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   上関原発新設を阻止しよう

   伊方三号機を廃炉へ追い込もう

                   
九州・山口地方委員会



 史上最悪の原発事故から九年が経過した。安倍は、今年のオリンピック・バラリンピックを「復興オリンピック」と銘打って、福島原発事故の隠蔽に最大限利用しようとしている。「地元住民に寄り添う」といつもの口先だけの言葉を誰も信じていない。

 ●1章 原子力政策の全面的破綻

 政府は、第五次エネルギー基本計画(二〇一八年七月三日)において「我が国は、まずは二〇三〇年のエネルギーミックスの確実な実現を図る」としてあくまで原発維持(電力全体の20~22%)しようと再稼働を強行し続けている。しかし、政府の原発政策は、完全に破綻している。
 八五年の着工以来、一兆円を超す税金を投じながら、二〇一六年一二月に廃炉が正式に決定した高速増殖炉「もんじゅ」。廃炉決定をうけてフランスのASTRID(アストリッド)計画に相乗りしてノウハウを蓄積し、将来的な高速炉建設につなげたいとしてきた。
 しかし、フランス原子力庁は昨年八月三〇日に声明を発表。アストリッドについては「第四世代の原子炉の産業的発展は少なくとも今世紀後半」として建設計画の放棄をあきらかにした。
 すでにフランスのこうした状況をみこして二〇一八年末に決定された高速炉開発にかんする「戦略ロードマップ」においてはASTRIDの文言はなんの説明、総括もなく削られていた。代わりに①当面五年間程度は多様な技術間競争を促進、②採用する可能性のある技術の絞り込み、③現実的なスケールの高速炉の運転開始に向けた工程の検討、というまったく現実性も意味も無い無内容な文言があらたな開発方針として示されているのである。
 一昨年末の原発輸出の完全破綻。最終処分場建設はまったく展望もなく、増え続ける使用済み核燃料の保管場所さえ確保できなくなりつつある現在、形だけでも維持したかった核燃サイクルも完全破綻へと追い込まれ、政府の原発政策は完全に息の根を止められたのである。
 東電は、昨年四月からはじまった「特定技能」の外国人労働者を福島の廃炉作業に受け入れることを表明した。その後、五月には厚生労働省の通達を受けて「当面は受け入れを行わない」ことを明らかにしたが、慢性的な人手不足が続く中で敷地内の焼却炉工事や除染作業に技能実習生が従事させられていた事実をみるならば、今後外国人労働者の使い捨てが行われない保証はまったくない。全原発の廃絶は原発労働者との連帯抜きにはありえない。外国人労働者への被曝労働、使い捨てを許さない闘いも強化しなければならない。

 ●2章 「地球温暖化に原発は切り札」ではない

 昨年一二月に開催された第二五回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)に際して欧州原子力学会が開いたイベントで「原子力は歴史的にも二酸化炭素削減に貢献し、世界中でCO2と戦っている。称賛されてしかるべきだ」との発言もなされた。
 これに先立つ一〇月にも国際原子力機関(IAEA)も初めて「気候変動と原子力の役割」と題した国際会議を開き「世界的に原発の著しい利用増が無ければ、有害な排出の削減と、気候変動との戦いという目標の達成は困難になる」と業界、学会、国際機関による原発推進にむけた反転攻勢の動きが強まっている。
 日本でも福島事故以降、進まない再稼働、過半数を超える再稼働反対の世論、次々と明らかになった政府の原発政策の破綻に危機感を深める電力業界、経産省など原子力ムラに群がる連中は、地球温暖化に対して原子力こそがその切り札とでもいわんばかりの発言を強めてきている。これまでも原発による発電コストが一番安いとか原発が稼働しなければ停電が起こるなど数々の詭弁、デマがなされてきた。今度は地球温暖化対策とエネルギー確保のためには原発が有効だというのだ。
 原発が温暖化に対して有効であるどころか、発生した熱の65%以上が温排水として海に捨てられ海水温度の上昇をもたらしている。また電力需要の変化に合わせて出力を変えられないため、出力調整用の発電所が必要となり、火力、水力などの発電所が余分につくられてしまうのだ。
 昨年まとめられた世界原子力産業現状報告によると、過去一〇年で太陽光と風力のコストは88%、69%それぞれ下がったのに対し、安全対策の強化を求められた原発は23%上がっている。そして、昨今の省エネ技術の進歩により電力需要は減少する方向に向かっている。
 パリ協定では、地球の気温上昇を、産業革命前と比較して二度未満より「かなり低く」抑え、一・五度未満に抑えるよう「さらに努力をする」としている。昨年度の国内の温室効果ガスの総排出量は一二億四千万トン余で前年度より3・6%減、五年連続で減っている。
 電気事業連合会は「電力供給での原発の比率が増え、火力の比率が減ったことなどが理由」と主張する。いかにも原発再稼働のおかげだというのだ。しかし、二〇一七年度実績で原発の発電量は3・1%に過ぎない。八割以上が火力発電であり、再生エネルギーは、16%に止まっている。
 日本は毎年約一六兆円にのぼる化石燃料を輸入している。太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスという自然エネルギー資源に恵まれた国であるが、政府はこうした再生エネルギーへの取り組みをおざなりにして原発をなんとしても維持しようというのだ。
 すでに再生エネルギーで総発電量の50%を供給できる見通しも明らかになっている。火力発電を減らし、低消費型社会の建設とあわせて地球温暖化にむけた取り組みを原発廃止にむけた闘いと一体的に進めなくてはならない。

