる生活破壊と部落差別攻撃、狭山闘争破壊、そして部落解放同盟の行政闘争や差別糾弾闘争へのバッシング、これらを許さず、部落解放―全人民解放運動の歴史的成果を守り発展させるたたかいが行われている。差別糾弾闘争の原則を堅持し、たたかう部落大衆と連帯し、狭山闘争勝利、反差別共同闘争・階級的共同闘争・反戦反基地反改憲アジア連帯をともにすすめよう。

 

◆反核―被爆者解放運動

反核―被爆者解放闘争では、8・6広島青空集会に、被爆二世をはじめ全国の労働者・学生が結集したたかわれた。イスラエル軍のパレスチナ・レバノンへの侵攻と虐殺が激化する当日、米帝やイスラエルの劣化ウラン弾使用―核戦争の被爆を告発糾弾し、在外被爆者、被爆二世・三世をふくめ、すべての国家補償を実現させる決意が明らかにされた。上関原発建設阻止・反原発闘争を継続している。共和国の核実験への抗議、安倍政権による核保有論議キャンペーンの抗議と弾劾、米帝の核兵器大量保有と核使用、原発の大増設への糾弾と抗議をたたかった。朝鮮半島など東アジアの核戦争危機が続く中で、反核―被爆者解放闘争はますます重要となった。さらに闘争を進めよう。

 

◆障害者解放闘争

一昨年、「心神喪失者医療観察法」施行が強行され、全国で適用され、「鑑定入院」決定が出されている。軽微な事件まで適用し、精神障害者であるというだけで隔離・拘禁を強行する決定が出されるという保安処分攻撃が進んでいる。障害者の反対を踏みにじった「障害者自立支援法」も強行された。財政圧縮―福祉切り捨ての矛盾を、障害者・精神障害者に押しつけるものだ。支援費、介護給付の自己負担を強制し、障害者、精神障害者の自立解放の財政的基盤を奪い去る攻撃だ。絶対に許すことができない。障害者、精神障害者、健全者の共生、共闘をもって、自立解放闘争を進め、日帝―安倍政権の障害者差別激化と対決していこう。

 

◆学生運動

わが同盟の青年組織、共産主義青年同盟学生班協議会のもとで、学生運動は、首都圏、関西、九州・山口など各地の大学で拠点化をたたかい取っている。今日、教育基本法改悪攻撃に端的な戦争・国家主義・自治破壊と新自由主義グローバリゼーションのなかで、青年学生層において、活発な反戦意識、社会意識、国際問題意識が醸成されている。この間、イラク反戦や沖縄・岩国・神奈川など反米軍基地運動、八・六反核広島現地闘争、フィリピン・韓国との国際連帯、アジア共同行動(AWC)各地集会への参加などが、全国的な大衆組織である反侵略アジア学生共同行動(AASJA)によってになわれた。この反戦反基地反帝国際連帯の実践路線のもとで、各地の学生運動の組織化が大きく前進した。昨年春期、各地の新歓闘争において、新入生をはじめ学生たちの組織化を着実にすすめた。そして五月沖縄現地闘争、八月の広島現地闘争・フィリピン派遣闘争、十月三里塚全国闘争、そして韓国民衆運動連帯、さらには野宿労働者支援、左派労働運動連帯など、一連の各地―全国を貫く組織的なたたかいは勝利してきた。その大きな集約として、アジアからの米軍総撤収をめざす十一月岩国国際行動では、戦闘的学生たちは全国総決起闘争をかち取り、分科会や国際連帯集会、デモの中心で、このたたかいを牽引した。そしてわが革命的労働者党建設における指導的カードルへと青年共産主義者・革命家を育成するために、実践活動と結合したマルクス・レーニン主義革命論の政治思想学習を積極的に位置づけ進めている。いっそうの青年学生運動の前進をすすめ、次世代の共産主義者・革命家を輩出し、わが革命的労働者党の新たな階級闘争構造の創出にむけ、労働運動・政治運動・国際活動・女性運動・被差別大衆運動と連携していこうではないか。

 

◆教育基本法改悪を許さず、反動教育攻撃とたたかおう

昨十二月、国会前で教育労働者などのハンスト・座り込み等による教育基本法改悪阻止闘争は、巨万の決起を生み出し、現代の治安維持法である共謀罪新設阻止闘争と結合しながら、安倍改憲政権を会期末まで追い込んでいった。「イジメ自殺」問題、タウンミーティングの「やらせ」などの政権批判が広がった。自らの政権危機を感じた安倍は、「安定過半数」の強権によって、「審議を尽くせ」という多くの反対意見を圧殺し、教基法改悪を強行した。わが同志たちは、教育労働者とともに先頭でたたかい抜いた。改憲の導水路であり、愛国心教育による戦争国家体制を強め、たたかう教職員労働者を潰すことが狙われた教基法改悪であるが、これでたたかいが終焉したのではない。たたかいはより広がり、教育現場・地域での激しい攻防となるのだ。学校教育法改悪や教員免許更新制度など関連する反動諸教育法案や、地域・教育現場での「日の丸・君が代」強制などとのたたかいをいっそう強めよう。十二月国会前における、実力阻止闘争、共謀罪反対闘争などとの共闘・連帯の拡大、国際連帯など、このたたかいの地平は、今後、三―四月の「日の丸・君が代」強制反対闘争や新たな反動教育立法とのたたかいに断固引き継がれるのだ。わが同志たちと、韓国全教組と連帯したたかう教育労働者たちは、この間、先頭で攻防を担い、いっそうたたかいを牽引する決意である。改悪教基法を許さず、ともにたたかおう。 E当面する総路線―新たな階級闘争構造の前進をかちとろう!。

