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   大幅賃上げ、「働き方改革」阻止、改憲阻止
          19春闘、職場から闘いを作ろう

               
中央労働運動指導委員会

  
 

 ●1章 戦争と貧困の世界的拡大

 世界はトランプ政権の登場以降、混乱を極めている。帝国主義諸国は〇八年のリーマンショック以降の世界金融恐慌勃発の危機を、各国中央銀行による金融緩和や、G20などによる貿易・投資の拡大によって先送りしてきた。トランプ政権はその帝国主義諸国を軸にした枠組みをすら、「自国第一主義」を掲げて投げ捨て、貿易戦争に打って出ている。その結果、世界金融恐慌勃発の可能性も拡大し、世界経済は混乱し、主要各国の経済成長は鈍化し、貧困を拡大している。
 世界で再び核兵器開発にむけた動きなど、軍備増強が加速されている。トランプ政権は昨年一〇月にロシアとの中距離核戦力全廃条約(INF)の破棄を強行し、同条約が禁じてきた中距離核ミサイル開発をおこなうと表明している。産軍複合体の利益を代弁し、日本をはじめとする同盟国への米国製兵器の購入を強要している。自らの支持基盤である産軍複合体のすそ野を形成する、製造業労働者の支持の取り付けである。
 トランプ政権の「自国第一主義」は、本質的な意味での帝国主義である。二度の世界大戦の悲惨な経験と、冷戦下の米ソ核戦争の危機という構造の中で、その回避に向けて構築されてきた米帝を中心とする帝国主義支配体制も空洞化している。世界金融危機の阻止に向けた帝国主義主要国の「協調体制の空洞化」と、米帝をはじめとする主要帝国主義とロシア、中国などとの間での戦争も辞さない資源、市場の獲得にむけた「自国第一主義」が、戦争と貧困の拡大の元凶となっている。
 安倍政権もトランプ政権と同様に、帝国主義的な権益確保にむけ必死となっている。世界で米帝と共に戦争をするために、日米安保を基軸に共同作戦体制や基地強化に力を傾注している。
 安倍政権は、一昨年来の朝鮮半島における「核戦争の危機」を最大限利用し、「北朝鮮のミサイルからの防衛」を口実に「戦争する国づくり」をめざしてきた。昨年四月の南北首脳会談、六月の米朝首脳会談において朝鮮半島情勢が大きく平和へと転換すると、「中国の脅威」を煽りたて「南西諸島防衛」を口実に宮古島や石垣島への陸上自衛隊基地建設を進めている。
 朝鮮半島における戦争の危機に際しては「核戦争も辞さない」というトランンプ政権を支持し、中国の南中国海における活動の活発化に対しては南西諸島防衛強化を主張するなど、排外主義を煽り立てながら軍事的対抗を全面におしだしている。東アジアにおける平和構築に対して一貫して敵対しているのが安倍政権である。
 国内においては「一億総活躍社会、GDP六〇〇兆円実現」を目指すとし、「働き方改革」を掲げ、労働者・人民に対する強搾取、強収奪を推進せんとしている。
 19春闘は、このような帝国主義による戦争と貧困の拡大の渦中で闘われることを確認しなければならない。賃金、労働条件向上の闘いを通じて活性化する労働者に対して、世界では貧困と戦争によって生存が脅かされている労働者・人民が多数存在すること、戦争と貧困は国境を越えた労働者の連帯によって実現される社会主義を目指す闘いによってしか解決されないことを訴えていかなければならない。

