共産主義者同盟(統一委員会)






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   ■朴政権と対決する
     韓国労働者民衆の闘い

 

  昨二〇一三年二月に発足して一年半以上が過ぎた韓国の朴槿恵(パク・クネ)政権は、朝鮮民主主義人民共和国(以下[共和国]と略)との対決姿勢を維持し、米帝との軍事協力関係を強化しつつも、最大貿易相手国である中国との友好ムードを演出してきた。国内では富の偏在、貧富の格差がますます進行しする中で、軍事独裁体制への回帰といえる思想と支配体制の右翼的再編をゴリ押ししている。民衆の声を無視し、人権を蹂躙する政策を次々に実行しているのだ。今年四月に沈没して多数の死者を出した歳月号事件については、真相究明を求める遺族の声を無視している。原発では、建設予定地における住民投票で示された圧倒的多数の反対の声を聞かずに建設を強行すると発表した。非正規職労働者の割合が特に若者の間で上昇するなか、労働組合潰し策動の矛盾が露呈している。極右団体が現実とネット空間で増殖し、政府と一体となって労働者民衆運動に「アカ」「親北」「北への従属」のレッテルを張り、聞くに堪えない罵詈雑言を浴びせ続けている。進歩政党への弾圧は続き、その支持率は落ち続けている。
 そういう困難な状況にあっても、韓国の労働者民衆運動は粘り強く続いている。十二月には民主労総の役員選挙が初めての直接選挙として行われる。ここでは、いくつかの分野に関して主な動きを確認する。
 第一に、軍事だ。米帝と韓国政府は北に対しては対決姿勢一辺倒だ。六者会談開催は兆しすら見えない。米韓・日米の軍事演習は連日行われ、朝鮮半島情勢の緊張は高原状態で続いている。駐韓米軍は韓国軍共に共和国への侵略反革命戦争態勢を堅持している。具体的には、米軍二一〇火力旅団の漢江以北への残留、平澤(ピョンテク)移転予定になっている米韓連合司令部のソウル・龍山(ヨンサン)基地への残留、高高度ミサイル防衛体系の駐韓米軍を配置することを米帝が韓国に要求している。両国はまた、有事に運用する米韓連合師団創設に既に合意した。
 さらに、二〇一五年末予定の戦時作戦統制権を米国から韓国へ返還することを十月下旬に延期した。返還時期は朝鮮半島域内の安保状況によって決めると米韓はしたのだ。事実上の無期延期だ。反北ビラまきをめぐって北方限界線付近での南北間の銃撃戦が数回発生した。その後、南北軍事当局者会談が開かれたが、成果のないまま終わっている。第二次朝鮮戦争がいつ起こってもおかしくない状況が続いている。
 第二に、思想と支配体制の右翼的再編だ。日帝植民地支配と軍事独裁の時期を美化・賛美するニューライト勢力の影響が政治家・官僚・知識人の間で拡大している。国営放送のKBSの理事長にも極右のイ・インホが就任した。十月下旬には国会で金九(キム・グ)について、(彼は)「一九四八年の大韓民国独立に反対したので大韓民国功労者として取り上げ、論じるのは正しくない」と発言した。
 統合進歩党政党解散審判事件を審理中の憲法裁判所へ八月に出した意見書で法務省は、梅香里米軍爆撃上反対運動、米軍装甲車女子中学生死亡事件抗議、韓米自由貿易協定反対運動、米牛肉ローソク集会、済州海軍基地反対運動などの民主化運動は共和国の対南革命戦術によるものだと述べた。
 来年に国定教科書を復活させようとする動きが表面化している。文系・理系統合型教育課程の教科書だ。最終目標は韓国史の国定化だ。
 反政府発言の取り締まりも大々的に行われている。九月十六日に朴槿恵が「大統領に対する冒涜発言が度を超えている」と発言した。これを受けて検察がインターネット上の虚偽事実流布を監視し捜査する方針を明らかにした。最優先の捜査対象は公的人物に対する名誉棄損だ。つまり、大統領への批判は一切許さない、ということだ。海外モバイルメッセンジャーサービスに活動の場を移すネット利用者が急増している。
 また、朴槿恵政権が成立した昨年以後にソシアル・ネットワーク・サービスの一つであるカカオトークの利用者に対する情報・捜査機関の内容確認及び押収捜索令状と通信事実確認資料提供要請が数千件に達したことが明らかになった。 昨年以降、内容確認令状百四十七件、通信事実確認資料提供要請二千四百六十七件、押収捜索令状四千八百七件。さらに、検察はネット上で問題になる文を削除するようポータルサイトに直接要請する方針だ。
 大統領の人事問題を風刺したテレビのお笑い番組のコーナーが再放送時に削除され、ユーチューブからも全面削除された。