 ●3章 伊方原発三号機 運転中止へ

 伊方三号機は昨年一二月に定期検査に入ったが、一月には制御棒が誤って約七時間引き抜かれた状態になったり、電源の一時喪失、使用済み核燃料プール内で燃料の落下を示す信号が発信されるなど、定検中のトラブルが相次ぎ、定検を中断し、再開を見通せない状況になっている。
 今回の定検では、国内で初めて使用済みのMOX燃料の搬出がおこなわれた。MOX燃料を使うプルサーマル発電は全国の三原発四基(玄海三号機、高浜三、四号機)で行われているが、核燃料サイクルの破綻した今、行き先のないまま敷地内のプールで当面保管されることになる(高浜三号機でも一月二七日から搬出が行われた)。使用済みMOX燃料は、使用済みウラン燃料より発熱量が多く、保管管理上の危険性はプルサーマル発電がはじまったころから度々指摘され、その運転中止がもとめられてきた。一方、国はエネルギー基本計画で「引き続き研究開発に取り組み、検討を進める」と記すにとどまり具体的な方針を示せていない。当面、各原発敷地内で保管するというのだ。
 こうした中、一月一七日、広島高裁は山口県の住民が求めた運転差し止めの仮処分決定を下した。伊方三号機をめぐっては、先に二〇一七年一二月に広島、松山の住民からの運転差止仮処分命令申立却下決定に対する即時抗告事件において広島高裁が運転停止を命じている。その命令では主に阿蘇山の「火山事象の影響による危険性について、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理である」との理由からその決定がおこなわれていた。
 今回の決定では、活断層と火山の二つのリスクから運転停止の判断が行われた。今回の即時抗告審で弁護団が重視したのが「中央構造線」の活断層があるかどうかであった。高裁決定では、この中央構造線自体が活断層である可能性が否定できず、四国電力の申請を認めた規制委の判断に「過誤ないし欠落があった」とした。さらに、阿蘇山の破局的噴火に至らない程度の噴火の場合でも四国電力が想定する憤出物量を超え、その想定が過小であり、それを前提とした規制委の判断も不合理とした。
 一方で弁護団は、破局的噴火の発生頻度は極めて低く運転差し止めを命じる程のリスクはないとする社会通念論をもとに差し止めを求めていない。さらに、原告が求めていた「避難計画について、決定では何も述べておらず、実効性のない避難計画を追認した山口地裁岩国支部による判断を是正していない点で問題である」との声明を出している。今回の決定は、今後火山から概ね一六〇キロメートルにある九州電力の川内、玄海の両原発の規制委の判断の可否にも影響を与えると考えられる。
 この決定に対して四国電力は、当日すぐさま不服申し立てをおこなうとしていたが、先に述べたトラブル続きの中で二七日、四国電力社長・長井は「今は異議申し立てができる状況ではない」と述べ、早期の不服申し立てができない事態に追い込まれている。一、二号機はすでに廃炉が決まっており、この三号機を再稼働阻止、廃炉へと追い込もう。