 ●2章 進行する貧困

 19春闘はアベノミクスによる貧富の差が拡大するなかでの春闘である。異次元の金融緩和、公共投資で利益をあげたのは大企業だけである。一七年度末の大企業(資本金一〇億円以上、金融、保険を含む)の内部留保は、四二五兆円(前年度比約二二兆円増)である。日本経団連も、「一九年一月には景気回復の期間が七四カ月に達し戦後最長になる見通し……、上場企業の一八年度業績見通しは多くの業種で増益が見込まれている(一九年経労委報告)」と述べているように、大企業を中心に巨額の利益をあげている。
 反して労働者の賃金(所定内賃金+時間外賃金)は一七年で二六万〇七七六円であり、一六年度の二五万九七三七円と比較すれば微増している。一八年度は政府の基幹統計である「毎月勤労統計調査」を偽装し、安倍首相は実質賃金が上昇していると公表した。それを根拠に本年一〇月に消費増税をおこなうと表明していたが、一月二三日厚労省が公表した修正値では一月から一一月の全ての月でマイナスとなり、一八年度の実質賃金はマイナスとなる可能性が高い。安倍政権はこれにより自ら主張してきた消費増税の根拠も失うことになった。
 賃金を〇二年の二七万八九三三円と比較すれば一万一五七円も低い。厚労省の「二〇一七年賃金構造基本統計調査」によれば、最上位の男性正社員が月額二九万一四〇〇円、女性正社員が二六万四九〇〇円、男性非正規社員が二二万七七〇〇円、女性非正規社員が一七万八二〇〇円となっている。男性非正規社員では年齢による上昇はほとんどなく月収二三万前後の生活を生涯強いられることになる。女性非正規社員の場合、最低賃金に張り付いた賃金ということになる。このような労働者が全労働者の四割近く存在するということである。
 年収二〇〇万円以下の労働者は非正規労働者を中心に、一〇八五万人(全労働者数の21・9%)で一二年連続して一〇〇〇万人を超えている。生活保護受給世帯は一八年七月時点で二一〇万人、世帯数では一六四万世帯だが補足率は二割程度でしかない。
 大企業では九九年度を一〇〇とすれば、一七年度の経常利益は三〇一・七であり、株主への配当は五五四・二、賃金は一〇三・三でしかない。その結果、労働分配率は九九年度の62%から一七年度には50・8%まで低下している。
 他方、富裕層では一〇〇万ドル(約一億一三〇〇万円)以上の金融資産を有する人は二六九万人で、アメリカについで世界第二位になっている。彼らの富の源泉は自社株の上昇と配当金である。アベノミクスによって日本では富裕層の上位四〇人の資産が、日本人口の下位の半分(六〇〇〇万人)の資産合計に匹敵する格差社会になっている。
 低賃金ゆえの長時間労働も改善されていない。「一七年労働力調査」によれば、「過労死ライン」の月八〇時間超えの労働者は男性労働者で11・2%となっている。日本の男性労働者の週平均労働時間は五三時間であり、イギリス(四〇・七時間)、アメリカ(四〇・五時間)、フランス(三八・四時間)、ドイツ(三八・三時間)などと比較すれば圧倒的に長い。年間にすれば約二七五六時間にもなる。ちなみに〇六年に廃止された時短法の目標は一八〇〇時間である。
 「戦後最長の景気回復」も、大企業の多くの業種での増益も、労働者の賃金、労働条件にはまったく反映されていないのが実態である。

