共産主義者同盟(統一委員会)






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   【香港情勢】強まる民衆弾圧に反対する
   闘いの政治的・階級的発展の展望
   
国際部

 
 

 香港における逃亡犯条例改定反対運動は、今年六月段階で香港の全人口の四人に一人が参加する巨大な街頭決起となって爆発した。条例改定案は「死んだ」という林鄭月娥香港行政長官の発言以降も運動の勢いは衰えることなく持続し、戦術においては先鋭さを増し、その要求も逃亡犯条例改定案の正式撤回だけでなく、行政長官の辞任と民主的選挙の実施を含むいわゆる「五大要求」などとして発展してきた。こうしたなかで香港政府は九月四日、同条例の改定の正式撤回を表明したしかし、その後も青年たちを先頭にした街頭行動は継続し、これに対する香港行政府の弾圧は強まっている。
 一〇〇年にわたるイギリスによる植民地支配を経て、香港は一九九七年に中国に返還された。しかし、長期間のイギリスの香港植民地支配の中で香港が「世界の金融センター」の一つとして資本主義的発展を遂げ、人々の多くに「社会主義」を標榜する中国への全面的な統合に対する警戒感が残るなかで採用されたのが、いわゆる「一国二制度」であった。それにもとづく香港基本法の下で、香港には独自の行政管理権、立法権、司法権が付与されてきた。
 今回の逃亡犯条例改定案をめぐる問題は、上述のような帝国主義による植民地支配の歴史とその残滓(すなわち香港における資本主義体制の維持)、それを大きな一要因とする中国とその一部である香港の特殊な関係、そしてスターリン主義党としての組織性格を保持したまま中国の資本主義化を進める中国共産党の存在――これらの歴史的諸条件の中で引き起こされている問題である。
 習近平体制下の中国政府・中国共産党指導部の意向を背景にした香港行政府による逃亡犯条例改定案の提出は、香港基本法において五〇年間(二〇四七年まで)は維持すると明記された「一国二制度」を中国政府・中国共産党の側から掘り崩すものであった。それは一般的な刑事事件での「逃亡犯」の引き渡しを越えて、中国政府・中国共産党に対する批判を抑圧し、香港(人民)に対する統制を強化しようとする意図を背景にもつものであった。したがって、香港の人々がこれに反発し、条例改定案を阻止するために立ち上がったことには明白な根拠があった。
 同時にわれわれが見ておかなければならないことは、青年たちを先頭とする巨万の人民の決起の背景には、住宅価格の高騰などに示される香港人民の生活苦やそれによる社会的閉塞感の広がりがあるということである。実際、香港行政府による「貧困状況レポート二〇一七」(発表は一八年一〇月)によっても、香港の貧困層(収入が平均世帯収の半分以下の層)は20・1%、実に五人に一人にのぼる。この数値は貧困と格差が拡大する日本をも上回っている。爆発的な街頭決起や青年のラディカルな行動の根底には、激化する階級矛盾の問題があることをわれわれはしっかりと捉えておかねばならない。
 上述のような意味合いにおいて、われわれは香港政府による逃亡犯条例改定案とその提出を批判し、条例改定案の完全撤回を求めてきた香港人民の要求を当然のものとして支持する。さらに、特殊な歴史的・政治的な環境の中にある香港人民の自己決定権を尊重する観点から、いわゆる「五大要求」――①条例改定案の完全撤回、②警察と政府による市民の行動に対する「暴動」規定の撤回、③デモ参加者の逮捕・起訴の中止、④警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査の実施、?林鄭月娥香港行政長官の辞任と民主的選挙の実現――についても、それ自体としてはすべて支持することができる。
 今日、香港行政府は民衆の決起に対する弾圧を強めている。六月以降の逮捕者数は九月初頭の段階で一〇〇〇人を超えた。そのうち約三分の一が一八歳以下の青少年だ。とりわけ、逃亡犯条例改定案の正式撤回表明以降、香港行政府による弾圧はエスカレートしている。「覆面禁止法」の施行だけでなく、警官によるデモ参加者への発砲事件さえ複数回引き起こされている。このようなことは決して許されない。われわれはこのような香港行政府による民衆弾圧を強く弾劾する。
 他方、米英など帝国主義による介入も強まっている。米下院は一〇月一六日、「香港人権・民主主義法案」を可決した。米国政府に香港の「一国二制度」が機能しているかの検証を義務付け、必要と判断すれば中国政府関係者に制裁を科せるようにするというのがその内容だ。それは「人権」や「民主主義」を錦の御旗に押し立てた露骨な介入策動に他ならない。そもそも今日も世界各地で侵略戦争や軍事介入を繰り返し、民衆を虐殺している米帝国主義に「人権」や「民主主義」を語る資格はない。われわれはこうした帝国主義の介入策動に断固反対する。
 同時に、いまや単なる一法案への反対を超えて発展してきた現在の香港人民の運動は、その政治的・階級的な内容を鮮明にしていくことが問われていると言えよう。先に触れたような階級矛盾が存在するなかで、スローガンに現れる香港の「自由」や「民主主義」の中身こそが問われなければならない。また、「光復香港」(香港を取り戻せ)というスローガンもあるが、取り戻すべき香港の社会像をどのように描くのかという問題でもある。人民の決起が多分に自然発生的な要素の多いものだけに、そうした点はいまだ未分化であり、さまざまな傾向を含んでいる。
 中国共産党が「社会主義」を掲げていることから、それに対する反発は反共主義と結びつきやすく、資本主義・帝国主義を無批判的に受容する傾向も不断に発生する。何度か行われている星条旗を掲げて米国に支援・介入を要請する行動のもつ政治的性格は明らかである。それが人民の動向の全体を規定しているわけではないとしても、ごく少数の人々による行動と無視することはできないだろう。だが、香港の将来の展望は人民の政治的・闘争的な力量の形成にかかっているのであって、帝国主義による中国政府の圧力によって保障されるものではないことは明らかである。
 それゆえわれわれは、現在の香港の政治危機・政治流動の中から、そのような政治的傾向とは区別され、ブルジョア民主主義要求を超えて香港社会の構造的・根底的な変革を展望する勢力がどのように現れ、その闘いを前進させていくことができるのか、その苦闘にもっとも注目し連帯する。また、そのような勢力が、香港のみならず、中国全体の労働者人民の苦境と苦闘への連帯を広げていくことができるのか、それに注目している。それは長期的な闘いにならざるをえないであろうが、香港社会の真の変革の道はその中にこそあるだろう。



 

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