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■朴政権退陣、ミサイル配備撤回 大規模ストライキに決起する韓国民衆 二〇一六年夏から秋へと韓国民衆の朴槿恵政権退陣闘争が大きく前進している。今夏、韓国へのTHAAD(終末高高度ミサイル防衛システム)の配備が発表されて以降、地元住民を先頭にTHAADの韓国配備を阻止するためのたたかいが繰り広げられている。また、昨年に続き今年も十一月十二日に韓国では民衆総決起大会が開催される予定であり、それに先立つ九月~十月にかけて韓国労働者の大規模ストライキが続いている。アジア共同行動日本連や労働組合では今年も十一月訪韓団を組織している。この文章では、THAAD配備撤回闘争と公共労働者のストライキを中心にこの間の韓国民衆のたたかいを報告する。 ●1 米日韓ミサイル防衛体制を拒否するTHAAD韓国配備撤回闘争 七月十三日、THAADシステムの韓国慶尚北道星州(ソンジュ)郡への配備が発表された。六月に来日して首都圏で安倍倒せ! 反戦実やAWC日本連の仲間とともに講演会を行った韓国の「平和と統一を開く人々」のメンバーは、THAAD韓国配備と日韓軍事情報保護協定は、中国包囲のための日米韓ミサイル防衛システム完成のための残る環であり、韓国THAAD配備阻止は東アジアの平和のために日本の労働者民衆もともにたたかっていく責任がある問題だと提起した。ふりかえれば、昨年十二月二十八日の日本軍「慰安婦」問題に関する日韓政府「合意」強行の背景に、「日韓和解」の演出によって日米・米韓のみならず日韓間の軍事同盟化をめざす米国の強い圧力があったことは確実であり、日本政府は日韓軍事情報保護協定の締結を韓国政府に要求しており、米国は一貫して韓国にTHAADシステムを配備することを要求してきた。そのような脈絡のなかで今年二月以降、韓米間での正式協議が開始された。六月には米軍がTHAAD配備を韓国政府と合意したという報道が日本のマスコミを経由して報道され、韓国政府がこれを否定する一幕を経て、今年七月八日、韓米当局によるTHAAD韓国配備発表(この時点で候補地は平澤、慶尚北道の漆谷(チルゴク)郡など四か所で、それぞれ反対運動が起こった)、続く十三日に、配備先が慶尚北道の星州郡の韓国軍防空ミサイル部隊が駐屯する基地(通称:星山砲隊)であると発表された。 THAADの星州配備が公表されるやいなや、政治的にはきわめて保守的な地域といわれてきた星州で、予想をはるかに超えた激しい反対闘争が勃発した。地元インターネット新聞「ニュース民(ミン)」は、連日その様子を生き生きと伝えている。星州は慶尚北道の大邱広域市から二十キロほど離れた内陸部の農村地域で、全国的なマクワウリの産地として有名だが、配備先となったことでマクワウリの価格は三割下がったという。当初THAADの配備先として名指しされた韓国軍の防空ミサイル部隊・星山砲隊は小高い山の上にあるが、星州郡の星山里の入り口から部隊の明かりが見えるほど近く、一九六七年にこの地に防空ミサイル部隊が設置されると同時に星山には地雷が埋設され、大雨の後などに生計のために山に入る住民が露出した地雷によって負傷したこともあったという。その星山砲隊にさらにTHAADを配備するというので、住民たちは怒りに震え、生活を守るために立ち上がった。 何より注目すべきことは、星州郡住民が、自らの手で郡庁前でのろうそく集会を一日も休まず続けてきたことだ。当初は住民とともにTHAAD配備反対運動に立ち上がった星州郡の郡長が八月にいわゆる「第三候補地」(星州の星山砲隊以外の候補地)をめぐって戦列から脱落し星州郡庁前でのろうそく集会を禁止したときは、住民たちは道路脇でろうそく集会を継続した。その後ふたたび郡庁前を奪回し、百日目にあたる十月二十日は全国百か所で連帯のろうそく集会行動が行われた。回を重ねるごとに星州のロウソク集会は学びと連帯の場になった。