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■自衛隊のバリカタン演習参加弾劾 フィリピン人民の闘いへの連帯を 昨年五月のフィリピン大統領選挙でロドリゴ・ドゥテルテ氏が勝利し、大統領に就任して以降、フィリピンの政治情勢、階級情勢には大きな変化がもたらされてきた。民族民主主義運動からの閣僚への就任、フィリピン民族民主戦線(NDFP)と政府との間の暫定停戦合意(昨年八月)、ドゥテルテ大統領による米国への一定の批判的態度の表明、などである。 それから約一年が経過し、フィリピン情勢にはその後いくつかの変化や注目すべき事態が起こっている。ここではそのいくつかを含めて最近のフィリピン人民のたたかいを紹介する。 ●1章 停戦破棄と国軍による攻撃、和平交渉 ドゥテルテ大統領は依然として80%前後の非常に高い支持率を維持している。しかしその国内政策においては、契約労働(非正規職労働)の廃止など選挙戦から大統領就任前後にかけて彼が発言してきたことはほとんど実現されていない。また、ドゥテルテによるいわゆる「対麻薬戦争」は、すでに六千人を超える死者を生み出し、その超法規的殺害によって国際的な批判を浴びている。他方、民族民衆運動から入閣した農地改革大臣や社会福祉大臣、環境破壊と人権侵害をもたらしている大規模鉱山開発に批判的な環境大臣は、たえずフィリピン・ブルジョアジーや大地主からの非難と更迭要求にさらされている。 こうしたなか、今年に入ってフィリピン共産党(CPP)と新人民軍(NPA)は、二月十日いっぱいで一方的暫定停戦宣言を解除するという声明を発表した。政府が約束したすべての政治犯の釈放が実施されていないこと、停戦以後も国軍が革命政府の影響下にある村を占拠する行動をとっている、などをその理由にあげている。声明はそのうえで、停戦は終了するが、政府とNDFPとの和平交渉の継続については支持する、とした。 これに対してドゥテルテ大統領は、革命勢力が「無理な要求をしている」、「和平は我々の世代では実現できない」などと述べつつ、政府側の一方的暫定停戦宣言を破棄し、和平交渉の中断を決定した。国防大臣はさらに踏み込んで、CPP―NPA―NDFPに対する「全面戦争」を宣言した。 フィリピン国軍が昨年八月の暫定停戦合意以降も農村部に駐留し、NPAに対する軍事作戦を行ってきたことは、NPA側によってしばしば非難されてきたが、二月の停戦破棄以降はその作戦をエスカレートさせている。ミンダナオ島やルソン島北部のいくつかの地方では攻撃ヘリやジェット戦闘機を使った空爆さえ実施されている。 こうした状況の下、和平交渉の継続が危ぶまれていたが、国軍による「全面戦争宣言」を批判し、和平交渉の継続を求めるキリスト者などを含む広範な人々の声の前にドゥテルテ大統領も和平交渉に応じざるを得なかった。NDFPと政府との第四回和平交渉は四月三日から六日にかけてノルウェーで開催された。次回の第五回和平交渉は五月末からオランダで開催される予定である。 ●2章 CPPが第二回党大会を開催 今春に入ってフィリピン共産党(CPP)は、昨二〇一六年十月二十四日から十一月七日にかけて、ある解放区において第二回党大会を成功裏に開催したことを公表した。旧共産党(PKK)と決別し、マルクス・レーニン主義―毛沢東思想に立脚した新党を結成するためにフィリピン共産党「再建大会」を開催して以来、実に四十八年ぶりの大会である。党大会のテーマは「より大きな団結、より大きな勝利」というものであった。 国家権力との内戦の継続、二十年近くに及んだ戒厳令体制、党中央指導部の長期投獄や強いられた海外亡命などの諸条件の下で、CPPはきわめて長期にわたって党大会を開催してこなかった。そのような困難の中にあってCPPは中央委員会総会を定期的に開催することでその制約を補おうとしてきた。今回の第二回党大会の開催は、ある側面においてはドゥテルテ政権発足以後の変化したフィリピン情勢を反映したものでもある。 第二回党大会においては、約五十年近くに及ぶ党建設の歴史総括が試みられ、綱領と規約の改定が行われ、今日の主体的・客体的な諸条件を踏まえた党の任務が鮮明化された。大会はまた、新たな中央委員を選出した。 新たに編成されたCPP中央委員会は、新人民軍(NPA)創設記念日である今年三月二十九日付で『第二回党大会万歳!人民戦争をより大きな高みへと前進させよう!』