 ●3章 「働き方改革」を許すな

 安倍政権が国難と位置付ける「少子高齢化対策」の中心は「一億総活躍社会の実現」である。その実現にむけ①「希望を生み出す強い経済(GDP六〇〇兆円)」、②「夢を紡ぐ子育て支援」、③「安心につながる社会保障」という「新三本の矢」を打ち出している。この「三本の矢」を横断的に貫く課題が「働き方改革」であるとされている。その中心は、「希望を生み出す強い経済(GDP六〇〇兆円)」であり、「夢を紡ぐ子育て支援」や「安心につながる社会保障」などは、その結果として実現されるものでしかない。
 働き方改革実現推進室で実務の中心を担ったと称する岡崎淳一元働き方改革実現推進室長代行は、「『働き方』は『暮らし方』そのものであり、日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方に及ぶ、トータルで本格的な改革を目指す」と述べている。単純に言えば「一億総活躍社会・GDP六〇〇兆円実現社会」を達成するために、日帝ブルジョアジーの都合に合わせて、労働者・人民の働き方も暮らし方も、ライフスタイルも変えさせてもらう、と宣言しているのだ。
 それは多くの識者が回避不可能と主張する少子高齢化のなかで生産年齢人口が減少するにもかかわらず、史上最高のGDP六〇〇兆円社会の実現をめざすというとんでもない代物である。その実現のためには総労働時間数の増加と生産性の向上しかない。実際の生産性の向上は技術革新が不可欠であり、投資も必要なので簡単ではない。また資本家、経営者による経営政策の問題であり、通常の労働者が関与しうる問題ではない。
 資本家、経営者が労働者に強要するのは総労働時間の増加である。労働者一人一人の労働時間を増加させること、女性や高齢者を労働市場へと無理矢理狩り出すことしかない。そのために目論まれているのは、「多様な働き方」の実現による高齢者、女性などを細切れ雇用で労働市場へと駆り出すことである。
 高齢者に関しては六五歳定年制も完全には実現しておらず、六〇歳以上の継続雇用労働者の低賃金も改善していないのに、七〇歳定年制の導入も目論まれている。政府・日経連の「人生一〇〇年時代」の強調は、労働者にとっては年齢に関係なく「死ぬまで働け」という以外の意味はない。女性の労働市場への投入に関しても「ワークライフ・バランス」「両立支援」の実現と称しながら、未だ貧弱な育児、介護、教育環境の中で、女性に重い家事負担を負わせたままの就業の強制でしかない。入管法改悪により「特定技能一号・二号」を創設し、三四万人の外国人労働者の導入も新たに目論まれている。パソコンなどを利用したテレワークやプラットホームを利用した在宅勤務の普及も目指され、請負など様々な「雇用類似」の働き方が、労働者・人民の日常生活の隅々にまで浸透していこうとしている。
 このような「働き方改革」がもたらす社会は、内閣府が発表している新たな経済社会イメージである「Society5・0」の①人口減をものともしないスマートな社会、②高齢者や女性等、あらゆる個人が活躍できる社会、③サイバー、フィジカルいずれも安全・安心な社会、④都市と地方がつながり、あらゆる場所で快適に働き暮らせる社会、⑤環境と経済が両立する持続可能な社会、の欺瞞性を暴露してあまりあるものである。日帝ブルジョアジーにとって、①と②によって長時間労働と潜在的労働力を労働市場へと狩り出すこと、③と④によってその狩り出した労働力を、可能な限り最低のコストで再生産することの必要性を自己確認する以外のものではない。
 「働き方改革」による「暮らし方、働き方、ライフプランのトータルで本格的な変革」とは、「老若男女を問わず一企業内で働くだけでなく、時間のある限り複数就労せよ、テレワークやプラットホームを駆使し在宅でも働き続けろ、生きている限り働け、働けなくなったら寝たきりにならず医療費節約のためさっさと死ね」という代物以外ではない。われわれの働き方、暮らし方、ライフスタイルが日帝ブルジョアジーの都合にあわせて好き勝手に変えられようとしている。巷間言われるように「働き方改革」とは「働かせ方改革」以外の何物でもない。労働者・人民は大資本に奴隷扱いされているのだ。満身から怒りがわく。

