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   イージス・アショア配備撤回に勝利!

       この地平を各地反基地闘争に広げよう

   
             山口地区委員会



 ●1章 配備撤回までの動き民意を翻弄する河野防衛相

 河野太郎防衛大臣は、六月一五日にイージス・アショア配備計画の「プロセス(手続き)の停止」を表明した。次いで、配備候補地である山口県(一九日)秋田県(二一日)を訪れ、お詫びと説明の行脚を行い、陳謝した。
 山口県庁には、村岡県知事、阿武町、萩市の首長、議長に説明とお詫びを行い、実質的な断念を表明せざるを得なかった。けれども、白紙撤回は述べないというものであった。そして、阿武・萩の住民や山口県民に対しては、直接にも間接にも謝罪を行っていない。
 一二日には、安倍晋三首相、ついで、自民党二階幹事長には報告を終えていた。自民党国防部会・安保調査会、NSC(国家安全保障会議)、及び、配備を閣議決定した内閣への報告をもって、正式に配備撤回を行うというものであった。
 防衛省は、どこまでも政府・自民党には向き合うが、最後の最後まで住民、県民に向き合うものではなかったということだ。
 ようするに、東アジアの政治・軍事情勢の変化に対応して、「ブースターの落下位置は制御できない」「費用対効果」を名目に、より効率的で、攻撃的な軍備・軍事態勢への転換を図りたいということで、一旦配備撤回を行ったということである。
 配備断念の唯一の理由とした「ブースターの落下に関して「ソフト・ハード両面において制御できない」と認めた。そもそも、防衛省は米軍と調整し、また、その運用実績に基づく知見から、「山口駐屯地むつみ演習場内に確実に落とせる」と強弁していた。六巡に渡る住民説明会や三回の演習場内での現地調査の現場、そして、地元議会(全員協議会)で激しい批判にさらされていた。また、秋田では、ブースター問題が特に問題になったわけではない。また、「メインビームが人体に影響を与えることはない。」「地下水脈に影響はあたえない。」「西台の高さ」の嘘と調査の杜撰さなどを詫びたものでもない。
 ところが、今年二月~四月、防衛技官が米国現地での「米軍との調整と知見を得て、制御困難と判明した」という。ついに、阿武・萩の町民、市民、県民による闘いによって、政府・防衛省みずからが、虚偽答弁をしていたことを自己暴露するまでに追い込んだのである。
 秋田県民、山口県民の二年半の地上での生活・産業活動、そして平和的生存権を求めた闘いこそ、弾道弾ミサイル防衛態勢の三つの柱の一つとしてきた陸上イージス・システムの両演習場への前のめりの配備強行を阻止した主要な要因であり、敬意を表したい。日米の安保政策にストップを掛けた影響は多大だ。すぐさま、沖縄の辺野古新基地建設を同様にストップしないのは、沖縄差別だとの声が、沖縄をはじめ、各地で反基地を闘う仲間から上がっている。
 なおかつ、「安保体制への屈服・戦争動員を拒否することが出来るのだ」という高揚感の中で、六月一九日、河野防衛大臣によるお詫びと説明の行脚に併せて、山口県内各地から集まった人々は、次の闘いの方向をも示した。
 沖縄・辺野古への新基地建設はもっと時間と費用が掛かるのだ。奄美島、宮古島、石垣島の対艦対空ミサイル基地建設はもっと危険だ! ミサイルは東アジアの平和にいらない! 緊急行動に集まった約四〇名の仲間は、河野大臣来庁から退出まで訴え続けた。

