共産主義者同盟(統一委員会)






■政治主張

■各地の闘争

■海外情報

■声明・論評

■主要論文

■綱領・規約

■ENGLISH

■リンク

 

□ホームへ

   〈本の紹介〉
『ストライキしたら逮捕されまくったけど
それってどうなの?(労働組合なのに…)』

           
編者:連帯ユニオン 発行:旬報社

                
一四八ページ 本体一二〇〇円


 
 

 二〇一八年七月一八日、滋賀県警組織犯罪対策課によって、湖東生コン協同組合(湖東協組)の理事四人が「恐喝未遂」容疑にで逮捕された。
 これを発端に、八月九日には湖東協組理事長ら事業者二名と、全日本建設運輸連帯労働組合関西生コン支部(関西生コン支部)の組合員一名が同容疑で逮捕された。
 以降、滋賀県警と大阪府警によって、数次にわたる大量逮捕が行われた。「恐喝未遂」「強要未遂」「威力業務妨害」容疑による関西生コン支部組合員の逮捕者はのべ五六名に及んでいる。うち四二名が起訴され、一〇名が勾留されている(四月一一日現在)。またこの弾圧は今後も拡大する可能性が高いといわれている。
 今回紹介する『ストライキしたら逮捕されまくったけどそれってどうなの?(労働組合なのに…)』は、戦後労働運動史の中でも例をみない大量弾圧が進行する真っ只中の本年一月三〇日に発行された。
 本書には、関西生コン支部に対する大弾圧の経過や、生コン業界の歴史や構造、そして関西生コン支部の闘いの歴史などが非常に分かりやすく書かれおり、一気に読み進めることができる。
 階級的労働運動の壊滅をねらった関西生コン支部つぶしの大弾圧を、自らにかけられた攻撃として捉え、共に弾圧を跳ね返す広範な闘いを巻き起こしていくことがぜひとも必要だ。
 『戦旗』購読者の皆さんが、国家権力の集中弾圧への大衆的反撃の烽火として発刊された本書を読み、ともに反撃の隊列に加わることを強く呼びかけたい。

 ●① 漫画で構成されたリード部分

 本書は四章で構成されている。はじめの数ページは、関西生コン支部への連続した権力弾圧報道に危機感を募らせる新人関西生コン支部組合員夫婦の会話を、擬人化した猫を使った漫画によって描写している。
 組合活動を始めたばかりの若手の組合員や、その家族などをはじめ、労働組合活動経験のない人たちにとっても、とっつきやすく読みやすい工夫がされている。

 ●② 第一章 醜悪な癒着

 この章は、昨年一月八日のJR大阪駅前の情景描写から始まっている。
 この日から、ヒトラーを礼賛するネオナチ主義者=日本第一党の顧問である瀬戸弘幸や渡邊臥龍(がりょう)、大阪で在日韓国・朝鮮人追放を叫ぶ荒巻靖彦や西村斉(ひとし)など排外主義者たち約三〇名による、関西生コン支部をターゲットとした街宣活動が開始された。
 この排外主義者らの主張は、「関西生コン支部は、企業から多額の資金を不法に吸い上げており、その闇資金は一〇年間で三〇億円にものぼる。前年のストライキもその闇資金のためだった。闇資金は沖縄の反基地運動など日本社会を破壊することに使われている」「関西生コン支部はタカリのプロ集団」「労働争議を騙って私腹を肥やすゴロツキの〝労組マフィア〟」などという、事実無根のデマにまみれたものだ。
 そして、この排外主義者の街宣活動を全面的に支持・支援しているのが「大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)」という生コン業者団体幹部である。この連中が、関西生コン支部つぶしのために排外主義集団を金で雇っているのである。
 以降連日のように排外主義集団は大阪、奈良、京都など関西圏での関西生コン支部を誹謗中傷する街宣活動を繰り返す。また、大阪広域協組幹部らと共に、関西生コン支部事務所襲撃、争議現場襲撃などの全面的な敵対が開始された。これに連動して、インターネット上に関西生コン支部を誹謗中傷する内容の動画が連日大量に流されていく。
 一章では、一八年一月八日の排外主義集団の登場からはじまる関西生コン支部つぶしの〝序章〟といえる攻撃の経過が紹介されている。

