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   安倍政権の被災者切り捨て許すな

    全原発の廃炉をかちとろう
               


 

 3・11東日本大震災と福島第一原発で起きたレベル7の史上最悪の原発事故から八年が経過した。
 「福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生なし。復興が成し遂げられるその日まで、国が前面に立って、全力を尽くして取り組んでまいります」(第一九八回国会施政方針)。
 この安倍晋三の言葉が白々しく、いかに偽善に満ちたものであるかを福島の今が示している。

 ●1章 原発事故八年目の福島の現実

 今年二月に行われた福島県民世論調査(二三―二四日 朝日新聞と福島放送)では、原発再稼働について賛成13%、反対68%。原発事故の教訓が、国の原子力政策に生かされているかとの問いには、65%が「生かされていない」と答え、「生かされている」は16%にとどまっている。同じく二月の全国世論調査でも再稼働に賛成32%、反対56%であった。これは事故原因の究明もこれまで原発政策を推進してきた歴代自民党政権の責任について一切不問に付したまま再稼働を続ける政府に対する福島県民の不信、不満のあらわれである。
 現在も五万人を超える方々が避難生活を余儀なくされ、福島県の震災関連死は二二五〇人(全国では一都九県で三七〇一人。一八年九月)を超えるという痛ましい状況となっている。避難開始から四年を超えて自殺者が急増し、昨年九月に公表された最新の福島県民調査報告書によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は計二〇一人にもなっている。避難指示が解除された九市町村への住民の帰還率は平均15%にとどまっている。また、一昨年三月には「自主避難者」約三万二千人に対する住宅無償援助が打ち切られた。追い詰められた避難者の中から自殺者やホームレス化する人も出ている。
 この四月には全町避難が続く福島県大熊町で、避難指示の一部が解除されようとしている。町除染検証委員会は「線量は十分に低減している」としているが、町内には廃炉作業が続く第一原発のほか、除染で出た汚染土を保管する中間貯蔵施設がある。町などが昨年実施した住民意向調査(速報版)では「戻りたい」が約一割、「戻らない」が約六割という結果になっている。線量の「リバウンド」や山林などでは今も線量が極めて高いところが多いのが現実だ。
 しかし、政府は、あくまでも早期の強引な帰還を推し進め、あたかも復興が進んでいるかのように装うために被災住民に新たな被曝を強制しようとしているのだ。
 安倍が二〇一三年IOC総会で「アンダーコントロール」とで誇らしげに語ったが、その現実はどうか。今、汚染水は一一二万トンに達し、貯蔵タンクは九〇〇基を超え、日々増え続けている。凍土壁の効果は限定的で貯蔵タンクは二〇二〇年ごろに満杯になると政府はみている。
 東電は昨年九月汚染水の八割以上が基準値を超えていたことを初めて公にした。当初、東電は「ALPSで浄化処理すればトリチウム以外の放射性物質を除去できる」としていた。しかし、実際はヨウ素やストロンチウムも基準を超えていた。処理費用と処理期間が短い海洋放出を目論む東電は、ひた隠しに隠していたのだ。基準値超えは公聴会において報道や住民側の指摘で明かされたものだ。東電の隠蔽体質はまったく変わらないどころか、ますます悪質化している。
 漁業関係者がこれまで原発事故と汚染の被害によって、いかに苦しみ、漁業再開にむけて耐えて忍んできたか。被災住民、漁民の怒りは限界に達している。「東京五輪までに福島復興を世界に見せたい」とする政府、経産省と共謀して東電は、展望の見えない汚染水処理を最も安価な海洋放出で済まそうとしていたのだ。絶対に許すことはできない。

