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■読者からの手紙
AWCの前進が実感できた訪韓の旅
●全泰壱(チョン・テイル)通り
二〇〇九年十一月七〜八日、全泰壱烈士精神継承三十九周忌全国労働者大会前夜祭と本大会が汝矣島(ヨイド)文化の広場で行われた。私たちAWC首都圏の仲間たちは、大会参加に先立つ五日、ソウル清渓川(チョンゲチョン)平和市場前橋の上の全泰壱烈士銅像前で落ち合った。一九七〇年代の民主労働運動と民主化運動の誕生の地、清渓川五〜六街の通りの歩道には、労働者民衆が自ら金を出し合って作った名前と文句を刻んだ銅版ブロック約四千個余りが埋め込まれている。一九七〇年十一月十三日、二十二歳の全泰壱氏が被服工場労働者の地獄のような奴隷労働から解放の闘いに立ち上がれと、身を炎で焼きながら覚醒を呼びかけた場所である。私たちの密度の濃いハードな訪韓の旅は、全泰壱烈士精神継承の情熱と不退転の意志が表現されているこの通りから始まった。
●再開発法は日帝の植民地支配の残滓
ソウルの街は今、再開発の波が怒涛の如く庶民の暮らしが息衝く路地裏の横丁や露店が立ち並ぶ通りを破壊し、労働者民衆の住居権、生存権、幸福追求権を暴力的に根こそぎ奪い去って、1%の強欲な金持が支配する巨大ビル群の都市に改造されようとしている(ソウルだけでも五百五十余カ所で再開発がすすめられている)。昨年訪問交流した祭基洞(チェギドン)に本部がある、全国貧民連合(民主化運動の中で生まれた都市貧民運動)の説明によれば、日帝植民地時代の「再開発法」がそのまま残っていて、開発の美名の下に財産を没収。土地強制収用法は坪数三分の二の所有者の同意があれば、賃貸アパートに住んでいる貧しい人々がいくら反対しても強制撤去を余儀なくされて、全てを奪われて生活を破壊されていく悪法との事。全貧連は進歩的団体と共に、賃貸アパートを補償させる「再開発法」改定を要求して、幸せに生き、死んでいく権利のために闘っているとのことであった。
●龍山(ヨンサン)惨事現場弔問
七日、合流した関西、山口、九州のAWCの仲間と龍山駅前広場での全解闘(民主労総解雇者復職闘争特別委員会)主催の集会と労働者解放先鋒隊の解団式に参加した後、AWC韓国委員会代表の案内で、龍山惨事現場焼香所を訪問した。通りに面した惨事現場である五階建のナミルダン・ビルは大きな龍山駅から徒歩十分ぐらいの所にあった。そこに焼香所が設けられていて二人の遺族が守っていた。私たちは虐殺された五人の遺影が飾られている祭壇で焼香して、連帯メッセージを記帳した。その後、裏手に回りナミルダン・ビルの向かい側にあるビアホールレアホフ≠ナ、断食篭城中十三日目の活動家から現状の説明を聞いた。さほど広くはないホールの中心には台座に屋上の櫓の模型が置かれ、窓はステンド・グラスで、壁はビジュアル・アートで飾られ美しい色彩を放っていた。ここは龍山惨事解決のために、様々な活動家たちが集まる拠点として存在しているようであった。このレアホフ≠ヘ、以前は食堂で、三十年近く営んできた七十二歳の主人や家族は、用役ヤクザの日常的な暴力で命を脅かされてきただけでなく、当局に商売を続けられるように臨時の店賃貸店舗≠要求していたが、その後も公式的な交渉は一切無かった。〇九年一月二十日、凍てつく早朝、老人は用役ヤクザの暴力から逃れるために、そして家族の生存権を守るために、投げることのなかった火炎瓶を持って交渉を求め櫓に上がって、他の四人と共に、公権力警察に、テロ集団に見立てられて二十二時間後に虐殺された。殺された老人の息子さんは龍山四地区撤去民対策委員会委員長である。