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   「成長戦略」と高齢労働者への搾取

    世代間の分断を越える労働運動を

          
         金子文人



 二〇一二年一二月の政権発足以降、安倍政権は財界の意を受けて労働法制の改悪に向かって突き進んできた。戦後日本の憲法と労働諸法による労働者保護の体系を「岩盤」とみなし「私のドリルで岩盤規制に風穴を空ける」「日本を世界一企業が活躍しやすい国にする」と安倍首相自ら公言してきた。戦争法をめぐる攻防が広範に展開された一五年の通常国会では、労働者派遣法の改悪が行われ、派遣労働者の常用使用を可能とした。
 その後「一億総活躍社会」というスローガンを掲げ、「働き方改革」のもとに労働法制のさらなる改悪を進めてきた。昨一八年には「残業代ゼロ」「定額働かせ放題」の高度プロフェッショナル制度(高プロ)を盛り込んだ労働基準法などの改悪を強行した。これらをアメ(法改正)を含めた一括法として用意しつつ「働き方改革関連法」として成立させた。
 安倍政権と財界の究極のねらいは「雇用によらない働き方」を推進することにある。ウーバーにみられるギグエコノミー労働者が急速に増加していることもその一例だ。また、少子高齢化に伴う労働力不足を財界は深刻な危機として捉えている。その危機を乗り切るために「一億総活躍」のもとに、女性、高齢者、障害者、外国人の活躍=活用を進めようとしている。ここでは定年退職後の高齢者継続雇用に関する法の再改定の動きについてみてみたい。

 ●1章 ねらわれる高年齢者雇用安定法の再改定

 「改正高年齢者雇用安定法」が一三年四月に施行された。就労を希望する六〇歳を超えた労働者の雇用を企業に義務付け、高齢者の安定をはかるために①定年の延長、②定年制廃止、③契約雇用などでの再雇用という三つの選択肢を企業に与えた。労働組合が組織されず集団的労使関係のない企業の多くは③を選択した。現在、およそ七割の労働者が六〇歳定年後の継続雇用で働いている。その実態は現役時代と同じ仕事をしても、賃金が五割以上カットされるということがまかり通っている。こうした現実のなかで、「老後破産」とか「下流老人」という言葉もうまれた。
 今年五月に未来投資会議は高年齢者雇用安定法改定案の骨子を発表した。ここでは希望する労働者が七〇歳まで働けるためにと、一三年施行の三つの選択肢に加え、④他企業への再就職支援、⑤フリーランスで働くための資金提供、⑥企業支援、⑦NPO活動などへの資金提供を企業の努力義務とすることが盛り込まれた。安倍首相はさきの通常国会の施政方針演説のなかで「人生百年時代の到来は、大きなチャンスです。元気で意欲ある高齢者の方々に、その経験や知恵を社会で発揮していただくことができれば、日本はまだまだ成長できる。生涯現役の社会に向かって、六五歳まで継続雇用することとしている現行制度を見直し、七〇歳まで就労機会を確保できるようこの夏までに計画を作成し、実行します」と述べている。
 この骨子の中身は旧民主党政権時代に改定されたものとくらべて、高齢労働力を流動化させ、また、「雇用によらない働き方」を進めていくものとなっている。政府・財界は「成長戦略」のひとつとして高齢労働力の活用を掲げている。しかし、実際どれだけの労働者が年を取ってからも働きたいと思っているのだろうか。低い額の年金や年金支給年齢の引き上げなど社会保障・福祉解体攻撃によって、多くの高齢労働者が「働けるだけ働きたい」と考えざるをえなくなっているのだ。

 ●2章 世代間の分断を乗り越えるチャンスに!

 二〇〇〇年代、「非正規雇用」「非正規労働者」の問題といえばパートタイムで働く女性たちや正規雇用で就職ができなかったロスジェネ世代の「かわいそうな若者」たちの問題として扱われてきた。労働組合の多くは、非正規雇用の組織化に無関心であり、かつまた非正規労働者の問題を深刻に捉えることができてこなかった。
産業構造の変化によって働き方や雇用・労働条件が大きく変わり、労働者の側の意識も大きく変化してきた。一九八七年の国鉄分割民営化と国労つぶし、国労を弱体化させた総評―社会党ブロックの解体へと突き進んできた。規制緩和、民営化などの行政改革、二〇〇〇年代の小泉構造改革の結果として「格差・貧困」が社会問題化してきた。この歳月のなかで、労働組合は「正社員クラブ」などと揶揄され、ほとんど既得権益層の一部のように宣伝されたりもした。しかし、それは敵の側のデマ宣伝という一面もあるが真実でもあった。
 労働者の側は女性か男性か、正規か非正規か、外国人か日本人かで分断をされてきた。資本と労働者の非和解的な対立が本質であるにもかかわらず、しばしば労働者同士の対立、未組織労働者と労働組合との対立のように展開されたりもした。それを乗り越える職場の団結と社会的連帯が必要だ。現役時代に正社員で「安定した」労働者にとっても、そう遠くない将来の自分の姿として高齢労働者がいる。世代を超えた要求として、格差是正・均等待遇を実現していくことが求められている。


 

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