星州郡庁前ろうそく集会に集まる住民は、互いにTHAADに関する情報交換をした。韓米当局の「反対運動は北朝鮮追随の外部勢力が主導」というキャンペーンの中でも、「THAADに反対する人が北朝鮮追随左翼だというなら私もそうだ!」と言い切り、THAADは北のミサイル迎撃用だとする当局の嘘に対しては、「北の核にはTHAADは役に立たない。THAADじゃなくて南北対話を!」と要求した。さらには、反対闘争の方向性や重要な決断を闘争委員会の代表任せにせず、すべてはろうそく集会で討論し決定するという、いわば「ろうそく民主主義」を貫いてきた。THAAD問題の国会質問では「全部もう知っていることばかり。鸚鵡(おうむ)みたいに同じ話ばかり繰り返して、みんなグルじゃないのか」と怒った住民たちが席を蹴って退席し、THAAD配備を推進するセヌリ党からの集団離党も相次いだ。 またこの過程は、韓米当局による反対運動の分断の攻撃との正面からの反撃の過程でもあった。当局からの隠然公然の切り崩しや分断工作に対しても、「賢明に対処して騙されないようにしよう!」と意志一致をして立ち向かってきた。韓米当局は八月に入って、星州内の「第三候補地(ロッテゴルフ場など)」を持ち出して反対運動の分断を画策したが、かなり早い時期から「星州だけでなく韓国のどこにも配備させない」という方向性が住民自身の中から出されてきた。「星州配備阻止」のプラカードを自分で「韓国配備阻止」に書き換えてろうそく集会に参加した高校生。韓国配備反対を言い切れない行政側に対し、住民自身が論争しながら日々前進していくようすを、地元インターネット新聞で見ることができる。結局、星州住民の激しい反対闘争によって星山砲隊への配備を断念せざるをえず、あれほど「最適地」だとした星山砲隊の代わりに、同じ星州郡にあるロッテ・スカイヒルゴルフ場に(代替地を用意する方式で)決定したと韓米当局は九月三十日に発表し、星州の反対運動の終息を画策した。ロッテゴルフ場は星州郡の人口密集地からは少し離れた外郭地域だが、星州郡の草田(チョジョン)面や、ゴルフ場の北側フェンスに接している金泉(キムチョン)市の農所(ノンソ)面の住民たちが新たに不安と被害をこうむることとなる。星山砲隊からロッテゴルフ場に配備先が変更されたことで星州郡自治体当局が反対運動から脱落した後、住民たちは隊列を立て直し、最も大きな被害を受けると予想される金泉市の住民たちも「爆弾回しを許さない」「THAADの行き場はどこにもない」と配備撤回闘争に立ち上がった。米国政府宛の十万人請願署名も達成されたが、米国政府はこれを黙殺した。住民の怒りはますます燃え上がっている。 たたかいは地元のみならず全国に拡大し、「THAAD韓国配備阻止全国行動」が組織されている。ろうそく集会百日にあたる十月二十日に発せられた「星州のロウソク集会百日を記念して平和を念願する世界市民に送るメッセージ」の最後は、「私たちは星州と金泉を越えて、平和を念願する世界市民とともに最後までたたかって勝利する。THAADよ去れ、平和よ来い!」と高らかに宣言している。京丹後と韓国との間では「THAAD韓国配備阻止!京丹後Xバンドレーダー撤去!」の連帯交流が一歩ずつ積み上げられてきている。THAAD配備撤回闘争に決起する韓国民衆との連帯のために日本からも一層の努力が必要だ。 ●2 朴槿恵政権の反労働者政策と韓国労働者の継続するストライキ闘争 昨年十一月十四日にソウルで開かれた民衆総決起大会において、放水銃の直撃によって道路に打ち付けられ脳出血によって脳死状態にあったペク・ナムギ農民が、一年目が近づく九月末についに亡くなった。ペク・ナムギ農民が放水銃に倒れた現場は多くの民衆大会参加者が目撃しており、警察の国家暴力による殺人以外の何物でもない。しかし朴槿恵政権は警察庁長の偽証をもって当日の警察の状況報告書を隠蔽し、朴槿恵政権の重弾圧に起因した死であることを覆い隠そうとした。