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■アメリカ社会主義解放党(PSL)の綱領 反帝国際連帯運動の前進かちとろう ●(A) PSLの綱領について(訳者) 1)二〇〇二年以降、米帝が開始した「対テロ」戦争に抗して、米帝足下から世界的な反戦闘争を牽引したANSWERに大きな影響力をもつ、社会主義解放党(PSL)の綱領を以下に紹介する。 二〇〇四年、当時の世界労働者党(WWP)から分裂して結成されたPSLは、結成間もない二〇〇五年に国際国内情勢の評価と米国で革命的労働者党を建設する必要性などについて決議を採択した(この紹介・評価は、『戦旗』第一二八三号二〇〇七年五月五日号に掲載)。決議はその後改定されて『PSLとは何か? わが党のめざすもの』なるパンフレットになった。 これと並行して二〇一〇年第一回大会において「綱領」が採択された。PSLは、これは「米国で革命が勝利し、成立した労働者政府が何を行うかの概要をのべた政治的綱領」だと説明している。 PSLの特徴は第一に、世界で最大の米帝国主義の足下で活動し、実際に大衆運動に影響力を発揮し、保持していることである。理論サークル的な小グループが多い米国の左翼のなかでも注目に値する。 第二に、その自国帝国主義=米帝打倒の鮮明な立場である。これはPSLがプロレタリア国際主義と帝国主義批判にしっかりと立脚していることにもとづくものである。それはかれらが米国の労働者階級人民に対して系統的に、国際情勢を国際階級闘争の利益の観点から一貫して分析し、そこにおける米帝国主義の犯罪的役割を生々しく暴露する宣伝扇動にもあらわれている。また、イラク反戦闘争の渦中における民主党系や社会民主主義的な路線に対して、アラブ―パレスチナ人民との連帯を掲げて原則的な分岐の結果である。 第三に、革命党の独自的な建設を強調していることである。WWPからの分裂以降、特に、運動からは相対的独自に党の建設の必要性を訴え、運動のなかで党の宣伝を重視している。この点は分裂のひとつの論争点であったようであり、PSLは実際、イラク反戦闘争の渦中で新たな層の党員を、黒人やラテンアメリカ系住民、被差別人民のなかからも獲得した。 2)PSLの綱領とはどのようなものであるか。われわれと党のおかれた環境は異なるとはいえ、同時代の帝国主義足下にあって直面する課題は同様のものがあり、その解決にあたって教訓化するべきことも少なからずあると思われる。 わが党にあっても二〇〇四年統一委員会結成にともなって綱領を制定したが、以降十年の活動と実践の深化のうえで今多くの同志から綱領についての意見が提出され、論議が組織されようとしている。このような時に、このPSLの綱領を研究し、評価し、いくつかの教訓を引き出すことができるであろう。 もちろん、綱領とはいえ、その領域や構成、内容については、党のおかれた環境・とりまく階級闘争の課題やその党の綱領作成にいたる経緯によりさまざまであり、それらの分析ぬきに画一的に論じることはできない。またそうであるがゆえに、まず綱領の個々の理論的精緻さを論じることは適当ではない。 これを前提にして、PSLの綱領を見るならば、まず特徴的なことは、革命政権のとるべき政策領域に大幅に比重をおいた綱領であることである。日本のわれわれにあっては、概して、七〇年闘争と党建設の敗北の総括のなかで、戦略戦術主義を克服し、運動の側からその最左派のヘゲモニーとして党を考える弱点を克服せねばならなかった。それはしっかりと党の立脚点をうちかためる問題であり、それを資本主義への原則的批判においたのである。このようにして綱領の必要性に接近したといえるのである。米国にあっては、大衆運動の大きな波がありつつも、後退期にはその成果は民主党や社民系に集約されてしまい、これらにたいする確固たる分岐を引いて闘うことが緊要の課題であったのであろう。また、現状との対比で鮮明に革命政権の政策を示すことが宣伝扇動上とくに緊要の課題だったのかもしれない。 