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   許すな低額回答!負けるな!20春闘!

                      吉田和夫





  ●① 低額に終始した三月一一日一斉回答

 三月一一日、二〇春闘要求に対する大手の一斉回答が行なわれた。マスコミ各紙の春闘記事でも「昨年実績を下回る回答」、「鉄鋼ベアゼロ中堅、中小製造業なども厳しい賃上げ回答相次ぐ〈産経〉」などの見出しが躍った。
 自動車ではトヨタがベースアップを見送り、全組合員平均で八六〇〇円の賃金の改善。マツダはべアをゼロとし人材育成の原資として組合員一人あたり月一五〇〇円の拠出。日産はベア、定期昇給を含む賃金改善を昨年実績から二〇〇〇円下回る七〇〇〇円の回答。ホンダはベアと会社評価による加算分の総額で一五〇〇円の回答。
 電機大手ではパナソニック、三菱電機、富士通、NECがベアは前年同水準の一〇〇〇円、日立は一五〇〇円(前年一〇〇〇円)、東芝は一三〇〇円(前年一〇〇〇円)と、増額となった。
 鉄鋼大手三社では日本製鉄、神戸製鋼、JFEスチールの各労組は二〇年度三〇〇〇円、二一年度三〇〇〇円、計六〇〇〇円のベアを要求したが、会社側回答は、米中摩擦による世界的な鉄鋼需要の減少などを理由としゼロ回答となった。
 今春闘ではベアゼロや、電機連合などの一律回答が崩れる事態となっている。他方、人手不足が深刻な流通ではパートなどの非正規労働者が正規労働者の引き上げ率を上回っている。だが大手の低額回答の中で、今後、交渉が本格化する民間中小関係は厳しい状況が予測される。現に連合の第一次集計(三月一四日発表)では、平均1・91%で、七年ぶりの2%割れとなっている。