 ●2章 全面破綻する原子力政策

 今年、二月玄海原発二号機の廃炉が決まり、これで廃炉となる原発は二一基となった。一方でこれまでに再稼働が強行された原発は九基。設置変更許可が出されているのが六基。ただしここには関西電力美浜三号機、高浜一、二号機、東海第二の四基の四〇年超え老朽原発がある。
 そして、現在審査中原発は一二基あるが敷地内に活断層あるいは活断層の活動性を否定できない原発が六基あり、これら原発も廃炉になる可能性が高いのである。
 さらに中部電力浜岡原発は南海トラフ巨大地震の想定震源域にあり、これまでも日本で最も危険な原発といわれてきた。地震調査研究推進本部(文科省に設置された政府の特別機関)でも将来の地震発生の可能性について、M8~9、三〇年以内に70~80%と予想している。ただちに廃炉されるべきものなのだ。
 政府の意に沿って原子力規制委員会は、比較的再稼働が容易と目される原発から審査、許可を与え、老朽化原発も申請期限切れしないように意図的に審査をおこなってきた。このように震災以降、全国の再稼働反対の声を踏みにじって再稼働が続いてきたが、残っている原発も再稼働には極めて厳しいものとなっている。そして、原発反対の全国的な粘り強い闘いは政府の原子力政策そのものを全面的な破綻へと追い詰めてきているのだ。
 今年一月、日立製鉄所が手がけた英での原発新設計画の中断が明らかとなるや、新聞各紙に「原発輸出総破綻」の文字が躍った。政府、経団連などが成長戦略の柱のひとつとしてきた原発輸出は米、ベトナム、リトアニア、トルコなどで次々と失敗し、最も実現可能性が高いとみられていた英国での日立の撤退で完全に破綻したのだ。
 再稼働とともに安倍政権が固持し続ける核燃料サイクルもまた実質的に破綻している。政府は年間八トンのプルトニウムを取り出せる六ヶ所村再処理工場を二一年に稼働させるとしているが、これまでに二四回以上完成が延期され、費用も当初予算の四倍近い二兆九千億円かかっている。すでに核兵器の材料ともなるプルトニウムが国内外に四七トンも溜まっているにもかかわらず、あくまでも核燃料サイクルにこだわる日本に対して米をはじめとして海外から懸念の声が上がっている。
 そして、核燃サイクルに欠かせない高速増殖炉計画も完全に行き詰まった。一六年に廃炉の決まった高速増殖原型炉「もんじゅ」の後継炉開発で頼みの綱であった仏の「アスリッド」計画も仏政府が計画縮小を決定し、高速炉の実用化目標をなんと「今世紀後半」に先送りせざるを得なくなった。何の根拠もなく「今世紀後半」というのはすでに目標でもなく、計画ですらない。高速増殖炉は、米でもすでに七〇年代に技術的に困難として撤退しており、独、英もすでに断念している。まさに「夢の原子炉」なのだ。
 こうした中で政府は、プルトニウムをウランに混ぜたMOX燃料を普通の原発(ウラン燃料を前提した)で燃やす「プルサーマル発電」を進めようとしている。すでに稼働済み原発で四基、今後稼働を予定している原発九基で、プルサーマル発電をしようというのだ。しかし、プルサーマル発電の危険性は、様々指摘されているところである。稼働させる原発をプルサーマル化すれば、すべての原発で今まで以上に重大事故が発生する確率が格段に高くなるのだ。
 一七年、経産省は「核のゴミ」最終処分場の候補地となり得る地域を示した「科学的特性マップ」を公表した。日本の基礎自治体約一七五〇のうち、約九〇〇が安全に処分できる可能性が高い地域にあたるという。経産省がマップをもとに各都道府県で順番に開いてきた住民説明会が昨年八月で一巡したが、参加者から「説明をしたというアリバイ作りはしてほしくない」と見透かされ、当然にも名乗りを上げる自治体は一つもないのである。
 原発を稼働させ続けるかぎり出る使用済み核燃料。日本にはすでに一万八千トン以上におよぶ使用済み核燃料がたまり、各原発ではあと数年でプールが満杯状態を迎えようとしている。貯蔵プールが満杯になれば原発の運転はできなくなる。そのために電力各社は使用済み核燃料の保管プールに入れる容量を増やすリラッキング工事や新たに保管する乾式貯蔵施設の建設といった方法でその場を凌ごうとしている。
 しかしリラッキングでは使用済み核燃料を当初の設計よりも「過密」に貯蔵することになり発熱量が高くなるため、事故時に燃料露出や溶融の時間が早まり、再臨界のリスクも高まるという指摘がなされている。
 福島第一原発事故において水素爆発によって四号機のプールの支えが破壊され崩壊寸前になり、当時の原子力委員会委員長から菅首相に「首都圏壊滅」のシナリオまでが示されていたのが、この使用済み核燃料の貯蔵プールの問題であったことは決して忘れることはできない。
 以上述べてきたように、日本の原発政策は完全に破綻している。にもかかわらず再稼働を続けるということは新たな原発事故の危険性を内包しながら福島以上に過酷事故の可能性を高めているのである。
 安倍政権がエネルギー基本計画でかかげる三〇年度までに「総発電量に占める原発の割合20~22%」というのは、こうした危険な老朽化原発を動かし、プルサーマル発電で重大事故の発生を覚悟の上で原発再稼働を強行しても達成は「絵空事」なのである。一旦、事故が起これば避難計画などまったく役に立たないことは、避難訓練に参加したことのある人なら身をもって実感していることなのだ。稼働原発は直ちに停止し、すべての原発を廃炉にしなければならない。

 ●3章 被災住民に連帯し、全原発の廃炉をかちとろう

 原発再稼働を強行しながら政府・東電は避難住民の本格的な切り捨てに出てきている。
 事故の損害賠償を巡り昨年四月、全町避難となった福島県浪江町の町民約一万六千人が原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)に申し立てた和解案に対して、東電はこれを拒否した。そのために和解手続きが打ち切られ、住民の一部が福島地裁に提訴に踏み切るといった事態が生まれている。
 こうした集団での申し立てに対して東電は、昨年から和解を拒否するという態度を本格化させている。経営再建の足かせとなる集団的和解案を拒否するという姿勢を明らかにしたのだ。本来であれば被災者(被害者)が和解案を受け入れるか否かを判断する立場であるにもかかわらず、東電が和解手続きを左右するという許せない対応に出てきているのだ。こうした集団的訴訟は、全国で約三〇件におよんでいる。政府・東電はことあるごとに「被災者に寄り添う」と言ってきた。しかし、それが口先だけのものであることが早くも明らかとなった。これは被災者に対する世間の関心が薄れることで、拒否しやすい環境を作りだしていることの反映でもある。
 東電刑事裁判は、この三月に旧経営陣三人の弁護側による最終弁論が予定されており、最終局面に入った。被災者による政府・東電に対する徹底した責任追及と賠償要求の闘いを支援し、ともに闘っていこうではないか。
 稼働原発の即時停止をかちとり、老朽化原発の延長運転を阻止しよう! 原発新設・増設を阻止しよう! 原発労働者と連帯して闘おう! 全原発の廃炉をかかげ安倍政権を打倒しよう。



 

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