 ●2章 秋田、山口県民の闘いの勝利、イージス撤回の経験を全国へ

 防衛省は、配備問題で、むつみ演習場を「最適地候補地」「調査・検証の結果、候補地として妥当である」として、住民の平和的生存権や町作りの取り組みを翻弄し続けた。
 山口県政・萩市政は国の出先機関かと、言わざるを得ない状況であった。村岡県政は、阿武町長の反対の意志に対して、「現時点の思いを述べられたもの」として侮辱と言える言動に終始した。過疎対策として自衛隊の力を活用出来るとまでいうのだ。藤道萩市政もまた、有識者専門会議を発足させ、「おむねね妥当」の見え透いた結論へと市民を誘導しようとしていた。
 こうした山口県政、萩市政の体たらくを見越し、中国・四国防衛局は、旧むつみ村地区では、二度の非公開の説明会を開催し、住民間の分断や不信感を煽ってきた。加えて、旧むつみ村区では、誘致派を広げるために、誘致派の畑に鳥獣の侵入実態を把握するためとして、電気柵設置を補助事業として強行していたのである。配備反対を掲げる阿武町民の会の会員を個別に切り崩すことも行っていた。住民への分断攻撃や配備強行の経過・意図、その嘘と隠蔽の全体を検証しなければならない。
 阿武・萩の住民は、「不安でいっぱいであったが、撤回できてうれしい。」「もし、配備されれば、野菜生産をやめようと考えていたが、とてもうれしい。」と、全国放送でも放映されている。阿武町民は、ぶれない町長を支え、阿武町の未来を決する闘いとして配備反対を貫いた。いま、反対闘争を担った町民の中から、防衛省と阿武町、萩市との「演習場の目的変更には、事前協議が必要である。」とした覚書協定書をないがしろにした防衛省への批判と実効性ある協定書の再策定を求める声も上がっていると聞く。
 阿武町の農業法人による農業生産・加工や町つくり、町政による移住・定住を促進できる魅力ある町つくりを、町の命運をかけた取り組みとして継続している。阿武・萩の町民・市民、そして山口県民は、「自衛隊軍事力の飛躍的強化」を一旦撤回させた。
 この攻防を通じて、国家が、戦争動員のために、地方自治体と民意を再編することが出来なかったのだという視点がとても大切である。
 「我々の言ってきたことに間違いはなかった」「防衛省は見てきたようなウソを言い」と、阿武町民の会は、阿武町長とともに闘った方向性に自信を深めている。今、特産の大玉の福賀スイカを集荷し、都市部の消費者に送り届けることが出来るようになったと喜びあっている。これが私たちの国防であるとも。政府防衛省は、国防のためのミサイル基地が必要だという国防論や、自衛隊が町づくりに加勢したいと繰り返し述べてきたが、その国防論の杜撰さを批判したということだ。そして、地元の闘いに共感し、支えてきた阿武・萩の住民・市民と地域の平和団体や、「阿武・萩だけの問題でない」として、防衛省、山口県に「全県各地で説明会を開け」と粘り強く県民に発信し続けた闘いの勝利でもある。
 八月四日、自民党の「抑止力向上に関する提言」は、敵基地(先制)攻撃能力の確保に向けた「あらたな取り組み」を、政府・防衛省へ求めている。併せて、地方自治体を動員して、シェルター(地下避難施設)等の確保、国民保護法制の発動にまで及んでいる。戦争態勢構築とは、軍備増強とセットに地域の市民や行政の、それへの屈服と動員を同時に引き起すのである。だから、山口―全国の人々に、この経験を伝え、地域から反撃を呼びかけるのでなければならない。

 ●3章 言いたい放題の防衛論、血税使いたい放題を許すな

 政府・防衛省は何ら反省も検証も行っていないし、出来ない。逆に、戦争動員のために、〝民意〟を再び、〝敵基地先制攻撃力の確保〟をとおした国防態勢へと再編・解体しようとしている。
 安倍政権・防衛省は、軍産癒着のトランプ政権によるバイアメリカンに引きずられ、ロキードマーチン(LM)社のイージス・アショアを対外有償軍事援助(FMS)による特注で購入する愚を強行した。すでに、FMSを中心とした後年度支払いの借金は、五兆円を超えていた。
 総額六五八四億円といわれているイージス・アショアの見積もりは、これだけではない。敷地造成工事、宿舎建設、さらには、レーダーの試作実験、ミサイル試射実験、その連携のための総合試験の費用を加えれば一兆円をも超えるものと予想される。それは、「契約価格及び履行期限はあくまでも見積もりであり米国はこれに拘束されないと」する政府間取引によってである。
 しかも、レーダーの選定にあたり、すでに米海軍が導入を決定し、生産されているSPY―6型レーダー(レイセオン社)でなく、実績のない営業パンフレットに依拠したLMSSR(正式認証されればSPY―7型レーダー)の購入を急いだ。SPY―7投入予定はアラスカの米軍基地など少ない。それさえも配備は不確実である。中国への軍事包囲の主力米海軍の前方展開にあって、それとの自衛隊の軍事情報の相互互換性がないのである。当初からわかっていたことであるが、今になってLMSSRの不備を認めたのである。そもそも、イージス・アショアでは、弾道ミサイルの迎撃は不能である。
 米軍再編(日米軍再編)は、日米軍の軍事一体化を進めために、調整メカニズム(戦争共同指揮所)の実際の稼働を二〇一五年新ガイドライン締結内容の中心とした。しかし、LMSSRレーダーでは、軍事において最も大切と言われる指揮管制能力・指揮管制情報が共有できず、軍事一体化が担保出来ないと判明したのである。
 安倍政権と忖度する防衛官僚、言いたい放題の自民党国防部会・安保調査会。そして、いま、防衛産業、政府自民党、防衛省、国防族と言われる輩が、マスコミに、お互いに責任をおしつけ合っている。