第二に、帝国主義批判に比して、資本主義に対する原則的批判が弱いという特徴をもっている。帝国主義の基礎には資本主義が存在する。ロシア革命の実践は、労働者・農民が権力を握ったあとも、帝国主義権力を打倒するよりも困難な闘いとして、この資本主義と小商品生産との闘い・社会主義を組織し共産主義をかちとる闘いが存在していることを明らかにした。資本主義批判の弱さは運動の到達目標である共産主義の基準をあいまいにし、そのことによって帝国主義打倒で終わってしまう危険性をはらむ。 第三に、キューバの他には現存の社会主義国に対する評価がなく、また同様に国際共産主義運動の敗北に対する評価がない。このことは、既存の社会主義の崩壊を経験した世界において、社会主義をめざす闘いにとってはありえないことである。もっとも他の文書においては言及があるが、その評価の基準は主に帝国主義批判のレベルであり「反帝国主義」か否か、「反米」か否かのレベルである。このことの根拠は資本主義批判の弱さにあると思われる。 以上の特徴を概観したうえで、以下PSLの綱領を紹介する。 ●(B)PSLの綱領 (邦訳) ■1)第1部 社会主義のための闘争 PSLは資本主義・帝国主義の中心である米国において、社会主義のための闘争を実行する組織である。また、資本主義の搾取・帝国主義の支配とたたかう世界中の兄弟姉妹に連帯する。社会を社会主義へと再組織していく必要は日々明白で緊急のものとなっている。人口の極小の部分が富んでいく一方で、米国の数千万の労働者、世界の数十億の労働者が貧しくなっている。多数の人々の生活を向上させることのできる科学技術の大きな進歩は、主に少数の人々を富ませているだけである。 社会の大きな富は、働く人々の労働と自然との産物である。しかし、この富は何の価値も生産しない、ますます少数の資本所有者の私有財産になっている。この双方の非和解的な闘争が世界の圧倒的大多数の人々の生活を規定している。 十九世紀中期にマルクスやエンゲルスが予見したように、資本主義の発展は世界をますます緊密に結びつけた。今日では、米国の労働者階級もその一部である膨大な国際労働者階級が成長しつつある。 労働者階級は生産手段との関係で、生産手段を所有している資本家階級との関係で規定される。労働者階級は私有財産を持たず、生産手段を所有する者が支払う賃金ないしサラリーを得るため働かねばならない。労働者階級には失業者すなわち労働予備軍も含まれる。この労働予備軍は現代資本主義社会の変わることのない特徴である。 労働者階級は一枚岩ではなく、明確な特徴で結ばれている。すなわち私有財産を所有していないこと、私有財産を所有する資本家ないし資本家の政府のために働かねばならないことである。資本家は銀行、企業、工場、倉庫、小売業、大メディアを所有している。資本家は実際には労働者や失業者の生活を支配しているといえる。しかし、生産手段、物流、通信を実際に稼動させるのは労働者階級である。かれらは生産を停止し資本主義経済全体を廃絶する力をもっている。人類の圧倒的大多数であり、大きな潜在的な力を持ち新たな社会をつくる能力をもっている。 ◆1 二十一世紀の帝国主義 米国のマルクス主義者としてわれわれの出発点は国際的規模での階級間の闘争である。国際情勢を出発点とすることによってのみ、世界的な労働者・被抑圧人民の必要にこたえるわれわれの戦略・戦術をたてることができる。世界最強の帝国主義国である米国にこそこのようなアプローチがもっとも必要である。米国や他の帝国主義国における二十一世紀の資本主義とは独占資本主義であり、それは巨大な銀行や金融資本の機関に支配されている。巨大な独占資本は大規模な経済力、販売力、資金力によって、独立していた中小資本の経営や農園を駆逐し、いわゆる「自由な市場」を大きく消滅させた。 同時に、冷酷な独占資本主義はその制度固有の矛盾を先鋭化した。壊滅的な危機、軍国主義、戦争にむかう動きが強まり、そのなかで独占が資本主義国家・政府と癒着した。大銀行・大企業がいまやすべての国、すべての大陸を支配し、世界経済を支配し、階級としての労働者階級を支配している。 