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■米国での社会主義希求の広がり 社会主義解放党が創設15周年 国際部 米国の社会主義解放党(PSL)は、今年六月に創設一五周年を迎えた。それに際して、「党建設の一五年、成長と教訓」と題する中央委員会声明、および、「社会主義の波の高まりとPSL創設一五周年」と題するブライアン・ベッカー氏による小論が、党機関紙と党ウェブサイトに掲載された。それらは日本におけるわれわれの党建設・党活動にとって、また帝国主義本国における今日の共産主義運動と党建設という観点から見ても興味深いものであり、いくつかの点で示唆的である。その内容を要約し、それに対するわれわれの見地にも若干触れながら、以下に紹介する。 ●1章 闘争をけん引しつつ前進するPSL 二〇〇四年に労働者世界党(WWP)から分裂して結成されたPSLはその後、イラク侵略・占領に反対する反戦闘争やパレスチナ連帯闘争、国内でのレイシズムとの闘いなど、自国帝国主義の侵略・抑圧・差別に対する大衆的な闘いを牽引してきた。それは、「世界帝国主義の中心で活動する党として、PSLは反戦運動および反帝国主義意識を構築することを、最優先事項および義務とみなしている」(中央委員会声明)という米帝本国の党としての自己認識にもとづくものであると言えよう。 この声明は同時に次のように言う。「われわれは過去一五年間一貫して、行動主義だけでは不十分だと強調してきた。社会主義思想なしでは、レーニンが百年以上前に促したように、人々が『あらゆる道徳的、宗教的、政治的、社会的な空文句や声明や約束の陰にあれこれの階級の利害を見つけ出す』ことを知らなくては、正義を追求するさまざまな運動はひとつになり、資本主義を転覆して置き換えることができる力を生み出すことはできないのである」。 「数十人の同志」から出発したPSLは、このようにして大衆闘争を実際的に牽引しつつ、同時に彼らが言う「社会主義思想のための闘い」を推進することで、相対的にはいまだ少数とはいえ、ダイナミックに成長し、今日では全米の約一〇〇の都市と町に支部やグループを建設している。 ●2章 米国での「社会主義」への期待 ふたつの声明・小論はそれぞれ、このかん米国内の労働者人民のなかに「社会主義」への期待が増大していることに触れている。それは「米国における社会主義の復活」、「社会主義の波の高まり」、「社会主義の新たな大衆化」などと表現されている。 ブライアン・ベッカー氏の小論は、ポール・ハリス社の世論調査において、40%の人々が「資本主義国よりも社会主義国に住みたい」と答え、とりわけ女性や相対的低所得者層では半数あるいはそれ以上の人々がそのように回答したことを紹介している。われわれがつけ加えて指摘すれば、他の複数の世論調査機関が実施したアンケートでもほぼ同様の結果が出ており、それはとりわけ青年層において顕著である。 これに関連して中央委員会声明は、「持続的な生活水準の低下、巨大な不平等、人種差別的な警察の暴力、大量収容、気候変動、終わりなき戦争は、社会の大部分の目には資本主義と資本主義国家の正当性を侵食した。支配的な政治階級はこれらの実存的な危機に対して完全に無関心であることが証明されてきた。このプロセス――資本主義の非正当化――は、トランプ政権の登場とこの国を支配するエリート内部での激しい闘争によって新たな段階に達した。社会主義への支持の復活は、ここ米国の最高レベルにおける政治的混乱の深化と軌を一にしている」と述べている。 新自由主義グローバリゼーションが増幅した資本主義の矛盾は、米国内の労働者人民をも直撃し、一方ではトランプ政権の誕生が象徴する政治反動を生み出した。他方、そうした状況の中でその内容はいまだ明確ではないとはいえ、資本主義体制に代わるものとしての「社会主義」への期待が増大しているのである。 ●3章 自己検閲を拒否して大胆に闘うべき こうしたなかで、このふたつの声明・小論では、二大政党制に収れんされることのない労働者階級の独自の政治勢力を創り上げること、そのために支配階級による反共宣伝を打ち破って大胆に社会主義とその内容を労働者人民に提起することの重要性・必要性を訴えている。ブライアン・ベッカー氏の小論は、それを次のように描いている。 「反共弾圧が国中を席捲したため、第二次世界大戦後、社会主義を擁護した人々は、隠蔽と自己検閲を余儀なくされた。雇用を維持し、壊滅的な社会的追放を避けるために、数百万人の左翼が社会主義者と名乗ることを止めた。その代わりに彼らは自らを「進歩派」と呼んだ。彼らは政党を辞め、リベラルな教会の社会正義委員会に参加した。社会主義は、メディアの山のようなプロパガンダと、社会主義・共産主義をファシストの全体主義と同一視して悪魔化した文学や学術カリキュラムを除いて、受け入れられる公の言説からは姿を消した。そうした時期は根本的には終わったが、その遺産に公然と挑戦しなければならない。誇りをもって社会主義綱領を説明すべき時だ」。 ●4章 米国における社会主義の展望 ブライアン・ベッカー氏の小論はまた、「米国は大多数の人々に具体的な利益をもたらすことができる社会主義志向の改革を即時に実施するのに理想的に適している」として、高度に発展した資本主義体制の下で、社会主義のための物質的諸条件がすでに準備されていることに触れつつ、現在の社会と対比して、次のように述べている。少し長くなるが引用しよう。 「社会主義は資本主義のオルタナティブである。財産は私的に、あるいは、公的に所有される。主要な銀行、産業、エネルギー部門、通信プラットフォームの私的所有は、誰が選挙で選ばれるかに関係なく、少数の億万長者が握る政治的および経済的力の本質である。資本主義国家は、その本質において、国内では貧困層と労働者階級の人々を標的とし、アメリカ帝国からの独立を追求する諸外国を標的とした大規模な組織された暴力のシステムである。その全体性において、このシステムは真の民主主義の否定を代表している。アメリカの多数派階級は、最も重要な問題に関する意思決定から締め出されている」。 「社会主義とは、労働者が議会、裁判所、および、すべての統治分野で権力を持つことを意味する。それは米国の労働者がすべての営利企業を支配することを意味する。それはすでに中央集権化された大銀行を接収し、経済の再組織化を支援する人民銀行を創設することを意味し、それにより社会が必要とする計画に従って資源を配置し、また、すべての個人に適切な賃金が支払われる仕事、無償の医療と保育、低価格の住宅への権利を保証する。社会主義とは経済を組織化し、化石燃料の終結に向けて迅速に移行するために必要な技術に投資することを意味する」。 「米国の労働者階級は、社会の大多数を占めている。労働者階級は経済およびすべての営利企業を完全に管理することができる。それは、組立ライン、小売業、ソフトウェア技術者、エンジニア、医療専門家、教員、運転手、用務員、ジャーナリスト、建設労働者、その他の多くの分野で働く人々で構成される多様で才能のある階級である。そのような労働者階級は、何をすべきかを理解するために企業幹部やオーナーの少数の階級を必要としない」。 「社会主義は未来である。実際、それは唯一の未来を代表している。現在の形態の資本主義、その『最高』の形態の資本主義の下では、永続的でかつてないほど鋭さを増す階級的不平等、恒久的な失業、不可逆的な気候変動、没落するアメリカ帝国の復興を目的とした新たな破壊的戦争に取って代わられることで、われわれが知る社会が終わりを迎えることは確実である」。 それを「いかにして」実現しうるのかという問題は残されているが、いずれにせよ米帝本国内の共産主義者、共産主義党の努力から学ぶことはわれわれにとって有意義であり、重要なことである。連帯を深め、引き続き注目していきたい。 |
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