共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

  
 
 
 ■『戦旗』第1641号(8月5日)6―7面

尹錫悦大統領就任一年

朝鮮、中国、ロシアと人民に宣戦布告

米帝従属、専制政治、民生破綻の検察国家(下)

高橋功作


●1 検察共和国の誕生

 検事出身の尹錫悦は、朴槿恵(パククネ)政権末期にその国政の壟断(ろうだん)=私物化を捜査する特別検察の現場責任者として国会により指名され、元大統領を弾劾に追い込んだ張本人だ。その実績を買われて文在寅(ムンジェイン)前政権時に検事総長に大抜擢されたが、民主党最左派で同政権の期待の星であり社会主義の信念を国会で否定しなかった曹国(チョグク)法務大臣とその家族への捜査を進めて起訴し辞任に追い込んだ。それを契機に政権内部で対立が激化した結果、検事総長を辞任。一転して野党の大統領候補に担ぎ出されて党内予備選挙で勝ち、野党候補として二二年三月の大統領選挙において0・7ポイントの僅差で民主党候補の李在明(イジェミョン)を破って二か月後に大統領に就任した。
 こうして誕生した現政権は、人事では李明博(イミョンバク)元政権の人脈(政治家・官僚)を軸として尹錫悦人脈(検察関係者)及び極右活動家を合流させた。ただし、主導権は政権成立以降に前者から後者へ移行した。また、統治の方法論は、国家権力内部とマスコミ内の反対派および進歩左派陣営の根絶に傾注した李明博政権のそれを継承する第二次李明博政権と規定できる。検事が行政権力を直接牛耳る、より強力な専制体制、検察共和国=検察国家の誕生だ。
 『ハンギョレ21』によれば、「二〇二二年五月一〇日から二〇二三年三月一六日まで、尹錫悦政権には、大統領を含めて二四人の検察出身人事が選出・任命され、このうち二二人が現職に残っている」。政府全体では一三六人の前・現職検察公務員が活動している。まず、二二人の長官(=大臣)級のうち、統一省・法務省・国土交通省・国家報勲処の四長官を占める。次に、次官(=副大臣)級は九人で、国務総理秘書室長・法務部次官・法制処長・金融監督院長・国家情報院企画調整室長・国民権益委員会副委員長・国家人権委員会常任委員、民主平和統一諮問会議事務局長、国民年金基金運用委員会常勤専門委員と、実に多岐に渡っている。
 次官級とはいえ、革命ロシアのネップ期におけるコミッサール=人民委員(上司)と経済専門家(部下)の関係のように、実質的には直接の上司である長官=大臣を逆に指導する立場と思われる。
 そして、大統領室(日本の内閣府に相当)秘書官級一九人のうち七人が検察出身だ。大統領の検察時代の後輩、いわば「尹錫悦組」が国家権力の中枢を掌握したわけだ。警察国家ならぬ検察国家という資本主義史上極めてまれな支配機構形態が出現したのだ。
 その内部で何が起きているか。尹錫悦は第五七回国務会議(日本の閣議に相当)で「国家財政は透明で原則をもって使われなければなりません。国民の血税を使うところに聖域はあり得ません」と発言した。その彼が検事時代に、他のほとんどの検事と同様に、領収書の要らない特殊活動費(=税金)を特殊活動にではなく同僚・後輩検事との飲み食いや盆正月前の餅代として一回数万~数一〇万円の額で湯水のように使いまくっていた疑惑が最近浮上した。腐敗した日本の政治家・官僚よろしく、今や検察という一国家機関の次元を超えた国家規模での税金のむさぼり食いが検察共和国内で進行中ではないかという、検察の提出した資料を基にした報道だ(ニュース打破)。