このような圧力の下でソウル大病院は、警察の暴力による「外因死」ではなく「病死」の死亡診断書を出すなど、朴槿恵政権の民衆弾圧の隠蔽に手を貸し、医学生や労働者市民から糾弾されている。政府の謝罪もないままに、さらには生前の希望を尊重して延命措置を望まない遺族の意志を無視してまで死因をごまかそうとした上に、遺体に対する解剖まで強行しようとする当局に対して、遺族と一丸となって「責任者処罰」を強く求めるたたかいが続いている。 在任全期間を通じて朴槿恵政権は、労働者を無権利状態に置き、民衆の生存権を破壊してきた。民主労総初の直接選挙で選ばれ、この民衆総決起大会を組織し、十万人の民衆総決起を実現したハン・サンギュン委員長に対し、朴槿恵政権は、まさにそのことを罪として逮捕・有罪判決により長期拘束をもくろんでいる。現在、控訴審闘争が始まったハン・サンギュン委員長の獄中闘争に連帯し、一日も早く労働者民衆のたたかいの最前線に取り戻していかねばならない。 このような殺人的で強硬な朴槿恵政権への労働者の怒りは、民主労総の九月ゼネストの呼びかけに応えたストライキに向かい、公共部門労働者の九月~十月ゼネストがたたかわれている。その焦点は成果年俸制だ。これまで高位公務員に限って適用されてきた成果年俸制を、朴槿恵政権が昨年一般公務員へと拡大適用することを決定したことを受け、今年六月には公共機関の九十五%で導入が決定された。さらに実際の導入にあたっては労働組合との合意なしに導入可能としたことに労働者は危機感を深めた。「成果年俸制の拡大適用」を許せば、そのもとで、資本の思うままに解雇できる「成果退出制(低成果者の解雇制度)」を許すことになる。これは労働者にとっては、いわば「試用期間」が一生涯続くことを意味するのだ。これを撤回させるために、公共運輸労組所属の鉄道労組やソウル・釜山地下鉄労組のストが貫徹され、また金融労組や保健医療労組もストライキに立ち上がった。さらに民間では金属労組現代自動車支部が賃金引上げ交渉の決裂を契機に十二年ぶりの全面ストライキに突入した。これに対し朴槿恵政権と韓国の保守マスコミは、「高給取りの労働貴族」「労組エゴイズム」と悪罵し、ストライキ参加者への処分と損害賠償を騒ぎ立てているが、AWC韓国委員会代表で民主労総前首席副委員長であるホ・ヨングさんは、その「高収入」が、最低賃金とさして変わらぬ基本給のせいで、どれほどの長時間労働と、労働者の労働力の再生産さえ不可能なほどの変則的な勤務体制によってようやく得られるものなのか、現代自動車のストライキはOECD参加国中第一位の世界に悪名高い韓国の長時間労働をほんの一時ではあれ緩和し是正する役割を果たしたのだから政府は労働者に感謝すべきで処分とは何事だ、政府がなすべきことは最低賃金を生活できるレベルに上げ、大企業大工場での長時間労働を解消し、その仕事をより多くの労働者が分かち合うようにすることではないかと朴槿恵政権を痛烈に批判している。 十月十日に貨物連帯が貨物運輸労働者の権利と道路の安全を守るための切迫した要求を掲げ、鉄道ストと連動して物流を止めるストライキに突入するやいなや、朴槿恵政権は警察権力を動員した暴力弾圧に乗り出し、多くの労組員が負傷し拘束される流血の事態となった。九月二十七日に突入し、十月二十日をもって二十四日目となった鉄道ストライキは最長記録を更新したが、朴槿恵政権と鉄道庁は三千名の代替労働力を動員し、鉄道スト弾圧を強めている。しかし朴槿恵政権と保守マスコミによる「労働貴族の組合エゴイズム」というキャンペーンは労働者民衆の実感からはほど遠く、立ち上がる公共労働者や民間労働者のたたかいへの弾圧は、ますます朴槿恵政権への批判を深めざるをえない。 これらのたたかいが総力を結集し、今年も十一月十二日(土)、労働者・農民・貧民など二十万人が朴槿恵退陣を掲げて決起する民衆総決起大会がソウルで開かれる。十一月、日韓労働者民衆の連帯をいっそう発展させよう! |
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