ウォール街は世界金融資本主義の中心であり、他方ペンタゴンは多くの土地を占拠し、海外にも百ヵ国以上に軍事基地を持つ軍隊の司令部である。軍は米資本主義とその世界帝国の守護者であり実力執行部隊であり、その果す役割は米国内部における人種差別的・反労働者的な警察、刑務所と同様のものである。帝国主義が被抑圧国を占領して行なっていることは、米国内の抑圧されているコミュニティーで起きていることと同様のものである。近頃「ドラッグ撲滅戦争」の口実で黒人やラテン系若者のコミュニティーが封鎖され、その結果、米国政府は世界最大の刑務所を保持している。 前世紀において帝国主義は戦争をおこなうなかで、もっとも危険であり同時にもっとも弱い点のあることをさらけ出した。したがって先進資本主義国の社会主義者は、帝国主義戦争に反対し、自国の支配階級の標的にされている国の自己決定権を支持することを最重要の任務におかねばならない。この戦争反対は労働者階級と帝国主義の利害の非和解性――前者は戦争の犠牲になり命を失うのに反し、後者は利潤と支配欲で戦争を推進する――にもとずくものでる。 ◆2 危機のなかで、富者による独裁という現実が露呈する 現代の経済危機は、平時には隠されていて見えなかった現在のシステムの主要な問題をさらけ出す。たとえば、二〇〇七年以降の資本主義の危機とその結末は「自由な企業」という神話を消滅させ、米国のシステムこそ資本主義のかつてなく腐敗したものであることを明らかにした。もし連邦政府から補助金や融資や債務保証などの介入・支援がなかったなら、民間の金融・銀行部門は他の大企業も含めてすべて倒産していた。 銀行への財政支援があきらかにしたことは、政府が人民を統治し、銀行がその政府を統治するということである。大銀行はそれぞれ数百億ドルの融資を受けただけでなく、その使途を報告する義務も免除された。そのCEO(最高経営責任者)やトップは企業が損失を続けているにもかかわらず、政府の支援金を使って自分たちに巨額のボーナスを支給したのである。 また、この財政支援は、保健・教育・住宅・その他社会政策に支出する「財源がない」と長い間政府が言ってきた嘘を暴露した。この財政支援が人民の必要に向けられたならば、米国の全失業者が生活できる賃金で雇用されるであろう。その逆に、資本家政府は重要である食料、保健、教育、住宅などの支出を削減しているのである。 現代の経済システムは政府の介入などなくても成り立つという考えがまったくの誤りであることが明らかになった。問題は政府の介入の是非ではなく、どの階級の利益――社会の大多数の労働者階級か、ひと握りの大富豪か――のための介入か、である。 とりわけ、経済危機があきらかにしたものは、今日の米国では民主主義の看板のかげで資本家階級の独裁が行なわれている、ということである。この現実は社会主義革命なしには変わらない。抑圧者はその権力を自発的にさしだすことはないのである。 ◆3 今日の米国労働者階級 現代にいたる技術革命によって、米国の労働者階級の社会的構成は根本的に変化し、団結を広げ革命運動を作る可能性がうまれている。まずハイテク革命によって多くの職種が非熟練でも可能となり、容赦ない賃金引下げとなった。これによって従来は優遇されていた白人男性労働者の生活条件が劇的に変わった。同時に、さらに多くの失業者・半失業者の大群が、とりわけ黒人やラテン系住民のなかに不均衡に激しく発生した。いま全労働力の三分の一は非白人であり、半数は女性である。こうしてより多くの利潤を追求する資本主義の野望は、思いもかけずみずからの「墓掘人」を生み出している。米国のブルジョアジーはその成立以来、白人至上主義と人種差別の複雑なシステムを意図的に作り上げ、社会の被搾取・被抑圧人民が階級として団結し反抗しないようにしてきた。さらに、アメリカ先住民を虐殺し、アフリカ諸国人民を奴隷化し、それを人種差別のイデオロギーで正当化しながら、米国内の被抑圧民族の人々から超過利潤を引き出し、労働者階級が民族を越えて自己の利害のために行動することを妨げてきた。 