彼も生きるために櫓に上がり怪我を負って入院中に連行され拘束された。彼には新婚の妻がいるが、十月二十一日の結審公判で懲役八年が求刑された。夫婦の希望のビアホールであったレアホフ≠出ると、ナミルダン・ビル裏の交差点には撤去されたり、撤去中の建物が夜の帳(とばり)に黒く静まりかえっていた。明かりの漏れるビアホールの二階を覆うように、幾多の垂れ幕が風に揺れ、その向こうには高層ビルが見下ろすように光っていた。龍山惨事が解決されない限り、殺された五人の葬儀もできない遺族たちの憤りと慟哭は天をも突くことだ。私たちは足どりも重く、前夜祭参加のために惨事現場を後にした。
「龍山汎国民対策委の要求は@政府の謝罪A龍山四区域撤去民に対する対策用意(再開発政策の転換)B遺家族への補償であるが、直接当事者である政府、ソウル市、龍山区役所はお互いに責任を取らずに、交渉を回避している。公式的な交渉はただの一回も成立しなかった」(ネットより)
●可楽(カラック)市場から明洞(ミョンドン)聖堂へ
六日、AWC首都圏の仲間は、可楽市場にある金前全貧連議長の事務所を訪問交流した。整然とした広い街並みの裏には撤去民の熾烈な闘争の歴史があった。金前議長の話をまとめると、昔は貧しい街で、撤去民、露天商の闘争が盛んな地域であった。闘いの中で死んでいった人々もいる。可楽市場は全斗煥(チョン・ドファン)政権時代に建設されたが、全斗煥夫人の地盤権益が大きかった。一九八七年に生存権を賭けた闘いがあって、露天商の結合連帯の根拠地になった。現在も全斗煥の権益の残滓は完全に払拭されていない。今、可楽市場の再建設計画が持ち上がっていて、東京築地の移転を見本にしているようだ。現在、昼間は小売、夜間は卸をしているが、昼間を閉鎖しようとしている。昼間は死んだ街になるだろう。これに対して全貧連は反対闘争をしている。また、第二のロッテワールド(レジャーランド)建設に伴い撤去反対闘争を準備しているが、日本でロッテ不買運動など取り組めないかと打診された。金前議長自身も撤去対象の露天商であり、国際連帯事業部長でもある。事務所から徒歩約二十分ぐらいのところに巨大な農水産物卸売市場可楽市場≠ヘある。歩きながら説明してくれたが、主に年老いた人が商っている前方の半分が取り壊されようとしていて、その跡地にビルを建設しようとしているので、第二の龍山惨事で私は死ぬかもしれないと冗談ぽく言った。金前議長が歩く先々で露天商たちは、敬愛の情を惜しみなく表していた。絶大な信頼が寄せられていることをまのあたりにしたが、全貧連の会員は今、全体で一万人弱。この市場関係では三百人ぐらいで、冗談は命をかけて闘う決意表明なのだと思った。こちらから龍山惨事の話を切り出すと、全国撤去民連合議長たちが指名手配の弾圧を逃れて、明洞聖堂にいるので誰でも入れるところではないが、案内したいと、急遽、自ら運転する車でソウルの交通渋滞に苦労しながらの激励訪問交流となった。
全撤連議長と汎国民対策委委員長、人権運動サランバンの活動家などの三名は明洞聖堂の霊安室で不自由な生活を強いられていた。全撤連議長は冒頭で「韓国では日本人は悪いイメージがあるが、責任は支配者であり、大多数の日本人はよい人だと思っています」と歓迎のご挨拶をして下さった。そして、私は龍山惨事の背後操縦者として指名手配されているが、いずれは逮捕されるだろうとも述べた。これまで四十人あまりが死んでいる、今回は五人。補償額が提示されたが、移転できる額ではなかった。MB(イ・ミョンバク)は軍事独裁政権を上回る弾圧をしている。私たちに、在日本韓国大使館前での抗議行動が要請される。@龍山惨事問題を解決せよ!A補償せよ!B不当逮捕を止めろ!C指名手配を解除せよ!