以上、わが同盟は、〇七年、日帝・安倍政権の打倒にむけて、階級的労働運動の建設、国会内外・地域・街頭での全人民政治闘争の組織化、AWC国際連帯運動、沖縄闘争・三里塚闘争など反戦反帝闘争の拠点推進、被差別大衆の解放運動・学生運動など諸戦線でのたたかいを呼びかけた。

〇七年のたたかいは、現代資本主義・日帝打倒―プロレタリア社会主義革命の準備と固く結合する、わが同盟の当面する総路線の実践である。新たな階級闘争構造を体系的に建設するたたかいである。日帝・安倍政権の戦争・改憲・排外主義の政治攻撃は、その資本主義的搾取の基礎において、日系多国籍企業・銀行など巨大独占資本による日本―アジア・世界における資源・低賃金労働力・市場の争奪戦に照応している。海外ではアジア・第三世界諸国をはじめ、欧米をふくめ世界中で、労働者・被抑圧人民・被差別大衆が反帝民族解放闘争、反グローバリゼーション―反資本主義運動の高揚をつくり出している。ここ日帝本国でも、膨大な富を独占する巨大企業・独占ブルジョアジーとそれに買収された一部の労働者上層たちと、不安定雇用・生活破壊・貧困化・権利抑圧された多くの下層の労働者・被抑圧民衆・被差別大衆たちの間で、階級的利害対立が拡大する構造となった。この日帝本国内の労働者下層・被抑圧人民・被差別大衆の階級的抵抗闘争に立脚し、これをアジア階級闘争と結合するという革命的労働者党としての責任と任務を貫徹しなくてはならない。

資本主義・帝国主義ブルジョアジーの打倒―武装蜂起―プロレタリア社会主義革命にむけ、搾取され抑圧された労働者階級人民・被差別大衆の解放闘争の拠点、反戦反帝闘争の拠点をぜひとも前進させようではないか。

日共は、日帝を免罪し、一国主義・愛国主義に転落し、共和国敵視にもろ手を挙げて賛成し、日帝ブルジョアジーの新自由主義攻撃には「ルールある資本主義」を要求する小ブル改良運動に突き進んでいる。他方で、共産党や社民党への左翼反対派として宗派的な思想への囲い込み運動に走る宗派主義の誤りに陥ってはならない。実際の反帝プロレタリア国際主義を組織し、労働者階級人民の解放闘争の先頭に立ちきって階級闘争に責任を果たすことである。ブンドの革命的伝統を継承していかねばならない。現在、強まる日帝ブルジョアジーの暴力的階級支配や治安弾圧攻撃を実力で跳ね返し、労働者・被抑圧人民・被差別大衆の解放闘争を実力闘争によって発展させる革命的労働者党として、わが同盟はたたかうのでなくてはならない。

〇七年、わが同盟は、当面する総路線―新たな階級闘争構造の建設に奮闘し、次の党活動を推進する。 第一には、アジア各地の階級闘争と日本労働者人民のたたかいを結合した実際の反帝国際統一戦線を建設することである。十五年目となった「日米のアジア侵略・支配に反対するアジアキャンペーン」(AWC運動)とその日本連絡会議による反戦・反基地・反グローバリゼーションのアジア共同行動運動を強化することである。

第二には、日帝・安倍政権による生活破壊・貧困化・戦争・排外主義の攻撃とたたかう労働運動、学生運動、被抑圧人民・被差別大衆のそれぞれの大衆運動を拡大し、それらを結びつけ、階級闘争の基礎構造を再構築する。

第三には、反戦闘争実、反戦実による原則的な反帝国際連帯派の政治共闘・統一戦線を強め、沖縄闘争や朝鮮戦争阻止、排外主義粉砕、日帝打倒の政治闘争を組織する。

第四には、資本・国家権力との攻防に際して、たたかいの先頭にたって、大衆的実力闘争を組織していくことである。

第五には、これらの階級闘争を系統的に計画的に推進する革命的労働者党と先進的活動家の組織建設を強めることである。機関紙・財政・組織会議という基本組織の三大活動を進めることである。 第六には、現代帝国主義の戦争・グローバリゼーションの攻撃を粉砕し、現代の資本主義的搾取支配を革命するための理論・実践、その宣伝を徹底的に強化することである。スターリン主義や社会民主主義諸派、宗派主義を根底から批判し、現代のプロレタリア革命論・実践論をマルクス・レーニン主義の継承に立って復権することである。

これらの系統的なブンド党建設を推進し〇七年の激動する階級情勢とその闘争に勝利しようではないか。ともにたたかわん。

 

 

 

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