しかし、今や公民権、女性や移民の権利、LGBT(訳者註:レスビアン、ゲイ、バイ・セクシャル、トランス・ジェンダーなどの性的少数者)の各運動の経験は統合されて米国労働者階級の経験となっている。人種差別、性差別、反LGBTなどの偏見は労働者をいまだ大きく分断し存続しているが、しかし、この分断を克服する物資的基盤も増大している。より重要なことは、いまや多民族からなる統一した労働運動指導部を作ることが客観的に可能となっていることである。実際、歴史的に最も抑圧されてきた人々が現に政治的指導権をもつことによって、今日の労働者階級は権力を獲得する闘いにおいて強い立場に立っている。 ◆4 革命の権利 現在の政府は大多数の人々の権利を破壊している。「人民の・人民による・人民のための」政府ではない。現在の政府・国家――すなわち軍隊、警察、情報機関、裁判所、刑務所、官僚組織等――は資本家階級の利益を守る。人種差別的、反労働者的な警察はしょっちゅう残忍な暴力を行使する。巨大な国家機構は他のどの国よりも多数の人々を投獄している。 現在の国家機構や政府機関は支配階級―資本家の利益を守るために作られている。広く宣伝されている「チエック・アンド・バランス」の仕組みも実際は富者を貧者から守る非民主的な手段に他ならない。大統領選から市議選まですべての選挙は「金権民主主義」の場となっている。買収は日常的に行なわれ、企業のロビイストたちは議員の票を日々買収している。「議論」は表の見世物でしかなく、すべての重要な決定は密室のなかで行なわれる。終身任命の判事からなる連邦裁判所制度は、立法を覆す大きな権力をもち、とくに私有財産の権利を守ることに全力を挙げている。 資本主義制度は、歴史上最も富んだ資本主義国においてさえ人々の要求に応えることができないことが証明された。毎年、数百万以上の人々が、フルタイムで働く多くの人々や就業の権利を拒否された多数の人々が、絶望的な貧困に追い込まれている。 単に資本主義制度を改良するのでは不十分である。その改良は資本家にとって現状を脅かすものでしかない。労働者にとっては改良の意味は異なる。公民権の拡大や他に有利な社会政策や経済政策によって資本主義のもとでの生活の負担を軽減することができる。改良は闘い取らねばならないし、闘い取ることができるにしても、いつも支配階級の攻撃にさらされている。資本主義自体は改良できない。資本主義の最高の法規と推進力とは最大限の利潤である。この犯罪的なシステムを廃止する唯一の力は組織された労働者の力である。資本主義は投票で追い出すことができない。革命が必要である。 資本家階級は大衆的な反抗のいかなる現れも弾圧し、方向を歪め、鎮圧することによって容赦なく改良を阻止しようとする。労働者・被抑圧人民にふりかかるすべての問題を引き起こすこのシステムを根絶しなければ、搾取と抑圧はなお継続する。資本主義国家の支配は続く。 資本主義はそのあくなき利潤追求によって、世界の環境破壊を前例のないほど推し進め、その破壊から起きる災害を過重に労働者や被抑圧人民に押し付ける、失敗した制度である。 いつの時代にもまして労働者階級が人類の未来を握っている。人類と地球のために資本主義は退場しなければならない。 PSLは米国で革命的な労働者党を建設するために全力で闘う。多民族からなる米国の労働者階級を団結させる党が社会主義のために本質的に必要で不可欠である。PSLは労働運動、戦争反対、人種差別反対、移民の権利、女性の運動、レズビアン、ゲイ、バイ・セクシャル、トランス・ジェンダーなどの権利、環境保護、学生、その他の運動に参加する。革命党は労働者階級に影響を与えるすべての問題に関わることによってのみ建設することができる。労働者階級にとって革命は必要であり権利である。社会主義革命なしに資本主義の残忍さはなくなることはない。革命だけが資本家の支配をきっぱりと無くすことができる。 ◆5 社会主義と共産主義 PSLの目的は腐敗した反人民的な資本主義経済・国家・政府システムを廃止し、全力で人民の必要に応えるシステム―社会主義システムに置き換えることである。現在のシステムがかかえるさまざまな危機を解決するには、資本家階級の支配を廃止し、これを労働者の利益のために動く新しい国家権力にとってかえねばならない。マルクスは「労働者階級は単に既成の国家権力を握りそれを自己の目的のために利用することはできない」とのべている。換言すると、資本家のために活動してきた政府は人民の利益のために奉仕させることができないのである、富者の独裁は廃絶され、労働者階級の権力にとって代わらねばならない。「労働者の、労働者による、労働者のための国家・政府」が資本家の国家に代わらねばならない。 いかなる国家であれその土台は、軍隊、警察、刑務所、裁判所などの抑圧強制力である。常設の軍隊、警察は解体され、労働者防衛協議会に組織された武装した人民に置き換えられねばならない。新たな社会主義秩序の最も重大な任務は、追放された資本家階級による搾取の時代を取り戻そうとする攻撃から自らを防衛することである。 労働者政府は、まったく異なった裁判制度を作る。その基本的な制度は労働者権力の民主的機関で決められる。裁判官は法律家である必要はない。 すべての公職者は例外なく選挙で選ばれ、その選出母体がいつでもリコールすることができる。選出された公職者のサラリーは労働者の平均賃金を上回らない。これは、政府・国家の業務を遂行するために雇用された者にも同様に適用される。公職にある者は私欲ではなく真に奉仕しようとする精神にもとづいて職務をはたす。企業のロビー活動は企業そのものとともに消滅させる。 労働者政府は社会主義建設にあたって、まず富を生み出す資産である銀行、工業、大農園、鉱山その他の資産を取り上げ、収奪し、生産にたいする資本家の大きな支配力を取りのぞく。これに際しては、世界の労働者階級、被抑圧人民を長期に大量に収奪してきた資本家、資本所有者への補償はしない。 社会のものである私有財産を社会が所有する資産に転換していくことが、社会の生産能力と地球の天然資源を人類の福祉のために利用する社会主義建設に必要な第一歩である。 資本主義生産の目標ができるだけ早くより多くの利潤を得ることであるのに対して、社会主義計画経済の目標は長期的に、持続可能な方法で、人々の必要に応えることである。労働者は社会の生産物をより多く入手できるようになるだろう。計画は社会主義の発展のために決定的に重要である。 資本主義のもとでは各企業は最大の利潤を得る目的のもとに、商品やサービスを生産し販売する量を計画する。しかし、そこには社会の有限な資源をどう配分し何を生産すべきで、何を削減し生産すべきでないか、という全体的な計画にもとづく決定はない。その結果、膨大な資源の浪費が行なわれ、他方では数十億人の必要が満たされない、ということがおきている。 社会主義は資本主義と共産主義のあいだの必要な段階である。社会主義が完遂されるためには、全体として、経済が労働者階級と人々の基本的な必要に応えるように発展しなければならない。また、階級と階級対立が徐々に消えていかねばならない。このことは一朝一夕にしておこらない。 社会主義者は「私有財産」という語を資本主義のシステムに関連するものとして使用する。すなわち私有する富を生産するための生産手段――工場、土地、石油、水などの天然資源、機械――の私的所有という意味としてである。社会主義のもとでは住宅は個人財産であり、投資用の商品とはみなされない。居住することは権利として保障され、誰も他人の住宅を所有することはできない。 皮肉にも、神聖なる私有財産の権利を守るといわれる資本主義のもとで、ホームレスが常態化し、数百万の人民が差し押さえによって住む家を奪われている。しかし、社会主義国のキューバでは、米国による経済封鎖にもかかわらず、住宅は人権とみなされておりホームレスは存在しない。これは地主制度を含む私有財産を廃止することによってのみ可能となったのである。 