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■非正規労働者の差別待遇撤廃 正規・非正規の団結で、職場闘争・労契法闘争を闘いぬこう! ●1章 6・1最高裁不当判決を弾劾する 六月一日、不合理な労働条件の違いを禁止する労働契約法二〇条裁判において、初めて最高裁判決が出された。最高裁第二小法廷の山本庸幸裁判長は、有期契約労働者への差別的待遇の是正を訴えた、物流会社・ハマキョウレックスの契約運転手には五つの手当についての格差を不合理と認め、運送会社・長澤運輸の定年後再雇用運転手には定年前と同一業務にかかわらず再雇用を理由とした賃下げを是認する不当判決を下した。 原告運転手が所属する全日建運輸連帯労働組合は、「最高裁は、ハマキョウレックス事件では格差撤廃につながる真っ当な判断を示したにもかかわらず、長澤運輸事件では定年後再雇用者の格差については極めて不当な判決を下した」と批判している。長澤運輸事件担当の宮里邦雄弁護士(元日本労働弁護団会長)は、「精勤手当が認められた点は東京高裁判決よりもましだが、到底容認できる判決ではない。再雇用者と正社員の賃金格差をすべて容認したとの誤解が生じないようにしなければならない」と強調した。 非正規労働者への差別待遇を許さず断固たたかおう! ●2章 ハマキョウレックス事件 ハマキョウレックス事件では、原告は契約社員運転手だが、正社員と全く同じ業務にもかかわらず、無事故一万円・作業一万円・給食三五〇〇円・住宅二万円・皆勤一万円の手当そして家族手当が全く支給されず、通勤手当も一律三〇〇〇円と低額支給であった。 ①大津地裁は通勤費の差額のみを不合理とした。②大阪高裁は無事故・作業・給食・通勤の差額の四つの手当を不合理とし、住宅と皆勤の二つ手当の請求は棄却した。③今回の最高裁は、先に高裁が認めた四手当に加え、皆勤手当を支給しないのは不合理と判断した。しかし、棄却された住宅手当に関しては、原告が働く支店の正社員運転手には転勤がなく、この実態を見ていない。 ●3章 長澤運輸裁判 長澤運輸裁判においては、原告はバラセメント運転手三人、二〇一四年定年後再雇用で職務は前と全く変わらないが、職務・住宅・家族手当の八万五千円と本給五か月分の年間一時金の不支給、さらに固定給大幅カットによる割増賃金減額のため賃金が三割減となった。 ①東京地裁は、「仕事の内容は正社員と同一と認められる。特別な理由もなく賃金格差があるのは違法」と正当な判断をした。②東京高裁は、定年後再雇用にも労契法二〇条が適用されるが、「定年後の再雇用において、一定程度賃金を引き下げることは広く行われており社会的にも容認されている」から同法に違反しないと不当な判断を下して、原告が逆転敗訴となった。③今回の最高裁は、定年後再雇用は労契法二〇条の対象になるとしつつ、精勤手当の不支給を不合理とし、この精勤手当を入れた時間外労働手当(超勤手当)の具体的計算については東京高裁に差し戻しを命じ、他の全てについては不合理ではないと、不当にも上告を棄却した。 この最高裁判決は、高裁と同様に法的判断から逸脱した「定年後賃下げは社会的に容認されている」という不当なものだ。山本裁判長は、合理性の判断については「賃金総額の比較のみでなく、各賃金項目の趣旨を個別的に考慮すべき」と踏み込んだ基準を打ち出した。しかも、その基準の第三項「その他の事情」は補助的な考慮事情に止まるとしている。にもかかわらず、「再雇用者は、長期間雇用が予定されておらず、老齢年金支給も予定されている」ので、「このような事情は、定年後再雇用の有期契約労働者の賃金体系を検討する際の基礎となる」と理由づけて、再雇用の場合は法的合理性ではなく国策遂行の立場からする判決を下したと言える。 実際に、職務給の全額不支給の判断方法おいてその不当性は明らかだ。職務給は大型トラック乗務に対して支給されるが、会社は再雇用者の職務給を全額カットして、歩合給を支給した。それは固定給を大幅減額して残業単価を引き下げるためだ。