●反貧困闘争から龍山惨事へ連帯!
全貧連から日本に撤去民はいるかとの問いに、暫し答えに窮したことがある。「撤去民」という呼び名も聞き慣れないが、全く次元の違う話として、路上生活者たちには家賃滞納で留守中に家財を放り出され、無断撤去で追い出された経験の人がいるだろうと思う。いま日本で、この事が貧困が拡大する中で人権問題となっている。しかし韓国では、都市開発事業敷地内の借家人が六年間住んでいて、法律が保障する補償費が一銭も受け取れないまま無断撤去され、追い出されることが罷り通っている。彼は憤り嘆いている。「この国の統治理念は、無力で貧しい人々は法律的保護を受ける価値も無い人々だというかのようだ。だから無力な者の最後の手段として、意思表示のデモをするのだ。借家人が全撤連に加入して助けを求め、龍山撤去民たちが櫓に上がって闘ったことを理解できる」と述べている。今までも路上で、撤去地域で露天商や撤去民たちが、用役班の公然と行われる蛮行で殺されたり、死に追いやられことはあったことだが、龍山惨事ほど資本主義の強欲で暴力的な本質を満天下に明らかにした象徴的な権力犯罪は無かったと思う。龍山惨事の裏には四大財閥の存在があるといわれている。「土地を愛する人々は土地は嘘をつかないと信じている」を金言にしている資本と権力は、土地投機と開発、再開発で資本を強奪的に蓄積していく。世界的金融恐慌の嵐に、資本の生き残りをかけた形振りかまわぬ剥き出しの利害が、MB政権と結託して、龍山撤去民の正当な要求を殺人的な鎮圧によって圧殺した。龍山惨事を絶対に孤立化させてはならないと思う。昨年、日本では新自由主義政策の下で、年越し派遣村の闘いが起きた。貧困―格差社会の固定化の拡大を、国境を越えて打破し、連帯していかなくてはならないと思う。
●民主労総の危機を垣間見た
七日、私たちは遅く到着した前夜祭(二千余の参加者)の拘束労働者後援会の一日酒場≠ナ空腹を満たし、一杯の焼酎で一日の疲れを癒した。急に降り出した雨で、双竜(サンヨン)自動車労組労働者の舞台でのパフォーマンスや律動を残念ながら見ることはできなかったが、ピョントンサ(平和と統一を開く人々)のホームページは写真入りで双竜車工場占拠闘争は終わったのではなく新しい手始め∞解雇は殺人だ!∞勝利のための闘争に団結しよう!≠フスローガンの下、よく暮らす日が来るつもりの〜放棄はしないでね〜私たちの夢があるじゃないの〜≠ニいう歌に合わせてゆらゆらと楽しくダンスをして、大変な闘いの中でも希望と楽観を失わない労働者たちの意気込みに、参加者達は感動して、アンコールを連呼しながら一緒にダンスをしたと報告している。
八日、三万余の労働者大会は、MB、地球を離れなさい≠ニ空高く打ち上げられたロケットが、宙に霧散するパフォーマンスで終了したが、双竜車労組労働者にアピールの舞台は用意されず、全泰壱烈士精神継承の全国労働者大会であることを考えると、残念であった。
●双竜車工場占拠ストライキ闘争は、韓国労働運動の牽引車
九日、AWC韓国委員会代表の案内で、日本連国際部事務局と共に、殺人的鎮圧現場の平沢自動車工場と、その闘いを家族を先頭に見守り激励した座り込み場所を見学し、その後、双竜自動車支部特別委員会を訪問交流した。そして、ピョンテク拘置所に拘束されているハン・サンギュン支部長と他に一人、それからカン・ソンチョル拘束労働者後援会人権チーム長の三人と、(三つのグループに別れて)、五分という短い時間であったが面会を実現した。朴(パク)全国金属労働組合双竜自動車支部職務代行、金(キム)整理解雇者特別委員会委員長と懇談した。朴職務代行は、最近の状況を具体的に話された。逮捕者は百名を越え、怪我人は三十〜四十人(非常対策委員長の話―周囲が見守ってくれていたので負傷者も少なく済んだ)、そのうち重傷者は四人。