いまだどこにも達成されてはいないが、充分に発展した社会主義が共産主義への道を開き、階級社会を終わらせるだろう。共産主義はまた、階級社会のはじまりとともに成立した抑圧的な国家が「死滅する」ことを意味する。 社会主義は、自らに正当に属するものをかちとるために組織され闘う何百万という人民の大衆的な運動によってのみ達成することができる。次に来るべき革命―社会主義革命をかちとる運動を作るために、PSLは以下の闘う綱領を提起する。この綱領はまた真の労働者政府が執行する政策の概要を明らかにするものである。 ■2)第二部 労働者と貧困者の新たな政府 米国で圧倒的な多数をしめる労働者と貧困者の利益を守るために、労働者と貧困者がみずからのためにみずからの手で運営する新たな革命政府をうちたてねばならない。現在の資本家の政府――それは合法的・非合法的な何百ものやりかたで大企業システムの搾取を守る役割を果たし、超富豪の支配層だけがそれを動かすことができる――は廃絶されねばならない。 ○新政府の主要にやるべきことは、以下に示すように、労働者と貧しい人々の利益にもとづいて経済を計画化し管理することであり、これらの利益をみたす手段を講じることである。 ○新政府に代表を送り参加することは、民主的に組織された職場、近隣、社会委員会を通じて保障されねばならない。「職業的政治家」や大企業の政党は無くし、労働者階級の政治組織に取り替える。 ○政府の行政と立法の機能に差異をなくする。法律を作った者はそれを執行する責任をもつ。選出された代表者はすべてその選出母体からのリコールにいつでも従わねばならない。 ○労働者の新政府において選出された公務員は労働者の平均賃金を受け取るだけであり特典は受けてはならない。 ○米国内のさまざまな民族の人々の代表権を保障するために、重要な政府機関を設立する。何世紀にもわたる民族的な抑圧と体系的な排除を考慮し、すべての人の利益を守るために、新政府は米国内のすべての民族が平等な代表権をもつよう組織せねばならない。 ○現在の法制度、刑事裁判制度においては人種差別と階級特権が横行している。労働者階級の民主的な組織にもとづいて、また連帯と団結の精神で労働者の階級的利益を守る権利にもとづいて、これを新たな裁判制度におき換えねばならない。 ○言論の自由と政治参加の権利は労働者階級全体に拡大されねばならない。ただし、この権利は人種差別・外国人排斥・種々の偏見を除去する場合、また資本家の搾取・抑圧の再来を防ぐ場合に限って制限される。 ○国家と宗教の分離を完全に実施せねばならない。ある宗教が他に比して優遇されることはなく、信仰をしている者が無信仰者より優遇されることはない。 ○民族、性、性的志向もしくは性的自己主張にもとづいて人を差別する法律を作ることは禁止される。新政府は労働者階級の広い層にたいして何百年も休みなく続いてきた分断と不平等を救済することを何より優先して行なわねばならない。そのためアファーマティブ・アクション(積極的是正措置)や以下に記す方策を講じる。 ○高齢者、退職した労働者は権利として住宅、保健、食料や水などを憲法で保障され尊厳に満ちた充実した生活を送ることができる。新政府はこの人々が社会生活に最大限参加できるよう財源を振り向ける。新政府は高齢者に敬意を払うように、社会への貢献を評価するように、教育キャンペーンを開始せねばならない。 ○障害者は、政府が住宅、教育、雇用、公的施設におけるバリアをなくすための政策によって、充分な社会参加をおこなうことを保障される。新政府は障害者の社会への貢献をおしすすめ、敬意をはらう教育キャンペーンや障害者のための施策を開始しなければならない。 ○新政府は子供の社会的発展を重視する。新政府は青少年の知的・身体的・心理的・社会的発展のために財源をふりむける。 ○革命政府の防衛は武装した・組織された労働者階級を基盤として行なわねばならない。外国の軍事基地は即座に閉鎖する。 ○新政府は世界の人民と国際労働者階級連帯の原則をもって対応する。