●2 軍事独裁政権水準へ向かう専制政治

 尹錫悦政権は、検事的善悪論の思考方法に基づいて敵の析出・排除と味方の代替を権力全般にわたり今も行っている。
 第一に、国家権力内部での主導権の確立だ。一つに、行政では、上記の通り人員配置を行いつつ、監査院を権力内検察に位置付けて、その監査活動を全面展開することで、前政権時に任命・指名された国家機関内の野党系人脈を辞任に追い込むなどして排斥し、与党系人士へ置き換えている。
 例えば、朝鮮からの漂流船問題を使っての前政権時の国防長官らの逮捕、主要地上波放送局のKBS・MBCの社長を任命する放送通信委員会の委員長に対する執拗な辞任圧力と結局の免職などがそれだ。また、法的に検察から警察に移った捜査権の主要領域を、法務大臣が立法作業抜きに検察に取り戻させた。国軍の人事も親政権派へ総入れ替えになった。
 二つに、立法では、前政権の政策を全面否定し、少数与党の国会で多数の野党が成立させた農民や看護師に関する法律に対してことごとく大統領拒否権を連発し粉砕している。さらに、「国民との疎通を図る」という公約を昨年途中に破棄し、中断した記者会見は今に至るまでほぼ開かれていない。また、与党内部で反対勢力とその「予備軍」を一人残らず排除し、代わりに極右活動家を大量に招き入れて与党内の基盤を固めた。そして、来年四月の総選挙をにらんでの、昨年の大統領選挙で争って一敗地にまみれ、第一野党の「共に民主党」現代表で、次期大統領選挙の最有力候補である李在明にたいする大庄洞(テジャンドン)開発特恵疑惑、朝鮮送金疑惑の捜査をはじめとした野党壊滅策動も進んでいる。
 三つに、司法では、上述の如く検察は最強の権力基盤となり、警察は反対派が完全に駆逐され、裁判所は強制動員裁判に象徴されるように政権に忖度する判事で溢れている。それ以外にも、大統領夫婦の人生の師であると言われる民間人チョンゴンなどが無資格のまま軍事施設に出入りした軍事規律違反疑惑、大統領の連れ合いの親族が土地売り飛ばしで儲かるように国策である高速道路建設計画を秘密裏かつ強引に変更した疑惑など、国政の壟断=私物化の蠢きが次々に湧き出る一年間だったが、検察・警察・右派マスコミは微動だにしなかった。
 第二に、野党のみならず進歩左派陣営に対する弾圧も、李明博・朴槿恵政権の手法を踏襲して苛烈を極めている。
 一つに、造船の下請け企業で働く非正規職労働者が、過去七年間で30%の賃金削減、劣悪な労働条件、雇用不安に抗議しその抜本的改善を求めて昨年六月から五一日間にわたって「大宇(デウ)造船海洋下請け労働者ストライキ」を行った。知らぬ存ぜぬの態度だった政府は発足間もないこともあってか世論に押されて結局介入し、元請けと下請けの二重構造を改めていくという協定を元請け・下請けと労働者が結んだ。しかし、いまだに何の手も打たず、事態は何一つ変わっていない。
 二つに、政府のこうした態度は昨秋の運輸連帯ストライキに対して一変する。「特殊雇用労働者」=請負労働者として労働法の対象から外れている運輸労働者の労組である運輸連帯は二〇年、最低賃金制度に該当し、違反企業の処罰を含む安全運賃制を三年間の期限付きながら勝ち取った。その期限である年末を前に、同制度の自動消滅を阻止し、その延長を求めるストライキに立ち上がった。これに対して尹錫悦政権は職務復帰命令を出し、従わない労働者の営業免許を取り消すと恫喝した。この弾圧でストは瓦解し、違反企業処罰のない(低賃金し放題の)従前の標準賃金制が復活し、ストつぶしを称賛する保守・極右層の結集で支持率は上がった。「左派を攻撃すると支持率上昇」――これが政府にとって大きな教訓になった。
 三つに、民主労総傘下の全国建設労働組合への「建設労組暴力」というレッテルを貼った弾圧だ。日雇い労働が主な建設労働者に対する組織化がこの一〇年余りで急速に進んできた。労使の力関係が全体的に転換して労組の声が現場に大きく反映するようになり、建設労働の条件が大幅に改善した。それは会社にとっては人件費や経費の上昇すなわち利益の減少を意味する。それを嫌う建設大手資本の反労組の意向を政府が代弁し、会社への労働者の要求を「恫喝」といいなし、現場の要求を掲げて貫徹する労組を「建設労組暴力」と決めつけた。威力業務妨害・暴行からスパイ事件捏造に至るまで、あらゆる手段を駆使して労組つぶしに躍起になっているのだ。関西生コン労組弾圧と同じ本質だ。その中で今年のメーデーの朝、建設労組幹部ヤンフェドンさんが政府の弾圧に焼身抗議して死亡した。これに対する怒りの声と立ち上がりが全国で沸き上がった。
 他にも、民主労総および傘下労組・分会・労組員と市民団体へのスパイでっち上げの国家保安法弾圧。同法に基づく国家情報院による史上初の民主労総本部家宅捜索強行。建物に立て籠もった韓国労総傘下の全国金属労働組合連盟の労働者に対して警察突入部隊が取り囲んでの鉄パイプ滅多打ちと病院送り。街頭集会の相次ぐ不許可と夜間集会への襲撃と解散強行。労組会計簿の政府への提出命令と従わない場合の国家補助金不支出。加えて、頓挫したままであるとはいえ週五八時間から週六九時間(一日一一・五時間×六労働日)への労働時間延長策動。
 韓国労働者がこれまで勝ち取ってきた権利を根こそぎ奪い取り、政府と資本へあらがうことを一切認めないという立場から、尹錫悦が年頭にぶち上げた三大改革の一つ「労働改革」が賃金奴隷化策としてごり押しされている。


