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  ■弾圧に抗し闘うフィリピン人民に連帯して闘おう




 ●@5月10日 フィリピンで総選挙

 五月十日に行われる総選挙と六月三十日のアロヨ大統領の任期切れまで、フィリピンでは予断を許さない政治情況が続く。五月十日の総選挙では、正・副大統領、上院議員(改選十二)、下院議員(地方区、全国区の政党リスト制)、州知事・副知事・州議、市長・副市長・市議、町長・副町長・町議など約一万八千近くの役職・議席の改選投票が行われる。既に選挙活動は、大統領選などは二月九日から、地方選挙は三月二十六日から開始されている。
 民族民主主義運動勢力においては、現職の下院議員サトール・オカンポ氏、リサ・マサ氏らが上院議員に立候補し、また政党リスト制を通じてバヤン・ムナなどが下院議員選挙活動を行っている。既に下院議員の議席を持ち、上院議員選挙に立候補者を立てる民族民主主義運動勢力の前進に対して、アロヨ政権は、選挙活動開始直前の二月六日に医療労働者四十三人を「新人民軍」だとして不当に拘束するなど、弾圧を強めている。
 アロヨ大統領は、選挙後も自己の権力維持を目指して策動しており、そのことが予断を許さない政治情勢を作り出している。


 ●A権力維持を狙うアロヨ

 アロヨ大統領は、今回の選挙では、現在長男が下院議員をしている地元の選挙区から、下院議員候補として立候補した。この異例とも言える下院議員選挙出馬は、大統領在職中の不正追及から逃れるための国会議員の不逮捕特権の確保や、憲法改正による首相就任と訴追免除特権付与を狙っているものと言われている。
 アロヨ大統領は、立候補を予定する地元選挙区に予算を付け、機会あるごとに現地入りし、昨年ルソン島を襲った台風災害では地元の被災住民に支援物資を配るパフォーマンスを行うなどをしてきた。その当選は確実視されている。
 そしてアロヨ大統領に選挙区を譲った下院議員の長男は、政党リスト制を通じて下院議員に立候補している。アロヨ大統領の一族は、夫の兄妹などを含めて少なくとも四人が選挙区や政党リスト制を通じて立候補している。さらに側近の官房長官ら前閣僚も六人以上立候補している。政党リスト制は、本来は社会的弱者の意見を反映させることを目的とした選挙制度であるとされている。大統領の長男は現職の下院議員であり、社会的弱者とはかけ離れているが、選挙制度を無視して、アロヨ大統領派の議席数の拡大を狙って立候補している。現在、下院はアロヨ大統領派が過半数を占め、毎年の弾劾裁判もこの数の力で退けてきた。そして今回の選挙でも、過半数を占めることを通じて、下院議長、さらに憲法改正を通じて首相の座を狙っているのだ。
 また別のシナリオでは、選挙の不成立を通じて、暫定軍事政権を樹立するということも浮上してきている。昨年のミンダナオでの大虐殺事件を契機とした一つの州での戒厳令は、フィリピン全土に対する戒厳令の予行演習との見方もある。
 今回の選挙で初めて電子投票システムが導入されるが、これまでのテストでは、投票用紙の読み取りトラブルや投票所からのデータ送信トラブルが続いている。さらにこの間フィリピンは、電力不足に見舞われているが、投票日に停電が起こる(意図的に起こされる)可能性もある。多くの地域で選挙が不成立となった場合、全国区で投票が行われる正副大統領や上院議員が選出されない可能性がでてくる。憲法では、正副大統領、上院議長が不在の場合、下院議長が大統領代行に就任すると規定されており、アロヨ氏が大統領代行に就任する可能性もある。
 アロヨ大統領は、選挙期間に入っても、軍や司法機関に腹心を起用する人事を行っている。アロヨ大統領は、この三月八日、国軍の参謀総長に、腹心で元大統領警護隊長を、国軍士官学校の卒業年次の序列を無視して抜てきし、新国軍参謀長は十日に就任した。大統領府副報道官は、三月十九日、「選挙が不成立の場合は暫定軍事政権も考えられる」とコメントし、不測の事態が現実味を帯びてきている。
 この五月中旬に最高裁長官が定年退官を迎える。次の最高裁長官の任命権がアロヨ大統領にあるのかどうか、最高裁で争われていた。最高裁は、三月十七日、任命権がアロヨ大統領にあるとの判決を行った。これによって、アロヨ大統領に有利な司法判断をする最高裁長官を任命できることになった。
 アロヨ大統領が軍や司法を使って大統領に居座る可能性も残っている。フィリピン人民は、こうしたアロヨ大統領の権力維持を阻止するために闘っている。


 ●B政治的殺害、人権弾圧を続けるアロヨ政権

 フィリピンの人権団体・カラパタンによれば、アロヨが大統領になった二〇〇一年から二〇〇九年の間に、政治的殺害の犠牲者は千百八十八人(二〇〇九年は百三十人、うち五十七人は十一月ミンダナオの州知事選挙をめぐるジャーナリスト三十人、弁護士二人を含む大量虐殺事件の犠牲者)。強制失踪の犠牲者は二百五人、不当拘束は千九百六十三人(うち二〇〇九年は、それぞれ四人と百十一人)にのぼっている。
 フィリピンの政治的殺害、人権侵害は国際社会でも問題になってきた。二〇〇七年二月には国連の超法規的殺害に関する特別報告者がフィリピンを訪問・調査し、超法規的処刑(殺害)の多くは、共産党反乱勢力の反乱鎮圧策の一環として、政府軍が計画的に対象を定めて実行した結果であると結論づけている。
 今年に入っても選挙開始直前の二月六日、マニラ首都圏から遠くないリサール州モロンで保健セミナーを受けていた医療従事者四十三名を、これらの人々が「新人民軍」であり、爆弾製造訓練を行って全国で襲撃計画を画策したとして不当に拘束している。これは明らかに民族民主主義勢力の議会への進出の拡大などに危機感を抱いている軍によるデッチあげに他ならない。
 バヤンなどが、この不当拘束を弾劾し、被拘束者の解放に向けて精力的な活動を行っている。世界教会協議会がアロヨ大統領書簡を出すなど、世界的にも関心が寄せられている。日本でも二月二十六日付で「フィリピンにおける人権侵害に関する日本NGOの共同声明」が出され、その中でこの問題について触れられている。この声明によれば、モロンの弾圧だけでなく、一月にはボボール州で女性団体が行った有権者啓蒙セミナーが、軍の監視を受け、反乱行為と称されていることになどが明らかにされている。
 このような闘うフィリピン人民の選挙活動に対する妨害、殺害や強制失踪等の弾圧が、ますます強まっていくことは間違いない。

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 フィリピンの闘う人民は、アロヨ政権の選挙活動妨害や弾圧をはねのけて、アロヨ政権打倒の闘いを強化している。アジア共同行動日本連絡会議では、「モロン43」の釈放を求める署名活動を始めている。こうした活動を支持し、フィリピンの闘う人民と連帯し闘っていこう。 (ミンダナオでの大量殺戮事件、モロンでの不当逮捕などについて、詳しくは『戦旗』第一三四六号)

 
 

 

 

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