|
■米日帝国主義のフィリピン駐留策動を許すな 闘うフィリピン人民に連帯を 二〇一四年に締結された米比防衛協力強化協定の下で、米軍のフィリピン駐留体制の強化―新たな米軍基地建設の策動がおし進められている。日本帝国主義もまた、自衛隊のフィリピン駐留をもくろみ、日比の軍事協力を加速させている。このような状況のなかで、日米帝国主義の策動と対決し、たたかうフィリピン人民との連帯を強化・発展させていくことが日本の労働者人民にますます強く求められている。 ●1章 新たな在比米軍基地の建設へ向かう米帝 今年三月十七日から十八日にかけて米国・ワシントンDCで行われた米比の第六回「戦略対話」において、米比両政府はフィリピン国軍の五つの基地のなかに米軍の「拠点」を設置することで合意した。これは実際には、これらの基地のなかに新たに米軍基地を建設し、米軍を常駐させることを意味する。米比防衛協力強化協定の下で、一九九二年に在比米軍基地が閉鎖されて以来、二十四年ぶりに米軍がフィリピンに公然たる常駐体制を敷こうとしている。 合意された米軍の駐留先-新たな米軍基地の建設場所は、バサ空軍基地(ルソン島)、マグサイサイ海軍基地(ルソン島)、アントニオ・バウティスタ空軍基地(パラワン島)、マクタンベニト・エブエン基地(マクタン島)、ルンビア基地(ミンダナオ島)の五カ所である。パラワン島のアントニオ・バウティスタ空軍基地はスプラトリー諸島(南沙諸島)にごく近く、また、バサ空軍基地およびマグサイサイ海軍基地はスカボロー礁をにらむ位置にある。いずれもフィリピンと中国との間で領有権紛争が生じている場所だ。 このようにして米帝・オバマ政権は比中間の領土・領海問題を利用し、「海洋安全保障」を掲げてそれに介入し、中国に対する軍事的包囲の一部として、フィリピンにおける米軍プレゼンスを強化しようとしている。米軍はすでに、先に述べた第六回「戦略対話」の直後から、中国を牽制するために南中国海でのフィリピン国軍との共同哨戒活動を開始している。それがこの地域の軍事緊張を拡大するものであることは明らかだ。 こうしたなかで、四月四日から十五日にかけて、パラワン島周辺海域を含む複数の地域で米比の年次合同軍事演習であるバリカタン演習が行われた。この演習には米軍五千人、フィリピン国軍三千八百人が参加している。報道によれば、この演習に参加した米軍部隊の一部は、その後も四月末までクラーク空軍基地(かつての米軍基地の一部が現在フィリピン国軍の基地となっている)に駐留し、米軍側は今後も同基地に米軍機を定期的に配備するという。また米艦船のフィリピンへの寄港も年を追うごとに増加している。 このようにして、新たな米軍基地の建設をはじめ、さまざまな形でフィリピンにおける米軍プレゼンスが強められようとしている。忘れてはならないことは、それは「再均衡」戦略の下で中国に対する軍事的包囲を強めるものであるとと同時に、その銃の矛先は帝国主義の傀儡(かいらい)政権との対峙を着実に進めるフィリピン人民の革命的武装闘争にも向けられているということだ。 ●2章 自衛隊のフィリピン駐留策動を許すな 昨年六月に東京で開催された日比首脳会談後の記者会見において、フィリピン大統領アキノは首脳会談での共同発表文には盛り込まれなかった内容について言及した。それは、日比間において「訪問軍協定」の締結交渉を開始するというものである。 訪問軍協定は、一般的には、合同軍事演習その他のために一時的に「訪問」する外国の軍隊の法的地位を定めるものである。フィリピン政府はすでに米国(一九九九年)およびオーストラリア(二〇一二年)との間で訪問軍協定を締結している。同じような内容をもつ二国間協定に地位協定があるが、現行のフィリピン憲法は外国軍の駐留や外国軍基地の建設を原則禁じているため、建前からも「訪問軍協定」という名称が使われてきた。 しかし、このかんの米軍のフィリピン駐留の実態が示すように、外国軍の駐留と外国軍基地の建設は認められないとするフィリピン憲法は、歴代の政権によって骨抜きにされてきた。それを鑑みる時に、日比訪問軍協定の締結は、自衛隊のフィリピン駐留を画策するものだと見なければならない。フィリピンのガズミン外相はすでに二〇一三年の段階から、自衛隊のフィリピン駐留を歓迎する旨の発言を行い、アキノ大統領は安倍政権の新安保法制への支持を明確にしてきた。こうしたなかで、いよいよ自衛隊のフィリピン駐留に向けた策動が本格的に開始されているのだ。 日本帝国主義はすでにクウェート(二〇〇三年)およびジブチ(二〇〇九年)との間で地位協定を締結し、ジブチには第二次世界大戦での敗北以来初となる自衛隊の在外基地を建設してきた。戦争法制を確立した安倍政権の下で、いまフィリピンが自衛隊のアジア駐留に向けた第一の標的とされているのだ。なお日本とクウェート、ジブチとの間の地位協定では、自衛隊の事件・事故に関して、公務中・公務外にかかわらず、刑事裁判権は日本側がもつという完全な不平等条約だ。日比訪問軍協定の締結交渉は秘密裡に進められているが、同様に自衛隊の特権的地位を認める不平等な内容となる可能性が高い。 ●3章 急速に強められる日比軍事協力 二〇一二年七月の「日比防衛協力・交流に関する意図表明文書」、二〇一五年一月の「日比防衛協力に関する覚書」を通して進められてきた日比の軍事協力は、とりわけ昨年六月の日比首脳会談以降、さらに加速している。 今年二月二十九日、日比両国政府は、防衛装備品・技術移転協定に調印した。日本はそれにもとづいて、自衛隊の航空機をフィリピンに貸与しようとしている。日本はまた、政府開発援助(ODA)として、フィリピンに巡視艇を供与すること決定しているが、それはODAの軍事利用の最たるものである。 三月二日には、海上自衛隊の掃海母艦「うらが」と掃海艇「たかしま」がマニラ湾に寄港した。さらに、四月三日には海上自衛隊の潜水艦「おやしお」が二隻の護衛艦と共に、スービック湾に入港している。それが、四月四日から開始された米比合同軍事演習バリカタンと連動し、中国を軍事的に牽制する意図をもつものであることは明らかだ。 日本は二〇一二年にバリカタン演習に初めて自衛隊をオブザーバー参加させて以降、継続的に同演習にオブザーバー参加してきた。自衛隊は今年の演習にも韓国軍やオーストラリア軍と共に参加している。シーライト米国防副次官補が明らかにしたところによれば、日本帝国主義は、日比訪問軍協定の締結をもって、バリカタン演習への正式参加をめざしている。 日帝・安倍政権は、「中国の脅威」を喧伝しつつ、比中間の領土・領海問題に露骨に介入し、そうすることで米日比の軍事協力および自衛隊の東南アジア展開を加速させてきた。それは、米帝のアジア「再均衡」戦略を積極的に補完するものであると同時に、日本独自の軍事的影響力を拡大し、フィリピンを東南アジアにおける日本の軍事的展開のための橋頭保・拠点として確保しようとするものだ。フィリピンをはじめ東南アジア諸国に存在する日本帝国主義の膨大な経済権益がその背景にある。 このような動きをみるときに、今年一月の天皇アキヒトのフィリピン訪問が、かつての日本帝国主義のフィリピン占領に関する日本の戦争責任・戦後責任を欺瞞(ぎまん)的に清算し、日本の軍隊を再びフィリピンに上陸させていくための露払いの意図を持つものであったことは明らかだ。 ●4章 闘うフィリピン人民に連帯を フィリピンの現大統領アキノの任期は六月いっぱいまでである。現在、きたる五月九日の大統領選・上下院選に向けて、さまざまな勢力が選挙キャンペーンを繰り広げている。フィリピンの民族民主勢力は、上下院選挙においては、「バヤンムナ」などのパーティーリスト政党から人民の利害に立脚する候補をおし立てて選挙戦をたたかっている。 アキノ大統領はその六年間の施政のなかで、貧困に苦しむ労働者、農漁民、都市貧民の状況を改善することはなかった。逆に、TPP参加策動をはじめ新自由主義政策を推進し、外国企業のフィリピン進出のための優遇措置をとり、米軍を再びフィリピンに引き入れ、日本との軍事協力を推進するなど帝国主義の傀儡(かいらい)政権として性格をあらわにしてきた。 四月一日には、ミンダナオ南部キダパワン市で、エルニーニョ現象がもたらす干ばつによる農作物の不作で生活苦にある農民約六千人が州政府に対して米や補助金の支給を求めたことに対して、フィリピン国家警察の部隊が突如発砲し、二人が死亡、百人余りが負傷するという事件が発生した。この警察による農民虐殺事件は、フィリピンの広範な層から強い非難を浴びているが、アキノ政権は「選挙戦の政争の材料にされる恐れがある」などとして、干ばつ対策の実施どころか、真相究明にもきちんと取り組もうとしていない。 フィリピンの民族民衆勢力、たたかうフィリピン人民は、反人民的政策をおし進めてきたアキノ政権に対してたたかうと同時に、日米帝国主義のフィリピン軍事介入に対するたたかいを継続的に組織している。新民族主義者同盟(BAYAN)を先頭にして、一月二十七日の天皇アキヒトのフィリピン訪問に対する抗議行動、二月二十九日の日比防衛装備品・技術移転協定の締結に対する抗議行動、さらに四月四日の米比合同軍事演習バリカタンに対する米大使館抗議行動などが繰り返し取り組まれている。 日米帝国主義がフィリピンへの軍事介入を急速に強めている今日、反帝国主義・プロレタリア国際主義にもとづく日比労働者人民の国際連帯をいっそう強化していくことが切実に求められている。新民族主義者同盟(BAYAN)とアジア共同行動日本連は、四月四日付で「日比軍事協力の強化に反対する共同声明」を発表した。共同声明は「日本と米国はこの地域での軍事的プレゼンスを拡大するための口実として、スプラトリー諸島(南沙諸島)および南中国海での紛争を利用しているにすぎない」とし、「フィリピンと日本の民衆運動は、相互の連帯を表明しつつ、日米の軍事的策動に対する断固とした共同の反撃を組織する」としている。 反帝国際主義にもとづく共同闘争を断固として推進していかねばならない。たたかうフィリピン人民に連帯し、日米帝国主義のアジア軍事支配強化の野望を打ち砕こう。 |
当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.