 ●4章 上関原発新設を阻止しよう

 山口県は、昨年七月中国電力に対して上関原発建設予定地の埋め立て免許を三年六カ月延長することを許可した。そして、一〇月には建設に伴い申請された海上ボーリング調査も許可した。県条例に基づく「一般海域の占用許可」で対象は約六千平方メートル。期間三カ月間。これを受けて一一月には中国電力は、建設予定地の海でのボーリング調査を前に現場で掘削地点を確定させる準備作業に入った。
 これに対して現場海域では連日反対派漁民が船を出して実力抗議行動を展開。中電は調査の中止へと追い込まれ、期限の一月末までの完了を断念した。ただ、来年度以降の再開を表明している。祝島漁民への連帯強化がもとめられている。
 国が昨年七月に閣議決定したエネルギー計画の中で新増設は明記れていないが、中国電力は「再稼働が一定程度出てくれば、新増設についてもいずれ触れられるだろう」と言及。さらに、二〇五〇年までに温室効果ガス排出量を80%削減する政府目標を挙げ「集中した非化石電源が必要。今の電源構成を考えると新たな原子力が必要になる」と述べ、上関原発建設をあくまでも推し進めようとしている。
 しかし、省エネの広がりや人口減で、中国電力管内のピーク時の電力需要は東日本大震災前から約一割減少している。さらに、二八年度の発電設備の余裕の見込みは、目安とされる8%の約二倍あるとされ、中国電力が原発の優先事項としている島根二、三号機を強行稼働すればさらにふくらむことになり、上関原発建設には過剰感がつきまとう。また、福島の事故以降、原発建設費は高騰しており、経常利益が数百億円の中国電力にとって「新しい原発への投資は非現実的。電力自由化の中で投資回収も見通せない」(金融機関幹部)ともいわれている。
 上関原発建設計画をめぐっては「反対」が36・5%と最多。「どちらかといえば反対」の15・0%と合わせると計51・5%に上り、「賛成」と「どちらかといえば賛成」の計23・0%を大きく上回っている(昨年七月の参院選山口選挙区での中国新聞による出口調査)。上関原発計画が浮上して約四〇年。今も祝島の島民を先頭に建設を実力で阻止し続けている。そして、あくまでも「白紙撤回」まで闘い抜く決意をあきらかにしている。祝島島民に連帯して上関原発建設阻止闘争に勝利しよう。

 ●5章 川内原発、玄海原発停止へ

 九州電力管内の川内原発と玄海原発は、対テロ施設「特定重大事故等対処施設」の建設遅れから二〇年、二二年に相次いで停止することが明らかになってきた。川内原発では一号機が三月から。二号機は五月から。ともに約八カ月間停止する。同様に玄海原発も三、四号機が二二年八、九月からの停止が見込まれている。
 こうした規制基準すら遵守できない中で玄海原発では重大事故時に敷地内の現地対策本部となる「緊急時対策所」が「代替」のまま六年以上が過ぎている。九電は再稼働に際して三階建ての「免震重要棟」を建設するとしていた。しかし、再稼働を急ぐ九電は、耐震構造の緊急時対策棟の整備計画を一六年五月に発表し「耐震なら免震に比べ少なくとも二年程度早い運用開始が可能となる」と主張。こうした措置を規制委員会が認め、この約二年後の一八年に三、四号機の再稼働にこぎつけた。そして本格的な免震施設ができるまでという扱いだった「代替」が残ったまま、現在に至っている。
 しかし、あろうことか九電は昨年一一月に県庁を訪れ二三年まで延長することを通告。「代替」施設を一〇年にわたって使い続けようというのだ。「代替」施設による再稼働を認可した規制委員会の責任は極めて大きい。いかに規制基準がいい加減なものであり、規制委員会が原発推進委員会であるか明らかだ。事故がいつ起きるかもしれないなかで即刻稼働を中止させなければならない。
 また、今年にはいり玄海原発が立地する佐賀県玄海町の脇山町長が、福井県敦賀市の建設会社「塩浜工業」から、二〇一八年七月の町長選初当選直後に現金を受け取っていたことが明らかとなった。塩浜工業は、福井県若狭地方で土木や建設を手がけている「地場ゼネコン」で高浜原発や美浜原発で関連工事を受注し、ほかにも福島第一、島根、川内の各原発などの工事を請け負っていた。
 今、関西電力と森山元助役の間の金品授受問題が大きな問題となっているが、この森山元助役と「塩浜工業」との関係も二〇年以上におよんでいることも明らかとなっており、原発立地が電力会社と行政の不正な癒着の温床となっていることがここでも明らかとなったのである。脇山町長の即時辞任と玄海原発の即時停止を追求していかなければならない。
 福島の住民に連帯し、再稼働阻止! 老朽原発を動かすな! 新規・増設阻止をかちとろう。
 すべての原発の即時停止・廃炉をかちとろう。原発被曝労働者に連帯し闘おう。



 

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