 加えて、国民健康保険公団の個人医療情報を警察と検察が一日二千六百四十九件ずつ受け取り、調べていたことが十月中旬に明らかになった。個人医療情報を令状なしに公文書一枚だけで毎日大量に入手していたのだ。当事者への通知はない。国家権力による思想の調査と統制だ。
 第三に、歳月号事件だ。遺族は真相究明と関連者処罰を求め、特別法制定を訴えている。だが、与党・政府は大統領府に調査が及ぶことを拒否し、事件から半年以上が経つというのに何一つ前に進まず、膠着状態が続いてきた。九月十六日、朴槿恵が、歳月号真相調査委員会に捜査権と起訴権を与えるよう求める遺族の要求を「司法体系を毀損する」と拒否した。責任を取ると謝罪したのに、特別法について沈黙を続けてきた大統領の見解がこれだ。その直後に教育省が、黄色いリボンなど歳月号参事犠牲者を追悼する行動を「政治的活動」と規定して禁止する公文を道・市の教育委員会に送った。追悼するな、忘れろ、という命令だ。歳月号事件の記録映画「潜水鐘」が十月の釜山国際映画祭で上映予定になっていたが、同映画祭組織委員長でもある釜山市長が上映中止を命じた。しかし、結局は上映された。日本でいえば産経・読売に相当する右派新聞の朝鮮日報・中央日報・東亜日報を労働者民衆は「朝中東(チョジュンドン)」と呼ぶが、これらを中心とする韓国の右派勢力は今、真相究明と関係者処罰を求める遺族を露骨に批判・避難し、事件を忘れて経済問題に目をむけろと主張している。結局、特別検事の推薦過程に遺族が関わるべきとした遺族の訴えが実質上拒否された内容の特別法案を与野党が九月下旬に合意。これに抗議する遺族と支援が闘いを続けている。
 第四に原発だ。原子力発電所誘致を争点に行われた江原道(カンウォンド)三陟(サムチョク)市民の住民投票が十月九日に行われた。政府はこの投票を法的に無効と前もって決めつけ、また、選管委が業務委託を拒否したので、民間の住民投票管理委員会と事務局がボランティアを募集して実施した。投票率は67・9%。住民投票法が定めた開票要件の三分の一をはるかに超える。結果は反対84・9%だった。にもかかわらず、産業通商資源省大臣は、住民投票と関係なく原子力発電所建設を原案通り推進すると明らかにした。地域住民の意向を国家権力が踏みにじる、岩国米軍住宅建設や辺野古米軍基地建設強行と全く同じ構図だ。また、警察が様々な名目で住民投票に関連する捜査を行っている。あからさまな弾圧による運動潰しだ。
 第五に労働だ。OECDの統計によると、非正規職労働者の正規職転換率について加盟国のうち韓国が最低だったことが分かった。非正規職採用三年後の正規職転換率は、OECD加盟国平均53・8%、韓国22・4%、非正規職労働者の三年後の失職率は、平均16・9%、韓国26・7%。
 富の偏在すなわち貧富の格差も極に達している。十月に公開された国税庁の「二〇一二年配当所得・利子所得100分位資料」によると、全株式配当所得十一兆三千余億ウォンのうち、上位1%が72・1%を、上位10%が93・5%を持っている。全利子所得二十四兆九千億ウォンのうち、上位1%が44・8%を、上位10%が90・6%を有している。
 公務員年金を改悪する動きが進んでいる。現行14%(本人負担7%)の納入額を、一六年以前に採用された公務員には二六年まで段階的に20%(本人負担10%)まで上げ、退職後の年金受領額は全在職期間平均所得の57%から約40%に下げる、という内容を韓国年金学会が発表し、ほとんど同じ内容の草案を安全行政省が十月中旬に明らかにした。
 だが、労働者の粘り強く闘いも続き、反撃の開始されている。
 多段階下請け構造の中で働く通信技士労働者が個人事業者として扱われているため、最低賃金も保証されない状況に置かれているが、雇用契約に基づく労働者と見なさなければならないと雇用労働省が九月中旬に判断を下した。
 韓国最大の自動車メーカである現代自動車で働く社内下請け労働者千百十一名のうちの大部分は「不法派遣」状態であり、現代自動車側と直接的な雇用関係が成立する、という判決をソウル中央地裁が九月中旬に出した。これにより、正規職の処遇を受けることになる。
 教育労働者の組合に対する壊滅策動も押しとどめられた。政府は昨年、全教組を「法外労組」つまり違法労組と決めつけ、労組専従を行政代執行免職にした。この取り消しを求める裁判が進行中だが、控訴審判決宣告時まで「全教組法外労組」通知処分の効力を停止するとソウル高裁が九月中旬に決定し、合法労組としての地位が維持され、「法外労組」通知以前の状態が回復されることになった。政府の全教組潰しが一旦頓挫したわけだ。


 

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