職務給と歩合給はそれぞれ内容が異なるため、これを比較することはできないはずだ。しかし、最高裁は、正社員の基本給・職務給・能率給の総額と、再雇用者の基本給・歩合給の総額とを比較するという方法をとり、その差額は2~12%程度にとどまるから不合理と評価できない、と強弁した。山本裁判長は、判決総論で「各賃金の趣旨を個別的に考慮すべき」との判断を示しながら、実際は賃金総額比較の方法のみで真逆な結論を引き出しているのだ。 ●4章 労契法二〇条裁判の論点 今回の最高裁判決は、今後の労契法二〇条裁判の判断基準が示されるものとして注目を集めていた。 これまでの労契法二〇条裁判の論点は次のようなものであった。 ①第一に、不合理な労働条件の違いを禁止するという労契法二〇条の立法趣旨をどうとらえるのか? 不合理性の判断基準を、より厳格に適用するのか、緩やかな解釈とするのかの判断が問われてきた。②第二に、職務内容とその責任の程度として判断するのか、その他を考慮するのか、何を重視するのかの判断である。定年再雇用ならしょうがないとするのか。③第三に、不合理の判断基準とは何か。不合理とはどのような場合をいうのか。同一労働の事案で、基本給等についても不合理性を肯定した長澤運輸地裁判決の例があり、ただし高裁で逆転敗訴となった。④第四に、比較対象者が統一されていない。⑤第五に、賃金総額とするのか、それぞれの手当の性格・目的を吟味するのか。⑥第六に、救済のあり方として、損害賠償にとどまるのか、正社員と同一条件になるのか。長澤運輸地裁判決のように正社員就業規則が適用できるかである。 ●5章 今回初めての最高裁判断 今回の山本裁判長は、労契法二〇条が「職務内容などの違いに応じた均衡の取れた処遇を求める規定」とし、賃金格差が不合理かどうかは「各賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき」、法違反の場合は損害賠償請求が認められるのみで賃金請求は不可、とする初判断を示した。 労契法二〇条の不合理性の判断基準は、①業務内容や責任の程度、②内容や配置の変更の範囲、③その他の事情、の三要素を考慮するとしている。これまでは、三要素を総合的に考慮するという判決が多かったが、今回の最高裁判決は、前記の①を検討し②を重視して、③は補助的な考慮事情に止まるという論旨となっている。 今後、個別事情に踏み込んで各支給賃金項目の不合理性を判断するということは、労働者側の不合理性の立証努力と、裁判官の個別判断が問われ意見が分かれる事が予想される。 また、経営が総額人件費圧縮のために、正社員の手当を無くし、非正規に合わせる不利益変更の方向が強まるだろう。実際に郵政二〇条裁判で、昨年九月東京地裁と本年二月大阪地裁でそれぞれ一部格差是正がかちとられたが、日本郵政は一部正社員(一般職五千人)を対象に今年一〇月から住居手当(年間最大三二万四千円)を一〇年かけて廃止すると決めた。 ●6章 「働き方改革推進法案」を廃案へ 非正規労働者は約二千万人、全体の四割を占め、うち約一四〇〇万人が有期労働者だ。そのほとんどが女性、若者、高齢者であり、非正規差別と不安定雇用、低賃金に呻吟している。 二〇一三年四月雇用の安定化と不合理な労働条件の是正を目的に、「改正労働契約法」一八条、一九条(二〇一二年八月施行)、二〇条が施行され、本二〇一八年四月一日から一九条に基づく無期転換が始まった。労働契約法を活用して、有期雇用労働者の無期転換を実現し、不当な格差を是正し、均等待遇を実現していこう。 安倍「働き方改革推進法案」が、五月末に衆議院で強行採決され、現在は参議院で審議中だが、この中で「同一労働同一賃金ガイドライン」の法制化として「人材活用の仕組み」による格差を容認しようとしている。また、労契法二〇条を削除して、その適用範囲をより狭い「パート労働法」に押し込もうとしている。安倍「働き方改革推進法案」の廃案を断固かちとっていこう。 |
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