●3 破綻する民衆の生活

 コロナ事態の中で流行した言葉に「カクチャトセン(各自図生)」がある。人は各々自ら生きることを図るとの意だが、国や地方自治体、他人を当てにするなという含みがある。つまり、死ぬも生きるも自己責任、というわけだ。
 尹錫悦政権は岸田政権よろしく政治的には反共産主義と差別排外主義をむき出しにした極右路線で、経済的には新自由主義を支持して資本家階級の利益を露骨に代弁するブルジョア政治委員会だが、各自図生を絵に描いたような現政府の政策の下で労働者民衆の生活は破綻の淵に追いやられた。
 昨夏の豪雨では映画『パラサイト』(原題『寄生虫』)そのままにソウルの半地下に住む住民が死亡したが、根本的な対策は棚上げされたままだ。昨年一〇月のハロウィンで起きた梨泰院(イテウォン)惨事では、一五九人が圧死とその後の自殺で死亡したが、区長・区職員と現場の警察官・消防官が罰せられただけで、上層部の人間はだれ一人責任を取らなかった。
 物価高と高利子でひとり親世帯・貧困層・老人・障害者・移住労働者など被抑圧人民と零細企業と自営業者がより困窮化している。若者の自殺率は高止まり、二〇代三〇代の死亡原因の一位は病気ではなく自殺だ。将来に希望が見えない中で借金をして不動産や仮想通貨に投資した果てに、価格暴落で破滅する若い世代の事例が大量に発生している。また、老人貧困率はOECDで一位だ。
 物価高と実質賃金の低下で労働者民衆の生活水準は急降下した。
 まず物価だ。昨年二月以降5%前後の上昇が一年以上続いた。現在は3%台に落ちたが、燃料や原材料の価格が落ち着いた一方で食品や人件費の上昇が続いて、労働者・自営業者・貧困層を直撃している(グラフ参照。出所:NEWSPIN)。
 次に実質賃金だ。四半期別の棒グラフ(出所:京郷新聞)を見ると、朴槿恵政権時(左の白い部分)および文在寅政権時(同中央の灰色の部分)を通じ、コロナウイルス感染拡大直後の二〇二〇年第1四半期を除いてコロナ事態下も含めてざっくり2%前後上がり続けた。しかし尹錫悦政権の一年間はマイナスの連続だ。「二〇二二年第2四半期は2・9%、第4四半期は1・3%、今年第1四半期は0・8%と連続下落の流れだ」(京郷新聞)。
 その他、五人未満の事業所には労働法がいまだに適用されず、バイク便労働者など特殊雇用労働者は増加の一途で、青年労働者の就業率は低下している。一方で、年金があっても食えない高齢労働者の就業率は上昇している。
 最後に、民生を完全に破綻に導きかねない経済危機が起こる確率の高まりを数字で見よう。
 韓国は、GDPのうちの輸出の比率である輸出依存度が35・6%(二一年度)の貿易立国だ(日本は15・0%(同))。その貿易収支が悪化の一途をたどっている。産業通商資源省によれば、今年五月時点で輸出額が昨年同月比15・2%減で八カ月連続のマイナス、貿易収支も一五カ月連続の赤字を記録した。特に中国向けの輸出が前年に比べ20・8%減少した。中国の競争力上昇だけでなく、韓中関係の悪化も要因だとする指摘が少なくない。これを主因として経済成長率も、二二年1四半期3・1%(前年同期比)だったが、同第2四半期2・9%、第3四半期3・2%、第4四半期1・4%、二三年第1四半期0・9%と下落傾向だ。