  ●② 20春闘勝利にむけた三つの闘い

 労働者にとって、20春闘は厳しい闘いとなっている。以下の闘いを通じて、反転攻勢を実現していく必要がある。
 第一の闘いは、経団連をはじめとする企業を超えた横並び春闘批判、ベースアップなどの一律の賃金引き上げ批判を許さず、大幅賃上げを実現することである。
 日本経団連などは、大企業や有力労組が業種、企業を超えて産別的に団結し、全国一斉に賃金引き上げを要求することで賃金水準を引き上げ、それを民間中小企業へ波及させ、社会的に賃金水準を引き上げるという春闘に対し、「労使自治」と各企業の「支払い能力」を主張しながら反対してきた。
 企業内における賃金引上げも、年齢・勤続給を前提とするベースアップではなく、職能給・仕事給、役割給、業績・成果給への配分を主張してきた。それらは生産性の向上、競争力の維持など、もっともらしい理屈がつけられているが、全てが総額人件費の抑制、企業の利潤の確保、資本による個別労働者の直接的支配のために主張されているにすぎない。
 そのような中で春闘相場を良くも悪くも牽引してきたトヨタの豊田彰男社長は、「ベアに応えることがみんなの幸せにつながるとは思えなかった」「すでにトップクラスにあるトヨタの賃金を上げ続けることは競争力を失うことにつながる」「一律はフェアでない」などと許しがたい発言をおこなっている。自らの経営責任には一切言及せず、労働者の賃金引き上げが競争力をそぐと主張しているのだ。
 だがトヨタの現預金は一九年三月期で四兆七千億円強であり過去最高、第3四半期の営業利益は二兆五八七億円で、三月末の通期予想の80%をすでに稼いでいる。トヨタはその「看板方式」に典型的な手法、つまり下請け業者をはじめとする膨大な関連業者に対し、彼らの労働者を過労死寸前の低賃金、長時間労働でこき使う以外にはないほどの低単価で発注し、莫大な利益を蓄積してきた。その豊田彰男社長の「ベア引き上げがみんなの幸せにつながるとは思えなかった」という傲慢な発言を許してはならない。
 このトヨタの対応は20春闘において、「史上最高益をあげているトヨタですらベアゼロだ、とても我が社での賃上げは無理だ」という形で使用者に最大限利用され、低額回答を促進することになる。
 経営責任を明らかにせず全てを労働者の責任にする豊田章男社長のような使用者の開き直りを許さず、大幅賃上げ、労働条件改善にむけて闘いぬかなければならない。
 第二の闘いは、GDP(国内総生産)の低迷を口実にした低額回答を許さず、史上最高を更新しつづける内部留保から支払わせなければならない。
 GDPは一九年一〇月から一二月の第5四半期ぶりのGDPマイナス1・85減となった。年換算ではマイナス7・1%減となる。これにコロナウイルスの感染拡大防止と称して行われた安倍首相の独断での休校要請などによって、日経平均株価は一三日には一七四三一円となり今年の最高値の二四〇八三円から六六五二円も下落した。今後も、店舗などの短縮営業、各種イベントの中止、外国人旅行者の減少、感染者の発生による操業停止、各種のイベントの中止などによって更なる景気後退は不可避であり、株安がとまる見通しはない。日本経済は危機的状況となっている。
 世界的にもコロナウィルスの影響で世界同時株安の様相となっている。世界の株式時価総額は「週間(三月九日から一三日)で、約一〇兆ドル(一〇八〇兆円)が減少(『日経』三月一五日)」した。この世界的な株安は、ヨーロッパにおけるパンデミックの拡大の中で、日本の株安を促進し景気の後退を促進する圧力になっていく。日本経団連をはじめとする資本家達は、この経済状況を理由として賃金引き上げは不可能という対応に終始することは間違いない。
 しかし大企業には四四九兆円(資本金一〇億円以上、金融保険を含む)といわれる内部留保がある。全企業の内部留保は七七一兆円である。今こそこの内部留保から支払わせなければならない。この内部留保はこれまでの低賃金の強要によって、労働者から掠め取ったものであり、今こそ取り戻さなければならない。安倍政権は世界的な景気の後退の中で異次元の経済対策をおこなうと表明しているが、最大の経済対策は大幅な賃金の引き上げだ。
 第三の闘いは、コロナウィルス対策を口実にした20春闘圧殺を許さず、コロナ対策を20春闘要求に組み込んで闘いぬくことである。
 コロナウィルスの感染拡大対策で、休校,休業、営業短縮などにより自粛ムードが社会的に広がり、労働者、民衆のあらゆる行動について「自粛」を考慮することが強要されている。「自粛」に対し少しでも批判的な言動をおこなうならば、社会的な攻撃の対象となっている。このような「同調」圧力の中で、反戦平和、反基地、反原発、その他の様々な闘いが、集会や行動の中止に追い込まれている。20春闘も例外ではない。
 われわれはこれに屈せず、「正規・非正規、フリーランスを問わず全ての労働者に休業中の賃金を100%保障せよ」「コロナウィルス拡大を口実にした解雇、賃下げなどは認めない」「コロナウィルス対策について労働組合と充分に協議せよ」などを、20春闘の追加要求として闘う必要がある。
 20春闘は「不要不急」の行動ではなく、労働者が人らしく生きていく上で必要不可欠の闘いである。非正規労働者などは職場で感染者などがでて休業になれば、二週間分の時給がなくなる。その後には五月の連休も待ち受けている。春闘集会や行動などは可能な限りの防衛策を講じ、実行にむけて努力しなければならない。それでも実行が不可能な場合は、変わる手段を講じなければならない。あらゆる創意工夫をこらし、可能な闘いの形を創出していかなければならない。
 横並び春闘批判、景気の低迷、コロナウィルスなど20春闘をとりまく情勢は厳しい。
 労働者、労働組合、とりわけ民間中小で闘う仲間達は、上記の闘いを推進し、その闘いの前進を梃子に、「戦争をする国造り」と闘い、「八時間働けば生活できる社会、労働者が安全、安心に働ける社会」の実現にむけて奮闘しよう。




 

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