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■読者からの手紙 九州在住者
熊本・福岡のインディーズ系メーデーに参加して
熊本市と福岡市で行われたいわゆる「インディーズ系」メーデーに参加して来ました。
個別の報告というよりも、ほぼ連続して参加して共通して見えて来たことなどを報告してみたいと思います。
熊本市中心街で四月二十九日に行われたのは「KYメーデー」。「場の空気を読まない、読めない」否定的な様としていわれる「KY」を実行委はあえて掲げ、それを「くまもとよわいもの」と読ませようという挑発的な試みでした。また、五月一日のメーデーその日にあえてこだわって、平日木曜日の午後五時過ぎから行われたのは、福岡市の「五月病祭2008」でした。そのどちらにも、東京のフリーター全般労組からのキャラバン隊が駆けつけていました。
一言でいうならばこの西日本の二つのメーデー行動は、今や新自由主義の最先端の人体実験場と化したこの国で、「生きにくさ」「生きづらさ」を抱えさせられた青年たちの咆哮であり反撃でした。かつて寄せ場労働運動の現場で掲げられた「やられたらやりかえせ」と同じガイストがそこにはありました。考えてみれば当たり前です、すでに列島全域が「寄せ場」化していると言ってもいい状況があるのですから。
ことに熊本に顕著でしたが、集まって来た若者たちの多くが「働いて飯を食う」ということそれ自体への懐疑や不満を強く抱えています。いわゆる「ひきこもり」の当事者や「ニートである」と公言する参加者もいました。そうした彼らが「自分たちに対してふた言目には働け、と迫る空気なんか読むものか」と声を発したのです。
デモ行進の中では、マクドナルドやスターバックスコーヒーなどのグローバルに強搾取を続ける企業の店舗前にとどまって抗議の声を上げるとともに、「働かないぞ」「説教するな」「ニートを尊敬しろ」「空気なんか読まないぞ」とコールを上げました。「惰民礼賛」という旗も掲げられました。デモに参加するのは初めてかそれに近い青年たちが、解放感いっぱいにアーケードを練り歩き、ときには往来の真ん中にごろりと寝転がってさえみせる様子は、驚くとともに感動的でした。
福岡では許しがたいことに、会場の公園からデモ行進に出ようとしたところ、福岡中央署が百名規模の機動隊をもってそれを阻止しました。主催者はそもそも車道に出ることを予定しておらず歩道を歩こうとしていたのですが、警察はそれにすら道路使用許可申請がいるのだと強弁しました。とんでもない話です。歩行者の邪魔になるのかどうかを、あらかじめ警察が勝手に判断するという、予防弾圧そのものです。思い思いの仮装と、グローバル資本の店舗前で叩き鳴らすべく種々の楽器を用意していた参加者は猛抗議を繰り広げ、結果デモには出られなかったものの、逆に福岡の取り組みの先鋭性と、それに早々と恐怖し切ってしまっている警察の姿が、浮き彫りとなりました。参加者たちに敗北感はなく、必ずやり返すことを誓い合っています。
私自身も、多くの参加者と同様、非正規、不安定雇用の身です。しかしそれは自身があえて選択したという側面が大きく、年若い参加者たちのように自分たちの同世代共通の問題として内面化しているのかというと、決してそうではありません。若者たちの多くがいかに過酷な労働環境の中で疲弊させられ心身を病んでいるのかを、彼らと交流する中で今回初めて突きつけられました。このかんにわかに、いや、ようやくにして「発見」され始めたに過ぎない若年層の「貧困」。彼らに素早く合流出来ていたとはとても言えないわが身について、自己批判的にならざるを得ない現実がありました。
今後、どうかすると「説教するな」と言われてしまうのかも知れません。それでも彼らに同行して行こう、と強く思わされました。それは彼らの置かれた状況の困難さ、切実さから目を背けてはならないと思うからですが、同時に、彼らの反撃が恐ろしく魅力的であり、行動を共にすることが心底楽しかったからです。若い世代から学ばせられるものは実に多いのだと思った、今年のメーデーでした。
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