と題する論文を発表した。NPAにあてたメッセージとして書かれたこの論文は、第二回党大会を踏まえて、NPA建設の歴史総括を行いつつ、現在の国際・国内情勢の分析、ドゥテルテ政権の評価、当面するNPAの具体的な任務について提起している。 暫定停戦や和平交渉の継続が不安定な状況のなかで、この論文は次のように述べている。「第二回党大会に鼓舞されつつ、すべての革命勢力は人民民主革命を前進させ、人民戦争を新たなより高い段階へと引き上げる準備をしている。同時に、彼らは和平交渉のなかで社会的、経済的、政治的、憲法的な改革に関する協定の締結についての重要な進展がある可能性、また、それとは逆にそのような改革に対する米帝国主義と国内反動勢力による反動についても備えている。しかしながら、現状が続くかぎり、党は革命的武装闘争を遂行し、革命的大衆組織と政治権力機構を建設し、党を拡大・強化し、人民を戦闘的大衆闘争の遂行に導くことによって、持久的人民戦争を通した人民民主革命の総路線を貫いて進んでいかねばならない」。 この論文は、政府との和平交渉の結果がどうであれ、「NPAの赤い戦士たちは決して銃を手放してはならない」と締めくくられている。 ●3章 自衛隊のバリカタン参加を弾劾する 農村部での武装抵抗と並行しつつ、帝国主義の支配に抗し、フィリピンの真の独立と民主主義の確立を求める民族民主主義派の大衆運動は、ドゥテルテ政権下にあっても継続し、前進している。 三月八日、マニラ首都圏の北部に隣接するブラカン州で、BAYAN(新民族主義者同盟)の傘下団体である全国都市貧民組織カダマイのメンバーを先頭にした都市貧民は、軍人・警察官の入居用に建てられたものの住み手がいない集合住宅約五千戸の占拠を開始した。都市貧民たちは強制退去の脅しに屈することなく占拠を続け、四月中旬までにはドゥテルテ政権からの譲歩を引き出し、この住宅占拠闘争の最初の勝利を勝ち取った。 BAYANを先頭にしたフィリピン人民は、マニラでのASEAN首脳会議の期間中の四月二十八日には、米比防衛協力強化協定の廃棄を要求してアメリカ大使館に対する激しい抗議行動や首脳会議会場に向けたデモンストレーションを展開している。この日は同協定の締結三周年にあたっており、抗議行動のプラカードには「米国、日本、中国は東南アジアから手を引け!」というスローガンが多く見られた。 BAYANの傘下団体でフィリピン労働運動の戦闘的ナショナル・センターであるKMU(五月一日運動)は、契約労働の廃止、賃上げと全国一律最低賃金制度の確立、住宅の無償での提供などの要求を掲げつつ、今年もマニラ首都圏その他の主要都市で戦闘的なデモンストレーションを展開した。 こうしたなかで、この五月八日から十九日にかけて、米比合同軍事演習「バリカタン17」が実施された。このバリカタン演習は、ドゥテルテ政権に対して「独立外交政策」の実行を求めるフィリピン人民の抗議に迎えられた。 今年のバリカタン演習は例年よりもその規模を縮小して行われた。中国に対するあからさまな挑発であった南沙諸島に近いパラワン島周辺海域での演習は今年は実施されず、期間中の実弾砲撃演習も規模が縮小された。 対中関係とのバランスをとり、米国と一定の距離を取ろうとするドゥテルテ政権の下で、毎年行われている主要な米比合同軍事演習のうち、上陸演習フィブレックス、協力海上即応訓練カラットは今年は中止される。しかしそれでも米比両軍はは年間二百五十回ほどの合同軍事演習を行う。フィリピン国軍は今回のバリカタン演習は「人道援助」や「災害救援」に焦点づけられたものだと述べているが、しかしそれがそのような名目の下で行われる軍事演習であることには変わりはない。 われわれにとってとりわけ重要なのは、このバリカタン演習への自衛隊の参加である。これは二〇一二年以来、二度目の自衛隊の参加となる。 日本帝国主義はこのかん、フィリピンとの軍事協力をおし進め、かつ、自衛隊のフィリピン駐留を狙った日比訪問軍協定(地位協定と同様)の締結を策動してきた。フィリピンを橋頭保に自衛隊のアジア派兵・アジア駐留体制の確立を狙う日帝・安倍政権を許してはならない。 たたかうフィリピン人民と連帯し、日米帝国主義のフィリピン支配・介入を許さないわれわれのたたかいをさらに強化しよう。 |
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