 企業活動も総じて停滞している。何よりも、米中対立の狭間で韓国の主力産業である半導体企業が極度の不振だ。それに加え、利子を払えない限界企業(「ゾンビ企業」)が上場企業に占める割合が二〇一九年9・20%→二〇二二年17・50%と増え、二〇二三年は20%に達するという資料を全国経済人連合会が発表した。高金利・高物価・高為替レートに景気沈滞長期が加わって金融リスクが高まっている、という分析だ。さらに、韓国銀行報告書によると、非上場企業を含めた全企業のうち限界企業の比率は35・1%だ。「企業の収益性および利子支払い能力は弱まり、企業貸出延滞率は上昇している」。(ちなみに日本は、「帝国データバンクの調査によると、実質的に経営破綻しているのに金融支援で生き延びた会社を指す「ゾンビ企業」は二〇二一年度、推計約一八万八〇〇〇社と、全企業の12・9%を占める」(東京新聞今年三月一〇日付)。
  韓国では土地・マンションなど不動産が主な投機対象だ。譲渡税を含む不動産税金のGDP比率は6・274%で、OECD加盟国中一位だ(OECD平均1・986%、日本2・647%)。昨年までは住宅価格が急騰して活況を呈していた不動産市場には、若者を中心に借金をして投資する人が急増した。ところが現在、借家で月極家賃無しで高額敷金のみの前貰(チョンセ)の価格と住宅価格とが暴落し、不動産売買取引件数が激減し賃貸も沈滞してため、借金を返せない投資者が続出している。不動産関連指標はもちろん、それのみならず全て経済指標が去年後半から今年にかけてリーマンショック前夜と酷似していると指摘するハンムンドをはじめとして、多くの専門家が今秋に不動産のバブルがはじけて調整局面=危機に陥る可能性に言及している。
 金融資本の営業環境も急速に悪化している。全国に支店のある『セマウル(新しい村)金庫』で取り付け騒ぎが今年七月初めに起こった。二〇二三年第1四半期の融資の延滞率が5・34%に達したために、不安になった預金者が全国各地の支店で長い列を作った。また、貯蓄銀行中央会の同月四日の発表によれば、今年第2四半期の貯蓄銀行七九行は全体で五二三億ウォンの純損失で、二〇一四年第2四半期以降九年ぶりに赤字に転換した。ちなみに前年同期は四五六一億ウォンの純利益だった。
 数年来の問題である家計信用=家計負債もより深刻化している。国際金融協会の調査によるとGDP(一兆六七三三億ドル(二〇二二年))に占める今年第1四半期の家計負債比率は韓国が102・2%で調査対象国二七か国の中で一位だった。さらに、韓国経済研究院の調査によれば、前述の前貰を含めると二一年の同比率は156・8%に跳ね上がる(日本は67・8%)。
 資産の投げ売りが始まるミンスキー・モーメントの到来が避けられないと主張するチェベグンによると、一九九一年=一〇〇とした場合、二〇二二年の家計処分可能所得は七二四だが、同年の家計信用は二一九三だ。つまり、払える額の三倍の借金を世帯単位で抱えているわけであり(米国での両者の比率はほぼ一対一)、また、過去三〇年間余りに富める者がさらに富んだということでもある。
 総じて、世界経済の不安定性と、米帝の半導体法をはじめとした経済安保政策により、韓国の最先端半導体技術が中国市場と分断されることを主因とする貿易の不振を背景に、金融・不動産・家計負債の危機が深まっている。いずれかを着火点に相互引火して現出し、九〇年代末の金融危機、〇八年のリーマンショック以来の、しかもそれを上回る経済危機に陥る確率がかつてなく高まっている。