 ●4章 東アジアの軍拡競争阻止、安保闘争を全人民の闘争へ

 いま、米中の政治・経済対立、そして、軍事対立が深刻な事態へと進展している。日帝・安倍政権は米海軍空母打撃軍の防衛を主任務とした海自イージス艦隊の任務に、二〇一七年朝鮮戦争危機時に、弾道弾ミサイル防衛の任務をも急遽付与した。そして、陸上イージスシステムを含む弾道弾ミサイルによる〝防衛と攻撃〟の態勢の急速な構築を優先した。東アジアの平和、そこに住む人々の生活、生産、社会活動など一顧だにしたことはない。米軍や軍需会社もまた同様である。米帝トランプ政権・国防総省は、インド太平洋軍事戦略の強化をもって、その主敵とする中国の軍事包囲を日米同盟の任務としている。中国は、これに抗して海軍力の大強化を図り、「第一列島線、第二列島線の死守と膨張」という軍事死守線ライン確保のために、米帝国主義・海軍による「航行の自由作戦」との全面的対立へと向かおうとしている。
 二〇一五年新ガイドラインと国内法整備のための安保法制の強行は、日米両軍の役割の再編を含むものである。つまり、政府・防衛省は、第一列島線の攻防において、鉾を自衛隊が担い、米軍が盾になる戦争シナリオを構想し、その実体化を急ピッチで進めている。
 「国防族」議員の中からは、敵基地どころか、戦争策源地を先制攻撃する態勢つくりを叫び、基地を含む都市機能全体の破壊を伴う国防(論)態勢つくりにすぐさま転換という主張が出てくる有り様である。
 しかし、それは、勇ましい言葉と裏腹に、中国と米国の東アジア地域での双方の軍事攻勢を前に、恐怖し、無制限に軍備増強を図り、戦争当事国と立ち振る舞うことである。端的な発言が、香田洋二元自衛艦隊長の「トラの尾を踏む敵基地攻撃(論)は、なんらの抑止にならない。逆に壊滅的反撃を受けるだけだ。敵の攻撃力をゼロにする軍事態勢つくりへの覚悟はあるのか」と言いたい放題である。
 いずれにせよ、民衆の命や生活を一顧だにせず、「国家・国民の平和を守る」という自公政権全体の「軍事による平和論」を徹底的に批判し、政府打倒の声を発信しよう。東アジアにおける軍拡競争に抗する取り組み、つまり、戦略的な総括・視点は、東アジアの民衆同士の相互交流であり、軍事で平和を求めない行動である。これを基礎とした国際反帝共同行動こそ、根本的な変化を生み出す。
 山口地区委員会は、地域の反戦勢力と共に創り出された、「配備撤回」の地平を堅持し、さらに、地域ぐるみ、全国ぐるみのより強力な安保闘争を呼びかける。
 米海軍と海兵隊の統合された米軍基地の大強化と福田岩国市政による「基地との共存」を拒否する岩国市民の闘い、山陽小野田市埴生地区における宇宙警戒レーダー設置強行に抗議する闘いを支持し、東アジアの核軍拡競争阻止の闘いに奮闘する。



 

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