 ●4章 「働き方改革」と同調する「19経労委報告」

 「二〇一九年版経営労働政策特別委員会報告(以下、「19経労委報告」)は、労働時間削減(実際は長時間労働の強要)と多様な働き方は、働き方改革一括法の制定で目途が立ったと判断してか、労働生産性の向上に重点を置いた主張となっている。
 労働生産性の向上は、「働き方改革」においても最重要課題となっている。技術革新による生産性の向上は、直接的には労使関係上の問題ではないので、「19経労委報告」では日々の業務の中での効率的な仕事の進め方にむけた改善、ビジネスチャンス獲得方法の改善などが問題とされている。そしてそれを積極的に取り組む人材育成、要は労働者一人一人のやる気の創出、労働意欲の向上、人づくりが要であるとされ、それを支える両立支援など様々な形で触れられている。また労働者が安全、安心に働ける「将来に希望が持てる社会の実現」にまで言及している。新たな社会の実現とは、「働き方改革と労働生産性向上の一体的取り組み⇒企業収益の拡大⇒処遇改善(18経労委報告)」という社内好循環をつくりだし、それをわが国経済から社会全体につなげていくことであるとしている。
 しかしそれは自らの働きが正当に評価され、「八時間働けばまともな生活できる賃金」が支払われて初めて可能な事である。大企業ですら長時間のサービス残業やパワハラが横行している実態では、労働者の労働意欲の向上による生産性の向上など絵に描いた餅である。
 「19経労委報告」は労働分配率が低下していることについても、経済規模の大きいドイツやアメリカでは同じように低下している、大企業は熾烈な国際競争に対処するため研究開発費や設備投資に多額の投資が必要となり中小企業と比較すれば労働分配率は低くなる、業種や規模別の違いがあるのでマクロの分配率を問題にするのは適切でない、と開き直っている。
 「19経労委報告」がいくら開き直ろうとも、労働分配率は労働者の労働意欲、とりわけ仕事の改善に向けた意欲の向上には大きな影響を及ぼす。報道によればカルロス・ゴーンが年間一〇億近い報酬を得ていたにもかかわらず、公表額を一〇分の一としたのも、「有能な経営者」として、高すぎる経営者の報酬は従業員の反発を買い、やる気をそぐことを充分に自覚していたからだ。
 それでもこのような議論は大企業の中では「お話」として通用しても、中小零細企業ではまったく通用しない。二重構造のなかで、大企業による下請け苛め、原価切り下げによって中小零細企業の利益の大半は大企業に奪い取られている。大企業のカンバン方式による在庫の削減のなかで、中小零細企業は短時間での納品を迫られたり、仕様の変更を迫られたりして、生産性の向上に向けた作業工程の改善や技術革新に向けた余力はまったくない。また大企業における生産性向上の呼号は、中小企業に対する下請け原価切り下げ圧力へと必ず転化される。主要取引先である大企業からそのような圧力を受けた時、中小企業は生き残りのために原価割れの仕事すら受注しなければならない関係にある。このような状況では、中小企業における労働意欲の向上、生産性の向上はありえず、長時間労働で生産高を確保し、低賃金とサービス残業で生産性を向上させる以外にはないのが現実だ。
 賃金に関しては自社の支払い能力や所定内給与の約一・七倍といわれる総額人件費を考慮したベースアップは容認している。昨年のような社会的期待を意識しての3%引き上げなどの数値目標に対する言及はない。生産性の向上を意識した賃金分配と、中高年男性正社員への配分から、「総合的な処遇改善」として若年者、子育て世代、女性などの囲い込みにむけた低賃金、低処遇の是正が主張されている。
 実際上は、史上最大の利益を更新し続けているにもかかわらず、労働者の分配は一時金の支給で誤魔化そうとしている。その支給基準も、①一時金は短期的な収益の拡大の配分であり、業績連動型賞与制度であること、②働き方改革のインセンティブとして生産性向上への協力度、貢献度に応じた支払いが強調されている。労働側の一時金は生活給であり、賃金の後払い、定額支給という主張を否定し、業績給であり評価重視という立場を全面化している。

 ●5章 われわれの19春闘の闘い

 ▼5章―1節 八時間労働制と賃金大幅引き上げを


 全労協は「八時間働けば暮らせる社会を!」を掲げている。全国一般全国協は「定昇分2%+ベア分3%+大企業との格差是正2%」を根拠に、7%以上の賃金引き上げを要求している。これらの闘いと結合し大幅な賃金引き上げを実現していかなければならない。
 また「最低賃金一五〇〇円をめざし直ちに一〇〇〇円以上」という最低賃金要求を踏まえ、企業内最低時給一〇〇〇円以上を要求して闘おう。東京、神奈川など最低賃金が一〇〇〇円に近い都道府県は、一〇〇〇円以上を掲げて闘おう。
 長時間労働は低賃金の結果でもある。最低賃金の影響を受ける最低賃金近傍(時給が最低賃金から15%上回る労働者)の労働者は、一日八時間、週四〇時間の法定時間では生活できない。彼らの生活が維持されているのは、一日一〇時間から一二時間の長時間労働によってである。彼らの労働時間の短縮は、引き上げられた時給に応じてしか実現されない。まず賃金を引き上げなければならない。そして時間短縮の原資を獲得しよう。賃金引き上げと労働時間短縮を結合して闘い、何年かかろうとも「八時間働けば暮らせる社会」を実現しよう。