解雇者の実態は極めて深刻であった。生活のため、肉体労働やアルバイトで食い繋いでいる。精神疾患、うつ病患者も出ている。家族に自殺者一人。組合員五人死んで、二人自殺未遂という多大な犠牲がもたらされていた。労組の取り組みとして、面会激励の組織化、裁判準備、生計問題支援、組合員の健康問題、治療ケア、マスコミ対策、解雇に対する法律的対応など多忙を極めていた。特に損害賠償額は、凄まじい殺人的弾圧を再び想起させるに充分な労働運動潰しが明瞭である。会社側から五十億ウオン、警察から二十五億ウオン、保険会社から二百五十億ウオン。さらに、八月六日、四百六十人全員を再調査して各個人に三百万ウオンの罰金を課すという話がでたそうだ。今、金属労組と対策チームを作って対応している。この三カ月間、弾圧強化にあったが、十二月から攻勢的状態に入る状況にしたい。二〜三年はかかると思うが、立ち止まらず意味あるものにしたい。最後まで闘うので連帯して力になってくださいと述べられた。
裁判は一般組合員から始まっている。これから四百六十人を含む五百人の損害賠償の裁判が始まる。幹部たちのほうはまだ決まっていない。また、昼食時には、組合員たちが工場内の花壇の雑草、ノビルなどをむしって水キムチを作って食べたり、発癌性物質が大量に含まれている催涙弾(十年間使われなかった)を浴びて、ハンカチ一枚でホースから滴る水で濡らして、頭から体全体を拭いた話などを聞くことができた。その後、事務所で李(イ)家族対策代表と懇談した。占拠ストライキ中は署名もカンパも多く集まったが、占拠ストライキが解かれた後、報道管制がしかれているようで、逮捕拘束者が多数いることを平沢市民が知らないことが苦痛である。私は最後の一カ月は会えず、逮捕されていった夫も抱きしめられずにそのまま拘束されている。子供も一人で育てていかなくてはならない。家族を支援する連帯運動ができたらよいと思う。私は裁判所前で一人デモを始めて四週目になる。一人デモのプラカードに書かれている内容。「平沢警察所は人権蹂躙、弾圧捜査を中断しろ!双竜車は告訴、告発、損害請求を即刻中止しろ!労働組合抹殺策動を即刻中止しろ!過剰鎮圧警察、断電、断水、会社側は無処罰!労働者だけへの一方的な犠牲は納得できません、双竜車拘束労働者を即刻釈放してください」。李家族対策代表は最後に、日本の多くの人に知らせてほしい。世界中でとりあげてほしいと訴えられた。
私が、ハン・サンギュン支部長に面会できたことは今でも信じられないことだが、それよりも拘置所のガラス越しの面会は初めての経験で、感極まってハン支部長の顔もよく見られずに、一方的な話に終わったことが残念でならなかった。後日、国際部を通してハン支部長からのお手紙があり、面会時のことを読むことができて安心した。AWC日本連の仲間たちの激励手紙送り運動へのご返事でもある。手紙の内容で分かったことだが、双竜車労組の闘いは韓国の労働弾圧史上最大規模の構造調整、解雇者三千人に対する闘争といえるもので、新自由主義グローバリゼーションと死を賭して闘った抵抗闘争として歴史に長く記憶されるだろう(最近出版された『双竜自動車労働者ストライキ写真記録〈77日〉』を購入してきた)。
最後に、この訪韓を通して言える教訓は、新自由主義との闘いは労働者への過酷な弾圧を伴うこと、これを跳ね返すには労働者の団結、そして国際的な連帯が必要ということである。労働者への搾取と弾圧で資本家だけが肥え太っているのは各国共通だ。だから言葉は違っても労働者の怒りは共通であり、共に連帯できるのだ。まさにこれからの闘いはグローバルにやっていかなければならないと思う。
(AWC日本連首都圏会員)
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