 ●③ 第二章 協同組合クラッシャー

 第二章は、関西生コン支部つぶし攻撃の発端となった、一七年一二月一二日の関西生コン支部と全港湾大阪支部による地域ゼネスト闘争についての説明からはじまっている。
 近畿地方全域のセメント出荷工場と生コン工場、生コン車一〇〇〇台、バラセメント車五〇〇台という、かつてない規模の地域ゼネストに大打撃を受けた大阪広域協組は、関西生コン支部の業界からの一掃をかかげ、排外主義集団を利用して、あたかも自分達が被害者であるかのようなデマ宣伝をくり返していく。
 この生コン業界特有の「協同組合」という事業者団体がどういうものなのか、また大阪広域協組と労働組合との関係がどのようなものであったかということが分かると、今回の関西生コン支部大弾圧の真相が見えてくる。
 この章では、生コン業界の歴史を説き起こしつつ、その中で関西生コン支部が果たしてきた先進的な役割が説明されている。
 また、排外主義集団を使っての「関西生コン支部=反社会的集団」キャンペーンや、加盟業者に「組合員の運転手を使うな」と指示するなど数々の不当労働行為が大阪広域協組によって繰り返された。関西生コン支部はこの攻撃に対し、不当労働行為救済の連続した申し立てなど反撃の闘いに出る。その結果、大阪広域協組の関西生コン支部排除の攻撃は半年を待たずに頓挫しつつあった経過が展開されている。

 ▼④ 第三章 恐喝未遂、強要未遂、威力業務妨害

 第三章では、大阪広域協組による関西生コン支部つぶしの攻撃が頓挫しかかったタイミングで、警察権力が前代未聞の大弾圧を行ってきた経緯が説明されている。
 弾圧は、①湖東生コン協組事件(滋賀県警組織犯罪対策課)「恐喝未遂」容疑、②宇部三菱大阪港サービスステーション(生コン出荷基地、以下SS)事件(大阪府警警備部)「強要未遂及び威力業務妨害」、③中央大阪生コン事件(大阪府警警備部)「威力業務妨害及び暴行」、④宇部三菱中央大阪事件(大阪府警警備部)「威力業務妨害」、⑤大津生コン事件(滋賀県警組織犯罪対策課)「威力業務妨害」、の大きく五つの「事件」に分けられている。
 ストライキは、憲法と労働組合法が保障する労働組合の団体行動権の行使であるが、警察権力はこれを「威力業務妨害」と言いなす。建設現場での法令違反を指摘し、是正を申し入れる活動=コンプライアンス活動を「恐喝未遂」とする。関西生コン支部の正当な組合活動そのものをつぶしにきていることが浮き彫りとなってくる。
 とりわけ④宇部三菱中央大阪事件は重大な問題性を孕んでいると本書は指摘している。なぜなら、②の宇部三菱大阪港SS事件と、③の中央大阪生コン事件でのストライキ闘争を計画したことそのものを「犯罪」として、別の事件として扱っているからだ。今回の大弾圧が「共謀罪のリハーサル」弾圧と言われている由縁である。
 また、滋賀県警組織犯罪対策課が関西生コン支部大弾圧に動いていることも大きな特徴として指摘されている。あたり前の労働組合活動を行っている関西生コン支部を、あたかも「反社会的勢力」であるかのように扱う。排外主義者集団はネット上で、『産経新聞』など右派メディアはテレビや新聞で「関西生コン支部=反社会的勢力」という印象操作の〝連携プレー〟が行われているのだ。
 本章では、この〝連携プレー〟を、「事実の全体像を伝えず一定の意図のもとに一部だけを切り取れば、実際の事件を正反対の構図で描き出して伝えることができる」とネット空間で氾濫するフェイクニュースの功罪として批判し、警鐘を鳴らしている。

 ▼⑤ 第四章 道は険しくとも

 第四章は、関西生コン支部結成へと至る歴史と、同組合が生コン産業においてどのような運動を続けてきたかの説明である。
 関西生コン支部への大弾圧は今回が初めてではなく、一九八〇年代初頭に第一次弾圧を、二〇〇五年には第二次弾圧を受けている。したがって今回の大弾圧は第三次弾圧ということになる。関西生コン支部の闘いの歴史は、同時に国家権力の大弾圧との闘いの歴史でもあるということだ。
 ゼネコンやセメントメーカーなど大資本は、関西生コン支部を解体するために、右翼や暴力団を雇った争議破壊をこれまで何度も繰り返してきた。そしてまた、警察権力も、大資本の意を受け、大弾圧を強行してきた。
 しかし関西生コン支部は、これらの攻撃に屈服することなく、ゼネスト闘争に起ちあがってきた。また、中小企業と政策協定し、大資本と対峙する「産業政策闘争」という独創的な闘い方を繰りひろげ、勝利してきた。
 関西生コン支部の強さは、大弾圧にも絶対に屈服しないという強固な原則性と、独創的な戦術を結合させていることなのだということが、この章では説得力を持って描かれている。
 以上の四章の後に、「さらに理解を深めるために」として、ジャーナリストの安田浩一さんがレイシスト(排外主義者)集団人物像について、里見和夫弁護士が、関西生コン支部つぶしの実態について、長嶋靖久弁護士が今回の弾圧の経過と特徴について、それぞれ要点を的確にまとめた小論を寄せている。合わせて読んでいただきたい。



 

当サイト掲載の文章・写真等の無断転載禁止
Copyright (C) 2006, Japan Communist League, All Rights Reserved.