以前の帝国主義政府によってなされたすべての占領、軍事介入、代理戦争、軍事協定、軍事同盟はただちに終了させねばならない。 ○全国議会が、労働者、被抑圧人民の利益を守り至上目的とするような、少なくとも以下の課題にこたえる新憲法を作成する。 ◆1 社会主義:労働者と貧困な人々の利益に応えるもの 新政府は労働者や貧困な人々の利益に応えるよう指揮されねばならない。すなわちこれらの人々の権利を侵害する法律、規則、手段は禁止される。新政府は以下の施策を行なう。 ○私的利潤を得るための労働の搾取を禁止する。 ○米国のすべての人は、労働組合によって守られ、新政府によって充分な社会的福祉や手当――年金、健康保険、労災補償、一年以内の出産養育有給休暇、最低一ヵ月の有給休暇、少なくとも十二日間の祝日・有給病気休暇――を保障された仕事につく権利をもつ。 ○貧困は、仕事を見つけられない、または維持できない労働者に、生活できる賃金を保障することによって根絶せねばならない。資本主義の遺産を除去するために、資本主義のもとで不当に苦しめられたコミュニティーを優先的に扱わねばならない。 ○公民権は米国在住のすべての人に与えねばならない。過去の公民権の如何によって差別してはならない。 ○労働条件はすべての労働者の人間性と尊厳を高めるものでなくてはならない。週三十時間労働制とする。労働者の子供の保育は新政府が無料で保障する。労働者に労働時間の間に文化活動や運動の機会を与える。 ○新政府は米国在住のすべての人に、公民権の如何にかかわらず、無料で質の高い医療を保障せねばならない。利潤目的の医療や保険会社は禁止する。 ○新政府は米国のすべての人にきちんとした住宅を保障せねばならない。家賃には収入の10%以上を支払わなくてよいようにする。土地の売買や貸借で私的な利得をえることは違法とする。住宅差し押さえや追い出しは禁止する。 ○新政府はすべての米国の人々に就学前から大学まで無料で質の高い教育を保障し、また大学卒業後も生涯学習の機会を提供せねばならない。それによって社会の技術的・文化的水準を高め、労働者階級の団結と国際連帯を推進する。歴史的に、黒人、ラティーノ(ラテンアメリカ系)、アジア系、先住民の人たち、また労働者階級は教育の機会、質において差別をうけてきたので、最優先の課題として対応せねばならない。大学の知的生産物は社会の財産となり、それによる特許・商標登録・著作権は認められないし、社会的知識・社会的資料から私的利益を得ることも認められない。 ○新政府は農業において持続可能な方法をとる。すなわち、環境保護、水と土壌の保全を行い、充分な賃金・安全な労働条件・年間通じての雇用・住宅・健康・教育・社会サービス・レクリエーション政策によって農業労働者・農村コミュニティーの生活向上をはかり、「ゲスト・ワーカー」計画(訳者注:劣悪な賃金・労働条件・無権利で短期の非熟練の外国人労働者を導入する政策。これにより米国は主にメキシコなどから農業労働力をまかなっているといわれる)を廃止し、公民権の有無で労働者を差別するすべての法律を廃止し、家畜に人道的な扱いをする。 ○人々に食料と栄養を保障することは新政府の責任である。すべての学校と職場ではそこで学び働くものに良質の食事を提供せねばならない。食料や食料品の生産や分配で利益を得ることは違法となる。食料生産は民主的で合理的な計画で行い、すべての人がどの食料をどのように生産するのかに関与せねばならない。 ○新政府は良好な環境の状態が、経済と社会の将来の発展にとって、全労働者と被抑圧人民にとって重要であることを確認する。すべての経済計画、社会計画において環境面の考慮がなされ、環境悪化をくいとめ復旧する特別の努力をせねばならない ○刑務所は社会教育と更生の原則にもとづく施設とする。法を犯し有罪になった者は更生期間中も政治的権利を保障されねばならない。 ◆2 解放:人種差別、搾取、民族的抑圧、あらゆる偏見にうちかつ 新政府は人種差別、民族的抑圧、すべての搾取・偏見を根絶するという目標を成文化するようつとめねばならない。そのために新政府は以下の課題に取り組む。 ○新政府はすべての被抑圧国の自己決定を、その解放をかちとり維持する手段として、不可侵の権利と認める。ここには、米国においては、アフリカ系アメリカ人、先住アメリカ人、プエルトリコ人、ラティノ少数民族、ハワイ民族、アジア系、太平洋諸島の人民、アラブ人、その他抑圧を経験してきた人々の自己決定権が含まれ、全体としていえば資本主義のもとに暮らす人民すべてが含まれる。 ○多国籍にわたる米国の労働者階級を階級的連帯の土台のうえに団結させる目的にむけて、新政府はこの目的が自動的にまたは法令によって達成することはできないことを考慮しつつ、白人至上主義、人種差別、特権をただちに撤廃せねばならない。人種差別、外国人排斥、民族的憎悪を主張することはいかなる形であれ禁止される。 ○新政府は、何世紀も不払い奴隷労働をさせ超搾取を行なったアフリカ系アメリカ人のコミュニティーにたいする補償プログラムをはじめねばならない。 ○プエルトリコ、サモア、グァム、バージン諸島、マリアナ諸島を含む米国のすべての植民地は、独立を与えられねばならない。新政府は先住民とのすべての協定上の義務を尊重し、資本主義米国政府が奪った土地と資源の返還に応じねばならない。 ○新政府はプロレタリア国際主義にもとづき主権、連帯、革命的な支援、賠償を重要視して、米帝国主義によって人民・資源・経済を搾取され、荒廃させられた状況を克服しようとする他国を支援するプログラムをはじめねばならない。 ○米国のすべての労働者は自分の選択した言語で話す権利を持つ。すべての政府のサービスと教育は多言語で行なわねばならない。 ○性差別と男性優越主義、女性への抑圧は、この廃絶が自動的にないし法律によって達成されることはないことを考慮しつつ、ただちに廃絶せねばならない。いかなる形でも性差別と男性優越主義を主張することは禁止する。 ○新政府は女性労働者が男性労働者とおなじ賃金、手当、待遇をうける権利を保障せねばならない。 ○避妊、産児制限、中絶の権利にはいかなる制約もしてはならず、出産するか否かを決定する女性の権利も制約してはならない。中絶は要求に応じて無料で行なわれねばならない。 ○女性に無料で良質な出産前後の健康管理、子供の保育を保障することによって、出産するか否かを選択する権利を与えるのは新政府の責任である。介護を行なうものは無料の保育をうけることができる。 ○レズビアン、ゲイ、バイ・セクシャル、トランス・ジェンダーの人々に対する、もしくは性的志向、性的自己主張を行なう人々に対する憎悪を増大させたり、差別や偏見をもつ――結婚の権利、住宅、養子縁組、保健医療などにおいて――ことは消滅させねばならない。LGBTの人々にたいする偏見、差別、憎悪を主張することは禁止される。 ○いかなる法律も施策も、言葉上でも実践行動上でも、異性間関係をそれ以外の関係よりも優遇してはならない。 ○多国籍の労働者階級の団結と国際連帯を進めるために、女性の権利の前進のために、性的志向と性的自己主張への尊重を広めるために、人種差別・性差別・反LGBTの偏見・外国人排斥・民族排外主義の害悪を暴露するために、持続的に学校教育でキャンペーンを行なう。歴史的に存在した教育、雇用、昇進、住宅その他における差別の結果をなくすために必要ならどこでもアファーマティブ・アクション(差別是正政策)などの方策を始める。 ● 結 論 人類には今二つの選択しかない。ますます破壊的になっていく資本主義か、それとも社会主義か。PSLは資本主義の害悪を解決するのは社会を社会主義的に改造することだと信ずる。以上に概略を示した綱領は労働者と被抑圧人民が権力を握り組織したときのほんの初期に行なうことでしかない。米国の人民は、多国籍の労働者階級が自身の利益のために運営する新たな政府とシステムを命がけで必要としている。資本主義を打ち破り社会主義社会を創建するたたかいは、今日の人類が直面する最も緊急な課題である。 |
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