 ▼5章―2節 19春闘課題として最賃闘争を闘おう

 最低賃金闘争は春闘に次ぐ第二の賃金闘争だ。春闘における賃上げの闘いと並んで最低賃金引き上げは非正規労働者の時給引き上げにとっては決定的に重要である。改正後の最低賃金額を下回る賃金で働く労働者の割合を示す「影響率」は、一二年度では全国平均4・9%だったが一七年度には11・9%を超えている。その多くが非正規労働者であると予測される。最低賃金が上がれば賃金があがる労働者は、影響率の対象労働者だけではない。毎年、時給があがるランク制を採用している流通、製造などの大企業のパート制度では、最下位のランクが最低賃金見合いであることが多く、最低賃金が上がることによって最下位ランクがあげれば、最上層まで引き上げなければならなくなり、その影響は雇用するパート労働者全体に及ぶ。
 最低賃金闘争は春闘後半の五月半ばごろから本格化する。最低賃金引き上げを重要な課題として位置づけ闘うことは、組織された正規労働者による未組織や非正規の労働者に対する賃金引き上げの連帯戦であり、社会的責任でもある。最低賃金は成人のみならず高校生のアルバイトも含まれるから最低賃金引き上げは家族全体の収入を増やすことになる。「最低賃金一五〇〇円をめざし、直ちに一〇〇〇円」を掲げ、春闘時から最賃引上げの署名活動を職場などで展開しよう。家族署名を取り組み、前述の最賃闘争の意義を説明しよう。

 ▼5章―3節 「働き方改革一括法」を職場で阻止しよう

 昨年六月二九日に成立した働き方改革一括法のうち、中小零細企業に焦点を絞って対応が必要なものは、労基法三六条改正による三六協定の上限規制、三九条改正による有給未取得が五日間の使用者への義務化、「パートタイム・有期雇用労働法(パート・有期法)」への対応である。
 労基法三六条改正は、大企業では四月一日から中小企業では二〇年四月一日から施行される。この法律によって「月四五時間、年間三六〇時間」が法的上限とされた。これ以上の時間外労働は特別条項を締結しなければならない。特別条項は「通常予見できない業務量の大幅な増加」などの事態でなければ認められない。その際の上限は休日労働を含め「連続する二カ月から六カ月平均で月八〇時間以内」、「単月で一〇〇時間未満」「四五時間を上回るのは年六回まで」という脳、心臓疾患の過労死認定基準と近似の規制であり、後者が八〇時間以上、一〇〇時間以上という違いしかない。経営的に「通常予見できない業務量の大幅な増加」が六カ月も存在することなど理解できない。仮にそういう事態が発生すれば、経営者は時間外労働ではなく求人を行ない要員増で対処すべきである。
 上限が過労死基準に近似の特別条項を締結しないことが重要である。過半数組合が存在するところでは組合内部で特別条項締結反対の声をあげ、過半数組合のないところでは自ら労働者代表選挙に立候補し労働者代表に選出されることも重視しなければならない。
 三九条改正による五日間の有休取得の義務化によって、前年度繰り越しで二〇日以上の有休を持つ労働者も多数存在する中で、「五日間」さえ取得させれば法違反でないという意識に使用者はなるかの可能性が高い。平均取得率51・1%をまず実現し、次いで政府の二〇年度までに70%を目指すという方針を利用しながら、完全取得をめざす必要がある。
 パート・有期法の中小企業での施行は二一年四月からだ。この法律のポイントは、正規労働者と非正規労働者は同じ仕事をしていても処遇が異なることを直ちに問題にはしない、その異なることについて合理的な説明が必要というものである。合理的か合理的でないかはガイドラインで示すとされている。一四条二項では、非正規社員から正規社員との待遇差の説明を求められた時、使用者は八条、九条にもとづいて説明する義務を負うことになる。これまで正規と非正規の労働者の待遇差について団交などで説明を求めても、「非正規だから」という社会的偏見にもとづく回答しかなされないことが多々あったが、今後は許されない。紙幅の関係で詳述しないがパート・有期法八条、九条とガイドラインを詳細に検討し、対象業務の分析をおこない、自らの主張を準備しなければならない。膨大で緻密さが必要とされ、少数派や一人組合員には厳しい作業だが必要な闘いである。