●4 内外の政権評価

 これまで見てきた尹錫悦政権の一年はどう評価されているか。
 第一に、韓国政府は自画自賛一色だ。大統領室は「尹錫悦大統領就任一周年記念ホームページ」でまず、「特に外交分野では『行動する米韓同盟の具現』『未来志向的日韓関係』『首脳セールス外交で韓国企業を総力支援』が主なアジェンダに選ばれた」と胸を張った。
 続いて「尹大統領が『大韓民国のトップ営業社員』として推進した『朽ち果てた原発関連分野の復元』『アラブ首長国連邦の歴史上最大規模である約三〇〇億ドルの投資誘致』『半導体・バッテリーなど六大国家先端戦略産業の育成』『防衛産業、歴代最大の輸出額一七三億ドル達成』」を挙げた。軍事外交と経済の分野で大成果を挙げた一年、という総括だ。
 第二に、マスコミの評価は二分した。政権寄りの全国紙「チョジュンドン」(「朝中東」すなわち朝鮮日報・中央日報・東亜日報)はなべて肯定的に評価しているものの、苦言も呈した。曰く、「外交は成功、内政は不足な尹一年、巨大野党のせいにだけしている場合ではない」(朝鮮)。「尹錫悦政府一年……国民と疎通してこそ国政運営の力を得られる」(中央)。「尹就任一年……国政・人事を刷新して三大改革のエンジンをしっかりかけろ」(東亜)。保守マスコミですら内政は褒めることができないわけだ。
 他方、政権に批判的な二紙はどうか。「尹錫悦政府の一方的独走の一年、国政基調を全面転換すべき」(京郷(キョンヒャン)新聞)。「尹錫悦一年、これが『公正』と『常識』か」(ハンギョレ新聞)。内容は辛辣で手厳しく、ほぼ全面否定だ。
 第三に、世論は厳しい評価だった。世論調査会社ギャロップの調査によると、昨年の大統領就任直後こそ職務遂行肯定率(支持率)が職務遂行否定率(不支持率)を上回っていたが、わずか一カ月余りで逆転し、それが現在まで続いている(グラフ参照)。今年の数字を見ると、支持率は27~37%、不支持率は55~65%であり、一対二の割合で推移している。ちなみに政党支持率は与党「国民の力」と第一野党「共に民主党」が各々30%台で、この一年間、拮抗状態だ。つまり、現政権は、韓国マスコミ用語でいう「保守」(与党)および極右の支持層の支持は固めたが延伸性に欠け、「進歩」(野党)のみならず「中間層」まで丸ごと不支持に回る構図が固着化しているといえる。


●5 反政府闘争に踏み出した労働者民衆

 第四に、運動圏はどうか。今年六月下旬に労働者・農民・都市貧民・女性・学生・宗教者など進歩左派陣営の諸組織をNL(民族解放重視)からPD(労働者解放重視)までほぼ網羅して尹錫烈(ユンソギョル)政権退陣運動本部(準)が発足したが、その規定は「検察独裁政権・反労働反民衆政権・反民主主義反平和政権」だ。
 民主党内の李在明支持派はこれより早く昨年八月からろうそく集会を毎週土曜に開き、各地で数万から数十万人の人々が反政府集会に結集した。そのスローガンは政権の「弾劾」から「審判」、そして昨年末には「退陣」に至った。
 だが進歩左派陣営を牽引する民主労総の指導部(NL、進歩党系)は、朴槿恵を打倒したろうそく革命の成果を民主党がすべて簒奪したことへの根本的批判に加え、対政府戦術問題や民主労総役員選挙(今年一二月)戦略など様々な事情もあり、このブルジョア左派主導の取り組みには合流しなかった。かつ、その政府批判の水準も昨年までは「弾劾」、今年に入って以降も「審判」にとどまり、全運動圏の統一戦線も形成しなかった。
 しかし、尹錫悦政権の抗議であると同時に在野全体への叱咤という意味を持ったヤンフェドン烈士の命を賭した闘いが、労働運動指導部をして進歩左派陣営総結集の政権退陣闘争への転換を決断させ、同本部(準)の結成に至ったのだ。
 同日発表された尹錫悦政権退陣七・一五汎国民大会宣布記者会見文(詳細は翻訳資料参照)は、以下の諸点で政権批判を展開している。すなわち、金持ち優遇、民生破綻、労組への嫌悪と弾圧、農業・農民抹殺政策、露天抹殺政策、中小零細・自営業者の生活苦、不動産詐欺による若者の自殺増加、梨泰院惨事、朝鮮半島の戦争危機、ウクライナ支援、台湾問題介入、日帝植民地支配の歴史歪曲、核汚染水投棄の黙認、集会・結社の自由の侵害、公安統治、マスコミ掌握、障害者・女性・性的少数者への抑圧。そして最後に、「労働者・農民・貧民・自営業者・庶民は、尹錫悦政権退陣にすべてを賭けて闘いに起ち上がります」と結んでいる。


●6 最後に

 今、韓国のブルジョアジーからプロレタリアートまで全ての政治運動は来年四月の総選挙を見据えて計画され実践されている。尹錫悦政府も例外ではない。
 検察独裁政権は、日米欧帝国主義を「永遠の味方」と頼みつつ朝鮮・中国・ロシアと国内の政府批判勢力を敵=殲滅対象とみなして宣戦布告をし、その発言は日に日に激しくなっている。来春までに、李在明をはじめ野党議員の逮捕と同党分裂策動、政権退陣運動を行う民主労総・進歩左派政党・市民団体に対する李明博・朴槿恵元政権時を超える軍事独裁政権水準の弾圧と非合法化、さらには総選挙から二七年三月の大統領選までの間に文在寅前大統領と同選挙野党候補への捜査と逮捕、そして政権崩壊の危機発生時の戒厳体制施行、さらに米帝が軍事挑発を繰り返す東海(日本海)で南北の軍事衝突が勃発する蓋然性が大きくなっている。
 私たち日本の労働者階級人民にとって日韓労働者民衆連帯運動の課題は何か。それは、南北在外の朝鮮人民そしてアジア―全世界人民と連帯し、次の闘いを進めることだ。①帝国主義が主導し韓国政府が関与する朝鮮半島・台湾・ウクライナでの戦争と日米韓の軍事演習など戦争策動に反対し、これを直ちに止めること。②日本政府の侵略戦争と植民地支配の歴史の歪曲と戦争責任・戦後責任の否定を許さずに改めさせ、政府・右翼一体となった民族排外主義煽動を粉砕し、人類に対する重大犯罪である核汚染水海洋投棄を中止させること。③デンソーグループの100%子会社である韓国ワイパー労組の闘いなど日系企業による不当解雇・偽装清算などの悪行に抗拒して敢然と起ち上がる韓国労働者の争議に連帯して勝利を共につかんでいくことだ。
 人を人とも思わぬ資本主義・帝国主義は滅ぶべきだ。否、私たちが闘って滅ぼさなければならない。
 そして、全ての人が抑圧と差別のくびきを打ち砕いて自らの解放を争取するのだ。
 革命的祖国敗北主義とプロレタリア国際主義の旗の下、ともに闘おう。

 


Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.