 ▼5章―4節 外国人労働者の権利擁護を闘おう

 安倍政権は昨秋の入管法改悪で「特定技能一号、二号」を創出し、人手不足が深刻な建設業、農業、製造業などに最大三四万人の受け入れを目論んでいる。実態は移民であるにもかかわらず、移民としての市民的権利ははく奪し、低賃金労働力として酷使しようとしている。私たちは労働者には国境はないという立場から、共に働く仲間として積極的に受け入れていく必要がある。労働慣習の違い、言語の問題、文化の問題など様々な困難が発生するが、粘り強く、支援と連帯を積み上げていかなければならない。外国人労働者に対する人権侵害、労基法違反、低処遇に対しては全力で闘う必要がある。

 ▼5章―5節 労働組合潰しの大弾圧と闘おう

 19春闘においてこれまでにない春闘の課題として、全日建運輸連帯労組関西生コン支部(関生支部)弾圧に対する反撃の闘いがある。昨年から引き続く弾圧によって、二月五日の段階で組合員五四名が逮捕され三二名が起訴されている。これは関生支部が大手ゼネコンによる生コン買い叩きに対し、価格維持のために中小の生コン製造・輸送経営者と進めてきた協同組合運動、産別運動に対する弾圧である。同時に世界の労働運動が流血の闘いの中で勝ち取り、憲法二八条でも争議権として保障されている刑事免責、民事免責を否定し、労働組合運動を企業内へと封殺し労使協調の企業内運動へと変質させる攻撃である。当然のことながら反戦平和をはじめとする闘いは、労働組合運動として認めず徹底的に弾圧することが目論まれている。
 19春闘においてわれわれはこのような労働組合つぶしの大弾圧に対し、関生支部に連帯して闘いぬかなければならない。

 ▼5章―6節 戦争反対! 東アジアに核なき平和な社会を

 安倍政権は世界で戦争をする国造りのために危機を煽り、辺野古新基地建設、岩国基地強化、日米共同作戦体制強化、史上最大の防衛予算五・三兆円などの戦争体制づくりを推し進めている。あわせて徴用工問題などで排外主義を最大限煽りたてている。関生支部弾圧に典型なように、戦争国家化に抵抗する部分に対しては憲法を無視し、安倍独裁としか表現できない強権的手法で弾圧を行なっている。これらあらゆる手段を駆使して任期中に自衛隊明記の九条改憲を必ず実行すると明言している。
 われわれは戦争には全面的に反対しなければならない。戦争は最大の生活破壊である。反戦闘争は労働者の生活を守る労働組合が取り組むべき闘いである。国益を超えた国際連帯をもっとも体現できるのは労働者であり、先進的労働者が多数参加する労働組合である。
 「戦争反対! 東アジアに核なき平和な社会を!」の闘いは改憲阻止の土台となる闘いである。「戦争反対! 東アジアに核なき平和な社会を!」を主張する勢力が改憲阻止勢力の基盤とならなければ、戦争の危機を口実にした改憲勢力の攻勢に勝利することはできない。19春闘の過程で「戦争反対! 核なき東アジアの平和を!」の闘いを強化しよう。



 

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